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物理[熱・波動]

物理[熱・波動]例題マスター(第2巻)

〜 問題で学ぶ・物理基礎から入試基礎まで 〜


本書の構成と使い方

「物理[力学]例題マスター」(第1巻)に続く第2巻(熱・波動)です。構成・使い方・記号のルールは第1巻と共通です。

区分 レベル 解答の位置 ねらい
概念チェック ○×・択一(5問) 全問のあとにまとめて 計算以前の「意味の理解」を確認
A問題 物理基礎レベル(★)数値中心 問題のすぐ下 各テーマ3問(基本 → 類題 → 場面替え)で状況パターンを網羅
B問題 「物理」・入試基礎(★★〜★★★)文字式中心 章末にまとめて 複合状況・導出・記述の型
実戦問題 共通テスト形式+記述入試形式 章末にまとめて 3題(グラフ・実生活文脈・誘導記述)

使い方
1. 「公式・要点まとめ」と「解法チャート」に目を通す(公式は適用条件とセットで読む)
2. 概念チェックで意味を確認 → A問題を上から順に(解答を隠して自力で)
3. B問題は文字式のまま立式する練習。単位チェックを検算に使う
4. 実戦問題で共テ形式・記述形式の両方に慣れる

物理のルール(全巻共通)
• 数値は原則有効数字2桁で答える。単位を必ず付ける
• 絶対温度 T [K] とセ氏温度 t [℃]:T = t+273。温度は ℃ でも K でも同じ値
• 水の比熱は 4.2 J/(g·K)(問題文で指定)。大きな数は ×10ⁿ で表記
• 解答の第一手は「図示」— 熱の章では「熱の収支表(誰が失い、誰が得たか)」を描くことがそれにあたる
• 記号の凡例:①②③ = 小問/[ア][イ] = マーク欄(共通テスト形式)/(a)(b)(c) = 選択肢


目次


第1章 熱量の保存

熱の章の主役はただ1本 — Q = mcΔT と、「失った熱 = 得た熱」の帳簿。第1巻・第5章で"摩擦に消えた"力学的エネルギーの行き先が、ここでとして帳簿に復帰する。氷がとける・水が沸くといった状態変化の間は温度計が止まり、熱は潜熱として姿を隠す — 「温度を変える熱」と「姿を変える熱」を分けて数える。それだけで、この章のすべての問題が解ける。


この章の公式・要点まとめ

温度と熱
• 温度 = 原子・分子の熱運動の激しさの指標
• 絶対温度 T = t+273(単位 K)。絶対零度 0 K = −273 ℃(熱運動が最小になる下限)
温度差は ℃ でも K でも同じ数値(ΔT の単位はどちらで書いてもよい)
• 熱(熱量)Q [J]:高温側から低温側へ移動するエネルギー(温度は状態、熱は移動量 — 別の概念!)

熱容量と比熱
• 熱容量 C [J/K]:その物体全体を 1 K 上げるのに必要な熱量 → Q = CΔT
• 比熱 c [J/(g·K)]:その物質 1 g を 1 K 上げるのに必要な熱量 → Q = mcΔT
• 関係:C = mc。水の比熱 4.2 J/(g·K) は物質中トップクラス(あたたまりにくく冷めにくい)

熱量の保存(この章の心臓)
• 高温物体と低温物体を接触させ、外部と熱のやりとりがないとき:
(高温側が失った熱)=(低温側が得た熱)
• 最終温度(熱平衡の温度)は必ず両者の初めの温度の間に落ち着く

状態変化と潜熱
• 融解熱 L [J/g]:固体 1 g を(同じ温度の)液体にする熱/蒸発熱:液体 1 g を気体にする熱
• 状態変化に必要な熱:Q = mL
状態変化の間、温度は一定(加えた熱はすべて"姿を変える"ことに使われる)— 氷水は 0 ℃、沸騰中は 100 ℃のまま
• 水:融解熱 3.3×10² J/g、蒸発熱 2.3×10³ J/g(問題文で与えられる)

熱と仕事
• 摩擦や衝突で失われた力学的エネルギーは熱に変わる(第1巻・第5章の「帳簿の外」の正体)
• 仕事 W [J] と熱 Q [J] は同じ単位のエネルギー — 仕事はそのまま熱量に換算できる(ジュールの実験)

熱の伝わり方(用語)
伝導(物体の中を順に)/対流(あたたまった流体が動いて運ぶ)/放射(光・赤外線で直接届く)

解法チャート(熱量の保存)
1. 登場する物体を容器まで含めて列挙し、最終温度を t とおく
2. 熱の収支表を作る:各物体の Q = mcΔT(ΔT は「高い温度 − 低い温度」で正に書く)
3. 状態変化があれば mL の項を別枠で追加(その間の温度は一定)
4. 失った熱の合計 = 得た熱の合計の1本の式を解く
5. 検算:t は初めの温度のにあるか/氷が残るなら t = 0 ℃/単位はすべて J


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
温度が高い物体ほど、多くの熱をもっている。○か×か。

Q2
0 ℃ は絶対温度でおよそ何 K か。
(a) 0 K
(b) 100 K
(c) 273 K

Q3
比熱の大きい物質ほど、あたたまりにくく、冷めにくい。○か×か。

Q4
0 ℃ の氷に熱を加え続けて、氷がとけている間、温度はどうなるか。
(a) 上がり続ける
(b) 0 ℃ のまま一定
(c) いったん下がる

Q5
高温の物体と低温の物体を接触させると、熱は必ず高温側から低温側へ移動する。○か×か。

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:× — 熱は「移動するエネルギー」であって、物体が溜め込む量ではない(溜まっているのは内部エネルギー)。小さな熱湯より大きな水槽のぬるま湯の方が多くの熱を放出できることもある — 温度と熱量の区別が本章のスタートライン。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:(c) — T = t+273 より 0 ℃ = 273 K。目盛りの幅は同じで、原点だけがずれている(だから温度差は共通)。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:○ — 比熱 =「1 g を 1 K 動かすのに要る熱」なので、大きいほど温度が動きにくい。水(4.2)が気候を穏やかにする理由(B6-2)。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:(b) — 加えた熱はすべて融解(結合をほどく仕事)に使われ、温度計は止まる。「熱を加える = 温度が上がる」ではない、が潜熱の核心。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:○ — 熱の移動の向きは温度差だけが決める(質量や熱容量は無関係)。逆向きに自然に流れることはない — 第3章(熱力学)で法則として再登場する。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下

※特に断らない限り、水の比熱を 4.2 J/(g·K) とし、熱は外部に逃げないものとする。


A1【絶対温度】

A1-1
① 27 ℃ は何 K か。
② 100 ℃ は何 K か。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
① T = 27+273 = 300 K
② T = 100+273 = 373 K

ポイント +273 の一手のみ — ただし以後の熱の計算(特に第2章の気体)では絶対温度が主役になるので、この換算を反射にしておく。

A1-2(類題)
① 300 K は何 ℃ か。
② 絶対零度(0 K)は何 ℃ か。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① t = 300−273 = 27 ℃
② t = 0−273 = −273 ℃

ポイント 絶対零度は「熱運動が最小になる温度の下限」— これより低い温度は存在しない。Kには負の値がない、という目盛りの意味まで。

A1-3(類題)
20 ℃ の水を 50 ℃ まで温めた。温度変化は何 K か。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
ΔT = 50−20 = 30 ℃ = 30 K

ポイント 温度差は ℃ と K で同じ数値(原点のずれは引き算で消える)— Q = mcΔT の ΔT にはどちらの目盛りの差を入れてもよい、という実務上の重要ポイント。


A2【熱容量】

A2-1
熱容量 84 J/K の物体の温度を 10 K 上げるのに必要な熱量を求めよ。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
Q = CΔT = 84×10 = 8.4×10² J

ポイント 熱容量 C は「その物体まるごとを 1 K 動かす値段」— 物体固有の量(質量と材質の両方で決まる)。

A2-2(類題)
ある物体に 500 J の熱を与えたところ、温度が 2.5 K 上がった。この物体の熱容量を求めよ。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
C = Q/ΔT = 500/2.5 = 2.0×10² J/K

ポイント 熱容量の逆算(測定の式)。単位 J/K が「1 K あたり何 J か」を語っている — 単位を読めば式は復元できる。

A2-3(類題)
熱容量 150 J/K の容器を 20 ℃ から 60 ℃ まで温めるのに必要な熱量を求めよ。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = CΔT = 150×(60−20) = 6000 = 6.0×10³ J

ポイント 容器・熱量計はいつも「熱容量 C」で登場する(材質いろいろの複合体だから比熱でなく丸ごとの値で)— A6 で水と組む前の顔合わせ。


A3【比熱と Q = mcΔT】

A3-1
100 g の水を 20 ℃ から 80 ℃ まで温めるのに必要な熱量を求めよ。

A3-1解答を見る解答を隠す

解答
Q = mcΔT = 100×4.2×(80−20) = 100×4.2×60 = 25200 = 2.5×10⁴ J

ポイント 熱の基本式 Q = mcΔT — 「質量 × 比熱 × 温度差」の3点セット。数値が大きくなるので ×10ⁿ 表記と有効数字2桁を徹底。

A3-2(類題)
鉄 200 g(比熱 0.45 J/(g·K))の温度を 15 K 上げるのに必要な熱量を求めよ。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = 200×0.45×15 = 1350 = 1.4×10³ J

ポイント 同じ温度上昇でも、水(4.2)の約 1/9 の熱で済む — 金属は"軽い"(比熱が小さい)。フライパンがすぐ熱くなる理由。

A3-3(類題)
銅 300 g に 2.3×10³ J の熱を与えたところ、温度が 20 ℃ から 40 ℃ に上がった。銅の比熱を求めよ。

A3-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
c = Q/(mΔT) = 2300/(300×20) = 0.38 J/(g·K)

ポイント 比熱の逆算(実測値 0.39 とほぼ一致)。「与えた熱・質量・温度変化の3つを測れば材質が分かる」— A6-2 の熱量計測定の予告。


A4【熱容量と比熱の使い分け】★★

A4-1
水 150 g の熱容量を求めよ。

A4-1解答を見る解答を隠す

解答
C = mc = 150×4.2 = 630 = 6.3×10² J/K

ポイント C = mc が2つの量の橋 — 「1 g あたり(比熱)」に質量を掛ければ「まるごと(熱容量)」になる。

A4-2(類題)
熱容量 90 J/K の容器に水 200 g が入っている。
① 容器と水を合わせた全体の熱容量を求めよ。
② 全体の温度を 5.0 K 上げるのに必要な熱量を求めよ。

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① C = 90+200×4.2 = 90+840 = 930 = 9.3×10² J/K
② Q = 930×5.0 = 4650 = 4.7×10³ J

ポイント 熱容量は足し算できる(容器も水も同じ 5.0 K 動くから)— 「水+容器」を1つの物体として扱う技は、熱量計の計算(A6)の下ごしらえ。

A4-3(類題)
同じ熱量を、水 100 g と鉄 100 g(比熱 0.45 J/(g·K))にそれぞれ与えた。鉄の温度上昇は水の約何倍か。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q 一定なら ΔT ∝ 1/c:
ΔT(鉄)/ΔT(水) = 4.2/0.45 = 9.33 ≒ 約 9.3 倍

ポイント 「同じ熱なら、比熱の逆比で温度が動く」— 昼の砂浜(すぐ熱い)と海水(ぬるいまま)の差の正体。この逆比の感覚が B6-2(海風・陸風)につながる。


A5【熱量の保存(混合)】★★★

A5-1
断熱容器の中で、80 ℃ の湯 100 g と 20 ℃ の水 200 g を混ぜた。最終温度を求めよ。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
図示(熱の収支表):最終温度を t とする。
失う側(湯):100×4.2×(80−t)/得る側(水):200×4.2×(t−20)
熱量の保存:100×(80−t) = 200×(t−20)(4.2 は両辺で約分)
80−t = 2(t−20) → 3t = 120 → t = 40 ℃

ポイント 同じ物質どうしなら比熱が約分で消える — 残るのは「質量の重みつき平均」。質量 1:2 なので、答えは 20 ℃ 側に 2 倍寄った 40 ℃(80 と 20 を 2:1 に内分)— 検算にもなる読み方。

A5-2(類題)
90 ℃ の湯 300 g に、30 ℃ の水を加えて全体を 50 ℃ にしたい。加える水は何 g か。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
300×(90−50) = m×(50−30)
12000 = 20m → m = 6.0×10² g

ポイント 未知数が「質量」に変わっただけで、式は同じ1本 — 保存則の式はどの文字についても解ける(逆算の型)。湯の温度降下 40 K に対し水の上昇は 20 K:質量は温度変化の逆比

A5-3(類題)
100 ℃ に熱した金属球 200 g を、20 ℃ の水 100 g の中に入れたところ、全体が 25 ℃ になった。この金属の比熱を求めよ(容器の熱容量は無視する)。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
失う側(金属):200×c×(100−25)/得る側(水):100×4.2×(25−20)
15000c = 2100 → c = 0.14 J/(g·K)

ポイント 熱量保存を比熱の測定器として使う型(混合法)。金属は 75 K も下がったのに水は 5 K しか上がらない — 比熱の小ささ(0.14:鉛の値に近い)が温度変化の非対称に現れている。


A6【熱量計(容器を含む混合)】★★★

A6-1
熱容量 2.1×10² J/K の容器に 20 ℃ の水 250 g が入っている。ここに 80 ℃ の湯 150 g を注ぐと、全体は何 ℃ になるか。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
得る側は「水+容器」のセット:熱容量 = 250×4.2+210 = 1260 J/K
1260×(t−20) = 150×4.2×(80−t)
1260(t−20) = 630(80−t) → 2(t−20) = 80−t → 3t = 120 → t = 40 ℃

ポイント 容器も温度が上がる = 容器も熱を得る — 容器の分を忘れると答えがずれる(実験で理論値と合わない典型原因)。「水+容器」を熱容量の足し算(A4-2)で1つの物体にしてしまうのが定石。

A6-2(類題)
熱容量 42 J/K の熱量計に 20 ℃ の水 100 g が入っている。90 ℃ に熱した金属 200 g を入れると全体が 30 ℃ になった。金属の比熱を求めよ。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
得る側:(100×4.2+42)×(30−20) = 462×10 = 4620 J
失う側:200×c×(90−30) = 12000c
12000c = 4620 → c = 0.385 ≒ 0.39 J/(g·K)

ポイント これが熱量計による比熱測定の完全な形(A3-3+容器)。得られた 0.39 J/(g·K) は銅の値 — 「比熱から材質を推定する」ところまでが理科の読み。測定式の一般形と誤差の向きは B5 で。

A6-3(類題)
A5-1 と同じ実験(80 ℃ の湯 100 g+20 ℃ の水 200 g)を普通の容器で行ったところ、実際の最終温度は 38 ℃ にしかならなかった。外部へ逃げた熱量を求めよ。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
湯が失った熱:100×4.2×(80−38) = 17640 J
水が得た熱:200×4.2×(38−20) = 15120 J
逃げた熱 = 17640−15120 = 2520 ≒ 2.5×10³ J

ポイント失った熱 = 得た熱+逃げた熱」— 保存の式を"収支のずれ"の測定に使う場面替え。理想(40 ℃)より低い実測(38 ℃)という向きも、熱が逃げたことと整合している。


A7【状態変化と潜熱】★★

A7-1
0 ℃ の氷 100 g を、すべて 0 ℃ の水にするのに必要な熱量を求めよ。氷の融解熱を 3.3×10² J/g とする。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
Q = mL = 100×3.3×10² = 3.3×10⁴ J

ポイント 温度が変わらないのに熱がいる — 3.3×10⁴ J は同じ 100 g の水を約 79 K も温められる量。融解熱の"高額さ"が、氷がゆっくりとける理由。

A7-2(類題)
100 ℃ の水 50 g を、すべて 100 ℃ の水蒸気にするのに必要な熱量を求めよ。水の蒸発熱を 2.3×10³ J/g とする。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = mL = 50×2.3×10³ = 1.15×10⁵ ≒ 1.2×10⁵ J

ポイント 蒸発熱は融解熱のさらに約 7 倍 — 「沸騰してから全部蒸発するまで」が長い理由。逆向き(凝縮)では同じ熱を放出する:やけどで蒸気が危険な理由でもある。

A7-3(類題)
0 ℃ の氷 50 g に熱を加えて、20 ℃ の水にしたい。必要な熱量を求めよ。氷の融解熱を 3.3×10² J/g とする。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
融解:50×330 = 16500 J
温度上昇:50×4.2×20 = 4200 J
合計:16500+4200 = 20700 ≒ 2.1×10⁴ J

ポイントとかす熱(mL)+温める熱(mcΔT)」の2段払い — 状態変化と温度変化は別々の項として足す。グラフ(加熱時間と温度)なら、0 ℃ の水平部分+右上がりの直線、という形。


A8【熱と仕事】★★

A8-1
質量 2.0 kg の物体が、粗い水平面上を速さ 5.0 m/s で滑り出し、摩擦によって停止した。発生した熱量を求めよ。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
失われた運動エネルギーがすべて熱に:
Q = (1/2)mv² = (1/2)×2.0×5.0² = 25 J

ポイント 第1巻・第5章で「帳簿の外へ出た」エネルギーの行き先がここ — 力学的エネルギーの減少分 = 発生した熱。力学と熱は1つのエネルギー勘定でつながっている。

A8-2(類題)
消費電力 500 W(毎秒 500 J の熱を出す)のヒーターで、20 ℃ の水 200 g を 80 ℃ まで温める。発生した熱がすべて水に入るとして、かかる時間を求めよ。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
必要な熱:Q = 200×4.2×60 = 50400 J
時間:t = 50400/500 = 100.8 ≒ 1.0×10² s

ポイント 仕事率(第1巻・第5章)との合流:Q = Pt。「500 W = 毎秒 500 J」と単位を読み下せば、割り算1回。実際は熱が逃げるのでもう少しかかる(A6-3 の視点)。

A8-3(類題)
高さ 50 m の滝を水が落下する。水の位置エネルギーがすべて熱になって水自身を温めるとすると、水温は何 K 上昇するか。水の比熱を 4.2×10³ J/(kg·K) とする。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
mgh = mcΔT より ΔT = gh/c(質量が約分)
ΔT = 9.8×50/(4.2×10³) = 490/4200 = 0.1167 ≒ 0.12 K

ポイント ジュールが新婚旅行先の滝で確かめようとしたと伝わる名場面の計算 — 50 m 落ちてもたった 0.12 K。水の比熱の大きさと、熱に対して力学的エネルギーが"少額"であることの両方が見える。比熱の単位が kg 基準(4.2×10³)に変わっている点も要注意。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。文字式のまま立式し、極端な場合(m → 0、C → 0 など)で検算するのが作法。B2(混合の一般式)とB3(氷の場合分け)が入試の最頻出


B1【熱容量と比熱(文字)】★★

B1-1 質量 m、比熱 c の物体の温度を ΔT 上げるのに必要な熱量 Q を書け。また、この物体の熱容量 C を m、c で表せ。

B1-2 質量 m₁・比熱 c₁ の物体と、質量 m₂・比熱 c₂ の物体を組み合わせて、つねに同じ温度で温める。全体の熱容量を求めよ。

B1-3 同じ熱量 Q を、質量の等しい2つの物体(比熱 c₁、c₂)にそれぞれ与えた。温度上昇の比 ΔT₁:ΔT₂ を求めよ。

B2【混合温度の一般式】★★★

B2-1 質量 m₁・比熱 c₁・温度 t₁ の物体と、質量 m₂・比熱 c₂・温度 t₂(t₁ > t₂)の物体を接触させ、外部と熱のやりとりなく熱平衡に達した。最終温度 t を求めよ。

B2-2 B2-1 で2つが同じ物質(比熱 c 共通)の場合の t を書け。さらに質量も等しい場合はどうなるか。

B2-3 熱容量 C の容器に、質量 m₂・温度 t₂ の水が入っている(容器も t₂)。ここに質量 m₁・温度 t₁ の湯(t₁ > t₂)を注ぐ。水の比熱を c として、最終温度 t を求めよ。

B3【状態変化を含む混合(文字)】★★★

B3-1 温度 t₁ [℃] の水 M [g] に、0 ℃ の氷 m [g] を入れた。氷がすべてとけて最終温度が t' になったとする。水の比熱を c、氷の融解熱を L として、t' を求めよ。

B3-2 B3-1 で、氷がすべてとける(t' ≧ 0 となる)ための m の条件を求めよ。

B3-3 B3-2 の条件を超える量の氷を入れた場合、最終温度は何 ℃ になるか。また、とけた氷の質量 m' を求めよ。

B4【熱と仕事(文字)】★★★

B4-1 質量 m の水が高さ h を落下し、失われた位置エネルギーがすべて水自身を温める熱になったとする。温度上昇 ΔT を求めよ(水の比熱 c は J/(kg·K) 単位とする)。

B4-2 速さ v で滑る質量 m の物体が摩擦で停止した。発生した熱のうち割合 α が物体自身(比熱 c)に入ったとして、物体の温度上昇 ΔT を求めよ。

B4-3 質量 M、比熱 c の水を、仕事率 P のかくはん器で時間 t だけかき混ぜ、仕事がすべて熱になったとする。水の温度上昇 ΔT を求めよ。

B5【比熱の測定と誤差の考察】★★★

B5-1 熱容量 C の熱量計に質量 m・温度 t₂ の水(比熱 c_w)が入っている。温度 t₁ に熱した質量 m' の金属を入れると、全体が温度 t になった。金属の比熱 c を、これらの文字で表せ。

B5-2 B5-1 の実験中に熱の一部が外部へ逃げた場合、測定される比熱は真の値より大きくなるか、小さくなるか。理由とともに答えよ。

B5-3 加熱した金属を熱量計まで運ぶ間に金属が少し冷えていた(実際の投入時の温度が t₁ より低かった)場合、測定される比熱は真の値より大きくなるか、小さくなるか。理由とともに答えよ。

B6【熱の伝わり方と水の性質(論述)】★★

B6-1 熱の伝わり方の3つの形式(伝導・対流・放射)を、それぞれ身近な例を1つずつ挙げて説明せよ。

B6-2 よく晴れた日の海岸では、昼は海から陸へ「海風」が吹く。水の比熱が大きいことを使って、この理由を説明せよ。

B6-3 水が「湯たんぽ」や自動車の冷却水として適している理由を、比熱の言葉で説明せよ。また、1.0 kg の水が 80 ℃ から 30 ℃ まで冷める間に放出する熱量を求めよ(比熱 4.2×10³ J/(kg·K))。


B問題 解答・解説


B1【熱容量と比熱(文字)】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
Q = mcΔT
熱容量は「1 K あたりに要る熱」だから C = mc

ポイント c は物質の個性(1 g あたり)、C は物体の個性(まるごと)— 「比」熱の名の通り、c は質量で割って規格化した量。単位 J/(g·K) と J/K の違いに全部書いてある。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
同じ ΔT に対して必要な熱は Q = m₁c₁ΔT+m₂c₂ΔT = (m₁c₁+m₂c₂)ΔT
よって全体の熱容量 C = m₁c₁+m₂c₂

ポイント 熱容量は足し算(同じ温度で動くかたまりなら)— A4-2・A6 の「水+容器」セット化の理論的な根拠。抵抗の直列(第3巻)のような単純な加成性。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
ΔT = Q/(mc) より、Q・m が共通なら ΔT ∝ 1/c:
ΔT₁:ΔT₂ = c₂:c₁(比熱の逆比)

ポイント A4-3(水と鉄)の一般化 — 「同じ熱なら、比熱の小さい方が大きく動く」。てこの逆比(第1巻・第3章)と同じ"シーソー"の感覚。


B2【混合温度の一般式】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
熱量の保存:m₁c₁(t₁−t) = m₂c₂(t−t₂)
m₁c₁t₁−m₁c₁t = m₂c₂t−m₂c₂t₂
t = (m₁c₁t₁+m₂c₂t₂)/(m₁c₁+m₂c₂)

ポイント 最終温度は「熱容量(mc)を重みにした加重平均」— 数学第1巻の内分点の公式と同じ形。だから必ず t₂ < t < t₁(2点の間)に落ちる:解いた後の検算基準そのもの。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
c が共通なら約分されて t = (m₁t₁+m₂t₂)/(m₁+m₂)
さらに m₁ = m₂ なら t = (t₁+t₂)/2(ちょうど中間の温度)

ポイント A5-1(1:2 の混合で 2:1 の内分)はこの式の実例。「等量の湯と水はちょうど真ん中」— 日常の風呂の湯加減の直感が、保存則の特別な場合だったと分かる。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
得る側は「水+容器」(熱容量 m₂c+C):
m₁c(t₁−t) = (m₂c+C)(t−t₂)
t = {m₁c t₁+(m₂c+C)t₂}/{m₁c+m₂c+C}

ポイント B2-1 の m₂c₂ を m₂c+C に置き換えただけ — 容器は「水の仲間に混ぜた重り」。C → 0 で B2-2 に戻る ○(極端検算)。A6-1 はこの式の数値代入例。


B3【状態変化を含む混合(文字)】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
失う側(水):Mc(t₁−t')
得る側(氷):とける mL+とけた水が 0 ℃ から t' まで温まる mct'
Mc(t₁−t') = mL+mct'
Mct₁−mL = (M+m)ct'
t' = (Mct₁−mL)/{(M+m)c}

ポイント 氷側の熱は「mL+mcΔT の2段払い」(A7-3 の受け取り側版)— とけた後は"質量 m の水"として仲間入りする(分母が M+m)ことも見落とさない。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
t' ≧ 0 ⇔ Mct₁−mL ≧ 0
m ≦ Mct₁/L

ポイント 「水が差し出せる熱(最大 Mct₁:0 ℃ まで下がりきった場合)で、氷の請求書 mL を払えるか」— 分子の意味を言葉で言えれば、不等式は暗記不要。

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
氷が残る場合、氷と水が共存するので最終温度は 0 ℃
水が 0 ℃ まで下がる間に出せる熱 Mct₁ が、氷をとかすのに全額使われる:
Mct₁ = m'L → m' = Mct₁/L

ポイント氷が残る ⇔ 全体は 0 ℃」の翻訳が場合分けの軸(共存 = 状態変化の途中 = 温度一定:概念チェック Q4)。B3-2 の境界値 m = Mct₁/L で、ちょうど全部とけて 0 ℃ — 3問がひと続きの物語になっている。


B4【熱と仕事(文字)】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
mgh = mcΔT → ΔT = gh/c(質量によらない)

ポイント A8-3(滝)の一般式。m が消えるのは「エネルギーも熱容量も質量に比例」だから — 第1巻で g が消えた場面たち(自由落下の同時性など)と同じ約分の物語。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
発生する熱は (1/2)mv²、そのうち物体に入るのは α(1/2)mv²:
α×(1/2)mv² = mcΔT → ΔT = αv²/(2c)

ポイント 摩擦熱は両方の面に分配される(床にも逃げる)— 現実の補正 α を1文字で背負わせる、モデル化の練習。α = 1 が理想の上限。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
仕事 = Pt がすべて熱に:Pt = McΔT
ΔT = Pt/(Mc)

ポイント ジュールの羽根車実験の式そのもの — 「仕事(力学)で温度(熱)が上がる」ことを定量化し、熱がエネルギーの一形態だと示した歴史的一撃。A8-2(ヒーター)と同じ形(P の中身が電気か力学かの違いだけ)。


B5【比熱の測定と誤差の考察】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
得る側(水+熱量計):(mc_w+C)(t−t₂)
失う側(金属):m'c(t₁−t)
等しいとおいて
c = (mc_w+C)(t−t₂)/{m'(t₁−t)}

ポイント A6-2 の測定を1本の公式に。実験レポートの「計算式」欄はこの形 — 分子が"受け取った熱"、分母が"金属の質量×温度降下"という意味構造ごと覚える。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
小さくなる。
熱が逃げると、水側の上昇が小さくなり(t が低めに出る)、分子 (t−t₂) は小さく、分母 (t₁−t) は大きくなる — どちらの効果も c を過小評価する向きにはたらくから。

ポイント 誤差問題は「式のどの文字がどちらにずれるか」を追うだけ — 感覚でなく式で答える。実際の実験値が文献値より小さく出がちな主因がこれ。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
小さくなる。
実際の投入温度は t₁ より低いのに、計算では t₁ を使う — 分母の (t₁−t) を実際より大きく見積もることになり、c は過小評価される。

ポイント B5-2 と同じ結論だが経路が違う(今度は分母だけ)。「どの測定値が、式のどこに、どう効くか」— 共通テストの実験考察問題の型がここで完成する。


B6【熱の伝わり方と水の性質(論述)】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
伝導:物体内を高温側から低温側へ、分子の熱運動が順に伝わる(例:金属スプーンの柄が熱くなる)。
対流:あたためられた液体・気体が軽くなって上昇し、流れが熱を運ぶ(例:風呂の湯の上だけ熱い、エアコンの空気の循環)。
放射:光(赤外線など)としてエネルギーが直接届く。間に物がなくても伝わる(例:太陽の熱、たき火の前面の熱さ)。

ポイント 3形式の判定基準は「何が熱を運ぶか」— 物質の中を(伝導)、物質が動いて(対流)、光が(放射)。真空を越えられるのは放射だけ(太陽 → 地球)。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
水(海)は比熱が大きく、陸(岩・砂)は小さい。昼、同じ日射を受けても陸の方が先に高温になる(B1-3 の逆比)。
陸上の空気があたためられて軽くなり上昇(対流)→ その跡へ海側から空気が流れ込む — これが海から陸へ吹く海風。夜は逆に陸が先に冷え、風向きも逆(陸風)になる。

ポイント 「比熱の差 → 温度差 → 対流」の3段論法 — 気象が Q = mcΔT で説明できる代表例。夜の逆転まで言えると論述として完成。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
水は比熱が非常に大きく、同じ質量で多くの熱を蓄えられ、温度変化がゆるやか — 長時間あたたかさを保つ湯たんぽ、大量の熱を受け取っても沸きにくい冷却水に適する。
放出する熱:Q = McΔT = 1.0×4.2×10³×(80−30) = 2.1×10⁵ J

ポイント 2.1×10⁵ J は 100 W の電熱を約 35 分ぶん — 「お湯 1 L」が立派なエネルギー貯蔵庫であることの定量化。性質(論述)と数値(計算)を1問で往復する、実戦的な締め。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦1-1【共テ形式:混合実験】★★

断熱容器(熱容量は無視できる)に 20 ℃ の水 200 g が入っている。ここに 80 ℃ の湯 100 g を加えてよくかき混ぜた。水の比熱を 4.2 J/(g·K) とする。
① 最終温度は [アイ] ℃ である。
② この間に水(20 ℃ だった側)が得た熱量は [ウ].[エ]×10⁴ J である。
③ 加える湯を 200 g にすると、最終温度は [オカ] ℃ になる。
④ 実際に普通の容器で実験すると、最終温度は①の計算値よりわずかに低くなった。最も適当な理由は [キ] である。
(a) かき混ぜたことで水の比熱が変化したから
(b) 熱の一部が容器や周囲の空気へ逃げたから
(c) 湯の一部が蒸発して質量が増えたから

実戦1-2【共テ形式:電気ケトルの見積もり】★★

消費電力 1.0×10³ W(毎秒 1.0×10³ J の熱を発生)の電気ケトルで、20 ℃ の水 500 g を沸騰(100 ℃)させる。水の比熱を 4.2 J/(g·K)、水の蒸発熱を 2.3×10³ J/g とし、発生した熱はすべて水に入るものとする。
① 100 ℃ にするのに必要な熱量は [ア].[イ]×10⁵ J である。
② 100 ℃ になるまでにかかる時間は [ウ].[エ]×10² s である。
③ さらに加熱を続けて 100 ℃ の水 500 g をすべて蒸発させるのに必要な熱量は [オ].[カ]×10⁶ J である。
④ ③にかかる時間は、②(沸騰までの時間)のおよそ何倍か。最も近いものは [キ] である。
(a) 約 2 倍
(b) 約 7 倍
(c) 約 20 倍

実戦1-3【記述形式:氷を入れた水の場合分け】★★★

断熱容器(熱容量は無視)に 40 ℃ の水 200 g が入っている。ここに 0 ℃ の氷 m [g] を入れる。水の比熱を c = 4.2 J/(g·K)、氷の融解熱を L = 3.3×10² J/g とする。
① 氷がすべてとけ、最終温度が t になったとする。熱量保存の式を立てよ。
② m = 50 g のとき、最終温度を求めよ。
③ 氷がちょうどすべてとけて、全体が 0 ℃ になるのは m が何 g のときか。
④ m = 150 g のとき、最終温度はいくらか。また、とけずに残る氷は何 g か。


実戦問題 解答・解説


実戦1-1

考え方 A5-1 そのままの基本混合を、②で熱量、③で条件変更、④で実験考察へ広げる — 1つの実験を多角的に読む共テの定番構成。

実戦1-1解答を見る解答を隠す

解答
① 200×(t−20) = 100×(80−t) → 2t−40 = 80−t → t = 40 ℃(アイ = 40)
② Q = 200×4.2×(40−20) = 16800 ≒ 1.7×10⁴ J(ウ = 1、エ = 7)
③ 等量(200 g どうし)なら中間の温度:t = 50 ℃(オカ = 50)
④ 熱が外へ逃げれば到達温度は下がる:(b)(キ = (b))

ポイント
• ③は式を立て直さなくても「等量ならちょうど真ん中」(B2-2)で即答 — 構造で答える共テの時間術。
• ④の誤答(a)(c)は「もっともらしい言い換え」— 比熱は物質固有で混ぜても変わらない、蒸発はむしろ熱を奪う、と消去の根拠まで言えるように。


実戦1-2

考え方 Q = mcΔT(温度を変える)と Q = mL(姿を変える)、そして Q = Pt(時間に換算)— 本章の3本柱を家電の見積もりで総動員する。

実戦1-2解答を見る解答を隠す

解答
① Q₁ = 500×4.2×(100−20) = 168000 ≒ 1.7×10⁵ J(ア = 1、イ = 7)
② t = Q₁/P = 1.68×10⁵/(1.0×10³) = 168 ≒ 1.7×10² s(約 3 分)(ウ = 1、エ = 7)
③ Q₂ = mL = 500×2.3×10³ = 1.15×10⁶ ≒ 1.2×10⁶ J(オ = 1、カ = 2)
④ Q₂/Q₁ = 1.15×10⁶/1.68×10⁵ ≒ 6.8 → 約 7 倍:(b)(キ = (b))

ポイント
• 「沸くまで 3 分、干上がるまでさらに 20 分」— 蒸発熱の巨大さを時間で体感する設計。やかんの空だきがすぐには起きない(が確実に危険な)理由。
• ④は割り算の概算(1.15/0.168 ≒ 7)で択べば十分 — 選択肢の間隔が広いときは有効数字より速さ。


実戦1-3

考え方 B3 の3部作(とける/境界/残る)を数値で完走する、この章の総仕上げ。まず③の境界を出してから m と比べる、が場合分けの実戦手順 — ②(50 g:とける側)と④(150 g:残る側)が境界 102 g の両側に配置されている。

実戦1-3解答を見る解答を隠す

解答
① 失う側(水)= 得る側(氷の融解+とけた水の昇温):
200c(40−t) = mL+mct
② m = 50:840(40−t) = 50×330+210t
33600−840t = 16500+210t → 1050t = 17100 → t = 16.3 ≒ 16 ℃
③ 全体が 0 ℃(t = 0)のとき:200c×40 = mL
m = 200×4.2×40/330 = 33600/330 = 101.8 ≒ 1.0×10² g
④ m = 150 g > 102 g なので氷は残り、最終温度は 0 ℃
とける量は③と同じ計算で m' = 33600/330 ≒ 102 g
残る氷 = 150−102 = 48 g

ポイント
• ④で「保存の式に t を残したまま解こうとして詰まる」のが典型的な失敗 — 氷が残るなら t = 0 と先に確定させ、未知数を「とけた質量」に切り替える(B3-3)。
• 検算:②の 16 ℃ は 0 ℃ と 40 ℃ の間 ○/③の境界に近い m ほど最終温度は 0 ℃ に近づく(m = 50 で 16 ℃)○ — 答えの並びが物語として整合しているかを見る。


第2章 気体の状態方程式と分子運動論

気体は「見えない分子の群れ」— その圧力・体積・温度は、たった1本の式 PV = nRT で結ばれる。前半は状態量の会計学:閉じ込めた気体なら PV/T = 一定(ボイル・シャルル)、圧力はピストンのつり合い(第1巻・第3章)が決める。後半は正体の解明 — 圧力は分子の衝突の力積(第1巻・第6章!)、温度は分子の平均運動エネルギー。マクロな熱の世界とミクロな力学が、分子運動論で1つにつながる。


この章の公式・要点まとめ

気体の圧力
• P = F/S [Pa]。大気圧 ≒ 1.0×10⁵ Pa
• 閉じ込めた気体の圧力はピストンのつり合いで決める:
鉛直(気体が下):P = P₀+mg/S/鉛直(気体が上):P = P₀−mg/S/水平・軽いピストン:P = P₀

ボイル・シャルルの法則(閉じ込めた一定量の気体)
• ボイル(温度一定):P₁V₁ = P₂V₂(圧縮すれば圧力増)
• シャルル(圧力一定):V₁/T₁ = V₂/T₂(T は絶対温度!)
• ボイル・シャルル(両方変化):P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂
• 比の式なので、P・V は両辺で単位がそろっていれば L や cm³ のままでもよい(T だけは必ず K)

理想気体の状態方程式
PV = nRT(R = 8.3 J/(mol·K):気体定数)
• n [mol]:物質量。1 mol = 6.0×10²³ 個(アボガドロ定数 N_A)
単位は SI で:P [Pa]、V [m³]、T K
• 使い分け:状態変化の前後比較 → ボイル・シャルル/量(mol)や絶対値が絡む → 状態方程式

分子運動論(圧力と温度の正体)
• 圧力の正体 = 分子が壁に衝突するときの力積の集積 → PV = (1/3)Nm⟨v²⟩
• 状態方程式と比較して:分子の平均運動エネルギー (1/2)m⟨v²⟩ = (3/2)×(R/N_A)×T
温度の正体 = 分子の平均運動エネルギー(絶対温度に比例)
• 2乗平均速度:√⟨v²⟩ = √(3RT/M)(M:モル質量 [kg/mol]。同じ温度なら軽い分子ほど速い)

内部エネルギー(単原子分子の理想気体)
U = (3/2)nRT(全分子の運動エネルギーの合計)
• U は絶対温度だけで決まる → ΔU = (3/2)nRΔT(温度が変わらなければ U も不変)

解法チャート(気体の状態変化)
1. 「閉じ込めた気体」を特定し、状態1・状態2の(P、V、T)の表を作る
2. P はピストン・栓のつり合いから(第1巻・第3章の図示)
3. 法則の選択:T 一定 → ボイル/P 一定 → シャルル/両方変化 → ボイル・シャルル/mol・絶対値 → PV = nRT
4. T は必ず絶対温度(+273)。状態方程式では P、V も SI 単位へ
5. 検算:圧縮 → P 増、加熱 → V か P 増、の定性と一致するか/答えの単位


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
シャルルの法則「V/T = 一定」で使う温度 T はどれか。
(a) セ氏温度
(b) 絶対温度
(c) どちらを使ってもよい

Q2
温度を一定に保ったまま、閉じ込めた気体の体積を半分にすると、圧力は 2 倍になる。○か×か。

Q3
気体が容器の壁に及ぼす圧力の正体はどれか。
(a) 分子どうしが反発し合う力
(b) 多数の分子が壁に衝突するときに及ぼす力
(c) 分子の重さが壁にかかる力

Q4
絶対温度が 2 倍になると、気体分子の平均の速さも 2 倍になる。○か×か。

Q5
理想気体の内部エネルギーの大きさを決めるのはどれか。
(a) 圧力だけ
(b) 体積だけ
(c) 絶対温度だけ

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:(b) — シャルルの法則が「原点を通る比例」になるのは絶対温度の目盛りだけ。セ氏で 20 ℃ → 40 ℃ は「2 倍」ではない(293 K → 313 K)。熱の計算の最頻出事故。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:○ — ボイルの法則 PV = 一定:V が 1/2 なら P は 2 倍。分子の側から見れば「壁への衝突が 2 倍の頻度になる」から(B4)。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:(b) — 圧力は無数の分子の衝突の力積の平均(第1巻・第6章の「平均の力」そのもの)。静的な押し合いではなく、絶え間ない砲撃。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:× — 2 倍になるのは平均運動エネルギー((3/2)kT ∝ T)。速さは v² が 2 倍 → √2 倍。「エネルギーは T に比例、速さは √T に比例」の使い分け。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:(c) — 理想気体の U = (3/2)nRT は絶対温度だけの関数。「温度が同じなら、圧縮されていても膨張していても U は同じ」— 第3章(熱力学第一法則)の議論の土台になる最重要事実。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下

※特に断らない限り、大気圧を 1.0×10⁵ Pa、気体定数を R = 8.3 J/(mol·K)、g = 9.8 m/s² とし、ピストンはなめらかに動くものとする。


A1【ピストンのつり合いと気体の圧力】★★

A1-1
鉛直に立てたシリンダー(断面積 2.0×10⁻³ m²)の中に気体を閉じ込め、その上に質量 2.0 kg のピストンをのせて静止させた。気体の圧力を求めよ。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:ピストンに、大気が押す力 P₀S(下向き)、重力 mg(下向き)、気体が押す力 PS(上向き)。
つり合い:PS = P₀S+mg
P = P₀+mg/S = 1.0×10⁵+2.0×9.8/(2.0×10⁻³) = 1.0×10⁵+9.8×10³ ≒ 1.1×10⁵ Pa

ポイント 気体の圧力はピストンのつり合い(第1巻・第3章)が決める — 「大気圧+ピストンの重さの分担 mg/S」。この1手が気体問題の入口のすべて。

A1-2(類題)
水平に置いたシリンダーに気体を閉じ込め、軽いピストンで封じて静止させた。気体の圧力を求めよ。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
つり合い:PS = P₀S → P = P₀ = 1.0×10⁵ Pa

ポイント 水平(または軽いピストン)なら重力の項が消えて大気圧そのもの — 「圧力一定(定圧)」の装置の代表がこの形。シャルルの法則の舞台になる。

A1-3(類題)
A1-1 のシリンダーを上下逆さにして、気体が上・ピストンが下になるようにした(ピストンは落ちずに静止)。気体の圧力を求めよ。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
つり合い:PS+mg = P₀S(気体とピストンの重力が下、大気が下から支える)
P = P₀−mg/S = 1.0×10⁵−9.8×10³ ≒ 9.0×10⁴ Pa

ポイント 逆さにすると符号が反転:P = P₀−mg/S — 気体は大気圧より低くてもピストンを支えられる(大気が下から押し上げてくれるから)。図を描けば符号は間違えない。


A2【ボイルの法則】

A2-1
温度を一定に保ちながら、圧力 1.0×10⁵ Pa、体積 3.0×10⁻³ m³ の気体を、体積 1.0×10⁻³ m³ まで圧縮した。圧力はいくらになるか。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
P₁V₁ = P₂V₂:1.0×10⁵×3.0×10⁻³ = P₂×1.0×10⁻³
P₂ = 3.0×10⁵ Pa

ポイント ボイルの法則(温度一定で PV = 一定)。体積 1/3 → 圧力 3 倍 — P-V グラフでは双曲線(反比例)の上を動く。

A2-2(類題)
圧力 2.0×10⁵ Pa、体積 4.0 L の気体を、温度一定のまま圧力 5.0×10⁴ Pa まで下げた(膨張させた)。体積は何 L になるか。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
2.0×10⁵×4.0 = 5.0×10⁴×V₂
V₂ = 16 L

ポイント 比の式なので V は L のままでよい(両辺で単位がそろっていれば約分される)— SI 換算が必須なのは状態方程式(A5)のとき、という使い分け。

A2-3(類題)
水深 10 m の水底(圧力 2.0×10⁵ Pa)で体積 1.0 cm³ の気泡が生じ、水面(圧力 1.0×10⁵ Pa)まで上がってきた。水面直下での気泡の体積を求めよ。温度は一定とする。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
2.0×10⁵×1.0 = 1.0×10⁵×V₂ → V₂ = 2.0 cm³

ポイント 「水深 10 m でおよそ大気圧 1 つ分の水圧が加わる」— 気泡は浮かぶにつれてふくらむ。ダイビングで息を止めて浮上してはいけない理由(肺の空気が膨張する)の物理。


A3【シャルルの法則】

A3-1
圧力を一定に保ちながら、27 ℃ で体積 6.0×10⁻³ m³ の気体を 127 ℃ まで温めた。体積はいくらになるか。

A3-1解答を見る解答を隠す

解答
絶対温度に直す:300 K → 400 K。
V₁/T₁ = V₂/T₂:6.0×10⁻³/300 = V₂/400
V₂ = 8.0×10⁻³ m³

ポイント まず +273 — 27 ℃ と 127 ℃ を「約 5 倍」と読んだら大事故(実際は 400/300 = 4/3 倍)。シャルルの法則は絶対温度の比例(概念チェック Q1)。

A3-2(類題)
300 K で体積 3.0 L の気体を、圧力一定のまま体積 4.0 L まで膨張させた。温度は何 K、何 ℃ になったか。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
3.0/300 = 4.0/T₂ → T₂ = 400 K = 127 ℃

ポイント 逆算(体積 → 温度)。答えは K で出るので、℃ には最後に −273 — 換算は入口と出口の2回だけにまとめると事故が減る。

A3-3(類題)
0 ℃ で体積 5.0 L の気体を、圧力一定のまま温めて体積を 2 倍の 10 L にしたい。何 ℃ まで温めればよいか。

A3-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
体積 2 倍 ⇔ 絶対温度 2 倍:273 K → 546 K
546−273 = 273 ℃

ポイント 「0 ℃ の気体を 273 ℃ にすると体積 2 倍」— 数字の偶然ではなく、絶対温度(273 K → 546 K)の比例の反映。℃ の目盛りで見ると比例に見えない、という Q1 の教訓の実例。


A4【ボイル・シャルルの法則】★★

A4-1
圧力 1.0×10⁵ Pa、体積 3.0 L、温度 300 K の気体を、体積 2.0 L、温度 400 K の状態にした。圧力はいくらになるか。

A4-1解答を見る解答を隠す

解答
P₁V₁/T₁ = P₂V₂/T₂:1.0×10⁵×3.0/300 = P₂×2.0/400
1.0×10³ = P₂/200 → P₂ = 2.0×10⁵ Pa

ポイント P・V・T がすべて変わるときの万能式。左辺の値(PV/T = 1.0×10³)を先に確定してから右辺を解く、2段構えが計算事故を防ぐ。

A4-2(類題)
圧力 2.0×10⁵ Pa、体積 6.0×10⁻³ m³、温度 300 K の気体を、圧力 1.5×10⁵ Pa、温度 450 K の状態にした。体積を求めよ。

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
2.0×10⁵×6.0×10⁻³/300 = 1.5×10⁵×V₂/450
4.0 = V₂×1.5×10⁵/450 → V₂ = 4.0×450/(1.5×10⁵) = 1.2×10⁻² m³

ポイント 「温めながら減圧」— 両方が膨張の向きにはたらき、体積は 2 倍に。定性の予想(増えるはず)→ 計算 → 一致確認の3拍子を型にする。

A4-3(類題)
密閉されたタイヤ(体積一定)の空気の圧力は、27 ℃ のとき 2.4×10⁵ Pa であった。走行後、タイヤの温度が 87 ℃ に上がった。圧力はいくらになるか。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
体積一定なので P/T = 一定:
2.4×10⁵/300 = P₂/360 → P₂ = 2.9×10⁵ Pa

ポイント V 一定の特別形 P/T = 一定(ゲイ・リュサックの関係)— 「走行後にタイヤの空気圧が高く表示される」実際の現象。密閉スプレー缶を熱してはいけない理由も同じ式。


A5【状態方程式 PV = nRT】★★

A5-1
2.0 mol の理想気体を体積 8.3×10⁻³ m³ の容器に入れ、温度を 300 K に保った。圧力を求めよ。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
PV = nRT より
P = nRT/V = 2.0×8.3×300/(8.3×10⁻³) = 6.0×10⁵ Pa

ポイント 絶対値(何 Pa か)を問われたら状態方程式の出番 — 比の式(ボイル・シャルル)では出せない。単位は P [Pa]・V [m³]・T [K] の SI セットで。

A5-2(類題)
圧力 1.0×10⁵ Pa、温度 300 K で、体積 2.49×10⁻² m³ を占める理想気体の物質量を求めよ。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
n = PV/(RT) = 1.0×10⁵×2.49×10⁻²/(8.3×300) = 2490/2490 = 1.0 mol

ポイント 逆算で mol を数える — 「常温・大気圧で 1 mol は約 25 L(2.5×10⁻² m³)」という量感も持ち帰る(0 ℃ なら 22.4 L)。目に見えない分子 6.0×10²³ 個の"かさ"。

A5-3(類題)
1.0 mol の理想気体が、圧力 8.3×10⁴ Pa、体積 3.0×10⁻² m³ の状態にある。温度を求めよ。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
T = PV/(nR) = 8.3×10⁴×3.0×10⁻²/(1.0×8.3) = 2490/8.3 = 3.0×10² K(300 K)

ポイント 状態方程式は P・V・n・T のどれについても解ける4元の関係式 — 3つ測れば残り1つが決まる。「気体の温度計」(P と V から T を読む)の原理でもある。


A6【分子の平均運動エネルギーと速さ】★★★

A6-1
温度 300 K の気体分子 1 個の平均運動エネルギーを求めよ。アボガドロ定数を 6.0×10²³ /mol とする。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
(1/2)m⟨v²⟩ = (3/2)×(R/N_A)×T = (3/2)×8.3/(6.0×10²³)×300
= (3/2)×1.38×10⁻²³×300 ≒ 6.2×10⁻²¹ J

ポイント R/N_A(= ボルツマン定数 k ≒ 1.4×10⁻²³ J/K)は「分子 1 個あたりの気体定数」。6.2×10⁻²¹ J — 極小だが、6.0×10²³ 個集まれば A7 の内部エネルギー(数千 J)になる。

A6-2(類題)
温度を 300 K から 600 K(2 倍)にすると、①分子の平均運動エネルギー、②分子の 2 乗平均速度 √⟨v²⟩ は、それぞれ何倍になるか。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① 平均運動エネルギー ∝ T:2 倍(≒ 1.2×10⁻²⁰ J)
② ⟨v²⟩ が 2 倍なので √⟨v²⟩ は √2 倍(約 1.4 倍)

ポイント 概念チェック Q4 の計算版 — 「エネルギーは T、速さは √T」。温度を上げても速さは思ったほど増えない(4 倍の温度でやっと 2 倍)。

A6-3(類題)
温度 300 K のヘリウム(モル質量 4.0×10⁻³ kg/mol)の 2 乗平均速度 √⟨v²⟩ を求めよ。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
√⟨v²⟩ = √(3RT/M) = √(3×8.3×300/(4.0×10⁻³)) = √(1.87×10⁶)
1.4×10³ m/s

ポイント 常温のヘリウム原子は秒速約 1.4 km(音速の 4 倍)で飛び回っている — 気体の分子は想像を絶する俊足。M の単位が kg/mol(4.0 g/mol → 4.0×10⁻³)である点が最頻出の事故。


A7【内部エネルギー】★★

A7-1
温度 300 K の単原子分子理想気体 2.0 mol の内部エネルギーを求めよ。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
U = (3/2)nRT = (3/2)×2.0×8.3×300 = 7.5×10³ J

ポイント 内部エネルギー = 全分子の運動エネルギーの合計(単原子理想気体)。A6-1 の 6.2×10⁻²¹ J × 分子数(2 mol = 1.2×10²⁴ 個)≒ 7.5×10³ J — ミクロとマクロの帳尻が合う。

A7-2(類題)
1.0 mol の単原子分子理想気体の温度を 300 K から 400 K に上げた。内部エネルギーの増加を求めよ。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
ΔU = (3/2)nRΔT = (3/2)×1.0×8.3×100 = 1245 ≒ 1.2×10³ J

ポイント ΔU = (3/2)nRΔT — 変化を問われたら差の式で一発。「どう温めたか(定積か定圧か)」によらず、温度差だけで決まる(Q5)ことが第3章の議論の要になる。

A7-3(類題)
1.0 mol の単原子分子理想気体の内部エネルギーが 3735 J であった。温度を求めよ。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
T = U/{(3/2)nR} = 3735/(1.5×8.3) = 3735/12.45 = 3.0×10² K(300 K)

ポイント 内部エネルギーは「温度の別名」(単原子理想気体では 1 対 1 対応)— U を測れば T が分かる、逆もまた然り。


A8【グラフの読み取り】★★

A8-1
温度一定の変化を表す P-V グラフ(等温線)上に、状態 A(1.0×10⁵ Pa、4.0×10⁻³ m³)がある。同じ等温線上で圧力が 2.0×10⁵ Pa の点の体積を求めよ。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
等温線上では PV = 一定:1.0×10⁵×4.0×10⁻³ = 2.0×10⁵×V
V = 2.0×10⁻³ m³

ポイント 等温線は双曲線(PV = 一定の反比例)。原点から遠い等温線ほど高温(PV = nRT が大きい)— グラフの"標高"が温度、という読み方を身につける。

A8-2(類題)
圧力一定の変化を表す V-T グラフは、原点を通る直線になる。300 K で 3.0 L の気体を、同じ圧力のまま 500 K にしたときの体積を、この比例関係から求めよ。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
V ∝ T:V = 3.0×500/300 = 5.0 L

ポイント シャルルの法則のグラフ的表現 — 原点(0 K)を通る直線。実在の気体は途中で液化するが、直線を左へ延長した切片が「絶対零度 −273 ℃」の発見につながった。

A8-3(類題)
体積一定の気体の P-T グラフも原点を通る直線になる。300 K で 1.5×10⁵ Pa の気体を、体積一定のまま 200 K に冷やしたときの圧力を求めよ。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
P ∝ T:P = 1.5×10⁵×200/300 = 1.0×10⁵ Pa

ポイント 定積では P/T = 一定(A4-3 と同じ関係のグラフ版)。「グラフのどの軸が固定されているか」を最初に確認 — P-V、V-T、P-T の3枚を行き来できれば状態変化は絵で考えられる(第3章の準備)。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。文字式のまま立式し、極端な場合(m → 0、V₂ → 0 など)で検算するのが作法。B4(分子運動論)は本章の主役、B6(2容器)は入試の最頻出


B1【ピストンのつり合い(文字)】★★

B1-1 断面積 S の鉛直なシリンダー内の気体を、質量 m のなめらかなピストンで封じた。大気圧を P₀ として、①気体が下(ピストンが上)のとき、②気体が上(ピストンが下)のときの、気体の圧力をそれぞれ求めよ。

B1-2 水平なシリンダー内の気体を、断面積 S のなめらかなピストンで封じ、ピストンの外側をばね定数 k のばねで壁につないだ。ばねが自然長から x だけ縮んでいるとき、気体の圧力を求めよ(大気圧 P₀)。

B1-3 B1-1 ①の装置(気体が下)を、上向きに加速度 a で上昇するエレベーターの中に置いた。気体の圧力を求めよ。

B2【ボイル・シャルルの応用(文字)】★★★

B2-1 B1-1 ①の装置(圧力 P₀+mg/S、体積 V₁、温度一定)を、静かに倒して水平にした。気体の体積 V₂ を求めよ。

B2-2 水面の圧力(大気圧)を P₀、水の密度を ρ とする。深さ h の水底(絶対温度 T₁)で体積 V の気泡が生じ、水面(絶対温度 T₂)まで上がった。水面直下での気泡の体積 V' を求めよ。

B2-3 体積一定の容器に、圧力 P₀、絶対温度 T₀ の気体が閉じ込められている。容器の栓は、内部の圧力が kP₀(k > 1)を超えると飛ぶ。栓が飛ばないための温度の条件を求めよ。

B3【状態方程式の応用(文字)】★★★

B3-1 モル質量 M [kg/mol] の理想気体について、密度 ρ を P、T、M、R で表せ。

B3-2 「同温・同圧・同体積の気体には、種類によらず同数の分子が含まれる」(アボガドロの法則)を、状態方程式から説明せよ。

B3-3 体積 V の気球の中の空気(モル質量 M)を、外気と同じ圧力 P のまま、外気の温度 T₀ より高い温度 T に温めた。気球内の空気が外気より軽くなる分(浮力から気球内の空気の重さを引いた余り)を、P、V、M、R、T₀、T、g で表せ。

B4【分子運動論(圧力の式の導出)】★★★

B4-1 1辺 L の立方体容器の中を、質量 m の分子が x 方向の速度成分 v_x で往復し、壁 A(x 軸に垂直)と弾性衝突を繰り返す。①1回の衝突で分子が壁に与える力積、②時間 t の間に壁 A に衝突する回数、③この分子が壁 A に及ぼす平均の力、を求めよ。

B4-2 容器内に N 個の分子があり、速度の 2 乗平均について ⟨v²⟩ = ⟨v_x²⟩+⟨v_y²⟩+⟨v_z²⟩、等方性より ⟨v_x²⟩ = ⟨v²⟩/3 が成り立つとする。壁 A が受ける圧力 P を求め、PV = (1/3)Nm⟨v²⟩ を導け(V = L³)。

B4-3 B4-2 の結果を状態方程式 PV = nRT(N = nN_A)と比較して、分子 1 個の平均運動エネルギー (1/2)m⟨v²⟩ を T で表せ。また、この結果から「絶対温度とは何か」を一言で述べよ。

B5【内部エネルギーと分子の速さ(文字)】★★★

B5-1 単原子分子理想気体の内部エネルギーが U = (3/2)nRT となることを、B4-3 の結果(分子 1 個の平均運動エネルギー)から導け。

B5-2 2 乗平均速度 √⟨v²⟩ = √(3RT/M) を導け(M = mN_A:モル質量)。

B5-3 同じ温度の水素(モル質量 2.0×10⁻³ kg/mol)と酸素(モル質量 32×10⁻³ kg/mol)の 2 乗平均速度の比を求めよ。

B6【2つの容器の接続(文字)】★★★

B6-1 体積 V₁ の容器(圧力 P₁)と体積 V₂ の容器(圧力 P₂)を、コック付きの細い管でつないだ(温度は共通で一定)。コックを開いた後の圧力 P を求めよ。

B6-2 B6-1 で、一方の容器(V₂)がはじめ真空だった場合の、コックを開いた後の圧力を求めよ。

B6-3 体積 V₁ の容器は温度 T₁ に、体積 V₂ の容器は温度 T₂ に保たれている。はじめの圧力がそれぞれ P₁、P₂ のとき、コックを開いた後の共通の圧力 P を求めよ(各容器の温度はそのまま保たれる)。


B問題 解答・解説


B1【ピストンのつり合い(文字)】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
① 図示:ピストンに PS(上)、P₀S+mg(下)。つり合いより P = P₀+mg/S
② PS+mg = P₀S より P = P₀−mg/S

ポイント A1 の一般式。「気体が重りを背負うか、大気に支えてもらうか」で符号が決まる — 公式暗記でなく、毎回ピストンの力の図から 1 行で出すのが安全。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
ピストンのつり合い(ばねは縮んでいるのでピストンを気体側へ押す):
PS = P₀S+kx → P = P₀+kx/S

ポイント ばね(第1巻・第3章)がピストンの力持ちに加わっただけ — 「圧力の決定はつねに力のつり合い」という原理は登場人物が増えても不変。x が変われば P も変わる(気体の変化と連動する:第3章の応用へ)。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
ピストンの運動方程式(上向き正、加速度 a):
PS−P₀S−mg = ma → P = P₀+m(g+a)/S

ポイント つり合いが運動方程式(第1巻・第4章)に格上げされた形 — 見かけの重力 g+a に置き換えたと読んでもよい(第1巻・第7章の慣性力)。a = 0 で B1-1 ①に戻る ○。


B2【ボイル・シャルルの応用(文字)】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
倒すと圧力は P₀ に変わる(B1-1 ② でなく水平:重力の項が消える)。温度一定なのでボイル:
(P₀+mg/S)V₁ = P₀V₂
V₂ = (P₀+mg/S)V₁/P₀ = (1+mg/(P₀S))V₁

ポイント 「装置の向きを変える」= 圧力の条件が変わる合図 — まず新しい P をつり合いで確定してから、ボイルで V へ。倒すと圧力が下がるので膨張(V₂ > V₁)という定性検算も。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
水底の圧力:P₁ = P₀+ρgh。ボイル・シャルル:
(P₀+ρgh)V/T₁ = P₀V'/T₂
V' = (P₀+ρgh)T₂V/(P₀T₁)

ポイント A2-3(温度一定)の完全版 — 圧力は減り(膨張)、水面が温かければ温度でも膨張。h → 0 で V' → (T₂/T₁)V(シャルル)、T₂ = T₁ で A2-3 の形 ○ — 2つの極端検算で式を信頼する。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
体積一定なので P/T = 一定:P = P₀T/T₀
栓が飛ばない条件:P₀T/T₀ ≦ kP₀
T ≦ kT₀

ポイント 「限界 = 等号」(第1巻から続く条件翻訳の型)。P₀ が消えて温度の比だけが残る — 定積では圧力と絶対温度が完全に連動しているから。


B3【状態方程式の応用(文字)】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
n mol の質量は nM。PV = nRT より n = PV/(RT)。
ρ = nM/V = PM/(RT)

ポイント 密度は「圧力に比例、絶対温度に反比例」 — 温かい空気は軽い(気球・上昇気流)、山の上の空気は薄い、が1本の式で言える。B3-3 の部品。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
PV = nRT より n = PV/(RT)。P・V・T が同じなら n も同じ。
分子数 N = nN_A も同じ — 気体の種類(分子の質量)は式のどこにも現れないので、同温・同圧・同体積なら同数 ∎

ポイント 理想気体の状態方程式に「分子の個性」が入っていないこと自体が、アボガドロの法則の言い換え — 「気体の振る舞いは個数で決まり、種類によらない」。

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
外気の密度 ρ₀ = PM/(RT₀)、気球内の密度 ρ = PM/(RT)。
浮力 − 中の空気の重さ = (ρ₀−ρ)Vg
= (PVMg/R)×(1/T₀−1/T)

ポイント 熱気球の揚力の式 — T > T₀ で正(浮く側)、T = T₀ で 0 ○。この余り分でゴンドラと人(重さ W)を持ち上げる:(ρ₀−ρ)Vg ≧ W が飛行条件、まで言えれば実戦仕様。


B4【分子運動論(圧力の式の導出)】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
① 弾性衝突で v_x → −v_x。分子の運動量変化は −2mv_x なので、壁が受ける力積は 2mv_x(第1巻・第6章)
② 壁 A に戻るまでの往復距離は 2L → 衝突の時間間隔 2L/v_x。時間 t での回数 = v_x t/(2L)
③ 力積の合計 = 2mv_x×v_x t/(2L) = mv_x²t/L。平均の力 = これ ÷ t = mv_x²/L

ポイント 「1 回の力積 × 頻度 = 平均の力」— 衝突のドラマを時間で均す、第1巻・第6章の平均の力の考え方がそのまま気体の心臓部になる。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
N 個の平均の力の合計:F = Nm⟨v_x²⟩/L = Nm⟨v²⟩/(3L)
P = F/L² = Nm⟨v²⟩/(3L³)
PV = (1/3)Nm⟨v²⟩ ∎(V = L³)

ポイント 等方性 ⟨v_x²⟩ = ⟨v²⟩/3 は「x・y・z に特別な向きはない」の数式化。マクロな量 PV が、ミクロな量(分子の質量と速さ)だけで書けた — この 1 行が熱と力学の架け橋。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
PV = (2/3)N×(1/2)m⟨v²⟩ と PV = nRT = (N/N_A)RT を比べて
(2/3)N×(1/2)m⟨v²⟩ = (N/N_A)RT
(1/2)m⟨v²⟩ = (3/2)(R/N_A)T
絶対温度とは:分子の平均運動エネルギーの指標(に比例する量)。

ポイント 温度計の針の正体が「分子の運動の激しさ」だと判明する瞬間 — 熱学の概念(T)が力学の量(運動エネルギー)に翻訳された。絶対零度 = 熱運動が最小、の意味もここで腑に落ちる。


B5【内部エネルギーと分子の速さ(文字)】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
単原子分子理想気体の内部エネルギーは、全分子の運動エネルギーの合計:
U = N×(1/2)m⟨v²⟩ = N×(3/2)(R/N_A)T = (N/N_A)×(3/2)RT
U = (3/2)nRT

ポイント 「1 個あたり (3/2)kT × N 個」の掛け算だけ — U が絶対温度だけの関数である理由(Q5)がこの導出に書いてある。(3/2) の由来は空間の3次元(x・y・z に (1/2)kT ずつ)。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
(1/2)m⟨v²⟩ = (3/2)(R/N_A)T より ⟨v²⟩ = 3RT/(mN_A) = 3RT/M
√⟨v²⟩ = √(3RT/M)

ポイント 分子 1 個の質量 m を、測れる量 M(モル質量)に mN_A = M で翻訳するのが最後の一手。「√T に比例、√M に反比例」— 温度と身軽さの綱引き。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
√⟨v²⟩ ∝ 1/√M(同温)なので
水素:酸素 = √(32/2.0):1 = √16:1 = 4:1(水素が 4 倍速い)

ポイント 軽い分子ほど俊足 — 水素・ヘリウムが地球の重力を振り切って宇宙へ逃げやすい(大気にほとんど残っていない)理由。第1巻・第8章の脱出速度と分子の速さがつながる小話。


B6【2つの容器の接続(文字)】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
温度 T は共通・一定。全物質量が保存する:
P₁V₁/(RT)+P₂V₂/(RT) = P(V₁+V₂)/(RT)
P = (P₁V₁+P₂V₂)/(V₁+V₂)

ポイント コックを開いても分子の総数は不変 — 保存するのは圧力でも体積でもなく mol(PV の和)。結果は「体積を重みにした圧力の加重平均」:第1章 B2-1(混合温度)と同じ顔の式。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
P₂ = 0 を代入して
P = P₁V₁/(V₁+V₂)

ポイント 真空への膨張(自由膨張)— 気体は仕事をせず(押す相手がいない)、温度も変わらない(第3章で再登場する重要な設定)。V₂ → 0 で P → P₁ ○。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
温度が違っても mol の保存は使える:
P₁V₁/(RT₁)+P₂V₂/(RT₂) = PV₁/(RT₁)+PV₂/(RT₂)
P = (P₁V₁/T₁+P₂V₂/T₂)/(V₁/T₁+V₂/T₂)

ポイント 温度がバラバラでも「PV/T の和が保存」— V/T を重みにした加重平均に一般化される。T₁ = T₂ で B6-1 に戻る ○。2容器問題の最終形態で、難関大の定番。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦2-1【共テ形式:注射器の実験】★★

なめらかに動くピストン付きの注射器に、温度 27 ℃、圧力 1.0×10⁵ Pa(大気圧と同じ)、体積 30 cm³ の空気を閉じ込めた。
① 温度を一定に保ってピストンを押し、体積を 20 cm³ にした。圧力は [ア].[イ]×10⁵ Pa になる。
② ①で手を離すとピストンは押し戻される。理由として最も適当なものは [ウ] である。
(a) 圧縮で分子の数が増えたから
(b) 内部の圧力が大気圧より大きく、その差がピストンを押すから
(c) 分子が壁に付着して壁を引っ張るから
③ 体積を 30 cm³ に戻し、ピストンを固定して 27 ℃ から 87 ℃ まで温めた。圧力は [エ].[オ]×10⁵ Pa になる。
④ 次にピストンを自由にし(圧力 1.0×10⁵ Pa のまま)、27 ℃ から 87 ℃ まで温めた。体積は [カキ] cm³ になる。
⑤ 分子 1 個の平均運動エネルギーが増えるのは、①と③④のどちらの操作か:[ク]
(a) ①(温度一定の圧縮)
(b) ③④(加熱)
(c) どちらでも増える

実戦2-2【記述形式:鉛直シリンダー内の気体】★★★

断面積 S の鉛直なシリンダーに、単原子分子の理想気体 n mol を入れ、質量 m のなめらかに動くピストンで封じた(気体が下)。大気圧を P₀、重力加速度を g、気体定数を R とし、はじめの温度は T₀ である。
① 気体の圧力 P₁ を求めよ。
② 気体の体積 V₁ を求めよ。
③ 気体をゆっくり温めて温度を 2T₀ にした。ピストンが上昇した距離 d を求めよ。
④ この間の、気体の内部エネルギーの増加 ΔU を求めよ。
⑤ 次にシリンダーを静かに倒して水平にし、温度を T₀ に戻した。気体の体積 V₂ を求め、V₁ と比べよ。

実戦2-3【記述形式:湖底からの気泡】★★★

大気圧を P₀ = 1.0×10⁵ Pa、水の密度を ρ = 1.0×10³ kg/m³、g = 9.8 m/s² とする。深さ h の湖底で体積 V₁ の気泡が生じ、水面まで上がった。気泡内の気体の温度は水温と等しく、水温はどこも同じ(一定)とする。
① 湖底での気泡内の圧力 P₁ を、P₀、ρ、g、h で表せ。
② 水面直下での気泡の体積 V₂ を、P₀、ρ、g、h、V₁ で表せ。
③ h = 10 m のとき、P₁ の値を求めよ。
④ ③のとき、V₂ は V₁ の約何倍か。
⑤ 上昇の途中、気泡が受ける浮力の大きさはどう変化していくか。理由とともに述べよ。


実戦問題 解答・解説


実戦2-1

考え方 1本の注射器で「ボイル(①)→ 定積(③)→ シャルル(④)→ 分子運動論(⑤)」を一気通貫 — どの量が固定されているかを毎回宣言してから式を選ぶ、章の総復習。

実戦2-1解答を見る解答を隠す

解答
① ボイル:1.0×10⁵×30 = P×20 → P = 1.5×10⁵ Pa(ア = 1、イ = 5)
② 内圧 1.5×10⁵ Pa > 大気圧 1.0×10⁵ Pa — 差がピストンを外へ押す:(b)(ウ = (b))
③ 定積(P/T = 一定):1.0×10⁵/300 = P/360 → P = 1.2×10⁵ Pa(エ = 1、オ = 2)
④ 定圧(V/T = 一定):30/300 = V/360 → V = 36 cm³(カキ = 36)
⑤ 平均運動エネルギーは (3/2)kT — 温度が上がる操作だけで増える:(b)(ク = (b))

ポイント
• ⑤が本問の核心:①の圧縮では圧力が上がっても温度が同じなら分子は速くならない(衝突の頻度が増えただけ)。「圧力の上昇」の原因が"速さ"か"頻度"かを見分ける、分子運動論の目。
• ②の誤答(a)は分子数保存(閉じ込めた気体)に反する — 消去の根拠まで言語化。


実戦2-2

考え方 B1(つり合い)→ 状態方程式 → シャルル → 内部エネルギー → ボイル、と本章の全部品を1つの装置で連結。「圧力はつり合い、体積は気体の法則」という役割分担を answer の順序が体現している。

実戦2-2解答を見る解答を隠す

解答
① ピストンのつり合い:P₁ = P₀+mg/S
② 状態方程式:P₁V₁ = nRT₀ → V₁ = nRT₀/(P₀+mg/S) = nRT₀S/(P₀S+mg)
③ ピストンが自由 → 圧力一定。シャルルより温度 2 倍で体積 2 倍:ΔV = V₁
d = ΔV/S = nRT₀/(P₀S+mg)
ΔU = (3/2)nR(2T₀−T₀) = (3/2)nRT₀
⑤ 水平では P₂ = P₀。温度 T₀ でボイル(または状態方程式):
P₀V₂ = nRT₀ → V₂ = nRT₀/P₀ > V₁(圧力が下がった分だけ膨張)

ポイント
• ③の「ゆっくり温める」は「つねに圧力一定(準静的)」の合図 — ピストンが自由な限り、加熱中も P₁ のまま。
• ④は「どう温めたか」を一切使わない(ΔU は温度差だけ:Q5)— 第3章で「加えた熱」と「した仕事」を分けるとき、この事実が効いてくる。


実戦2-3

考え方 圧力の設定(水圧:第1巻・第3章)→ ボイル(本章)→ 浮力の定性(第1巻・第3章)— 2巻をまたぐ総合。②の一般式を先に作り、③④で数値を流し込む記述の王道。

実戦2-3解答を見る解答を隠す

解答
① 水深 h の圧力 = 大気圧+水柱の圧力:P₁ = P₀+ρgh
② 温度一定なのでボイル:P₁V₁ = P₀V₂
V₂ = (P₀+ρgh)V₁/P₀
③ P₁ = 1.0×10⁵+1.0×10³×9.8×10 = 1.0×10⁵+0.98×10⁵ ≒ 2.0×10⁵ Pa
④ V₂/V₁ = P₁/P₀ ≒ 約 2.0 倍
⑤ 浮力 = ρV g(第1巻・第3章)で、上昇するほど V が増える(②)から、浮力はしだいに大きくなる

ポイント
• 「水深 10 m ≒ 大気圧 1 つ分」(0.98×10⁵ ≒ 1.0×10⁵)は覚えて損のない量感 — 10 m 潜るごとに圧力が約 1 気圧ずつ積み増す。
• ⑤で「膨張 → 浮力増 → さらに加速」という正のフィードバックまで読めると、気泡が水面近くで急に速く・大きくなる観察と物理がつながる。


第3章 熱力学第一法則

第1章の「熱」、第1巻の「仕事」— 2つのエネルギーの出入りを1本にまとめるのが熱力学第一法則:もらった熱 Q は、内部エネルギーの増加 ΔU と、外へした仕事 W に分配される(Q = ΔU+W)。主役の装置はピストンつきシリンダー、主戦場は P-V グラフ(面積 = 仕事)。定積・定圧・等温・断熱 — 4つの変化はどれも「3点セット(Q・W・ΔU)の表を埋めるパズル」で、埋め方の型はただ1つ:0 になる欄から埋めて、残りを第一法則で。


この章の公式・要点まとめ

気体がする仕事
• 定圧(圧力 P 一定)で体積が ΔV 変わるとき:W = PΔV(膨張で正、圧縮で負)
• 一般には:した仕事 = P-V グラフの下の面積(膨張:+面積/圧縮:−面積)
• 定圧では状態方程式より PΔV = nRΔT とも書ける

熱力学第一法則(この章の憲法)
Q = ΔU+W(Q:気体が吸収した熱、W:気体がした仕事、ΔU:内部エネルギーの変化)
• 同じ内容の別表記:ΔU = Q+W(された)(された仕事 = −した仕事)。本書は「した仕事 W」で通す
• 意味:「もらった熱は、体温(U)を上げる分と、外への労働(W)に分かれる」— エネルギー保存則の熱版
• 単原子理想気体では ΔU = (3/2)nRΔT(どんな変化でも:U は温度だけの関数 — 第2章 Q5)

4つの変化の3点セット(単原子理想気体)

変化 特徴 W(した仕事) ΔU Q
定積 V 一定 0 (3/2)nRΔT (3/2)nRΔT
定圧 P 一定 nRΔT (3/2)nRΔT (5/2)nRΔT
等温 T 一定 Q に等しい 0 W に等しい
断熱 Q = 0 −ΔU された仕事の分 0

モル比熱(1 mol を 1 K 上げる熱量、Q = nCΔT)
• 定積モル比熱 C_V = (3/2)R/定圧モル比熱 C_P = (5/2)R(単原子)
マイヤーの関係:C_P = C_V+R(差の R は、定圧のとき余計に払う「膨張の仕事代」— 単原子に限らず成立)

熱機関と熱効率
• 熱効率 e = W/Q_in = (Q_in−Q_out)/Q_in(W:正味の仕事、Q_in:吸収した熱、Q_out:捨てた熱)
• 必ず e < 1(熱力学第二法則:受け取った熱をすべて仕事に変え続ける機関は作れない/熱は自然には低温 → 高温へ流れない)

解法チャート(熱力学)
1. P-V 図を描き、各過程の種類(定積・定圧・等温・断熱)を判定する
2. 過程ごとに Q・W・ΔU の3点セットの表を作る
3. 先に埋まる欄から:定積 → W = 0/等温 → ΔU = 0/断熱 → Q = 0/ΔU はいつでも (3/2)nRΔT
4. 残った欄を第一法則 Q = ΔU+W で埋める
5. 検算:サイクル1周で ΔU = 0、正味の仕事 = 囲む面積(時計回りで正)/符号を「吸熱・放熱」「膨張・圧縮」の言葉に翻訳


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
気体が膨張するとき、気体が外部にする仕事はどれか。
(a) 正
(b) 0
(c) 負

Q2
定積変化では、気体に加えた熱はすべて内部エネルギーの増加になる。○か×か。

Q3
等温変化で気体が吸収した熱はどうなるか。
(a) すべて内部エネルギーの増加になる
(b) すべて外部への仕事になる
(c) 半分ずつに分かれる

Q4
断熱圧縮では、熱を加えていないのに気体の温度が上がる。○か×か。

Q5
同じ量の気体を同じ ΔT だけ温めるとき、必要な熱量は定圧と定積のどちらが多いか。
(a) 定圧
(b) 定積
(c) 同じ

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:(a) — 膨張 = ピストンを押しのけて動かす = 正の仕事。W = PΔV の ΔV > 0。圧縮なら気体は仕事を「される」側(W < 0)。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:○ — V 一定なら W = PΔV = 0。第一法則 Q = ΔU+0 — 加えた熱が全額温度上昇に回る、最も効率のよい温め方。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:(b) — 温度一定 ⇔ ΔU = 0(第2章 Q5)。第一法則より Q = W — 吸った熱をそっくり仕事に変換しながら膨張する。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:○ — Q = 0 なので ΔU = された仕事(> 0)。仕事が直接 U(温度)になる — 自転車の空気入れが熱くなる、ディーゼルエンジンの着火の原理。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:(a) — 定圧では膨張の仕事 nRΔT を余計に払うぶん、Q が多く要る(C_P = C_V+R:マイヤーの関係)。定積は仕事代ゼロの「直行便」。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下

※特に断らない限り、気体は単原子分子の理想気体とし、R = 8.3 J/(mol·K) とする。


A1【気体がする仕事(定圧)】

A1-1
圧力 1.0×10⁵ Pa を一定に保ったまま、気体の体積が 2.0×10⁻³ m³ だけ増加した。気体が外部にした仕事を求めよ。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
W = PΔV = 1.0×10⁵×2.0×10⁻³ = 2.0×10² J

ポイント W = PΔV の単位:Pa×m³ = (N/m²)×m³ = N·m = J ○ — 圧力と体積の積が仕事(エネルギー)になる、を単位が保証している。

A1-2(類題)
圧力 2.0×10⁵ Pa のまま、気体の体積が 5.0×10⁻³ m³ から 3.0×10⁻³ m³ に減少した(圧縮)。気体がした仕事を求めよ。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
W = PΔV = 2.0×10⁵×(3.0−5.0)×10⁻³ = −4.0×10² J
(気体は外部から 4.0×10² J の仕事をされた)

ポイント 圧縮では ΔV < 0 → した仕事は負 — 「負の仕事をした = 仕事をされた」の言い換えをためらわないこと。符号は膨張・圧縮の翻訳装置。

A1-3(類題)
1.0 mol の気体を、圧力一定のまま 300 K から 400 K まで温めた。気体がした仕事を求めよ。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
定圧では W = PΔV = nRΔT:
W = 1.0×8.3×(400−300) = 8.3×10² J

ポイント 体積が与えられなくても、定圧なら W = nRΔT で温度差から直行できる(状態方程式 PV = nRT の差をとった式)。定圧変化の隠し武器。


A2【P-V グラフと仕事】★★

A2-1
P-V グラフ上で、気体が圧力 2.0×10⁵ Pa 一定のまま、体積 1.0×10⁻³ m³ から 4.0×10⁻³ m³ まで膨張した。この間に気体がした仕事を、グラフの面積として求めよ。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:P-V 図で高さ 2.0×10⁵、幅 3.0×10⁻³ の長方形。
W = 面積 = 2.0×10⁵×3.0×10⁻³ = 6.0×10² J

ポイントした仕事 = P-V グラフの下の面積」— v-t の面積 = 変位(第1巻)、F-x の面積 = 仕事(第1巻・第5章)に続く"面積シリーズ"の熱力学版。

A2-2(類題)
気体の状態が、P-V グラフ上の直線に沿って (1.0×10⁵ Pa、2.0×10⁻³ m³) から (3.0×10⁵ Pa、6.0×10⁻³ m³) まで変化した。気体がした仕事を求めよ。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
グラフの下の台形の面積:
W = (1.0+3.0)×10⁵/2×(6.0−2.0)×10⁻³ = 2.0×10⁵×4.0×10⁻³ = 8.0×10² J

ポイント 圧力が変わる過程でも面積なら一発(平均の圧力 × ΔV と読んでもよい)。「W = PΔV は定圧専用、面積は万能」の使い分け。

A2-3(類題)
気体が P-V グラフ上で、(1.0×10⁵ Pa、2.0×10⁻³ m³) → (2.0×10⁵ Pa、2.0×10⁻³ m³) → (2.0×10⁵ Pa、5.0×10⁻³ m³) → (1.0×10⁵ Pa、5.0×10⁻³ m³) → 最初の状態、と長方形を時計回りに1周した。1周で気体がした正味の仕事を求めよ。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
正味の仕事 = 囲まれた長方形の面積:
W = (2.0−1.0)×10⁵×(5.0−2.0)×10⁻³ = 3.0×10² J

ポイント 1周(サイクル)の正味の仕事 = 囲む面積(往きの膨張の面積から帰りの圧縮の面積を引いた残り)。時計回りなら正(熱機関)、反時計回りなら負(冷蔵庫・ヒートポンプ)。


A3【第一法則の収支】★★

A3-1
気体に 500 J の熱を加えたところ、気体は膨張して外部に 200 J の仕事をした。内部エネルギーの変化を求めよ。

A3-1解答を見る解答を隠す

解答
Q = ΔU+W より ΔU = Q−W = 500−200 = +300 J(増加)

ポイント 第一法則は家計簿:収入 Q(500 円)から支出 W(200 円)を引いた残りが貯金 ΔU(300 円)。3つの量の符号を確認してから引き算。

A3-2(類題)
気体が 300 J の熱を吸収したが、内部エネルギーはちょうど 300 J 増加していた。この間に気体がした仕事を求め、これがどんな変化かを答えよ。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
W = Q−ΔU = 300−300 = 0
仕事がゼロ ⇔ 体積が変わっていない:定積変化

ポイント 収支から変化の種類を逆推理する問題 — 「W = 0 → 定積」「ΔU = 0 → 等温」「Q = 0 → 断熱」の対応表は双方向に使う。

A3-3(類題)
気体を圧縮して 400 J の仕事をしたところ、気体は 100 J の熱を放出した。気体の内部エネルギーの変化を求めよ。

A3-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
気体がした仕事 W = −400 J、吸収した熱 Q = −100 J。
ΔU = Q−W = −100−(−400) = +300 J(増加:温度は上がった)

ポイント 「された・放出」はすべて負号で Q・W に背負わせてから公式へ — 言葉を符号に翻訳すれば式は1本のまま。圧縮の仕事の一部が熱として逃げ、残りが温度上昇になった収支。


A4【定積変化】★★

A4-1
1.0 mol の気体を、体積一定のまま 300 K から 400 K まで温めた。気体がした仕事、内部エネルギーの変化、加えた熱を求めよ。

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解答
定積なので W = 0
ΔU = (3/2)nRΔT = (3/2)×1.0×8.3×100 = 1245 ≒ 1.2×10³ J
Q = ΔU+W = 1.2×10³ J

ポイント 3点セットの表の埋め方の見本:W = 0 を最初に書く → ΔU は温度差から → Q は第一法則で。この3手順がすべての変化に通用する。

A4-2(類題)
2.0 mol の気体を体積一定のまま温めるのに、830 J の熱を要した。温度は何 K 上がったか。

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = (3/2)nRΔT:830 = (3/2)×2.0×8.3×ΔT = 24.9ΔT
ΔT ≒ 33 K

ポイント 定積の熱は全額が温度に化けるので、逆算も1本道。(3/2)nR = 24.9 J/K がこの気体の「熱容量」(第1章の C と同じ役割)。

A4-3(類題)
2.0 mol の気体を、体積一定のまま 50 K だけ冷やした。気体が放出した熱量を求めよ。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = (3/2)×2.0×8.3×(−50) = −1245 J
放出した熱は 1.2×10³ J

ポイント 冷却は ΔT < 0 → Q < 0(放熱)。答えるときは「放出した熱は+の値で、放出と明記」— 符号と日本語の橋渡しまでが解答。


A5【定圧変化】★★★

A5-1
1.0 mol の気体を、圧力一定のまま 300 K から 400 K まで温めた。気体がした仕事、内部エネルギーの変化、加えた熱を求めよ。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
W = nRΔT = 1.0×8.3×100 = 8.3×10² J
ΔU = (3/2)nRΔT = 1.2×10³ J(1245 J)
Q = ΔU+W = 1245+830 = 2075 ≒ 2.1×10³ J

ポイント 定圧の3点セット:W:ΔU:Q = 2:3:5(nRΔT を単位に 1:1.5:2.5)。この比を覚えれば、1つ分かれば全部出る。

A5-2(類題)
定圧変化で気体に加えた熱のうち、外部への仕事になる割合と、内部エネルギーの増加になる割合を求めよ。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
W/Q = nRΔT/{(5/2)nRΔT} = 2/5 = 40 %
ΔU/Q = 3/5 = 60 %

ポイント 定圧では必ず 4 割が仕事、6 割が温度(単原子)— nRΔT が約分されて比だけが残る。「加えた熱の一部しか温度にならない」のが定積との違い(Q5)。

A5-3(類題)
2.0 mol の気体を圧力一定のまま温めるのに、4150 J の熱を要した。温度は何 K 上がったか。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = (5/2)nRΔT:4150 = (5/2)×2.0×8.3×ΔT = 41.5ΔT
ΔT = 1.0×10² K(100 K)

ポイント 係数 (5/2) を使うか (3/2) を使うか — 「定圧か定積か」の判定が答えを 5:3 で変える。問題文の「圧力一定」「ピストンは自由」の一言を見逃さない。


A6【等温変化・断熱変化】★★★

A6-1
気体が温度一定のまま膨張し、外部に 600 J の仕事をした。内部エネルギーの変化と、吸収した熱量を求めよ。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
等温なので ΔU = 0
Q = ΔU+W = 0+600 = 600 J(吸収)

ポイント 等温膨張は「吸った熱をそのまま仕事に垂れ流す」変化 — U が温度だけの関数(第2章 Q5)だからこそ成り立つ収支。膨張し続けるには熱の補給が必須。

A6-2(類題)
断熱容器の中で 1.0 mol の気体を圧縮し、500 J の仕事をした。内部エネルギーの変化と、温度変化を求めよ。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
断熱なので Q = 0。気体がした仕事 W = −500 J。
ΔU = Q−W = 0−(−500) = +500 J
ΔU = (3/2)nRΔT より ΔT = 500/12.45 ≒ +40 K(上昇)

ポイント された仕事がまるごと温度になる — 空気入れのポンプが熱くなる、ディーゼルエンジンが圧縮だけで着火する、の定量版。Q4 の計算バージョン。

A6-3(類題)
断熱された 1.0 mol の気体が膨張して、外部に 249 J の仕事をした。温度変化を求めよ。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = 0 より ΔU = −W = −249 J
ΔT = −249/{(3/2)×8.3} = −20 K(20 K 低下)

ポイント 断熱膨張は自分の U を切り崩して仕事をするので冷える — 上昇気流が冷えて雲になる、スプレー缶が冷たくなる、の正体。「膨張 = 冷える」は断熱のときの合言葉。


A7【モル比熱】★★

A7-1
単原子分子理想気体の、定積モル比熱 C_V と定圧モル比熱 C_P の値を求めよ。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
C_V = (3/2)R = (3/2)×8.3 ≒ 12 J/(mol·K)
C_P = (5/2)R = (5/2)×8.3 ≒ 21 J/(mol·K)

ポイント モル比熱は「1 mol 版の比熱」(第1章の c の親戚:Q = nCΔT)。差はちょうど R = 8.3 — マイヤーの関係の数値確認。

A7-2(類題)
2.0 mol の単原子分子理想気体を、圧力一定のまま 30 K 温めるのに必要な熱量を、モル比熱を使って求めよ。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q = nC_PΔT = 2.0×(5/2)×8.3×30 = 1245 ≒ 1.2×10³ J

ポイント Q = nCΔT は第1章の Q = mcΔT と同じ文法(質量 → mol)。「定圧なら C_P、定積なら C_V」— 比熱が変化の仕方で違うのが気体の特徴。

A7-3(類題)
ある理想気体(単原子とは限らない)の定積モル比熱は 21 J/(mol·K) であった。この気体の定圧モル比熱を求めよ。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
マイヤーの関係 C_P = C_V+R:
C_P = 21+8.3 = 29.3 ≒ 29 J/(mol·K)

ポイント C_P−C_V = R は気体の種類によらない(B3-3 で証明)— 差の R は「定圧のとき余計に払う膨張の仕事代」で、分子の構造と無関係だから。ちなみに C_V = 21 ≒ (5/2)R は2原子分子(空気など)の値。


A8【熱機関と熱効率】★★

A8-1
ある熱機関は、1 サイクルで 1000 J の熱を吸収し、300 J の正味の仕事をする。熱効率と、1 サイクルで捨てる熱量を求めよ。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
e = W/Q_in = 300/1000 = 0.30(30 %)
Q_out = Q_in−W = 1000−300 = 7.0×10² J

ポイント 熱機関の掟:吸収 = 仕事+排熱(1周で ΔU = 0 だから)。効率 30 % は自動車エンジン級 — 7 割は捨てている、という現実の数字感覚。

A8-2(類題)
熱効率 0.25 の熱機関に 500 J の仕事をさせたい。吸収させる熱量と、捨てられる熱量を求めよ。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Q_in = W/e = 500/0.25 = 2.0×10³ J
Q_out = 2000−500 = 1.5×10³ J

ポイント 効率の式の逆算 — 「仕事の 4 倍の熱を食わせる必要がある」。e が小さいほど燃料は仕事の何倍も要る、という設計の視点。

A8-3(類題)
あるエンジンは毎秒 8.0×10⁴ J の熱を受け取り、出力(仕事率)2.4×10⁴ W を出す。熱効率と、毎秒捨てている熱量を求めよ。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
e = 2.4×10⁴/8.0×10⁴ = 0.30(30 %)
毎秒の排熱 = 8.0×10⁴−2.4×10⁴ = 5.6×10⁴ J

ポイント 効率は「毎秒あたり」で割っても同じ(時間が約分)— 仕事率の言葉(第1巻・第5章)と接続。毎秒 5.6×10⁴ J の排熱を処理するのがラジエーターの仕事。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。過程ごとに Q・W・ΔU の表を作ってから式を書くのが作法。B5(複合過程)とB6(サイクルの効率)が入試の最頻出


B1【仕事と第一法則(文字)】★★

B1-1 断面積 S のピストンつきシリンダー内の気体(圧力 P)が、ピストンを距離 d だけゆっくり押し出した。ピストンを押す力と、気体がした仕事を求め、W = PΔV となることを確かめよ。

B1-2 n mol の理想気体が、圧力 P 一定のまま温度が ΔT 変化した。状態方程式を用いて、気体がした仕事が W = nRΔT と表せることを示せ。

B1-3 熱力学第一法則を「Q = ΔU+W(W:した仕事)」と「ΔU = Q+W₀(W₀:された仕事)」の2つの形で書き、両者が同じ内容であることを説明せよ。

B2【4つの変化の3点セット(文字)】★★★

B2-1 単原子分子理想気体 n mol の定積変化(温度変化 ΔT)について、W、ΔU、Q を求めよ。

B2-2 同じ気体の定圧変化(温度変化 ΔT)について、W、ΔU、Q を求めよ。また Q が W と ΔU にどんな比で分配されるかを述べよ。

B2-3 等温変化と断熱変化のそれぞれについて、第一法則がどんな形になるかを書け。また「断熱膨張で温度が下がる」理由を第一法則の言葉で説明せよ。

B3【モル比熱とマイヤーの関係】★★★

B3-1 定積モル比熱の定義(定積で Q = nC_VΔT)から、単原子分子理想気体の C_V を求めよ。

B3-2 定圧モル比熱の定義から、単原子分子理想気体の C_P を求め、C_P = C_V+R(マイヤーの関係)が成り立つことを確かめよ。

B3-3 単原子とは限らない理想気体でも、C_P−C_V = R が成り立つことを、第一法則と「定圧で W = nRΔT」を用いて示せ(ΔU = nC_VΔT がどんな変化でも成り立つことを使ってよい)。

B4【P-V グラフの読み(文字)】★★★

B4-1 P-V グラフ上の直線変化 (P₁、V₁) → (P₂、V₂)(V₂ > V₁)について、気体がした仕事を求めよ。

B4-2 単原子分子理想気体では、内部エネルギーが U = (3/2)PV と表せることを示せ。また、このことから P-V 図上の等温線がもつ意味を述べよ。

B4-3 P-V 図上の同じ点を通る等温線と断熱線では、断熱線の方が傾きが急になる。その理由を「膨張したときの圧力の下がり方」に注目して説明せよ。

B5【複合過程(文字)】★★★

B5-1 単原子分子理想気体を、状態 A(P₁、V₁)から定積で B(P₂、V₁)へ(P₂ > P₁)、続いて定圧で C(P₂、V₂)へ(V₂ > V₁)と変化させた。各過程および全体の W、ΔU、Q を、P₁、P₂、V₁、V₂ で表せ。

B5-2 B5-1 と同じ A から C へ、こんどは「先に定圧で(P₁、V₂)へ、次に定積で C へ」という経路で変化させた。全体の ΔU と W を求め、B5-1 と比較して分かることを述べよ。

B5-3 「ΔU は経路によらず、W と Q は経路による」— この事実を、状態量・経路(過程)によって決まる量、という言葉で整理して説明せよ。

B6【熱機関とサイクルの効率(文字)】★★★

B6-1 1 サイクルで熱 Q_in を吸収し、Q_out を放出する熱機関の正味の仕事 W を求め、熱効率が e = 1−Q_out/Q_in と書けることを示せ。

B6-2 「熱効率 e = 1 の熱機関(吸収した熱をすべて仕事に変え続ける機関)は実現できない」— これは熱力学第二法則の1つの表現である。第二法則のもう1つの表現(熱の移動の向きについて)を述べ、身近な例を挙げよ。

B6-3 単原子分子理想気体を、A(P₁、V₁) → B(P₂、V₁):定積加熱 → C(P₂、V₂):定圧加熱 → D(P₁、V₂):定積冷却 → A:定圧冷却、の長方形サイクル(P₂ > P₁、V₂ > V₁)で運転する。
① 1 サイクルの正味の仕事を求めよ。
② 吸熱する過程を2つ挙げ、吸収する熱の合計 Q_in を求めよ。
③ 熱効率 e を P₁、P₂、V₁、V₂ で表せ。


B問題 解答・解説


B1【仕事と第一法則(文字)】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
気体がピストンを押す力:F = PS
した仕事:W = Fd = PSd
体積変化は ΔV = Sd だから W = PΔV

ポイント W = PΔV は「力 × 距離」(第1巻・第5章)の化粧直しにすぎない — 圧力 × 面積で力に戻し、距離を掛けただけ。新しい物理は入っていない。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
定圧 P のもとで、変化の前後の状態方程式:
変化前 PV₁ = nRT₁、変化後 PV₂ = nRT₂
辺々引いて P(V₂−V₁) = nR(T₂−T₁)
よって W = PΔV = nRΔT

ポイント 「状態方程式の差をとる」— 定圧という条件が P を共通因数にしてくれる。温度計だけで仕事が分かる、実用的な言い換え。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
した仕事とされた仕事は互いに逆符号:W₀ = −W。
Q = ΔU+W の W を −W₀ に置き換えると Q = ΔU−W₀、すなわち ΔU = Q+W₀ — 同じ式の移項にすぎない ∎
どちらも「気体のエネルギーの増加(ΔU)= 入ってきたエネルギーの合計(熱 Q+された仕事 W₀)」というエネルギー保存を述べている。

ポイント 2つの流儀は符号の約束の違いだけ — 試験では問題文の定義(「した」か「された」か)を最初に確認し、自分の使う形を1つ宣言してから解き始めるのが事故防止。


B2【4つの変化の3点セット(文字)】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
定積:ΔV = 0 より W = 0
ΔU = (3/2)nRΔT、第一法則より Q = ΔU = (3/2)nRΔT

ポイント 「仕事代ゼロ、全額貯金」— 表のいちばん簡単な行。ΔU の式はどの変化でも共通であることを、ここで再度心に刻む。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
W = nRΔT(B1-2)、ΔU = (3/2)nRΔT
Q = ΔU+W = (5/2)nRΔT
分配:ΔU:W = 3:2(6 割が温度、4 割が仕事)

ポイント A5 の数値群の一般形。「5 のうち 3 が中へ、2 が外へ」— (5/2)、(3/2)、1 という係数の並びを、比 3:2 の物語として記憶する。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
等温:ΔU = 0 → Q = W(吸収した熱がそのまま仕事になる)
断熱:Q = 0 → ΔU = −W(した仕事の分だけ U が減る)
断熱膨張では W > 0、よって ΔU < 0 — 外へ仕事をした代金を、熱の補給なしに自分の内部エネルギーから支払うため、温度が下がる。

ポイント 4変化のうち2つは「片方がゼロ」という極端の変化 — ゼロの欄を先に書けば、第一法則が残りを自動で決める(解法チャートの手順3・4)。


B3【モル比熱とマイヤーの関係】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
定積では Q = ΔU = (3/2)nRΔT。
定義 Q = nC_VΔT と比較して C_V = (3/2)R

ポイント モル比熱は定義(Q = nCΔT)と3点セットの係数比較で出る — 暗記でなく毎回 30 秒で再構成できる形。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
定圧では Q = (5/2)nRΔT。定義 Q = nC_PΔT と比較して C_P = (5/2)R
差をとると C_P−C_V = (5/2)R−(3/2)R = R(マイヤーの関係)

ポイント 差の R の正体は「定圧のとき余計に払う膨張の仕事 nRΔT」— 数式の差に物理の物語(仕事代)が対応している。

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
どんな変化でも ΔU = nC_VΔT(U は温度だけの関数だから、定積で測った C_V がそのまま使える)。
定圧変化に第一法則を適用:
Q = ΔU+W = nC_VΔT+nRΔT
一方 Q = nC_PΔT だから nC_PΔT = n(C_V+R)ΔT
C_P−C_V = R ∎(単原子でなくても成立)

ポイント 証明のどこにも「単原子」を使っていない — (3/2) という値は分子の構造で変わるが、差の R は膨張の仕事の分で普遍。A7-3(2原子分子)が成り立つ理由の完全版。


B4【P-V グラフの読み(文字)】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
グラフの下の台形の面積:
W = (P₁+P₂)(V₂−V₁)/2

ポイント 「平均の圧力 × 体積変化」と読める形 — A2-2 の一般式。圧縮(V₂ < V₁)なら自動的に負になる、符号込みの面積。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
状態方程式 PV = nRT を U = (3/2)nRT に代入して
U = (3/2)PV
P-V 図上では、PV = 一定の曲線(等温線)は「U が一定の線」でもある — 図上の位置(P、V)だけで U が読める。

ポイント U = (3/2)PV は複合過程(B5)・サイクル(B6)で ΔU を温度を経由せずに出せる強力な道具 — 「図の座標から直接エネルギー」。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
同じ点から同じだけ膨張させると:
等温では、温度を保つよう熱を吸収しながら膨張し、圧力は PV = 一定の分だけ下がる。
断熱では、熱の補給がなく温度も下がる(B2-3)ため、圧力は「体積増」と「温度減」の両方の理由で下がる。
よって断熱線の方が圧力の下がり方が大きく、傾きが急になる ∎

ポイント グラフの形を式でなく物理の因果で説明する練習 — 「断熱は等温より急」は P-V 図の読解で頻出の判定基準(どちらの線か選ばせる共テ設問)。


B5【複合過程(文字)】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
U = (3/2)PV(B4-2)を使う。
A → B(定積):W = 0
ΔU = (3/2)(P₂−P₁)V₁ = Q(吸熱)
B → C(定圧):W = P₂(V₂−V₁)
ΔU = (3/2)P₂(V₂−V₁)、Q = ΔU+W = (5/2)P₂(V₂−V₁)(吸熱)
全体:W = P₂(V₂−V₁)
ΔU = (3/2)(P₂V₂−P₁V₁)
Q = (3/2)(P₂V₂−P₁V₁)+P₂(V₂−V₁)

ポイント 表を過程ごとに埋めてから縦に合計する — 全体の ΔU が「最初と最後の PV の差」だけで書けるのは、U が状態量だから(B5-3 の伏線)。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
経路2:A → (P₁、V₂)(定圧):W = P₁(V₂−V₁)/続く定積:W = 0
全体:W = P₁(V₂−V₁)(経路1の P₂(V₂−V₁) より小さい)
ΔU = (3/2)(P₂V₂−P₁V₁)(経路1と同じ)
分かること:始点と終点が同じなら ΔU は同じ、W(したがって Q も)は経路で異なる

ポイント P-V 図で見れば一目:2つの経路の「下の面積」が違う(高い圧力で膨張する経路1の方が大仕事)。ΔU は座標(状態)だけで、W は道のりで決まる。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
U は P・V・T という「今の状態」だけで決まる状態量 — どんな道を通って来たかの記憶をもたない。
一方、W は「どの圧力で膨張したか」という過程(経路)の履歴で決まる経路の量であり、Q = ΔU+W も経路による。
まとめ:「変化の前後」だけで決まるのが状態量(U、P、V、T)、「変化のしかた」で決まるのが Q と W

ポイント 力学の対応物:位置エネルギー(状態量)と摩擦の仕事(経路量)— 第1巻・第5章の保存力・非保存力の区別と同じ思想が、熱力学の骨格にもなっている。


B6【熱機関とサイクルの効率(文字)】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
1 サイクルで ΔU = 0(元の状態に戻る)。第一法則を1周分で:
Q_in−Q_out = ΔU+W = W
W = Q_in−Q_out、e = W/Q_in = 1−Q_out/Q_in

ポイント 「1周で ΔU = 0」がサイクルの合言葉 — 吸った熱と捨てた熱の差額だけが仕事になる。e = 1 には Q_out = 0 が必要(B6-2 へ)。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
もう1つの表現:「熱は、他に何の変化も残さずに、低温の物体から高温の物体へ自然に移ることはない」。
例:氷水に入れたジュースが勝手に熱くなることはない/冷蔵庫は電気で仕事をして初めて、庫内(低温)から室内(高温)へ熱をくみ上げられる。

ポイント 第一法則(エネルギーの量の保存)が禁じないことでも、第二法則(変化の向き)が禁じる — 「エネルギーは保存するのに、なぜ燃料は減るのか」への答えがここにある。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
① 正味の仕事 = 囲む長方形の面積:W = (P₂−P₁)(V₂−V₁)
② 吸熱は温度が上がる過程:A → B(定積加熱)と B → C(定圧加熱)
Q_AB = (3/2)(P₂−P₁)V₁、Q_BC = (5/2)P₂(V₂−V₁)
Q_in = (3/2)(P₂−P₁)V₁+(5/2)P₂(V₂−V₁)
e = (P₂−P₁)(V₂−V₁)/{(3/2)(P₂−P₁)V₁+(5/2)P₂(V₂−V₁)}

ポイント 手順の型:①面積 → ②吸熱過程の選別(温度が上がる過程:U = (3/2)PV で判定)→ ③割り算。e の分母が分子よりはるかに大きい(効率は数十 % 止まり)ことも式の形から見える — 実戦3-2 で数値化する。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦3-1【共テ形式:4つの変化の使い分け】★★

1.0 mol の単原子分子理想気体がある。R = 8.3 J/(mol·K) とする。
① 体積一定のまま 300 K から 400 K に温めた。加えた熱は [ア].[イ]×10³ J である。
② 圧力一定のまま 300 K から 400 K に温めた。気体がした仕事は [ウエオ] J、加えた熱は [カ].[キ]×10³ J である。
③ 温度一定のまま膨張させ、気体は 500 J の仕事をした。このときの内部エネルギーの変化として正しいものは [ク] である。
(a) 500 J 増加した
(b) 変化しない
(c) 500 J 減少した
④ 断熱したまま膨張させた。温度はどうなるか:[ケ]
(a) 上がる
(b) 変わらない
(c) 下がる
⑤ ②の定圧変化で、加えた熱のうち仕事になったのは [コサ] % である。

実戦3-2【記述形式:長方形サイクルの完全解】★★★

単原子分子の理想気体を、P-V 図上の次の長方形サイクルで変化させる。
A(1.0×10⁵ Pa、2.0×10⁻³ m³)→ B(2.0×10⁵ Pa、2.0×10⁻³ m³):定積
B → C(2.0×10⁵ Pa、4.0×10⁻³ m³):定圧
C → D(1.0×10⁵ Pa、4.0×10⁻³ m³):定積
D → A:定圧
① 各状態の絶対温度の比 T_A:T_B:T_C:T_D を求めよ。
② A → B、B → C、C → D、D → A の各過程について、気体がした仕事 W、内部エネルギーの変化 ΔU、気体が吸収した熱 Q を求めよ(放出は負で表せ)。
③ 1 サイクルで気体がした正味の仕事を求め、それが長方形の面積に等しいことを確かめよ。
④ このサイクルの熱効率を求めよ。

実戦3-3【記述形式:ばねつきピストンの気体】★★★

水平に置いた断面積 S のシリンダー内に、単原子分子の理想気体が、なめらかに動くピストンで封じられている。ピストンの外側は真空で、ばね定数 k のばねがピストンと壁を つないでいる。はじめ、ばねは自然長から x₀ だけ縮んだ状態でつり合い、気体の体積は V₁、温度は T₁ であった。この気体をゆっくり加熱したところ、ばねの縮みが 2x₀ になった。
① はじめの気体の圧力 P₁ を求めよ。
② 加熱後の気体の圧力 P₂ と体積 V₂ を求めよ。
③ この間に気体がした仕事 W を、P-V グラフ(直線変化)の面積から求めよ。また、その仕事がばねに蓄えられた弾性エネルギーの増加に等しいことを確かめよ。
④ 内部エネルギーの変化 ΔU を、U = (3/2)PV を用いて求めよ。
⑤ 加えた熱 Q を求めよ。


実戦問題 解答・解説


実戦3-1

考え方 定積・定圧・等温・断熱を1問ずつ味見する「4変化の見本市」— それぞれ最初に 0 になる量(W、なし、ΔU、Q)を宣言してから式へ。⑤は A5-2 の比 2:5。

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解答
① 定積:Q = (3/2)×1.0×8.3×100 = 1245 ≒ 1.2×10³ J(ア = 1、イ = 2)
② W = nRΔT = 830 J(ウエオ = 830)
Q = (5/2)×8.3×100 = 2075 ≒ 2.1×10³ J(カ = 2、キ = 1)
③ 等温 ⇔ ΔU = 0:(b)(ク = (b))
④ 断熱膨張 ⇔ ΔU = −W < 0:(c)(ケ = (c))
⑤ W/Q = 2/5 = 40 %(コサ = 40)

ポイント
• ①と②:同じ ΔT = 100 K でも Q は 1.2×10³ J と 2.1×10³ J — 差の 830 J がちょうど②の仕事(マイヤーの関係の実演)。
• ④の断熱膨張の冷却は、共テで「雲のでき方」「ペットボトルの実験」の文脈で出る定番 — 現象と結びつけて。


実戦3-2

考え方 解法チャートの完全実行:①温度比(PV に比例)→ ②16 マスの表(4 過程 × 3 量)→ ③縦計 → ④効率。U = (3/2)PV を使えば mol 数も温度の値も不要。

実戦3-2解答を見る解答を隠す

解答
① T ∝ PV より、PV の値(J)は A:200、B:400、C:800、D:400。
T_A:T_B:T_C:T_D = 1:2:4:2
② U = (3/2)PV より U_A = 300 J、U_B = 600 J、U_C = 1200 J、U_D = 600 J。
A → B(定積):W = 0、ΔU = +300 J、Q = +300 J(吸熱)
B → C(定圧):W = 2.0×10⁵×2.0×10⁻³ = +400 J、ΔU = +600 J、Q = +1000 J(吸熱)
C → D(定積):W = 0、ΔU = −600 J、Q = −600 J(放熱)
D → A(定圧):W = 1.0×10⁵×(−2.0×10⁻³) = −200 J、ΔU = −300 J、Q = −500 J(放熱)
③ 正味の仕事 = 400−200 = 200 J
長方形の面積 = (2.0−1.0)×10⁵×(4.0−2.0)×10⁻³ = 200 J — 一致 ○
④ 吸熱の合計 Q_in = 300+1000 = 1300 J
e = 200/1300 ≒ 0.15(15 %)

ポイント
• 検算3連:ΔU の1周合計 = 300+600−600−300 = 0 ○/Q の1周合計 = 300+1000−600−500 = 200 = W ○/どの過程も「Q の符号 = 温度変化の向き」○ — 表が正しければ帳簿は三重に閉じる。
• 効率の分母は吸熱だけ(1300 J)— 放熱の 1100 J を引いてはいけない(それは W = 200 J を出すときに既に使った)。


実戦3-3

考え方 圧力がばねで決まる(第2章 B1-2)ため、加熱中も圧力が変わり続ける変化 — 定圧でも定積でもない一般の直線変化を、面積(第一法則)とばねのエネルギー(第1巻・第5章)の2つの帳簿でさばく総合問題。

実戦3-3解答を見る解答を隠す

解答
① ピストンのつり合い(外は真空):P₁S = kx₀ → P₁ = kx₀/S
② 縮み 2x₀ のつり合い:P₂ = 2kx₀/S(圧力は 2 倍)
ピストンは x₀ だけ動くので V₂ = V₁+Sx₀
③ P-V 図上で直線変化(圧力は kx/S の形で体積に比例して増える)。台形の面積:
W = (P₁+P₂)/2×(V₂−V₁) = (3kx₀/(2S))×Sx₀ = (3/2)kx₀²
ばねの弾性エネルギーの増加:(1/2)k(2x₀)²−(1/2)kx₀² = (3/2)kx₀² — 一致 ○(外が真空なので、した仕事の行き先はばねだけ)
④ ΔU = (3/2)(P₂V₂−P₁V₁) = (3/2){(2kx₀/S)(V₁+Sx₀)−(kx₀/S)V₁}
= (3/2)(kx₀/S)(V₁+2Sx₀) = (3/2)kx₀(V₁/S+2x₀)
⑤ Q = ΔU+W = (3/2)kx₀(V₁/S+2x₀)+(3/2)kx₀²
= (3/2)kx₀(V₁/S+3x₀)

ポイント
• ③の「2ルートの一致」がこの問題の心臓 — 仕事の定義(面積)とエネルギーの行き先(ばね)が同じ値を指す。力学第5章と熱力学が1つの帳簿で結ばれた瞬間。
• 圧力が一定でないので W = PΔV は使えない(平均圧力なら可)— 「定圧かどうか」を疑う癖が、この種の応用問題への入場券。


第4章 波の性質と定常波

ここから波動編。波とは「振動のリレー」— 媒質は自分の場所で揺れるだけで、伝わっていくのは"揺れ方"だけ。土台は v = fλ(1周期に1波長進む)と、2枚のグラフの読み分け(y-x = 波形の写真/y-t = 1点の定点観測)。章の後半では、重ね合わせが生む最初の奇跡 — 進まない波・定常波 — に出会う。反射(自由端・固定端)の作図と、腹・節の λ/4 の目盛りが、第5章(弦・気柱)以降のすべての基礎になる。


この章の公式・要点まとめ

波の基本量
• 波:振動が媒質を次々と伝わる現象。媒質そのものは進まない(その場で振動)
• 振幅 A m/波長 λ m/周期 T s/振動数 f [Hz] = 1/T
v = fλ = λ/T(1周期の間に、波はちょうど1波長進む)— この章の憲法

2枚のグラフ(最初に横軸を見る!)
y-x グラフ(波形):ある時刻の空間のスナップ写真 → λ と A が読める
y-t グラフ(振動):ある1点の変位の記録 → T と A が読める
• λ と T を橋渡しするのが v = fλ — 片方のグラフだけでは出ない量がある

波の進行と媒質の動き
• 少し後の波形 = 今の波形を進行方向に少しずらしたもの
• ある点の次の動き = 「進行方向の後ろ側(波が来る側)の波形」が教えてくれる(山が迫っていれば上へ)
• 山・谷の点は速さ 0(折り返し)、変位 0 の点が最速(各点は単振動:第1巻・第8章)

横波と縦波
• 横波:振動が進行方向と垂直(弦を伝わる波、光)
• 縦波:振動が進行方向と平行(音、ばねを伝わる疎密波)
縦波の横波表示:x 正の向きの変位を y 正として描く。密 = グラフが右下がりに 0 を切る点、疎 = 右上がりに 0 を切る点

重ね合わせと独立性
• 重ね合わせの原理:合成波の変位 = 各波の変位の(y = y₁+y₂)
• 波の独立性:すれ違ったあと、各波は元の形のまま進み続ける

反射
自由端反射:変位がそのまま折り返す(端は自由に動ける → 端は)
固定端反射:変位が上下反転して折り返す(端は動けない → 端は)
• 作図:波を端の先まで延長 → 端で折り返す(固定端はさらに上下反転 = 端について点対称)

定常波(定在波)
• 振幅・波長の等しい逆向きの2つの波の重ね合わせ → 進まずにその場で振動する波
:振幅 2A で最大振動/:まったく振動しない
隣り合う節と節(腹と腹)の間隔 = λ/2、節と腹の間隔 = λ/4
• 固定端 = 節、自由端 = 腹

解法チャート(波の基本)
1. グラフの横軸を確認:x なら波形(λ)、t なら振動(T)
2. v = fλ の3点セット(v・f・λ)— 2つ分かれば残りが出る
3. 媒質の動きは「波形を進行方向へ少しずらして」次の高さを読む
4. 反射波は「延長 → 折り返し(固定端は反転)」の作図
5. 定常波は λ/4 の目盛りで腹・節を配置(固定端 = 節、自由端 = 腹)


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
波が右へ伝わっていくとき、媒質(ロープや水)も波と一緒に右へ移動していく。○か×か。

Q2
y-x グラフ(ある時刻の波形)から直接読み取れる量はどれか。
(a) 周期
(b) 波長
(c) 振動数

Q3
空気中を伝わる音は、媒質の振動の向きが進行方向と平行な縦波(疎密波)である。○か×か。

Q4
固定端で反射した波はどうなるか。
(a) 変位がそのままの向きで折り返す
(b) 変位が上下反転して折り返す
(c) 反射せず吸収される

Q5
定常波の、隣り合う節と節の間隔はどれか。
(a) λ
(b) λ/2
(c) λ/4

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:× — 媒質はその場で振動するだけ。海の波でウキが上下するだけで流されないのと同じ — 運ばれるのは「振動の形(とエネルギー)」であって物質ではない。波の定義そのもの。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:(b) — 横軸が位置 x のグラフは「空間の写真」:読めるのは波長と振幅。周期・振動数は時間の情報なので、v が分からなければ出ない(v = fλ で橋渡し)。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:○ — 音は空気の疎密が伝わる縦波。だから真空では伝わらない(媒質がない)。図で扱うときは「横波表示」に翻訳する(A5)。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:(b) — 動けない端は、入射波を打ち消す反射波を返す(端の変位が常に 0 になるように)→ 上下反転。自由端はそのまま返す。この対が反射のすべて。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:(b) — 節も腹も λ/2 間隔で並ぶ(節と腹の間が λ/4)。「定常波の1目盛りは λ/4」と覚えると第5章で威力を発揮する。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下


A1【波の基本量と v = fλ】

A1-1
波長 2.0 m の波が、振動数 5.0 Hz で伝わっている。波の速さを求めよ。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
v = fλ = 5.0×2.0 = 10 m/s

ポイント v = fλ:「1 秒間に f 個の波(1 個の長さ λ)を送り出す」— 長さ λ の車両を毎秒 f 両つなげた列車の速さ、とイメージすると忘れない。

A1-2(類題)
空気中を速さ 340 m/s で伝わる音の振動数が 170 Hz のとき、波長を求めよ。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
λ = v/f = 340/170 = 2.0 m

ポイント 音の速さ 340 m/s(常温)は覚えておく基準値。170 Hz(低い男声ほど)の波長は 2 m — 人の背より長い「見えない波」が部屋を満たしている。

A1-3(類題)
速さ 6.0 m/s、波長 1.5 m の波の、振動数と周期を求めよ。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
f = v/λ = 6.0/1.5 = 4.0 Hz
T = 1/f = 0.25 s

ポイント v・f(T)・λ は3点セット:2つ分かれば残りは自動。f と T は逆数の関係(f = 1/T)なので、実質は2つの独立な量。


A2【y-x グラフ(波形)の読み取り】

A2-1
ある時刻の波形(y-x グラフ)は、x = 0 で y = 0、x = 1.0 m で山(y = 0.20 m)、x = 2.0 m で 0、x = 3.0 m で谷、x = 4.0 m で 0 となる正弦波であった。
① 振幅と波長を求めよ。
② この波の速さが 2.0 m/s のとき、周期と振動数を求めよ。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
A = 0.20 m、λ = 4.0 m(x = 0 から 4.0 m で波1つ分)
② T = λ/v = 4.0/2.0 = 2.0 s、f = 1/T = 0.50 Hz

ポイント 波形グラフの読みは「山→谷→山で1波長」。②のように、波形(空間)から時間の量(T、f)へ渡るときは必ず v が仲介する。

A2-2(類題)
波形グラフで、隣り合う山と山の間隔が 0.60 m であった。この波の振動数が 5.0 Hz のとき、波の速さを求めよ。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
山と山の間隔 = 波長:λ = 0.60 m
v = fλ = 5.0×0.60 = 3.0 m/s

ポイント 「山と山」「谷と谷」「密と密」の間隔はどれも λ そのもの — 同じ状態が繰り返す最短距離が波長の定義。

A2-3(類題)
波形グラフで、ある山から隣の谷までの距離が 1.5 m であった。波長を求めよ。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
山から隣の谷は半波長:λ/2 = 1.5 m
λ = 3.0 m

ポイント 「山→谷は λ/2」— 山→山(λ)との取り違えが最頻出ミス。グラフ問題では「どの2点の間隔か」を図に印をつけてから式へ。


A3【y-t グラフ(振動)の読み取り】

A3-1
ある点の変位の時間変化(y-t グラフ)は、t = 0 で y = 0、t = 0.50 s で最大 0.10 m、t = 1.0 s で 0、t = 1.5 s で −0.10 m、t = 2.0 s で 0 となる正弦振動であった。振幅・周期・振動数を求めよ。

A3-1解答を見る解答を隠す

解答
A = 0.10 m、T = 2.0 s、f = 1/T = 0.50 Hz

ポイント 横軸が t なら「1点の日記」— 読めるのは T と A。この点は単振動している(第1巻・第8章)— 波とは「単振動のリレー」でもある。

A3-2(類題)
A3-1 の波の速さが 4.0 m/s であるとき、波長を求めよ。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
λ = vT = 4.0×2.0 = 8.0 m

ポイント y-t グラフには波長の情報がない — v を掛けて初めて空間の量になる(λ = vT:1周期に進む距離)。

A3-3(類題)
ある点の y-t グラフから周期 0.20 s が読み取れた。波の速さは 15 m/s である。
① このグラフから直接読み取れる量を2つ挙げよ。
② 波長を求めよ。

A3-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
周期(T = 0.20 s)と振幅
② λ = vT = 15×0.20 = 3.0 m

ポイント 「グラフから直接読めるか、計算が要るか」を仕分ける設問は共テの定番 — 横軸の種類 = 読める量の種類、という対応表を体に入れる(概念チェック Q2)。


A4【波の進行と媒質の動き】★★★

A4-1
x 軸の正の向き(右)へ進む波がある。ある瞬間、点 P の変位は 0 で、P のすぐ左には山、すぐ右には谷がある。この直後、P はどちらへ動くか。

A4-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:波形を右へ少しずらす — P の位置には、左隣にあった波形(山の側)がやって来る。
P は上へ動く。

ポイント次の瞬間の波形 = 今の波形を進行方向へずらしたもの」— 媒質の動きの判定はこの1手のみ。「波が来る側(進行方向の後ろ)の変位が、次の自分」。

A4-2(類題)
右へ進む波の、ちょうど山の位置にある点 Q の、この瞬間の速さはどうなっているか。
(a) 進行方向(右)へ最大の速さ
(b) 速さは 0
(c) 下向きに最大の速さ

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
(b) — 山は振動の折り返し点(単振動の端)なので、速さは 0。

ポイント 媒質は上下(縦波なら前後)に単振動 — 「端で速さ 0、中心(変位 0)で最速」(第1巻・第8章)がそのまま使える。「波の速さ v」と「媒質の速さ」は別物、という区別も本問の裏テーマ。

A4-3(類題)
x 軸の負の向き(左)へ進む波がある。ある瞬間、点 R の変位は 0 で、R のすぐ左には山、すぐ右には谷がある。この直後、R はどちらへ動くか。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
波は左へ進むので、R には右隣の波形(谷の側)がやって来る。
R は下へ動く。

ポイント A4-1 と同じ波形でも、進行の向きが逆なら動きも逆 — 「波形だけでは媒質の動きは決まらない。向きとセットで初めて決まる」。矢印(進行方向)の確認を最初の儀式に。


A5【縦波(疎密波)】★★★

A5-1
x 軸の正の向きに進む縦波を、横波表示した(x 正の向きの変位を y 正として描く)。ある瞬間の表示は、x = 0 で 0(右上がり)、x = 1.0 m で山、x = 2.0 m で 0(右下がり)、x = 3.0 m で谷、x = 4.0 m で 0 であった。0 ≦ x < 4.0 m の範囲で、最も密な点と最も疎な点の位置を求めよ。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:各点の変位を x 方向の矢印に戻す — 山(x = 1.0)は右へ、谷(x = 3.0)は左へずれている。両側から寄られる x = 2.0 が密、両側へ逃げられる x = 0 が疎。
密:x = 2.0 m(右下がりの 0)/疎:x = 0(右上がりの 0)

ポイント 判定の合言葉「右下がりの 0 が密、右上がりの 0 が疎」— ただし丸暗記でなく、矢印を2〜3本描いて「寄る・逃げる」を一度自分で確認しておくこと(実戦4-2 で再現する)。

A5-2(類題)
A5-1 の瞬間、媒質の速さが最大になっている点の位置をすべて答えよ。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
速さ最大は変位 0 の点(単振動の中心):
x = 0、2.0 m(および 4.0 m)

ポイント 「密・疎の点(変位 0)こそ最速で動いている」— 変位が最大の山・谷は止まっている(A4-2)。縦波でも媒質の各点は単振動、という原理は不変。

A5-3(類題)
振動数 440 Hz の音が、空気中を 340 m/s で伝わっている。
① 波長を求めよ。
② 空気の密な部分と、隣の密な部分の間隔を求めよ。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① λ = 340/440 = 0.772 ≒ 0.77 m
② 密と密の間隔 = 波長そのもの = 0.77 m

ポイント 音は「疎密の縞模様が 340 m/s で飛んでくる」現象 — 縞の間隔が λ。440 Hz(楽器のラの音)の縞は約 77 cm:身の回りの音の"サイズ感"。


A6【重ね合わせの原理】★★

A6-1
高さ 0.30 m の山のパルスと、高さ 0.20 m の山のパルスが、逆向きに進んできて完全に重なった。重なった瞬間の、その点の変位を求めよ。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
y = y₁+y₂ = 0.30+0.20 = 0.50 m

ポイント 重ね合わせの原理:合成波の変位 = 各波の変位の単純な和。波は互いに場所を譲らず、同じ点に同時に存在できる(粒子との決定的な違い)。

A6-2(類題)
高さ 0.30 m の山のパルスと、深さ 0.30 m の谷のパルスが逆向きに進んできて、完全に重なった。
① 重なった瞬間の媒質の変位はどうなるか。
② 波は消えてしまったのか。この直後どうなるかを述べよ。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① y = 0.30+(−0.30) = 0(どの点も変位 0)
消えていない — 直後に2つのパルスはすり抜けて、元の山と谷がそれぞれの向きへ現れる(波の独立性)。重なった瞬間も媒質は速度をもって動いている。

ポイント 「変位 0 の一瞬」に波のエネルギーは運動エネルギーとして媒質の速度の中に生きている — 見た目が平らでも波は死んでいない。独立性は「波はお互いを素通りする」という驚くべき性質。

A6-3(類題)
2つの波が重なっているある瞬間、点 P における一方の波の変位は +0.20 m、他方の波の変位は −0.10 m であった。P の実際の変位を求めよ。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
y = 0.20+(−0.10) = +0.10 m

ポイント 部分的な重なりでも計算は同じ「各点で符号つきの足し算」— 定常波(A8)の腹・節も、この足し算の繰り返しから生まれる。


A7【反射(自由端・固定端)】★★★

A7-1
高さ 0.20 m の山のパルスが、自由端に向かって進んでいる。
① 反射したパルスは山か谷か。
② パルスがちょうど端に達しているとき、端の変位は最大いくらになるか。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
① 自由端反射は変位そのまま:山のまま返る。
② 端では入射波と反射波が重なる:0.20+0.20 = 0.40 m(振幅の2倍)

ポイント 自由端は思いきり振れる端 — 入射と反射が同符号で重なり、端は必ず「腹」になる。ロープの先端を軽い輪にして棒に通した実験のイメージ。

A7-2(類題)
高さ 0.20 m の山のパルスが、固定端に向かって進んでいる。
① 反射したパルスは山か谷か。
② 反射の間、端の変位はどうなっているか。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① 固定端反射は上下反転:谷(深さ 0.20 m)になって返る。
② 入射(+)と反射(−)がつねに打ち消し合い、端の変位はつねに 0

ポイント 「端が動けない」という条件が、反転した反射波を要請する(端で常に 0 になるのは、逆符号の波を返すときだけ)— 固定端 = 節、の理由がここにある。

A7-3(類題)
反射波の作図手順を述べよ。また、幅 1.0 m の山のパルスが速さ 2.0 m/s で固定端に向かい、先端が端に達した。0.25 s 後までに反射して戻っている部分の長さを求めよ。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
手順:①パルスを端の先まで素通りさせて描く(延長)②端で折り返す ③固定端なら上下も反転(端について点対称。自由端は折り返しのみ = 線対称)。
0.25 s で波は 2.0×0.25 = 0.50 m 進む → 先頭の 0.50 m 分が反射して戻っている:0.50 m(谷として)

ポイント 「延長 → 折り返し(→ 反転)」の3拍子が反射作図のすべて — 実際の波形は「まだ入射中の部分+すでに反射した部分」の重ね合わせで描く。


A8【定常波】★★★

A8-1
振幅 0.10 m、波長 2.0 m の2つの正弦波が、互いに逆向きに進んで重なり、定常波ができた。
① 腹の振幅を求めよ。
② 隣り合う節と節の間隔を求めよ。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
① 腹では2つの波がつねに強め合う:2A = 0.20 m
② 節の間隔 = λ/2 = 1.0 m

ポイント 定常波の2大数値「腹は 2A、間隔は λ/2」。腹・節が交互に λ/4 刻みで並ぶ"ものさし"を頭に描く。

A8-2(類題)
ある定常波で、節とすぐ隣の腹の間隔が 0.50 m であった。もとの進行波の速さが 8.0 m/s のとき、波長と振動数を求めよ。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
節と腹の間隔 = λ/4 = 0.50 m → λ = 2.0 m
f = v/λ = 8.0/2.0 = 4.0 Hz

ポイント 「節⇔腹は λ/4、節⇔節は λ/2」の使い分け — 間隔から λ を逆算し、v = fλ へつなぐ。第5章(弦・気柱)の計算はすべてこの型の反復になる。

A8-3(類題)
x = 0 に固定端があり、波長 2.0 m の定常波ができている。0 ≦ x ≦ 3.0 m の範囲で、節の位置と腹の位置をすべて求めよ。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
固定端は節。節は λ/2 = 1.0 m 間隔:x = 0、1.0、2.0、3.0 m
腹はその中間:x = 0.50、1.5、2.5 m

ポイント固定端 = 節を起点に、λ/4 の目盛りを打つ」— 自由端なら腹を起点に同じ作業。端の種類 → 起点の種類、の翻訳が第5章の弦・気柱の"設計図"になる。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。この章のB問題は作図の手順と理由を言葉で再構成する練習が中心 — 図を自分の紙に描きながら読むこと。B2(グラフの相互変換)とB5(定常波の理論)が入試の最頻出


B1【v = fλ と波の伝わり(文字)】★★

B1-1 「波は1周期 T の間にちょうど1波長 λ だけ進む」ことから、v = fλ を導け。

B1-2 周期 T の波が、時間 T/4 の間に進む距離を λ で表せ。また、この事実が定常波の作図(B5-1)でどう使われるかを一言述べよ。

B1-3 波の進行方向に距離 d だけ離れた2点 P、Q(Q が前方)を考える。Q の振動は P の振動と比べてどれだけ時間が遅れるか。また、d = λ のとき、d = λ/2 のとき、2点の振動はそれぞれどんな関係になるか。

B2【y-x と y-t の相互変換】★★★

B2-1 x 軸正の向きに速さ v で進む正弦波の、時刻 t = 0 の波形が「x = 0 で y = 0、x = λ/4 で山、x = λ/2 で 0、x = 3λ/4 で谷」であった。
① 原点(x = 0)の媒質は、この直後どちらへ動くか。
② 原点が最初に山(y = +A)になる時刻を T で表せ。

B2-2 原点の媒質の振動が「t = 0 で y = 0、直後に上へ動き、t = T/4 で山」であり、波は x 軸正の向きに進んでいる。時刻 t = 0 の波形(0 ≦ x ≦ λ)の概形を、山と谷の位置を示して述べよ。

B2-3 x 軸正の向きに進む波について、x = d の点の y-t グラフは、x = 0 の点の y-t グラフをどうしたものになるか(「時間軸方向に…」の形で述べよ)。

B3【縦波の解析(文字・論述)】★★★

B3-1 縦波の横波表示の約束を述べ、「横波表示のグラフが右下がりに 0 を切る点が密になる」ことを、その点の左右の媒質の変位の向きを考えて説明せよ。

B3-2 x 軸正の向きに進む縦波について、最も密な点における媒質の速度の向きを、理由とともに答えよ。

B3-3 音波を「圧力の波」と見ると、圧力が最大・最小になるのはそれぞれどんな点か。また、圧力の変動の振幅が最大になる点と、変位の振幅が最大になる点の位置関係を述べよ。

B4【反射の作図と原理(文字)】★★★

B4-1 自由端反射の作図手順を述べよ。また、自由端がつねに「腹」になる理由を、入射波と反射波の重ね合わせで説明せよ。

B4-2 固定端反射の作図手順を述べよ。また、固定端がつねに「節」になる理由を説明せよ。

B4-3 「反射では、波の速さ・波長・振動数は変わらない」— この理由を、反射が同じ媒質の中で起こることに注目して説明せよ。

B5【定常波の理論(文字)】★★★

B5-1 振幅 A、波長 λ の同じ形の正弦波が、互いに逆向きに進んで重なる。時刻を T/4 ずつ進めて合成波形を描くと、「動かない点(節)」と「振幅 2A で振動する点(腹)」が現れることを、作図の方針とともに説明せよ。

B5-2 隣り合う節と節の間隔が λ/2 になる理由を述べよ。

B5-3 固定端反射でできる定常波では固定端が節に、自由端反射では自由端が腹になる。それぞれの理由を反射の性質から説明し、固定端から測った節と腹の位置を λ で表せ。

B6【定常波の運動とエネルギー(文字)】★★★

B6-1 定常波の腹の位置の媒質は、振幅 2A、振動数 f の単振動をする。この点の速さの最大値を求めよ(第1巻・第8章の v_max = 振幅 × 角振動数を用いてよい)。

B6-2 進行波はエネルギーを運ぶが、定常波は(全体としては)エネルギーを運ばない。節に注目して、その理由を説明せよ。

B6-3 距離 L だけ離れた2つの波源が、同じ振幅・同じ振動数・同じタイミング(同位相)で波を出し、互いに向かい合って進む波が重なって定常波ができた。2つの波源の中点が必ず腹になる理由を説明せよ。


B問題 解答・解説


B1【v = fλ と波の伝わり(文字)】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
波は 1 周期 T の間に、ちょうど 1 波長 λ だけ進む。
よって速さは v = λ/T。f = 1/T を使って v = fλ

ポイント v = fλ は暗記物ではなく「1 周期に 1 波長」という波の定義の言い換え — 導出が 1 行で終わる公式こそ、意味ごと覚える価値がある。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
進む距離 = v×(T/4) = (λ/T)×(T/4) = λ/4
定常波の作図では、時刻を T/4 進めるごとに、2つの波形を互いに逆向きへ λ/4 ずつずらして重ねる — この「T/4 ⇔ λ/4」の対応が作図の目盛りになる。

ポイント 「時間の 1/4 = 空間の 1/4」— 周期と波長は v で結ばれた同じ長さの2つの顔。以後の作図・グラフ変換すべての基本レート。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
波が P から Q へ届くのに d/v かかるので、Q の振動は P より d/v 遅れる(同じ動きを d/v 後に再現する)。
d = λ のとき:遅れ = λ/v = T(ちょうど 1 周期)→ P と Q はつねに同じ動き(同位相)。
d = λ/2 のとき:遅れ = T/2 → P と Q はつねに逆の動き(一方が山なら他方は谷)。

ポイントλ 離れたら同じ、λ/2 離れたら逆」— この2行が、第6章(うなり・ドップラー)や第8章(干渉)の「強め合い・弱め合い」の原型になる。


B2【y-x と y-t の相互変換】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
① 波は右へ進むので、原点には左隣(x < 0)の波形が来る。周期性より x = −λ/4 は谷 — 左隣は負。
原点は下へ動く。
② 原点の振動:0 → 谷(T/4)→ 0(T/2)→ 山(3T/4)。
最初に山になるのは t = 3T/4

ポイント 「波形を進行方向へずらす」1手で、その後の振動の全歴史が読める — y-x(1枚の写真)から y-t(日記)への翻訳。谷を経由してから山、という順路を飛ばさない。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
原点が直後に上へ動く ⇔ 右へ進む波では「左隣の変位が正」。
原点で y = 0、左が正・右が負となる波形は:
x = λ/4 に谷、x = 3λ/4 に山(x = 0、λ/2、λ で 0)

ポイント B2-1 の逆翻訳(日記 → 写真)。「原点が上へ動く波形」は 1 通りに決まる — 進行の向きが与えられて初めて、振動と波形が 1 対 1 になる(A4-3 の教訓の裏返し)。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
x = d の点は、x = 0 の点と同じ振動を d/v だけ遅れて行う(B1-3)。
よって y-t グラフは、x = 0 のグラフを時間軸の正の向きへ d/v だけ平行移動したものになる。

ポイント 「空間のずれ = 時間グラフの平行移動」— 波の問題は結局「同じ単振動の時差の勤務表」。d = λ で 1 周期ずれて元と重なる(見分けがつかない)ことも確認。


B3【縦波の解析(文字・論述)】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
約束:x 正の向きの変位を y 正としてグラフに描く。
右下がりに 0 を切る点では、左隣は y > 0(右へ変位)、右隣は y < 0(左へ変位) — 左の媒質は右へ、右の媒質は左へ、両側からこの点に寄って来る
よってこの点が最も密になる ∎(右上がりの 0 では両側へ逃げるので疎)

ポイント 矢印を左右 1 本ずつ描けば 10 秒で再導出できる — 「右下がり = 密」を理由ごと携帯すること。上下(y)を左右(x)へ読み戻す往復が縦波のすべて。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
密の点は変位 0 なので速さは最大(単振動の中心)。
x 正の向きに進む波では、この点に次に来るのは左隣の波形(y > 0 = 右向きの変位) — 変位はこれから正になる。
よって密の点の速度は x 正の向き(波の進行方向)に最大

ポイント密の媒質は波と同じ向きに走っている」— 満員電車の押し合いが前へ伝わるイメージ。疎の点は逆に、進行方向と逆向きに最大の速さ。

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
分子が寄り集まる密の点で圧力は最大、逃げ合う疎の点で最小
圧力の変動が最も大きいのは密・疎になる点 = 変位 0 の点であり、変位の振幅が最大の点(山・谷)では圧力はほとんど変動しない。
両者は λ/4 だけずれて並んでいる。

ポイント 音波には「変位の波」と「圧力の波」という2つの顔があり、山がずれている(λ/4)— 第5章の気柱で「口(自由端)は変位の腹・圧力の節」と言えるようになる布石。


B4【反射の作図と原理(文字)】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
手順:①入射波を端がないものとして端の先まで描く(延長)②延長部分を端の位置で折り返す(端について線対称)— これが反射波。
自由端では、入射波と反射波がつねに同符号で重なる(折り返しただけなので端では同じ変位)→ 端の変位はつねに 2 倍:端は腹になる

ポイント 「線対称 = そのまま折り返し」が自由端。端は 2 波の満場一致の点 — 振幅 2A で振れる自由の象徴。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
手順:①延長 ②端で折り返し ③さらに上下を反転(全体として端について点対称)。
固定端では、入射波と反射波が端でつねに逆符号・同じ大きさ → 和はつねに 0:端は節になる
逆に言えば、「端がつねに 0」という束縛条件を満たすために、反転した反射波が返る ∎

ポイント 「点対称 = 折り返して反転」が固定端。反転は壁の都合(動けない)が波に課した条件 — 原因と結果の向きまで言えれば論述は満点。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
波の速さ v は媒質の性質で決まる(張力・密度など)。反射は同じ媒質の中で起こるので v は不変。
振動数 f は波源の振動のリズムで決まり、反射しても 1 秒あたりの波の数は変わらないので f も不変。
よって λ = v/f も不変 ∎

ポイントv は媒質、f は波源」— 波の量の"管轄"を仕分ける重要な整理。第7章(屈折)で「媒質が変わると v と λ が変わり、f だけは変わらない」を言うための土台。


B5【定常波の理論(文字)】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
方針:右へ進む波と左へ進む波を、T/4 ごとに互いに逆向きへ λ/4 ずつずらして描き(B1-2)、各時刻で足し合わせる。
すると、2つの波の山と谷がつねに出会う点では、どの時刻も和が 0 — 動かない()。
その中間の、山と山・谷と谷が出会う点では、和が +2A → 0 → −2A → 0 と振動する()。
合成波はどちらへも進まず、その場で振動する — 定常波 ∎

ポイント T/4 刻み 4 枚の作図は一度は自分の手で — 「進む波+進む波 = 進まない波」という逆説が、足し算だけから生まれる瞬間を目撃する。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
節は「一方の波の山と他方の波の谷がつねに出会う点」。この出会いは、波形の周期性より半波長ごとに繰り返す。
よって節と節の間隔は λ/2 ∎(腹はその中間に、やはり λ/2 間隔で並ぶ)

ポイント 定常波の縞の周期は λ ではなく λ/2 — もとの波 1 波長の中に、節も腹も 2 つずつ入っている。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
固定端:反射波が反転して返るため、端ではつねに入射波と打ち消し合う → 端 = 節
自由端:反射波がそのまま返るため、端ではつねに強め合う → 端 = 腹
固定端から測って:節は x = 0、λ/2、λ、…(x = nλ/2)/腹は x = λ/4、3λ/4、…(x = λ/4+nλ/2)

ポイント 「端の種類 → 端の役(節か腹か)→ λ/4 の目盛りで配置」— この3手が第5章(弦・気柱の固有振動)の設計図のすべて。


B6【定常波の運動とエネルギー(文字)】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
腹の媒質は振幅 2A、振動数 f(角振動数 ω = 2πf)の単振動:
v_max = (振幅)×ω = 2A×2πf = 4πAf

ポイント 定常波の各点は振幅の違う単振動の集まり(節 0 〜 腹 2A)— 第1巻・第8章の v_max = Aω がそのまま輸入できる。波の分野は力学の「再演」でもある。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
節の媒質はまったく動かない — 動かない点は隣に仕事をしない(力 × 速度 = 0)。
よってエネルギーは節を越えて流れることができず、節と節の間に閉じ込められて、運動エネルギーと(変形の)位置エネルギーの間を往復するだけになる。
進行波では全ての点が動き、エネルギーが波とともに一方向へ運ばれるのと対照的である。

ポイント 「エネルギーの通行止め = 節」— 定常波が"定常"でいられる理由。逆向きの 2 つの進行波が運ぶエネルギーが差し引きゼロ、という見方もできる。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
中点は 2 つの波源から等距離にある。同位相の波源から出た波は、同じ時間をかけて同じ変位で中点に到達する。
よって中点では 2 つの波がつねに同符号で重なり、必ず強め合う = 腹になる

ポイント 「経路差 0 → つねに強め合い」— 距離の差が運命を決める、という第8章(干渉)の中心思想の最初の一滴。定常波は「向かい合う 2 波源の干渉縞」でもある。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦4-1【共テ形式:波形グラフの総合読み取り】★★

x 軸の正の向きに速さ 2.0 m/s で進む正弦波がある。時刻 t = 0 の波形は、x = 0 で y = 0、x = 1.0 m で山(y = 0.10 m)、x = 2.0 m で y = 0、x = 3.0 m で谷、x = 4.0 m で y = 0 であり、以降これを繰り返す。
① 振幅は 0.[アイ] m、波長は [ウ].[エ] m である。
② 周期は [オ].[カ] s、振動数は 0.[キク] Hz である。
③ t = 0 における x = 2.0 m の媒質は、この直後どちらへ動くか:[ケ]
(a) 上(y 正の向き)
(b) 下(y 負の向き)
(c) 動かない
④ t = 0 における x = 3.0 m(谷)の媒質の速さは:[コ]
(a) 進行方向に最大
(b) 0
(c) 下向きに最大
⑤ t = 0.50 s における x = 0 の変位は:[サ]
(a) +0.10 m
(b) 0
(c) −0.10 m

実戦4-2【記述形式:縦波の解析】★★★

x 軸の正の向きに進む縦波を横波表示したところ、時刻 t = 0 の波形は、x = 0 で y = 0(右上がり)、x = λ/4 で山、x = λ/2 で y = 0(右下がり)、x = 3λ/4 で谷、x = λ で y = 0 であった(振幅 A、波長 λ)。
① 0 ≦ x < λ の範囲で、最も密な点と最も疎な点の位置を、理由とともに答えよ。
② この瞬間、媒質の速さが最大の点の位置をすべて答えよ。
③ 最も密な点における媒質の速度の向きを、理由とともに答えよ。
④ 最も密な点で空気の圧力が最大になる理由を簡潔に述べよ。
⑤ この波の「密の部分」は、時間とともにどうなっていくか述べよ。

実戦4-3【記述形式:固定端反射と定常波】★★★

x 軸上を、振幅 A、波長 λ、速さ v の正弦波が x 軸の負の向きに進み、x = 0 にある固定端(壁)で反射し続けている。入射波と反射波の重ね合わせで定常波ができた。
① 反射波の振幅・波長・速さ・進む向きを答えよ。また、反射の際に変位はどうなるか。
② x = 0 は定常波の節か腹か。理由とともに答えよ。
③ x > 0 の範囲で、節の位置をすべて λ で表せ。
④ 腹の位置をすべて λ で表し、腹の振幅を答えよ。
⑤ 隣り合う節と節の間隔と、腹の位置の媒質の振動の周期を求めよ。


実戦問題 解答・解説


実戦4-1

考え方 波形グラフ 1 枚から「空間の量(①)→ 時間の量(②)→ 媒質の動き(③④)→ 未来の変位(⑤)」を順に絞り出す — 解法チャートの手順 1〜3 をそのまま試験形式にした総合読み取り。

実戦4-1解答を見る解答を隠す

解答
A = 0.10 m(アイ = 10)、λ = 4.0 m(ウ = 4、エ = 0)
② T = λ/v = 4.0/2.0 = 2.0 s(オ = 2、カ = 0)、f = 1/T = 0.50 Hz(キク = 50)
③ 右へ進む波:x = 2.0 には左隣の波形(山の側、y > 0)が来る → 上へ:(a)(ケ = (a))
④ 谷は振動の折り返し点:速さ 0:(b)(コ = (b))
⑤ 0.50 s = T/4。波は λ/4 = 1.0 m 右へ進むので、x = 0 の変位は元の x = −1.0 m(周期性より谷)の値:
y = −0.10 m:(c)(サ = (c))

ポイント
• ⑤は「x = 0 は③と逆に下へ動き出す(左隣 x = −1.0 が谷)」→ T/4 後にちょうど谷、と振動の物語でも確認できる — 平行移動と定点観測、2 つの読みの一致が検算。
• ③④で「波の速さ 2.0 m/s」と「媒質の速さ」を混同しないこと — 別の量(A4-2)。


実戦4-2

考え方 B3 の 3 部作(密の判定 → 速度 → 圧力)を 1 つの波形で完走する縦波の総合。「上下の y を左右の変位に読み戻す」往復運動が答案の背骨。

実戦4-2解答を見る解答を隠す

解答
① 右下がりに 0 を切る x = λ/2 が最も密(左隣は右向き変位、右隣は左向き変位 — 両側から寄るため)。
右上がりの x = 0(および λ)が最も疎(両側へ逃げるため)。
② 速さ最大は変位 0 の点:x = 0、λ/2(および λ)
③ 右へ進む波なので、x = λ/2 には左隣の波形(y > 0)が来る — 変位はこれから正(右向き)になる。
x 正の向き(波の進行方向)に速さ最大。
④ 密の点では左右から分子が寄り集まり、単位体積あたりの分子数が最大になるから(衝突が激しくなり圧力最大:第2章・分子運動論)。
⑤ 疎密のパターン全体が、波の速さ v で x 正の向きへ進んでいく(媒質は往復するだけで、密の"場所"が伝わる)。

ポイント
• ③の結論「密は進行方向へ走る」は、押し合いが前へ伝わる縦波の心臓部 — 疎の点は逆向きに最大、と対で覚える。
• ①〜⑤を通じて、媒質の変位・速度・圧力という 3 つの層が λ/4 ずつずれて同居している — 縦波を 3 枚のグラフで見る目が完成する。


実戦4-3

考え方 B4(反射の性質)→ B5(節・腹の配置)を、式でなく条件からの再構成で答える定常波の総決算。「固定端 = 節」を起点に λ/4 の目盛りを打てば、③〜⑤は自動的に埋まる。

実戦4-3解答を見る解答を隠す

解答
振幅 A、波長 λ、速さ v はいずれも入射波と同じ(同じ媒質・同じ波源:B4-3)。進む向きは x 軸の正の向き(折り返す)。反射の際、変位は上下反転する(固定端反射)。
② 固定端では入射波と反射波がつねに逆符号で打ち消し合い、変位はつねに 0 —
③ 節は λ/2 間隔:x = 0、λ/2、λ、3λ/2、…(x = nλ/2、n = 0、1、2、…)
④ 腹は節の中間:x = λ/4、3λ/4、5λ/4、…(x = λ/4+nλ/2)、振幅は 2A
⑤ 節と節の間隔:λ/2
腹の媒質は、もとの波と同じ振動数で単振動する:周期 T = λ/v

ポイント
• ①で「変わらない量(A・λ・v・f)」と「変わる量(向き・変位の符号)」を仕分けてから始めるのが記述の作法 — 以降の設問はすべてこの仕分けの帰結。
• この問題の壁を「弦の固定端」に、x の範囲を「長さ L」に制限すると、そのまま第5章の弦の固有振動になる — 次章への橋そのもの。


第5章 弦・気柱の振動

前章の定常波に「長さの制限」を加えると、条件に合う波長だけが生き残る — それが固有振動。弦は両端が節、気柱は閉口が節・開口が腹:端の条件から λ/4 の目盛りで絵を描けば、λ も f も自動的に決まる。弦の速さ v = √(S/ρ)、閉管の「奇数倍のみ」、共鳴実験の λ = 2(L₂−L₁) — ギターもフルートも試験管の笛も、楽器の物理はこの章に全部詰まっている。


この章の公式・要点まとめ

弦の固有振動(両端固定 → 両端が節)
• 長さ L に半波長が n 個:L = n×(λ/2) → λₙ = 2L/n(n = 1、2、3、…)
• 固有振動数:fₙ = v/λₙ = n×v/(2L) = n f₁(基本振動数 f₁ = v/2L の整数倍)
• n = 腹の数(節は両端を含めて n+1 個)。n = 1:基本振動、n = 2:2倍振動、…
• 弦を伝わる波の速さ:v = √(S/ρ)(S:張力 [N]、ρ:線密度 [kg/m])
— 強く張るほど速く(高く)、太く重い弦ほど遅い(低い)

気柱の固有振動(閉口端 = (空気が動けない)/開口端 = (自由に動く))
閉管(一端閉):L = λ/4、3λ/4、5λ/4、… → fₙ = (2n−1)×v/(4L)
— 基本 f₁ = v/(4L)。倍音は 3f₁、5f₁、…(奇数倍のみ)
開管(両端開):L = λ/2、λ、3λ/2、… → fₙ = n×v/(2L)
— 基本 f₁ = v/(2L)。倍音は 2f₁、3f₁、…(すべての整数倍)
• 同じ長さなら:閉管の基本音は開管の半分(1オクターブ低い)
開口端補正:実際の腹は管口より少し外(Δx)にできる — 実効的な管の長さは L+Δx(閉管)、L+2Δx(開管)

共鳴(共振)
• 外から加える振動の振動数が固有振動数に一致すると、大きく振動する
• 気柱の共鳴実験(おんさ f、水面を下げる):
第1共鳴:L₁ = λ/4−Δx/第2共鳴:L₂ = 3λ/4−Δx
λ = 2(L₂−L₁)(引き算で補正 Δx が消える!)、Δx = λ/4−L₁

解法チャート(弦・気柱)
1. 端の条件を確認:固定端・閉口 = 節/自由端・開口 = 腹
2. 定常波の絵を描く(λ/4 の目盛りで節・腹を配置)— 絵が9割
3. L を λ で表す(L = nλ/2 か (2n−1)λ/4)→ λ を求める
4. f = v/λ へ(弦の v は √(S/ρ)、気柱の v は音速)
5. 検算:腹・節の個数、f は基本の何倍か、閉管なら奇数倍か


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
両端を固定した弦にできる定常波で、弦の両端はどうなっているか。
(a) 腹
(b) 節
(c) 腹にも節にもならない

Q2
弦を強く張るほど、同じ振動のしかた(同じ腹の数)での振動数は高くなる。○か×か。

Q3
一端を閉じた気柱(閉管)の、閉じた端はどうなっているか。
(a) 空気が最も激しく動く(腹)
(b) 空気がほとんど動かない(節)
(c) 時と場合による

Q4
両端の開いた気柱(開管)には、基本振動数の 2 倍・3 倍・…と、すべての整数倍の固有振動がある。○か×か。

Q5
気柱の共鳴で、開口端付近にできる腹の実際の位置はどこか。
(a) 管口ちょうど
(b) 管口より少し外側
(c) 管口より少し内側

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:(b) — 固定された端は動けない → (第4章 B5-3)。「動けない端 = 節、動ける端 = 腹」がこの章の全問題の出発点。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:○ — v = √(S/ρ):張力 S を上げると波が速くなり、λ が同じ(同じ形)なら f = v/λ は高くなる。ギターのペグを巻くと音が上がる理由。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:(b) — 壁に接した空気は壁の向こうへ動けない → 。逆に開口端は外気と自由にやりとりできる → 腹。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:○ — 開管は両端が腹で、半波長単位で何個でも入る → 整数倍すべて。閉管は「節と腹のペア(λ/4 の奇数個)」しか入らず奇数倍のみ — 両者の音色の違いの正体。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:(b) — 空気の振動は管口で急に止まれず、少し外まではみ出す(開口端補正 Δx)。だから「管の長さ = λ/4」は近似で、精密には L+Δx = λ/4。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下

※特に断らない限り、音速を 340 m/s とし、開口端補正は無視できるものとする。


A1【弦の基本振動】★★

A1-1
長さ 0.80 m の弦の両端を固定し、基本振動(腹が1つ)で振動させた。弦を伝わる波の速さを 320 m/s とする。
① 定常波の波長を求めよ。
② 振動数を求めよ。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:両端が節、中央に腹1つ — 弦の長さが半波長。
① L = λ/2 より λ = 2L = 1.6 m
② f = v/λ = 320/1.6 = 2.0×10² Hz

ポイント 基本振動の合言葉「λ = 2L」— 弦の中に半波長が1つ。まず絵(節・腹の配置)、次に λ、最後に f、の3段が弦・気柱の定跡。

A1-2(類題)
長さ 0.50 m の弦が、基本振動数 400 Hz で振動している。弦を伝わる波の速さを求めよ。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
波長:λ = 2L = 1.0 m
v = fλ = 400×1.0 = 4.0×10² m/s

ポイント f と L から v を逆算 — 弦の上の波は音速(340 m/s)とは無関係の速さで走っている(v = √(S/ρ):A3)。「弦の波の速さ」と「音速」の混同に注意。

A1-3(類題)
長さ 0.60 m の弦に、腹が1つの定常波ができており、振動数は 250 Hz であった。弦を伝わる波の速さを求めよ。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
腹1つ = 基本振動:λ = 2L = 1.2 m
v = 250×1.2 = 3.0×10² m/s

ポイント 「腹が1つ」という絵の情報から振動の種類(基本)を判定してスタート — 問題文の図・言葉を「n がいくつか」に翻訳するのが第一手。


A2【弦の n 倍振動】★★

A2-1
長さ 0.90 m の弦に、腹が3つの定常波ができている。弦を伝わる波の速さを 240 m/s とする。波長と振動数を求めよ。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
腹3つ → 半波長が3個:L = 3×(λ/2)
λ = 2L/3 = 0.60 m
f = 240/0.60 = 4.0×10² Hz(λ = 0.60 m)

ポイント λₙ = 2L/n(n = 腹の数) — 「弦に半波長が n 個入る」を式にしただけ。n が増えるほど λ は短く、f は高い(n 倍振動 = 基本の n 倍)。

A2-2(類題)
基本振動数 150 Hz の弦の、3倍振動について、①振動数、②腹の数、③節の数(両端を含む)を答えよ。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① f₃ = 3f₁ = 450 Hz
② 腹は 3 つ
③ 節は両端を含めて 4 つ

ポイント 弦の固有振動数は f₁ の整数倍の"はしご"(150、300、450、…)。腹 n 個・節 n+1 個の数え方は、絵を描けば間違えない(端の節を忘れずに)。

A2-3(類題)
ある弦は、振動数 200 Hz と 300 Hz で共振したが、その間の振動数では共振しなかった。この弦の基本振動数を求めよ。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
200 Hz と 300 Hz は連続する倍振動(間がないので)。
その差が基本振動数:f₁ = 300−200 = 1.0×10² Hz
(200 Hz = 2倍振動、300 Hz = 3倍振動)

ポイント連続する固有振動数の差 = 基本振動数」— はしごの段差から1段目を推理する、入試好みの逆問題。検算:100 の整数倍に 200 と 300 が乗り、間(たとえば 250)は乗らない ○。


A3【弦を伝わる波の速さ】★★

A3-1
張力 90 N、線密度 1.0×10⁻³ kg/m の弦を伝わる波の速さを求めよ。

A3-1解答を見る解答を隠す

解答
v = √(S/ρ) = √(90/(1.0×10⁻³)) = √(9.0×10⁴) = 3.0×10² m/s

ポイント v = √(S/ρ) — 単位の検算:√(N ÷ kg/m) = √(kg·m/s² × m/kg) = √(m²/s²) = m/s ○。「張り(S)が駆動、重さ(ρ)が慣性」という構造は v の式の定番の顔。

A3-2(類題)
弦の張力を 4 倍にすると、①波の速さ、②同じ腹の数で振動するときの振動数は、それぞれ何倍になるか。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① v ∝ √S:2 倍
② λ は同じ(同じ形)なので f = v/λ も 2 倍

ポイント 「4 倍で 2 倍」— √ のスケーリング即答(第1巻から続く型)。チューニングで音を1オクターブ上げるには張力 4 倍が要る、というギター弦の現実。

A3-3(類題)
張力 80 N の弦を伝わる波の速さが 2.0×10² m/s であった。この弦の線密度を求めよ。

A3-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
v² = S/ρ より ρ = S/v² = 80/(2.0×10²)² = 80/(4.0×10⁴)
ρ = 2.0×10⁻³ kg/m

ポイント 線密度(1 m あたりの質量)の逆算。2.0×10⁻³ kg/m = 2.0 g/m — 実際のギター弦の太さの範囲で、数値に現実感がある。


A4【おもりで張った弦】★★★

A4-1
水平な弦の一端を固定し、他端は滑車を通して質量 2.0 kg のおもりをつるした。弦の線密度を 5.0×10⁻⁴ kg/m、g = 9.8 m/s² とする。弦を伝わる波の速さを求めよ。

A4-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:張力はおもりのつり合いから S = Mg = 19.6 N(第1巻・第3章)。
v = √(19.6/(5.0×10⁻⁴)) = √(3.92×10⁴) ≒ 2.0×10² m/s

ポイント 張力の出どころは力学のつり合い — 「S = Mg」の1行が力学と波動の接続点。装置(ソノメーター)の絵を描いて、どこが振動部分かも確認。

A4-2(類題)
A4-1 の弦の、振動できる部分の長さが 0.50 m のとき、基本振動数を求めよ。

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
λ = 2L = 1.0 m
f₁ = v/λ = 198/1.0 ≒ 2.0×10² Hz

ポイント A4-1 の v をそのまま使う連結問題 — 「力学(S)→ 波の速さ(v)→ 定常波(λ)→ 振動数(f)」という4段リレーが、この章の総合問題の標準の流れ。

A4-3(類題)
A4-2 の状態から、おもりを質量 8.0 kg(4 倍)のものに替えた。基本振動数はいくらになるか。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
f ∝ v ∝ √S ∝ √M:4 倍で 2 倍
f₁ = 2.0×10²×2 ≒ 4.0×10² Hz

ポイント 構造(∝ √M)で即答してから、必要なら数値 — A3-2 と同じスケーリングが装置つきでも通用する。おもり4倍で1オクターブ上がる。


A5【閉管の固有振動】★★★

A5-1
長さ 0.17 m の閉管(一端を閉じた管)の気柱の、基本振動の波長と振動数を求めよ。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:閉口 = 節、開口 = 腹。基本振動は「節1つ+腹1つ」で、管の長さが λ/4。
λ = 4L = 4×0.17 = 0.68 m
f₁ = 340/0.68 = 5.0×10² Hz(λ = 0.68 m)

ポイント 閉管の基本は「λ = 4L」— 管の中に波の 1/4 しか入っていない。同じ長さの弦(λ = 2L)よりさらに長い波長を鳴らせる、コンパクトな低音装置。

A5-2(類題)
A5-1 の閉管の、基本の次に低い固有振動(次の共鳴)の振動数を求めよ。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
閉管の固有振動は奇数倍のみ:次は 3 倍振動。
f = 3f₁ = 3×500 = 1.5×10³ Hz

ポイント 「次 = 2 倍」ではない!閉管のはしごは f₁、3f₁、5f₁、… — 1 段飛ばし。絵で確かめると、管内に λ/4 が 3 個(節2・腹2)入った形。

A5-3(類題)
基本振動数が 425 Hz の閉管の長さを求めよ。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
f₁ = v/(4L) より L = v/(4f₁) = 340/(4×425) = 340/1700
L = 0.20 m

ポイント 管の長さの逆算 — 管楽器の設計計算そのもの。425 Hz(ほぼ「ラ」)を鳴らす閉管はわずか 20 cm:試験管の笛が高い音になる理由。


A6【開管の固有振動】★★★

A6-1
長さ 0.85 m の開管(両端の開いた管)の気柱の、基本振動の波長と振動数を求めよ。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:両端が腹、中央に節1つ — 管の長さが λ/2。
λ = 2L = 1.7 m
f₁ = 340/1.7 = 2.0×10² Hz(λ = 1.7 m)

ポイント 開管の基本は「λ = 2L」— 式の形は弦と同じ(ただし端の役が逆:弦は両端節、開管は両端腹)。絵を描けば混同しない。

A6-2(類題)
A6-1 の開管の 2 倍振動について、振動数と、管内の節の数を答えよ。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
f₂ = 2f₁ = 4.0×10² Hz
2 倍振動は管内に半波長が 2 個(腹3・節 2 つ)。

ポイント 開管はすべての整数倍が鳴る(概念チェック Q4)。節の数 = n、腹の数 = n+1 — 弦とちょうど逆の勘定になる。

A6-3(類題)
A6-1 と同じ長さ 0.85 m の管の一端を閉じて閉管にした。基本振動数を求めよ。また、開管のときと比べて何倍か。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
λ = 4L = 3.4 m
f₁ = 340/3.4 = 1.0×10² Hz — 開管のときの 1/2(1オクターブ低い)

ポイント片端をふさぐと音が 1 オクターブ下がる」— λ = 2L → 4L の直接の帰結。ペットボトルの口を手のひらで半分ふさぐ遊びの物理。


A7【気柱の共鳴実験】★★★

A7-1
振動数 500 Hz のおんさを鳴らしながら、ガラス管の水面を下げていくと、管口から水面までの距離が L₁ = 0.16 m のとき最初の共鳴が、L₂ = 0.50 m のとき 2 回目の共鳴が起こった。音の波長と音速を求めよ。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:水面 = 節、管口付近 = 腹。共鳴と共鳴の間隔が半波長。
λ = 2(L₂−L₁) = 2×0.34 = 0.68 m
v = fλ = 500×0.68 = 3.4×10² m/s(λ = 0.68 m)

ポイント λ = 2(L₂−L₁) — 引き算で開口端補正が消える、この実験の設計の妙。「1回目の共鳴から λ = 4L₁」とするより正確な理由が A7-2 で分かる。

A7-2(類題)
A7-1 の実験の開口端補正 Δx を求めよ。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
第1共鳴では、腹(管口の少し外)から水面(節)までが λ/4:
L₁+Δx = λ/4 より Δx = 0.68/4−0.16 = 0.17−0.16
Δx = 1.0×10⁻² m(1.0 cm)

ポイント Δx = λ/4−L₁ — 「理論上の λ/4 と実測 L₁ のずれ」がそのまま補正量。Δx は管の口径程度(約 0.6 × 半径)の小さな量だが、精密測定では無視できない。

A7-3(類題)
A7-1 の実験で、さらに水面を下げたとき、3 回目の共鳴が起こる位置 L₃ を求めよ。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
第3共鳴:L₃+Δx = 5λ/4
L₃ = 5×0.17−0.010 = 0.85−0.010 = 0.84 m

ポイント 共鳴位置は λ/2 ずつ(0.34 m 間隔)並ぶ:0.16 → 0.50 → 0.84 ○。「水面 = 節が λ/2 刻みで下がっていく」— 定常波の目盛り(第4章)がそのまま実験のものさし。


A8【共鳴・共振】★★

A8-1
同じ固有振動数のおんさ A、B を並べて置き、A だけをたたいて鳴らしたところ、B も鳴り出した。
① この現象を何というか。
② B におもり(小さな輪ゴム)を付けると、B は鳴らなくなった。理由を述べよ。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
共鳴(共振)
② おもりで B の固有振動数が変わり、A の振動数と一致しなくなったから。

ポイント 共鳴の条件は「振動数の一致」ただ1つ — わずかにずれただけで応答は激減する。おんさの実験は、この鋭さを目で見る装置。

A8-2(類題)
周期 2.0 s で揺れるブランコを、最も大きく揺らすには、何秒ごとに 1 回押せばよいか。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
固有周期に合わせる:2.0 s ごと(揺れの向きが同じになる瞬間に押す)

ポイント ブランコは共振の体験装置 — 小さな力でも、タイミング(振動数)さえ合えばエネルギーが積み上がる。橋や建物の設計で共振を避ける理由でもある。

A8-3(類題)
振動数 300 Hz のおんさで、長さ 0.40 m の弦を振動させたところ、腹が 2 つの定常波ができて共振した。弦を伝わる波の速さを求めよ。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
腹2つ:λ = 2L/2 = 0.40 m
v = fλ = 300×0.40 = 1.2×10² m/s

ポイント 共振しているとき、弦の振動数 = おんさの振動数(駆動源が拍子を決める)— 「f はおんさから、λ は絵から、v は掛け算で」の役割分担。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。まず端の条件 → λ/4 の目盛りの絵 → 式、の順を崩さないのが作法。B3・B4(閉管・開管の一般式)とB5(共鳴実験の解析)が入試の最頻出


B1【弦の固有振動の一般式】★★★

B1-1 長さ L の弦の両端を固定した。弦にできる定常波の波長 λₙ と固有振動数 fₙ を、波の速さ v と正の整数 n で表せ。

B1-2 B1-1 で、fₙ が基本振動数 f₁ の整数倍になることを確かめよ。また、n 倍振動のときの腹の数と節の数(両端を含む)を答えよ。

B1-3 弦を伝わる波の速さ v = √(S/ρ) を用いて、fₙ を L、S、ρ、n で表せ。また、ギターで音の高さを上げる 3 つの方法を、この式に基づいて挙げよ。

B2【弦の応用】★★★

B2-1 長さ L、線密度 ρ の弦の一端を固定し、他端に滑車を介して質量 M のおもりをつるした。基本振動数 f₁ を求めよ。

B2-2 振動数 f のおんさで弦を基本振動で共振させた。おんさはそのままで、弦の張力を 4 倍にしたとき、ふたたび基本振動で共振させるには弦の長さを何倍にすればよいか。

B2-3 弦をはじくと同時に、弦のちょうど中点に指を軽く触れた。どんな振動が残るか(何倍振動か)。また、その音の高さはもとの基本振動と比べてどうなるか。

B3【閉管の一般式】★★★

B3-1 長さ L の閉管について、閉口端が節・開口端が腹であることから、固有振動の波長と振動数の一般式を導け(開口端補正は無視)。

B3-2 閉管の固有振動数が基本振動数の奇数倍に限られる理由を、端の条件から説明せよ。

B3-3 閉管の、隣り合う固有振動数の差を求めよ。また、この差が基本振動数と等しくならないことに注意して、「共鳴する振動数の間隔から基本振動数を求める」ときの閉管特有の注意点を述べよ。

B4【開管の一般式と開口端補正】★★★

B4-1 長さ L の開管について、固有振動の波長と振動数の一般式を導け(開口端補正は無視)。

B4-2 同じ長さ L の開管と閉管の基本振動数の比を求めよ。

B4-3 開口端補正を Δx とするとき、閉管・開管それぞれの基本振動数を L、Δx、音速 v で表せ。

B5【共鳴実験の解析(文字)】★★★

B5-1 振動数 f のおんさによる気柱の共鳴実験で、第1共鳴の位置を L₁、第2共鳴の位置を L₂、開口端補正を Δx とする。L₁、L₂ を λ と Δx で表し、λ = 2(L₂−L₁) となることを示せ。

B5-2 B5-1 の記号を使って、開口端補正 Δx を L₁、L₂ で表せ。

B5-3 この実験で音速を求めるとき、v = 4fL₁(第1共鳴だけを使う)としてはいけない理由を述べよ。また、正しい式を書け。

B6【気柱の応用・総合】★★

B6-1 気温が上がって音速が大きくなると、同じ管(長さ一定)の気柱の固有振動数はどうなるか。管楽器の演奏前の「音合わせ」と関連づけて述べよ。

B6-2 振動数 f のおんさに共鳴する閉管の気柱の長さを、一般に v、f、Δx、正の整数 n で表せ。

B6-3 クラリネット(閉管に近い)とフルート(開管に近い)は、同じ高さの音でも音色が違う。倍音の構成に注目して、その理由を説明せよ。


B問題 解答・解説


B1【弦の固有振動の一般式】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
両端が節なので、長さ L の中に半波長がちょうど n 個入る:
条件:L = n×(λ/2) → λₙ = 2L/n(n = 1、2、3、…)
振動数:fₙ = v/λₙ = nv/(2L)

ポイント 「端の条件 → 長さの条件 → λ → f」の4段が固有振動の全導出 — この流れさえあれば、弦・開管・閉管のどれでも公式をその場で再建できる。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
基本振動数は f₁ = v/(2L)。よって fₙ = n f₁(整数倍)
n 倍振動:半波長 n 個 → 腹は n 個、節は両端を含めて n+1 個

ポイント 弦の音は f₁ を最小単位とする整数倍のはしご — 楽器の「倍音」の正体。腹と節の個数は「柵とすき間」の数え方(節 = 柵)。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
式:fₙ = (n/2L)×√(S/ρ)
音を高くする3つの方法:
L を短くする(フレットを押さえる)②S を強くする(ペグを巻いて張る)③ρ を小さくする(細い弦に替える)

ポイント ギターの構造(6本の太さ違いの弦・ペグ・フレット)は、この1本の式の3つの変数の実装 — 式が読めれば楽器が設計図に見えてくる。


B2【弦の応用】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
張力はおもりのつり合いから S = Mg。
f₁ = (1/2L)×√(Mg/ρ)

ポイント 力学(つり合い)→ 波(v)→ 定常波(f)の直列接続 — A4 の一般式。M で音程を制御する実験装置(ソノメーター)の理論式。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
共振条件は f = (1/2L)√(S/ρ) がおんさの f と一致すること。f・ρ 一定で S → 4S なら、√S が 2 倍になるぶん
長さを 2 倍にすれば再び一致する(L ∝ √S)。

ポイント 「何が固定されているか」(ここでは f)を先に宣言してから比例を追う — 共振問題の定石。強く張るほど、同じ音を出す弦は長くできる。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
指を触れた中点は節になることを強制される → 中点が節である振動、すなわち偶数倍振動だけが残る。最も強く残るのは 2 倍振動で、音の高さは基本の 2 倍(1 オクターブ上)になる。

ポイント ギターの「ハーモニクス奏法」の原理 — 触れる位置で残る倍音を選別できる(1/3 の点なら 3 倍振動)。「節を指定する」という逆向きの発想が新鮮な良問。


B3【閉管の一般式】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
閉口端 = 節、開口端 = 腹。節から腹までは λ/4 の奇数個分だから
条件:L = λ/4、3λ/4、5λ/4、… = (2n−1)×λ/4
λ = 4L/(2n−1)、fₙ = (2n−1)×v/(4L)(n = 1、2、3、…)∎

ポイント節と腹で終わる長さは λ/4 の奇数倍」— λ/4 の目盛り(第4章)で絵を描けば、(2n−1) は自然に現れる(暗記の必要なし)。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
偶数倍(λ/4 の偶数個 = λ/2 の整数個)だと、両端が「節と節」または「腹と腹」になってしまい、「閉口 = 節、開口 = 腹」という端の条件を同時に満たせない
よって λ/4 の奇数個だけが許され、固有振動数は f₁ の奇数倍のみとなる ∎

ポイント 「なぜ奇数倍か」を端の条件の言葉で言えるかが記述の分かれ目 — 式の (2n−1) は結果であって理由ではない。

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
隣り合う固有振動数:f = (2n−1)v/(4L) と (2n+1)v/(4L) の差は
Δf = 2×v/(4L) = v/(2L) = 2f₁
注意点:閉管では連続する共鳴振動数の差は基本振動数の 2 倍 — 弦・開管(差 = f₁)と同じ感覚で「差 = 基本」とすると 2 倍の誤答になる。差 ÷ 2 が基本振動数

ポイント A2-3(弦:差 = f₁)との対比で覚える — 「はしごの段差」が管の種類で違う。共テの実験考察で狙われる急所。


B4【開管の一般式と開口端補正】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
両端が腹 → 腹から腹までは λ/2 の整数個:
条件:L = n×(λ/2) → λ = 2L/n、fₙ = n×v/(2L)(すべての整数倍)∎

ポイント 式の形は弦(B1-1)と同一 — ただし端の役が正反対(弦:両端節/開管:両端腹)。「式が同じでも絵が違う」ことを絵で確認しておく。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
開管:f₁ = v/(2L)、閉管:f₁ = v/(4L)
比は 2:1(開管が 2 倍高い = 閉管は 1 オクターブ低い)

ポイント A6-3 の一般化。「ふさぐと 1 オクターブ下がる」は楽器の世界の常識 — パイプオルガンは閉管パイプで低音を稼ぎ、長さを半分に節約している。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
腹は管口より Δx 外にできるので、実効的な長さで置き換える:
閉管(開口 1 つ):f₁ = v/{4(L+Δx)}
開管(開口 2 つ):f₁ = v/{2(L+2Δx)}

ポイント 補正の個数 = 開口の個数(閉管 1 つ、開管 2 つ)。「L を実効長に置き換えるだけで公式は不変」という処理の型を身につける。


B5【共鳴実験の解析(文字)】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
腹(管口の Δx 外)から節(水面)までが λ/4 の奇数倍:
第1共鳴:L₁+Δx = λ/4
第2共鳴:L₂+Δx = 3λ/4
辺々引くと L₂−L₁ = λ/2 → λ = 2(L₂−L₁) ∎(Δx が消える)

ポイント 引き算で系統誤差(Δx)を消す — 実験設計の知恵の教科書的傑作。「差をとれば共通のずれは消える」という発想は物理実験全般の武器。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
第1共鳴の式へ λ = 2(L₂−L₁) を代入:
Δx = λ/4−L₁ = (L₂−L₁)/2−L₁
Δx = (L₂−3L₁)/2

ポイント L₁ と L₂ という測れる量だけで補正が出る — 「見えない Δx を測る」逆算。検算:L₂ = 3L₁ なら Δx = 0(補正なしの理想)○。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
開口端補正のため L₁ は λ/4 より Δx だけ短い。よって 4fL₁ = f(λ−4Δx) < fλ = v — 音速を小さく見積もってしまう。
正しくは、補正が消える差を使って v = fλ = 2f(L₂−L₁)

ポイント 「誤差の向きまで言う」(第1章 B5 と同じ流儀)— 小さく出る、と断定できるのは L₁ < λ/4 という不等式があるから。実験考察記述の完成形。


B6【気柱の応用・総合】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
固有振動数 f = v/(4L) など、いずれも v に比例 — 音速が大きくなると固有振動数は高くなる
管楽器は演奏中に温まって音程が上がっていくため、演奏直前・休憩後に音合わせ(チューニング)をし直す。

ポイント 「長さが同じでも温度で音程が動く」— 弦楽器(温度で張力が変わる)とは別の理由で、どの楽器も温度に敏感。物理が楽団の習慣を説明する。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
腹(管口の Δx 外)から水面・閉端(節)まで:L+Δx = (2n−1)λ/4、λ = v/f より
L = (2n−1)×v/(4f)−Δx(n = 1、2、3、…)

ポイント A7 の実験のすべての共鳴位置を1本で表す一般式 — n = 1、2 を代入すれば B5-1 の2式に戻る ○。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
同じ高さ(同じ基本振動数)の音でも、実際の音には倍音が重なっている。
閉管に近いクラリネットは奇数倍音(f₁、3f₁、5f₁、…)だけを含み、開管に近いフルートはすべての整数倍音を含む。
含まれる倍音の構成(混ざり方)が違うため、合成された波形が異なり、音色が違って聞こえる

ポイント 「高さ = 基本振動数、音色 = 倍音の配合」— 音の3要素の物理的正体の一角。閉管の「奇数倍のみ」(B3-2)が、耳で聞き分けられる違いとして現れる。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦5-1【共テ形式:気柱の共鳴実験】★★

振動数 425 Hz のおんさを鳴らしながら、鉛直に立てた細いガラス管の水面を管口から徐々に下げていったところ、管口から水面までの距離が L₁ = 0.18 m のとき最初の共鳴が、L₂ = 0.58 m のとき 2 回目の共鳴が起こった。
① この音の波長は [ア].[イウ] m である。
② 音速は [エオカ] m/s である。
③ 開口端補正は [キ].[ク] cm である。
④ さらに水面を下げると、3 回目の共鳴は管口から水面まで [ケ].[コサ] m のときに起こる。
⑤ 共鳴しているとき、管口付近の空気の振動のようすとして最も適当なものは [シ] である。
(a) ほとんど振動しない(節に近い)
(b) 最も激しく振動する(腹に近い)
(c) 水面付近の空気と同じ振れ幅で振動する

実戦5-2【記述形式:おもりで張った弦の振動】★★★

長さ L の部分が振動できる弦があり、線密度は ρ である。弦の一端を固定し、他端は滑車を通して質量 M のおもりをつるした。重力加速度を g とする。
① 弦の張力 S を求めよ。
② 弦を伝わる波の速さ v を求めよ。
③ この弦の n 倍振動の振動数 fₙ を、L、M、g、ρ、n で表せ。
④ L = 0.50 m、ρ = 4.0×10⁻⁴ kg/m、M = 4.0 kg、g = 9.8 m/s² のとき、v と基本振動数 f₁ の値を求めよ。
⑤ 基本振動数を 2 倍にするには、おもりの質量を何倍にすればよいか。

実戦5-3【記述形式:開管と閉管の比較】★★★

長さ L = 0.50 m のまっすぐな管がある。音速を 340 m/s とし、開口端補正は無視する。
① 両端を開いた開管として使うとき、基本振動の波長と振動数を求めよ。
② 開管の固有振動数を、低い方から 3 つ答えよ。
③ 一端を閉じて閉管として使うとき、基本振動の波長と振動数を求めよ。
④ 閉管の固有振動数を、低い方から 3 つ答えよ。
⑤ 「一端を閉じると基本音が 1 オクターブ下がる」ことと「閉管には偶数倍の固有振動がない」ことを、管の両端の条件(節・腹)から説明せよ。


実戦問題 解答・解説


実戦5-1

考え方 A7・B5 の実験を試験形式で完走 — ①②は「差で λ、掛けて v」、③は「λ/4 との差」、④は「λ/2 刻み」。⑤は装置の絵(水面 = 節、管口 = 腹)が描けているかの確認。

実戦5-1解答を見る解答を隠す

解答
① λ = 2(L₂−L₁) = 2×(0.58−0.18) = 0.80 m(ア = 0、イウ = 80)
② v = fλ = 425×0.80 = 340 m/s(エオカ = 340)
③ Δx = λ/4−L₁ = 0.20−0.18 = 0.020 m = 2.0 cm(キ = 2、ク = 0)
④ 共鳴は λ/2 = 0.40 m 間隔:L₃ = 0.58+0.40 = 0.98 m(ケ = 0、コサ = 98)
(検算:5λ/4−Δx = 1.00−0.02 = 0.98 ○)
⑤ 管口付近は腹(の少し内側):(b)(シ = (b))

ポイント
• ②で v = 340 m/s が出るのは出題の checksum — 実験値が常識の音速と合うか照らす習慣を。
• ④は「前回の共鳴 + λ/2」で足すのが最速(一般式からの検算と両輪)。共鳴位置の等間隔性そのものが「水面 = 節の行進」の証拠。


実戦5-2

考え方 力学(①)→ 波の速さ(②)→ 固有振動(③)→ 数値(④)→ スケーリング(⑤)— この章の標準リレーを文字から数値まで通しで。「f は何に比例するか」を式の形で答える⑤が仕上げ

実戦5-2解答を見る解答を隠す

解答
① おもりのつり合いより S = Mg
v = √(Mg/ρ)
③ λₙ = 2L/n だから
fₙ = v/λₙ = (n/2L)×√(Mg/ρ)
④ v = √(4.0×9.8/(4.0×10⁻⁴)) = √(9.8×10⁴) ≒ 3.1×10² m/s
f₁ = v/(2L) = 313/1.0 ≒ 3.1×10² Hz
⑤ f₁ ∝ √M なので、2 倍にするには M を 4 倍(16 kg)にすればよい。

ポイント
• ④の √(9.8×10⁴) = √9.8×10² ≒ 3.13×10² — 大きな数の平方根は「×10 の偶数乗をくくり出す」のが定石。
• ⑤「2 倍にしたければ 4 倍」— √ の逆読み。①〜⑤を通じ、答えに v(音速 340)が一度も登場しない:弦の上の波は音ではない、という区別の総仕上げ。


実戦5-3

考え方 同じ 1 本の管を開管・閉管で使い分ける比較実験 — 数値(①〜④)で「半分・奇数倍」を体感し、⑤でその理由を端の条件から言語化する。B3・B4 の記述版総まとめ。

実戦5-3解答を見る解答を隠す

解答
① 開管の基本:λ = 2L = 1.0 m、f = 340/1.0 = 340 Hz
② 整数倍すべて:340 Hz、680 Hz、1.0×10³ Hz(1020 Hz)
③ 閉管の基本:λ = 4L = 2.0 m、f = 340/2.0 = 170 Hz
④ 奇数倍のみ:170 Hz、510 Hz、850 Hz
⑤ 開管は両端が腹で L = λ/2(基本)、閉管は「閉口 = 節、開口 = 腹」で L = λ/4(基本)— 同じ L でも基本の波長が 2L → 4L と 2 倍になるから、振動数は半分(1 オクターブ下がる)。
また、閉管で偶数倍(L が λ/2 の整数倍)を仮定すると両端が「節と節」か「腹と腹」になり、閉口 = 節・開口 = 腹を同時に満たせない。よって λ/4 の奇数倍だけが許され、偶数倍の固有振動は存在しない

ポイント
• ②と④を並べると、共通するのは 1 つもない(340 の倍数 vs 170 の奇数倍)— 開管と閉管はまったく別のはしごを持つ。
• ⑤の論述は「端の条件 → 長さの条件 → 帰結」の3文構成が満点の型 — 式 (2n−1) を書くだけでは理由の説明にならない(B3-2)。


第6章 音の伝わり方とドップラー効果

音は空気の疎密のリレー(第4章)— 本章は、その音が「動き」と出会うとき何が起こるかを追う。2つの音のわずかな差はうなりとして数えられ、音源や観測者の運動はドップラー効果として音の高さを変える。公式は1本 f' = f(V−v_o)/(V−v_s) だけ — ただし主役は公式ではなく、「音源が動けば波長が変わり、観測者が動けば受け取る数が変わる」という2つの物語。検算の合言葉は「近づけば高く、遠ざかれば低く」。


この章の公式・要点まとめ

音の性質
• 音は空気の縦波(疎密波)。媒質が必要 — 真空では伝わらない
• 音の3要素:高さ = 振動数 f/大きさ = 振幅/音色 = 波形(倍音の構成:第5章)
• 音速:V = 331.5+0.6t m/s— 温度が高いほど速い。水中・固体中はさらに速い
• 音速は媒質の状態で決まる — 音源が動いても、出た後の音の速さは変わらない(重要!)

うなり
• 振動数がわずかに違う2つの音を同時に鳴らすと、音の強弱が周期的に繰り返される
毎秒のうなりの回数 = |f₁−f₂|
• 原理:2つの波の山がそろう瞬間(強め合い)と、山と谷が重なる瞬間(弱め合い)が交互に来る

ドップラー効果
• 音源・観測者が動くと、聞こえる振動数が変わる現象
f' = f×(V−v_o)/(V−v_s)
正の向き:音源から観測者へ向かう向き。v_s(音源)、v_o(観測者)ともこの向きを正に符号をつける
• しくみの2本柱:
音源が動く → 波長が変わる(前方に詰まる:λ' = (V−v_s)/f)
観測者が動く → 波長は不変、1秒に受け取る波の数が変わる
• 検算:「近づく状況なら f' > f、遠ざかるなら f' < f」— 代入後に必ず照合

反射板があるとき(2段階)
• ①板を観測者とみなして、板が受ける振動数 f₁ を求める
• ②板を振動数 f₁ の音源とみなして(受けた振動数のまま反射)、観測者が聞く f₂ を求める

解法チャート(ドップラー)
1. 図を描き、音源 → 観測者の向きを正と宣言する
2. v_s、v_o に符号をつける(正の向きに動くなら +)
3. f' = f(V−v_o)/(V−v_s) に代入
4. 検算:近づいていれば f' > f になっているか
5. 反射板・すれ違いは段階に分けて同じ手順を繰り返す


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
音は真空中でも伝わる。○か×か。

Q2
気温が上がると、空気中の音速はどうなるか。
(a) 速くなる
(b) 遅くなる
(c) 変わらない

Q3
振動数 400 Hz と 403 Hz のおんさを同時に鳴らすと、毎秒何回のうなりが聞こえるか。
(a) 3 回
(b) 401.5 回
(c) 803 回

Q4
音源が観測者に向かって動いているとき、観測者に届く音の波長は、音源が静止しているときより短くなっている。○か×か。

Q5
静止した音源から、観測者だけが遠ざかっていく。観測者が受け取る音の波長はどうなるか。
(a) 長くなる
(b) 短くなる
(c) 変わらない

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:× — 音は媒質(空気など)の振動のリレー:運び手がいなければ伝わらない。宇宙空間で爆発音は聞こえない。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:(a) — V = 331.5+0.6t:1 ℃ で 0.6 m/s ずつ速くなる(分子の熱運動が激しくなるため:第2章)。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:(a) — うなりの回数 = 振動数の差 |403−400| = 3 回/秒。和(c)や平均(b)ではない — 「差」だけが強弱のリズムを決める。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:○ — 動く音源は自分が出した波を追いかけるため、前方では波が詰まって波長が短くなる。これがドップラー効果の(音源側の)正体。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:(c) — 観測者が動いても空間の波長は変わらない(波はもう空中にある)。変わるのは「1 秒間に横切る波の数」= 振動数。音源側は波長・観測者側は個数 — 2つのしくみの区別がこの章の急所。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下

※特に断らない限り、音速を V = 340 m/s とする。


A1【音速と距離】

A1-1
音速は気温 t [℃] のとき V = 331.5+0.6t [m/s] と表せる。気温 15 ℃ と 30 ℃ のときの音速をそれぞれ求めよ。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
15 ℃:V = 331.5+0.6×15 = 340.5 ≒ 3.4×10² m/s
30 ℃:V = 331.5+0.6×30 = 349.5 ≒ 3.5×10² m/s

ポイント 「15 ℃ で約 340 m/s」が基準値 — 本書の V = 340 はこの値。夏はわずかに速い(気柱の音程が上がる:第5章 B6-1 の根拠)。

A1-2(類題)
稲妻が光ってから 3.0 s 後に雷鳴が聞こえた。稲妻までの距離を求めよ(光は瞬時に届くとしてよい)。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
距離 = Vt = 340×3.0 = 1020 ≒ 1.0×10³ m

ポイント光ってから音まで 3 秒で約 1 km」— 雷の距離の実用公式。光速(3.0×10⁸ m/s)は音速の約 100 万倍:光の伝わる時間は無視できる。

A1-3(類題)
崖に向かって叫んだところ、2.0 s 後にこだま(やまびこ)が聞こえた。崖までの距離を求めよ。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
音は崖まで往復する:2L = Vt
L = 340×2.0/2 = 3.4×10² m

ポイント こだま・魚群探知機・超音波診断はすべて「往復時間 ÷ 2」— 2 で割り忘れるのが定番ミス。反射で距離を測る技術の原型。


A2【音の3要素と媒質】

A2-1
① 振動数 440 Hz の音(楽器の「ラ」)の、空気中での波長を求めよ。
② 1 オクターブ上の 880 Hz の音の波長を求めよ。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
① λ = V/f = 340/440 ≒ 0.77 m
② λ = 340/880 ≒ 0.39 m(半分)

ポイント 「1 オクターブ上 = 振動数 2 倍 = 波長半分」。音の高さを決めるのは振動数 — 波長は媒質しだいで変わる(A2-3)ので、高さの本体は f の側。

A2-2(類題)
音の「高さ」「大きさ」「音色」は、それぞれ波の何によって決まるか。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
高さ:振動数/大きさ:振幅/音色:波形(含まれる倍音の構成)

ポイント 音の3要素と波の3属性の対応表 — 第5章 B6-3(クラリネットとフルート)で見た「音色 = 倍音の配合」もこの表の1行。

A2-3(類題)
空気中(V = 340 m/s)を伝わる振動数 500 Hz の音が、水中(音速 1500 m/s)に入った。水中での振動数と波長を求めよ。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
振動数は変わらない:f = 500 Hz
波長:λ = 1500/500 = 3.0 m(空気中の 0.68 m から伸びる)

ポイント 媒質が変わっても f は不変(振動のリズムは波源が決める:第4章 B4-3)— 変わるのは v と λ。この原則は第7章(光の屈折)でそのまま主役になる。


A3【うなり】★★

A3-1
振動数 400 Hz と 404 Hz のおんさを同時に鳴らした。毎秒何回のうなりが聞こえるか。

A3-1解答を見る解答を隠す

解答
うなりの回数 = |404−400| = 毎秒 4 回

ポイント うなり = 差の回数。4 Hz の差は音の高さとしては聞き分けられないが、「ワーンワーン」という強弱なら数えられる — 耳を精密測定器に変える現象。

A3-2(類題)
振動数 440 Hz のおんさと、振動数のわからないおんさ X を同時に鳴らすと、毎秒 3 回のうなりが聞こえた。X の振動数として考えられる値をすべて答えよ。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
|f_X−440| = 3 より f_X = 437 Hz または 443 Hz

ポイント うなりは差の絶対値しか教えない — 高い方か低い方かは、この情報だけでは決められない(2 通り)。決着のつけ方が次問。

A3-3(類題)
A3-2 のおんさ X に少量のろうを付けて(振動数をわずかに下げて)再び鳴らすと、うなりは毎秒 5 回に増えた。X のもとの振動数はどちらだったか。

A3-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
X の振動数が下がって差が増えた(3 → 5)— X はもともと 440 Hz より低い側にあった。
f_X = 437 Hz

ポイント 「下げてみて差がどう動くか」で 2 択を判別 — 437 なら下げると 440 から遠ざかり(差 増)、443 なら近づく(差 減)。操作 → 変化の向きで未知を絞る、実験考察の典型手筋。


A4【ドップラー効果:音源が動く】★★★

A4-1
振動数 600 Hz の音源が、静止した観測者に向かって速さ 40 m/s で近づいてくる。観測者が聞く音の振動数を求めよ。

A4-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:音源 → 観測者の向きを正。v_s = +40、v_o = 0。
f' = f×V/(V−v_s) = 600×340/(340−40) = 600×340/300 = 680 Hz

ポイント 分母が小さくなる(340 → 300)から f' は大きい — 「近づけば高い」○。式の後の検算の一言まで書いて完答。

A4-2(類題)
振動数 600 Hz の音源が、静止した観測者から速さ 60 m/s で遠ざかっていく。観測者が聞く振動数を求めよ。

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
遠ざかる音源:v_s = −60(正の向きと逆)。
f' = 600×340/(340+60) = 600×340/400 = 510 Hz

ポイント 遠ざかりは分母が大きくなり f' < f(低い)○。符号を機械的に入れるか、「遠ざかり → +」と分母を書き換えるか — どちらでも、最後の大小検算は省かない。

A4-3(類題)
A4-1 の状況(600 Hz、40 m/s で接近)で、①音源の前方に届いている音の波長、②音源の後方の波長を求めよ。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① 前方:λ' = (V−v_s)/f = 300/600 = 0.50 m
② 後方:λ' = (V+v_s)/f = 380/600 ≒ 0.63 m
(静止時の λ = 340/600 ≒ 0.57 m — 前で縮み、後ろで伸びる)

ポイント 動く音源の波は前方で詰まり後方で間のび — 波紋の中心がずれていく図を必ず一度描く。f' = V/λ' で A4-1 の 680 Hz(= 340/0.50)が再現できる:波長経由の別ルート検算


A5【ドップラー効果:観測者が動く】★★★

A5-1
静止した音源が振動数 680 Hz の音を出している。観測者が速さ 20 m/s で音源に近づきながら聞く音の振動数を求めよ。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:音源 → 観測者の向きを正。観測者は音源へ向かう:v_o = −20。
f' = f×(V−v_o)/V = 680×(340+20)/340 = 680×360/340 = 720 Hz

ポイント 観測者が向かって進むと、1 秒間に横切る波の数が増える(波長は 0.50 m のまま)— 分子が (V+20) に増える理由を「数の増加」で言えること。

A5-2(類題)
A5-1 の観測者が、こんどは速さ 20 m/s で音源から遠ざかりながら聞く振動数を求めよ。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
遠ざかる観測者:v_o = +20。
f' = 680×(340−20)/340 = 680×320/340 = 640 Hz

ポイント 遠ざかると波を「待たせる」ぶん受け取りが減る — 分子が小さくなり f' < f ○。近づき(720)と遠ざかり(640)が 680 をはさんで対称に近い形。

A5-3(類題)
A5-1 で、観測者が受け取っている音の波長はいくらか。また、波長が変わらないのに振動数が変わる理由を一言で述べよ。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
波長は音源が決める:λ = V/f = 340/680 = 0.50 m(変わらない)
理由:観測者が動くと、1 秒間に自分を通過する波の個数が変わるから(相対的な通過の速さ V+v が変わる)。

ポイント 概念チェック Q5 の計算版 — 「音源は波長を変え、観測者は個数を変える」。この一文がドップラーの物理の全要約。


A6【ドップラー効果:両方が動く】★★★

A6-1
振動数 600 Hz の音源が速さ 40 m/s で観測者に近づき、観測者も速さ 35 m/s で音源に近づいている。観測者が聞く振動数を求めよ。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
音源 → 観測者を正:v_s = +40、v_o = −35。
f' = 600×(340+35)/(340−40) = 600×375/300 = 750 Hz

ポイント 両方動くときも公式は 1 本 — 分子は観測者、分母は音源の担当。互いに近づけば「分子 増 × 分母 減」の二重奏で大きく高くなる。

A6-2(類題)
振動数 600 Hz の音源が速さ 40 m/s で観測者を追いかけ、観測者は同じ向きに速さ 10 m/s で逃げている。観測者が聞く振動数を求めよ。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
音源 → 観測者を正:v_s = +40、v_o = +10。
f' = 600×(340−10)/(340−40) = 600×330/300 = 660 Hz

ポイント 逃げていても、音源の方が速ければ間隔は縮んでいる(実質 30 m/s の接近)→ f' > f ○。符号を正の向きで機械的に処理すれば、追いかけっこでも迷わない。

A6-3(類題)
振動数 600 Hz の音源と観測者が、同じ向きに同じ速さ 30 m/s で動いている(並走)。観測者が聞く振動数を求めよ。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
v_s = +30、v_o = +30:
f' = 600×(340−30)/(340−30) = 600 Hz(変わらない)

ポイント 相対的に近づきも遠ざかりもしなければ、ドップラー効果は起きない — 分子と分母が同じ形で約分される。並走する電車どうしの警笛は素の高さに聞こえる。


A7【反射板のドップラー(2段階)】★★★

A7-1
振動数 600 Hz の音源が、静止した壁に向かって速さ 40 m/s で進んでいる。壁が受ける音の振動数を求めよ。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
壁を「静止した観測者」とみなす:
壁が受ける振動数:f₁ = 600×340/(340−40) = 680 Hz

ポイント 反射問題の第1段:板 = 観測者。壁は受けた振動数のまま、こんどは音源として送り返す(次問)。

A7-2(類題)
A7-1 で、壁で反射した音を、音源と一緒に動いている人(速さ 40 m/s で壁に近づく観測者)が聞く。その振動数を求めよ。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
第2段:壁 = 静止した音源(680 Hz)、観測者が 20…ではなく 40 m/s で近づく。
反射音:f₂ = 680×(340+40)/340 = 680×380/340 = 760 Hz

ポイント 2 段階で2 回シフト(600 → 680 → 760)— 行き(音源が動く:分母)と帰り(観測者が動く:分子)で役割が入れ替わるのがこの問題の妙。

A7-3(類題)
こんどは、静止した音源が振動数 680 Hz の音を出し、反射板が音源に向かって速さ 20 m/s で近づいてくる。
① 板が受ける振動数を求めよ。
② 音源のそばにいる静止した観測者が聞く反射音の振動数を求めよ。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① 板 = 動く観測者:f₁ = 680×(340+20)/340 = 720 Hz
② 板 = 動く音源(720 Hz):f₂ = 720×340/(340−20) = 720×340/320 = 765 Hz

ポイント 動く板は「受けるときは観測者、返すときは音源」の一人二役 — どちらの段でも板の速度が効くので、シフトは 2 回分。スピードガン(B4-3)の原理そのもの。


A8【ドップラーの応用】★★

A8-1
救急車がサイレンを鳴らして一定の速さで直線道路を走り、静止した観測者の前を通過した。通過前は 720 Hz、通過後は 640 Hz に聞こえた。
① 救急車の速さを求めよ。
② サイレン本来の振動数を求めよ。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
① 通過前:720 = fV/(V−v)、通過後:640 = fV/(V+v)。
比をとると (V+v)/(V−v) = 720/640 = 9/8
これを解いて 17v = 340 → v = 20 m/s
② f = 720×(340−20)/340 = 720×320/340 ≒ 678 Hz(6.8×10² Hz)

ポイント 前後の比から f が消えて v が先に出る — 未知数 2 つを「比 → 差し戻し」で順に決める、ドップラー逆算の定跡(一般式は B2-3)。

A8-2(類題)
静止した音源が振動数 680 Hz の音を出している。電車に乗った観測者が速さ 20 m/s でその前を通過した。通過前と通過後に聞こえる振動数をそれぞれ求めよ。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
通過前(近づく):f' = 680×(340+20)/340 = 720 Hz
通過後(遠ざかる):f' = 680×(340−20)/340 = 640 Hz

ポイント A8-1 と数値がそろうのは偶然ではないが、式の形は別物(観測者型は V が分母に固定)— 「どちらが動いているか」で前後の振動数の平均が f になるか(観測者型:720 と 640 の平均 = 680 ○)ずれるか、という違いも生まれる。

A8-3(類題)
コウモリが 5.0×10⁴ Hz の超音波を出しながら、静止した壁(獲物)に向かって速さ 20 m/s で飛んでいる。コウモリ自身が聞く反射音の振動数を求めよ。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
2 段階をまとめて:
f'' = f×(V+v)/(V−v) = 5.0×10⁴×360/320 = 5.6×10⁴ Hz

ポイント コウモリは自分の声と反射音の差(ここでは約 6×10³ Hz)から獲物との相対速度を読む — ドップラーは生物のソナーにも、気象レーダーにも、野球のスピードガンにも実装されている現役の物理。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。導出は「波長の物語(音源)」と「個数の物語(観測者)」を分けて組み立てるのが作法。B2・B3(公式の導出)とB4(反射板)が入試の最頻出


B1【音速・うなり(文字)】★★

B1-1 崖に向かって音を出し、時間 t 後に反射音を聞いた。音速を V として崖までの距離 L を表せ。また、この方法の測定精度を上げる工夫を1つ述べよ。

B1-2 振動数 f₁、f₂(f₁ > f₂)の2つの音を同時に鳴らすと、毎秒 (f₁−f₂) 回のうなりが聞こえることを、「時間 t の間に2つの音が出す波の数の差」に注目して導け。

B1-3 基準おんさ(振動数 f)と未知おんさを鳴らすと毎秒 n 回のうなりが聞こえた。未知おんさの振動数の候補を挙げよ。また、未知おんさに少量のおもりを付けて振動数をわずかに下げたとき、うなりの回数がどう変わるかで候補を判別する方法を説明せよ。

B2【音源が動く場合の導出】★★★

B2-1 振動数 f の音源が、速さ v_s で観測者に向かって動いている。音源が 1 秒間に出す f 個の波が、どの範囲に詰め込まれるかを考えて、音源の前方の波長 λ' を求めよ。

B2-2 B2-1 の結果から、静止した観測者が聞く振動数 f' を求めよ。また、音源の後方(遠ざかる側)での波長と振動数も書け。

B2-3 一定の速さ v で走る音源が観測者の前を通過した。通過前の振動数を f₁、通過後を f₂ とするとき、音源の速さ v を V、f₁、f₂ で表せ。

B3【観測者が動く場合の導出と一般式】★★★

B3-1 静止した音源(振動数 f、波長 λ = V/f)に向かって、観測者が速さ v_o で近づく。観測者が 1 秒間に受け取る波の数を考えて、聞こえる振動数 f' を導け。

B3-2 観測者が速さ v_o で遠ざかる場合の f' を書け。

B3-3 音源(速さ v_s)と観測者(速さ v_o)がともに動く場合の一般式 f' = f(V−v_o)/(V−v_s) を、B2・B3 の結果を組み合わせて導け。また、符号の約束と検算法を述べよ。

B4【反射板の一般式】★★★

B4-1 静止した音源(振動数 f)に向かって、反射板が速さ v で近づいてくる。①板が受ける振動数 f₁、②板で反射した音を音源のそばの静止観測者が聞く振動数 f₂ を求めよ。

B4-2 振動数 f の音源が速さ v で静止した壁に近づきながら音を出す。音源上の観測者が聞く反射音の振動数を求め、B4-1 ②と同じ形になることを確かめよ。

B4-3 B4-1 で、観測者が聞く直接音と反射音のうなり(毎秒の回数)を求めよ。さらに v が V に比べて十分小さいときの近似形を書き、これが速度測定(スピードガン)にどう使われるかを述べよ。

B5【斜めのドップラー(発展)】★★★

B5-1 一定の速さ v で直線上を動く音源が、観測者の真横を通過する瞬間、観測者が聞く振動数はもとの f と比べてどうなるか。理由とともに答えよ。

B5-2 音源の速度と、音源から観測者へ向かう向きのなす角が θ のとき、観測者が聞く振動数を書け(視線方向の速度成分を用いる)。

B5-3 音源が遠方から近づき、真横を通過して遠ざかるとき、観測者が聞く振動数は時間とともにどう変化するか。「はじめ」「真横」「最後」の値を挙げて概形を述べよ。

B6【風があるときのドップラー(発展)】★★★

B6-1 音源から観測者へ向かう向きに、風が速さ w で吹いている。音は空気(媒質)に対して速さ V で進むことに注意して、このときのドップラー効果の式を書け。

B6-2 音源も観測者も静止していて、風だけが吹いている場合、聞こえる振動数はどうなるか。B6-1 の式で確かめ、波長と音速の変化がどう打ち消し合うかを説明せよ。

B6-3 振動数 f の音源が速さ v_s で観測者に近づき、追い風(音源 → 観測者の向き)が速さ w で吹いている。静止した観測者が聞く振動数を書け。また、無風のときと比べて f' は大きいか小さいか(v_s、w > 0 のとき)。


B問題 解答・解説


B1【音速・うなり(文字)】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
音は往復するので 2L = Vt → L = Vt/2
工夫の例:崖までの距離が大きい状況で測る(t を長くする)、または測定を何回も繰り返して平均する — ストップウォッチを押す反応の誤差(ほぼ一定)の影響が相対的に小さくなる。

ポイント 「誤差そのものは消せなくても、測る量を大きくして相対誤差を下げる」— 第5章 B5(差をとって系統誤差を消す)と並ぶ、実験設計の二大知恵。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
時間 t の間に、2つの音源が出す波の数はそれぞれ f₁t 個と f₂t 個 — 差は (f₁−f₂)t 個。
波が1個分ずれるごとに、山と山が重なる状態(強)から山と谷(弱)を経てまた強へ戻る — うなり1回。
よって毎秒のうなりの回数は f₁−f₂

ポイント うなりの正体は「波の数のずれの積み立て」— 1個ずれるたびに強弱が1周する。差が小さいほどゆっくり数えられる、耳の精密測定の理屈。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
候補:f+n と f−n の2通り
判別:おもりで未知おんさの振動数をわずかに下げてみる。
うなりが増えた → 差が開いた → 未知はもともと低い側(f−n)
うなりが減った → 差が縮んだ → 未知は高い側(f+n)

ポイント A3-3 の一般化。「操作の向き × 変化の向き」の掛け算で 2 択を割る — うなりだけでは絶対値しか分からない、という欠点を実験操作で補う型。


B2【音源が動く場合の導出】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
音源が 1 秒間に出す f 個の波を考える。1 秒後、最初の波面は V だけ進み、音源は v_s だけ追いかけている — f 個の波は長さ V−v_s の区間に詰め込まれる。
よって前方の波長は λ' = (V−v_s)/f

ポイント1 秒間のスナップ写真」を描くのが導出のすべて — f 個の波と (V−v_s) の区間、この絵が公式の記憶そのものになる。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
音の速さは V のまま(媒質が決める)なので
f' = V/λ' = fV/(V−v_s)
後方では f 個の波が V+v_s の区間に広がる:
λ' = (V+v_s)/f、f' = fV/(V+v_s)

ポイント波長は音源が変え、速さは媒質が守る」— f' が変わるのは λ' が変わった結果。V が不変であることが、この導出の隠れた主役。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
通過前:f₁ = fV/(V−v)、通過後:f₂ = fV/(V+v)。
比をとって f₁/f₂ = (V+v)/(V−v) → f₁(V−v) = f₂(V+v)
v = V(f₁−f₂)/(f₁+f₂)

ポイント 比をとると f が消える — サイレン本来の高さを知らなくても速度が測れる(A8-1 の一般式)。「差 ÷ 和」というきれいな形は検算にも使いやすい(f₁ = f₂ で v = 0 ○)。


B3【観測者が動く場合の導出と一般式】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
空間の波長は λ = V/f のまま。観測者が波に向かって v_o で進むと、波が観測者を通過する相対的な速さは V+v_o
1 秒間に受け取る波の数:
f' = (V+v_o)/λ = f(V+v_o)/V

ポイント波の柵を横切る本数」の勘定 — 波長(柵の間隔)は不変で、こちらの足の速さだけが本数を変える。音源型(波長が変わる)との対比を常に意識。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
遠ざかる観測者に対する相対の速さは V−v_o:
f' = f(V−v_o)/V

ポイント v_o = V なら f' = 0 — 音と同じ速さで逃げれば波に追いつかれない(音が「止まって聞こえない」極限)。極端検算が式の意味を照らす。

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
動く音源が作った波長 λ' = (V−v_s)/f(B2-1)を、動く観測者が相対の速さ V−v_o で受け取る(音源 → 観測者を正として):
f' = (V−v_o)/λ' = f(V−v_o)/(V−v_s)
符号の約束:音源から観測者へ向かう向きを正とし、v_s・v_o に符号をつけて代入。
検算:近づく状況なら f' > f、遠ざかるなら f' < f を最後に照合する。

ポイント 一般式は「音源の物語(分母)× 観測者の物語(分子)」の合成 — 2 つの導出を貼り合わせただけで、新しい原理は増えていない。


B4【反射板の一般式】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
① 板 = 近づく観測者:f₁ = f(V+v)/V
② 板 = 近づく音源(振動数 f₁):
反射音:f₂ = f₁×V/(V−v) = f(V+v)/(V−v)

ポイント 分子と分母に v が1 回ずつ — 「受けるとき+返すとき」の 2 段シフト。中間の f₁ を経由する丁寧な 2 段書きが、符号事故を防ぐ最強の様式。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
行き:壁(静止)が受ける:f₁ = fV/(V−v)
帰り:壁 = 静止音源、観測者(音源上)が v で近づく:
反射音:f₂ = f₁×(V+v)/V = f(V+v)/(V−v) — B4-1 ②と同じ形 ○

ポイント 「板が近づく」も「自分が近づく」も、相対的に近づく速さ v が同じなら結果は同じ — 反射ドップラーは相対運動だけで決まる、という美しい対称性。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
うなり(振動数の差):
f₂−f = f{(V+v)−(V−v)}/(V−v) = 2fv/(V−v)
v ≪ V のとき ≒ 2fv/V
スピードガンは、電波を球や車に当てて反射波との振動数差 Δf を測り、v = VΔf/(2f) で速度を割り出す — この式の実用そのもの。

ポイント 差が 2fv/V(v に比例) になるのが測定器として優秀な理由 — 差を読めば速度が一次式で出る。野球・気象レーダー・スピード違反取締り、すべてこの1行。


B5【斜めのドップラー(発展)】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
真横を通過する瞬間、音源の速度は視線(音源 → 観測者の向き)と垂直 — 近づきも遠ざかりもしていない。
よって f' = f(変化しない)

ポイント ドップラー効果を起こすのは視線方向の速度成分だけ — 横切る動きは音の高さに寄与しない。力の分解(第1巻・第3章)と同じ「成分で考える」目。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
視線方向の成分は vcosθ(近づく向き)。これを音源の速さとして
f' = fV/(V−vcosθ)

ポイント θ = 0 で最大 fV/(V−v)、θ = 90° で f(B5-1)○ — cosθ 1 つで「正面」から「真横」まで連続的につながる。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
遠方から接近(θ ≒ 0):f' ≒ fV/(V−v)(高く、ほぼ一定)
近づくにつれ cosθ が減り、f' は連続的に下がる
真横:f' = f
遠ざかって(θ → 180°):f' → fV/(V+v)(低く、ほぼ一定)
— 「高い音が滑らかに下がって低い音へ」という、救急車のサイレンの"ミョーン"の形。

ポイント 実際の通過音は A8-1 のような階段(720 → 640)ではなく滑らかな坂 — 距離が有限で角度が連続的に変わるから。理想化(直線上)と現実(横を通る)の橋渡し。


B6【風があるときのドップラー(発展)】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
音は媒質(空気)に対して速さ V — 空気ごと w で流されるので、地面から見た音速は V+w になる。
公式の V を V+w に置き換えて
f' = f(V+w−v_o)/(V+w−v_s)

ポイント 風の扱いは「音速の置き換え」一手のみ — 音源・観測者の速度(地面基準)はそのまま。向かい風なら V−w。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
静止どうし(v_s = v_o = 0):f' = f(V+w)/(V+w) = f(変わらない)
説明:追い風で波長は λ' = (V+w)/f に伸びるが、波が届く速さも V+w に増える — f' = (V+w)/λ' = f と、2 つの変化がちょうど打ち消し合う

ポイント 「風の日でも音の高さは変わらない」という日常の事実の証明 — 風が変えるのは届くまでの時間と大きさであって、高さではない。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
式:f' = f(V+w)/(V+w−v_s)
無風の f(V)/(V−v_s) と比べると、シフトの割合は v_s/(V+w) と v_s/V — 分母が大きい追い風の方が割合が小さく、
f' は無風のときより小さい(ただし f よりは大きい)

ポイント 追い風は音を「速く運ぶ」ぶん、音源の追いつき効果(波の詰まり)を薄める — 直感(追い風なら高くなりそう)を式が訂正する好例。極端検算:w → ∞ で f' → f ○。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦6-1【共テ形式:救急車の通過】★★

救急車が一定の振動数のサイレンを鳴らしながら、直線道路を一定の速さで走り、静止した観測者の前を通り過ぎた。通過前の振動数は 720 Hz、通過後は 640 Hz であった。音速を 340 m/s とする。
① 通過の前後で聞こえる高さが変わる主な理由として最も適当なものは [ア] である。
(a) 音源の振動数そのものが走行中に変化するから
(b) 観測者に届く音の波長が、音源の運動によって変わるから
(c) 音源が動くと音速が変わるから
② 救急車の速さは [イウ] m/s である。
③ サイレン本来の振動数は [エオカ] Hz である。
④ 通過前に観測者に届いている音の波長は 0.[キク] m である。
⑤ 救急車を運転している人自身に聞こえるサイレンの振動数は [ケ] である。
(a) 720 Hz
(b) ③で求めた振動数
(c) 640 Hz

実戦6-2【記述形式:ドップラー効果の式の導出】★★★

音速を V とする。
① 振動数 f の音源が、速さ v_s で観測者に向かって動いている。音源の前方にできる波長 λ' を、「音源が 1 秒間に出す f 個の波が入る区間」を考えて導け。
② 静止した観測者が聞く振動数 f₁ を求めよ。
③ こんどは音源が静止し、観測者が速さ v_o で音源に近づく。観測者が「1 秒間に受け取る波の数」を考えて、聞こえる振動数 f₂ を導け。
④ 音源が速さ v_s で観測者へ、観測者が速さ v_o で音源へ、同時に近づいている場合の振動数 f' を導け。
⑤ f = 600 Hz、V = 340 m/s、v_s = 40 m/s、v_o = 35 m/s のとき、f' の値を求めよ。

実戦6-3【記述形式:動く反射板とうなり】★★★

静止した音源が振動数 f = 680 Hz の音を出し続けている。平らな反射板が、音源に向かって速さ v = 20 m/s で近づいてくる。観測者は音源のすぐそばに静止している。音速を V = 340 m/s とする。
① 反射板が受ける音の振動数 f₁ を求めよ。
② 観測者が聞く反射音の振動数 f₂ を求めよ。
③ 反射音の振動数の一般式 f₂ = f(V+v)/(V−v) を導き、②の値と一致することを確かめよ。
④ 観測者が聞く「直接音」と「反射音」の振動数の差(毎秒のうなりの回数)を、f、V、v で表せ。
⑤ 別の実験で、同じ装置のうなりが毎秒 8.0 回であった。このときの反射板の速さを求めよ。


実戦問題 解答・解説


実戦6-1

考え方 通過型ドップラーの定番を、理由(①)→ 逆算(②③)→ 波長(④)→ 同乗者(⑤)へ展開。②は B2-3 の「比から f を消す」手筋の実演。

実戦6-1解答を見る解答を隠す

解答
① 音源が動くと前方で波長が詰まり、後方で伸びる — 届く波長の変化が原因:(b)(ア = (b))
② 比をとる:(V+v)/(V−v) = 720/640 = 9/8
8(340+v) = 9(340−v) → 17v = 340 → v = 20 m/s(イウ = 20)
③ f = f₁(V−v)/V = 720×320/340 ≒ 678 Hz(エオカ = 678)
④ λ = V/f₁ = 340/720 ≒ 0.47 m(キク = 47)
(検算:λ = (V−v)/f = 320/678 ≒ 0.47 ○)
⑤ 運転手は音源と一緒に動く(相対速度 0)— ドップラー効果なし:(b)(ケ = (b))

ポイント
• ④は「観測者が聞く振動数で V を割る」— 観測者が静止なら、届いた波長 × 720 Hz = 340 m/s がそのまま成立(2 ルートの一致が検算)。
• ⑤は A6-3(並走)の応用 — サイレンの中の人には常に"本来の音"が聞こえている。


実戦6-2

考え方 B2・B3 の導出を試験の答案として書き切る、この章の心臓部。①③で2 つの物語(波長・個数)を別々に組み、④で合成 — 公式暗記の人と導出できる人が分かれる関門。

実戦6-2解答を見る解答を隠す

解答
① 1 秒間に、最初の波面は V 進み、音源は v_s 追いかける — f 個の波が長さ V−v_s に詰まる:
λ' = (V−v_s)/f
② 音速は V のまま:f₁ = V/λ' = fV/(V−v_s)
③ 波長 λ = V/f は不変。観測者に対する波の相対の速さは V+v_o なので、1 秒間に受け取る波の数は
f₂ = (V+v_o)/λ = f(V+v_o)/V
④ 音源が作る波長 λ' = (V−v_s)/f を、観測者が相対の速さ V+v_o で受け取る:
f' = (V+v_o)/λ' = f(V+v_o)/(V−v_s)
⑤ f' = 600×(340+35)/(340−40) = 600×375/300 = 750 Hz

ポイント
• ④の 1 行が一般式の設計図 — 「分母は音源(波長担当)、分子は観測者(個数担当)」という役割分担が導出の中に見えている。
• ⑤の検算:互いに近づく → f' > f(750 > 600)○。数値の最後に必ず向きの照合を。


実戦6-3

考え方 A7-3 → B4 を1本の答案に。「板 = 受けるとき観測者・返すとき音源」の 2 段書き(①②)→ 一般式(③)→ うなりへの接続(④)→ 逆算(⑤)— 反射ドップラーの全技術を往復する。

実戦6-3解答を見る解答を隠す

解答
① 板 = 近づく観測者:
板が受ける振動数:f₁ = f(V+v)/V = 680×360/340 = 720 Hz
② 板 = 近づく音源(720 Hz):
反射音:f₂ = f₁×V/(V−v) = 720×340/320 = 765 Hz
③ 2 段をまとめて f₂ = f×(V+v)/V×V/(V−v) = f(V+v)/(V−v)
数値:680×360/320 = 765 Hz — ②と一致 ○
④ うなり = f₂−f = f{(V+v)−(V−v)}/(V−v) = 2fv/(V−v)
⑤ 2×680×v/(340−v) = 8.0
1360v = 8.0(340−v) → 1368v = 2720 → v ≒ 2.0 m/s

ポイント
• ⑤の答え(秒速 2 m = 歩く速さ)でうなり毎秒 8 回 — うなりは微小な速度の高感度センサー。2fv/V ≒ 8 の見積もり(v ≒ 8×340/1360 = 2.0)でも同じ値:v ≪ V の近似が実用域で有効なことの確認。
• ①②の中間値 f₁ を書き残す様式は、符号ミスの自己検出装置 — 720 が 680 と 765 の間にあること自体が整合のサイン。


第7章 光の反射・屈折とレンズ

波動編の後半は — 真空さえ伝わる横波(電磁波)。前半の主役は屈折の法則 n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂:速さと波長は屈折率で変わり、振動数だけは不変(第6章 A2-3 の続き)。屈折率の大きい側からは全反射という完全な鏡が生まれ、光ファイバーを走る。後半はレンズ — 3本の光線の作図と、写像公式 1/a+1/b = 1/f に符号の約束(実像 b > 0・虚像 b < 0・凹レンズ f < 0)を添えれば、カメラも拡大鏡も1本の式で説明できる。


この章の公式・要点まとめ

光の基本
• 光は横波(電磁波の一種)。真空中でも伝わる(音との決定的な違い)
• 真空中の光速 c = 3.0×10⁸ m/s。可視光の波長:約 3.8×10⁻⁷ m(紫)〜 7.7×10⁻⁷ m(赤)

反射の法則
入射角 = 反射角(角はつねに法線(境界面に垂直な線)から測る!)
• 平面鏡の像:鏡について対称な位置にできる正立の虚像

屈折の法則(この章の憲法)
n₁ sinθ₁ = n₂ sinθ₂(絶対屈折率で書くのが実戦形)
• 絶対屈折率 n = c/v(真空基準)。媒質中では:
速さ v = c/n、波長 λ = λ₀/n、振動数 f は不変
• 相対屈折率:sinθ₁/sinθ₂ = v₁/v₂ = λ₁/λ₂ = n₂/n₁
• 覚え方:屈折率の大きい(密な)側ほど「遅く・短く・法線寄り」

全反射
• 屈折率大 → 小へ進む光だけに起こる
• 臨界角:sinθc = n₂/n₁(n₁ > n₂。特に「媒質 → 空気」なら sinθc = 1/n)
• 入射角 > θc で光はすべて反射(光ファイバー・ダイヤモンドの輝きの原理)

レンズ
• 凸レンズの3本の光線:①光軸に平行 → 通過後、焦点を通る ②中心 → そのまま直進 ③手前の焦点を通る → 通過後、光軸に平行
写像公式:1/a+1/b = 1/f/倍率:m = |b|/a
符号の約束:凸レンズ f > 0、凹レンズ f < 0/b > 0:レンズ後方の実像(倒立)、b < 0:前方の虚像(正立)
• 凸レンズ:a > f で倒立実像/a < f で正立拡大の虚像(拡大鏡)/a = f では像ができない(平行光)
• 凹レンズ:つねに正立・縮小の虚像

解法チャート(屈折・レンズ)
1. 図に法線を描き、角は法線から測る
2. n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂ の形で立式(どちらが密かを先に確認)
3. v・λ は n に反比例、f は不変 — 「何が変わり何が残るか」を仕分ける
4. レンズはまず3本の光線で作図 → 像の種類(実か虚か・倒立か正立か)を絵で確定
5. 写像公式に符号込みで代入し、b の符号を像の言葉に翻訳して作図と照合


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
光は真空中でも伝わる。○か×か。

Q2
入射角・屈折角は、何から測った角か。
(a) 境界面から測った角
(b) 境界面に垂直な法線から測った角
(c) どちらから測ってもよい

Q3
光が空気中から水中に入ると、速さと波長は小さくなるが、振動数は変わらない。○か×か。

Q4
全反射が起こる可能性があるのは、光がどちら向きに進むときか。
(a) 屈折率の大きい媒質から小さい媒質へ進むとき
(b) 屈折率の小さい媒質から大きい媒質へ進むとき
(c) どちら向きでも起こりうる

Q5
凸レンズの焦点よりも内側(レンズ寄り)に物体を置くと、どんな像ができるか。
(a) 倒立の実像
(b) 正立の拡大された虚像
(c) 像はできない

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:○ — 光は媒質を必要としない(電磁波)。太陽の光が真空の宇宙を越えて届く — 音(第6章 Q1)との最大の違い。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:(b)法線から測るのが万国共通の約束。「面から 30°」を入射角 30° と読み違えるのが最初の事故(正しくは 60°)。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:○ — 振動のリズム(f)は波源が決め、境界で波はつながっている(第6章 A2-3)— 変わるのは運ばれ方(v と λ)だけ。v = fλ の f を固定して v と λ が連動して縮む。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:(a) — 疎(小)へ出るとき屈折角 > 入射角なので、屈折角が先に 90° に達し得る。密 → 疎、限定 — ダイヤ(n 大)がよく光る理由。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:(b) — 焦点の内側では光線が広がったまま — 実際には交わらず、延長線が交わる正立虚像(拡大鏡・ルーペの原理)。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下

※特に断らない限り、真空(空気)中の光速を c = 3.0×10⁸ m/s、空気の屈折率を 1 とする。


A1【光速と屈折率】

A1-1
屈折率 1.5 のガラスの中を進む光の速さを求めよ。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
v = c/n = 3.0×10⁸/1.5 = 2.0×10⁸ m/s

ポイント 屈折率 = 「真空に比べて何倍遅いか」(n = c/v)。ガラスの中では光も 3 分の 2 のスピードに落ちる — 屈折はこの"減速"が生む現象。

A1-2(類題)
水の屈折率を 4/3 とする。水中の光の速さを求めよ。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
v = c/n = 3.0×10⁸×(3/4) = 2.25×10⁸ ≒ 2.3×10⁸ m/s

ポイント 水の n = 4/3、ガラスの n ≒ 1.5 は頻出の定数 — 分数(4/3)のまま計算すると割り切れて速い。

A1-3(類題)
ある透明な物質の中を、光が 1.5×10⁸ m/s で進んだ。この物質の屈折率を求めよ。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
n = c/v = 3.0×10⁸/(1.5×10⁸) = 2.0

ポイント 屈折率の逆算(速さの測定 → 材質の推定)。n = 2.0 は高屈折率ガラス級 — ちなみにダイヤモンドは n ≒ 2.4(全反射しやすさの源:A4)。


A2【反射の法則と平面鏡】

A2-1
鏡に、法線から 30° の角で光を当てた。
① 反射角を求めよ。
② 入射光と反射光のなす角を求めよ。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
① 反射の法則より 30°
② 30°+30° = 60°

ポイント 反射角 = 入射角(どちらも法線から)。「入射光と反射光のなす角 = 2×入射角」もよく問われる派生量。

A2-2(類題)
入射光の向きを変えずに、鏡を 10° 回転させた。反射光の向きは何度変わるか。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
鏡が 10° 回ると法線も 10° 回り、入射角が 10° 変わる。反射光は入射角の変化の 2 倍動く:
20° 変わる

ポイント鏡を θ 回すと反射光は 2θ 回る」— 法線と反射角の両方が動くため。光てこ(微小回転の拡大測定)の原理。

A2-3(類題)
① 平面鏡の前 0.50 m の位置に物体を置いた。像はどこにできるか。また物体と像の距離を求めよ。
② 身長 160 cm の人が全身を映すのに必要な鏡の縦の長さ(最小)を答えよ。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
① 像は鏡の後方 0.50 m(鏡について対称な位置の虚像)。物体と像の距離は 1.0 m
80 cm(身長の半分)

ポイント ②は「頭からの光も足からの光も、鏡上の中点で反射して目に届く」ため — 鏡までの距離によらず半分で足りる、直感に反する名結論(作図で一度確かめる価値あり)。


A3【屈折の法則(計算)】★★

A3-1
空気中からある液体に、入射角 45° で光を入れたところ、屈折角は 30° であった。この液体の屈折率を求めよ。√2 ≒ 1.4 とする。

A3-1解答を見る解答を隠す

解答
n = sin45°/sin30° = (√2/2)/(1/2) = √2 ≒ 1.4

ポイント 屈折率の測定式 n = sinθ₁/sinθ₂(空気 → 媒質)。角度 2 つを測るだけで材質の指紋(n)が分かる。

A3-2(類題)
屈折率 1.5 のガラス中を進む光が、ガラス内で法線と 30° の角をなして空気との境界面に達した。空気側へ出る光の屈折角 θ について、sinθ の値を求めよ。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
屈折の法則:1.5×sin30° = 1×sinθ
sinθ = 0.75(θ ≒ 49°:入射角より大きく折れ曲がる)

ポイント 密 → 疎では法線から遠ざかる(屈折角 > 入射角)。sinθ が 1 に近づいている — 入射角をもう少し増やすと sinθ > 1 となり解がなくなる:全反射(A4)の予感。

A3-3(類題)
真空中で波長 6.0×10⁻⁷ m(赤色)の光が、屈折率 1.5 のガラスに入った。ガラス中での波長と振動数を求めよ。

A3-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
波長:λ = λ₀/n = 6.0×10⁻⁷/1.5 = 4.0×10⁻⁷ m
振動数:f = c/λ₀ = 3.0×10⁸/(6.0×10⁻⁷) = 5.0×10¹⁴ Hz(不変)

ポイント色(振動数)は変わらず、波長が縮む」— 水中でも赤は赤。v = fλ の帳尻(2.0×10⁸ = 5.0×10¹⁴×4.0×10⁻⁷ ○)まで確認して完答。


A4【全反射】★★★

A4-1
水(屈折率 4/3)の中から空気へ光が出るときの臨界角 θc について、sinθc の値を求めよ。

A4-1解答を見る解答を隠す

解答
屈折角が 90° になるとき:(4/3)sinθc = 1×sin90° = 1
sinθc = 3/4 = 0.75(θc ≒ 49°)

ポイント 臨界角の定義は「屈折角がちょうど 90°」— 屈折の法則に sin90° = 1 を入れるだけ。これより深い角(入射角大)では屈折光が消え、全反射。

A4-2(類題)
屈折率 √2(≒ 1.4)の媒質から空気へ出る光の臨界角を求めよ。

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
sinθc = 1/√2 → θc = 45°

ポイント n = √2 ⇔ 臨界角 45° — きれいに解ける代表値として頻出。45° の直角プリズム(双眼鏡の中身)が鏡の代わりに使える理由。

A4-3(類題)
屈折率 1.5 のガラスから空気へ出る光の臨界角 θc について、sinθc を求めよ。また、光ファイバーで光が漏れずに遠くまで届く理由を一言で述べよ。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
sinθc = 1/1.5 ≒ 0.67(θc ≒ 42°)
理由:芯(屈折率大)と外側(小)の境界で、臨界角を超える浅い角の光が全反射を繰り返すため — 反射のたびの損失がほぼない。

ポイント 全反射は「100 % 反射する完璧な鏡」— 金属鏡の吸収損失がない。海底ケーブル・内視鏡・ダイヤの輝き、すべて sinθc = 1/n の応用。


A5【凸レンズの実像】★★★

A5-1
焦点距離 10 cm の凸レンズの前方 30 cm に物体を置いた。像の位置・種類・倍率を求めよ。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:3本の光線の作図 — a > f なので、光はレンズ後方で実際に交わる。
写像公式:1/30+1/b = 1/10 → 1/b = 1/10−1/30 = 1/15
b = 15 cm(レンズ後方)。倒立の実像、倍率 m = 15/30 = 0.50(縮小)

ポイント レンズの第一手は3本の光線の作図(平行 → 焦点/中心 → 直進/焦点 → 平行)— 式より先に絵で「実像・倒立・縮小」を確定し、計算(b > 0)と照合する。

A5-2(類題)
同じレンズ(f = 10 cm)の前方 15 cm に物体を置いた。像の位置・種類・倍率を求めよ。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
1/b = 1/10−1/15 = 1/30 → b = 30 cm(後方)
倒立の実像、m = 30/15 = 2.0(拡大)

ポイント A5-1 と a・b が入れ替わっただけ(30 ⇄ 15)— 写像公式の a と b の対称性(光路の逆進性:B1-3)。f と 2f の間に置くと「拡大された実像」:プロジェクターの配置。

A5-3(類題)
同じレンズ(f = 10 cm)の前方 20 cm(= 2f)に物体を置いた。像の位置と倍率を求めよ。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
1/b = 1/10−1/20 = 1/20 → b = 20 cm
m = 20/20 = 1.0(物体と同じ大きさの倒立実像)

ポイント a = 2f のとき b = 2f・等倍 — 実像の"折り返し点"となる特別な配置。a > 2f なら縮小(カメラ)、f < a < 2f なら拡大(プロジェクター)、と 2f を境に世界が分かれる。


A6【凸レンズの虚像(拡大鏡)】★★★

A6-1
焦点距離 10 cm の凸レンズの前方 5.0 cm(焦点の内側)に物体を置いた。像の位置・種類・倍率を求めよ。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:a < f — 通過後の光線は広がったまま。延長線が手前で交わる。
1/b = 1/10−1/5.0 = −1/10 → b = −10 cm(レンズの前方 10 cm)
正立の虚像、m = 10/5.0 = 2.0(拡大)

ポイント b < 0 は「前方の虚像」の符号 — 式は作図(正立・拡大・同じ側)をそのまま数値で語る。これがルーペで見る像:目はこの虚像を「そこにある」と感じている。

A6-2(類題)
焦点距離 12 cm の凸レンズの前方 8.0 cm に物体を置いた。像の位置と倍率を求めよ。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
1/b = 1/12−1/8.0 = −1/24 → b = −24 cm(前方)
正立虚像、m = 24/8.0 = 3.0

ポイント 焦点に近づける(a → f)ほど虚像は遠く・大きくなる — 拡大鏡は「焦点の内側ぎりぎり」で使うと倍率が上がる、という使い方の物理。

A6-3(類題)
焦点距離 10 cm の凸レンズの前方ちょうど 10 cm(= f)に物体を置くと、像はどうなるか。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
1/b = 1/10−1/10 = 0 → b は定まらない(像はできない)
物体の各点から出た光は、レンズ通過後平行光線になる。

ポイント a = f は実像(a > f)と虚像(a < f)の境界 — 平行光は「無限遠の像」とも読める。灯台・サーチライトが焦点に光源を置く理由でもある。


A7【凹レンズ】★★

A7-1
焦点距離 10 cm の凹レンズ(f = −10 cm)の前方 10 cm に物体を置いた。像の位置・種類・倍率を求めよ。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
1/b = 1/(−10)−1/10 = −1/5.0 → b = −5.0 cm(前方)
正立の虚像、m = 5.0/10 = 0.50(縮小)

ポイント 凹レンズは f を負で代入するだけで同じ写像公式が使える — 符号の約束が「発散レンズ」の性質(光を広げる)を自動で表現してくれる。

A7-2(類題)
焦点距離 12 cm の凹レンズの前方 24 cm に物体を置いた。像の位置と倍率を求めよ。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
1/b = −1/12−1/24 = −1/8.0 → b = −8.0 cm(前方)
正立虚像、m = 8.0/24 ≒ 0.33

ポイント どこに置いても b < 0・|b| < a — 像はつねに手前側の近くに小さく。近視用めがね(凹レンズ)で見る世界が少し小さく見える理由。

A7-3(類題)
焦点距離 15 cm の凹レンズの前方 30 cm に物体を置いた。像の位置と倍率を求めよ。また、凹レンズの像の種類はどんな場合でも何になるか。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
1/b = −1/15−1/30 = −1/10 → b = −10 cm、m = 10/30 ≒ 0.33
凹レンズの像は、物体の位置によらずつねに正立・縮小の虚像

ポイント 「凹はいつでも正立縮小虚像」— 3 例(A7-1〜3)がすべて同じ結論を指す。一般証明は B6-1(b = −af₀/(a+f₀) がつねに負で |b| < a)。


A8【レンズの応用】★★

A8-1
焦点距離 50 mm のカメラのレンズで、十分遠くの山(a → ∞)を写す。像(フィルム・センサー)の位置はレンズの後方何 mm か。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
a → ∞ で 1/a → 0:1/b = 1/f → b = f = 50 mm

ポイント遠くの物体の像は焦点面にできる」— 焦点距離の名の由来。カメラの「50 mm レンズ」とは、無限遠のピント位置がレンズ後方 50 mm という意味。

A8-2(類題)
A8-1 のカメラ(f = 50 mm = 0.050 m)で、2.0 m 先の人物を写す。像の位置はレンズ後方何 mm か。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
1/b = 1/0.050−1/2.0 = 20−0.50 = 19.5 → b = 0.0513 m ≒ 51 mm

ポイント 近くを写すときはフィルムをわずかに遠ざける(50 → 51 mm)— これが「ピント合わせ(レンズの繰り出し)」の正体。1 mm の移動で 2 m 先に合う、写像公式の実務。

A8-3(類題)
焦点距離 10 cm の凸レンズで、スクリーン上に物体の 5.0 倍の実像を映したい。物体とレンズの距離 a、レンズとスクリーンの距離 b を求めよ。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
実像で 5.0 倍:b = 5.0a。写像公式へ:
1/a+1/(5.0a) = 1/10 → (6/5)/a = 1/10
a = 12 cm、b = 60 cm

ポイント 「倍率の条件 b = ma を先に写像公式へ代入」がプロジェクター型の定跡 — 未知数 2 つ(a、b)を条件 2 本(倍率・公式)で解く連立の型。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。屈折は「何が変わり何が不変か」、レンズは「符号の約束」を宣言してから立式するのが作法。B4(写像公式の導出)とB5(2位置問題)が入試の最頻出


B1【屈折の法則の整理(文字)】★★★

B1-1 媒質1(速さ v₁)から媒質2(速さ v₂)へ波が進むとき、境界での波面のつながりから sinθ₁/sinθ₂ = v₁/v₂ となる。この関係と n = c/v から、n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂ を導け。また sinθ₁/sinθ₂ が λ₁/λ₂、n₂/n₁ にも等しいことを示せ。

B1-2 媒質(屈折率 n)の中で、光の波長が λ = λ₀/n(λ₀:真空中の波長)になることを示せ。また、境界を越えても振動数が変わらない理由を述べよ。

B1-3 「光の進む道筋は、逆向きにもそのまま成り立つ(光路の逆進性)」— この性質が屈折の法則の式から読み取れることを説明せよ。

B2【全反射(文字)】★★★

B2-1 屈折率 n₁ の媒質から n₂ の媒質(n₁ > n₂)へ光が進むときの臨界角 θc について、sinθc = n₂/n₁ を導け。

B2-2 屈折率 n の水の、深さ d の位置に点光源がある。水面を見上げたとき、光が空気中へ出ていける範囲は、光源の真上を中心とする円(明るい円)になる。この円の半径 r を n、d で表せ。

B2-3 光ファイバーは、屈折率 n₁ の芯(コア)を屈折率 n₂(< n₁)の層(クラッド)で包んだ構造をもつ。光が漏れずに伝わる条件を述べ、外側を n₂ の層で包む(むき出しにしない)理由を1つ挙げよ。

B3【見かけの深さ】★★★

B3-1 屈折率 n の水の、深さ d にある物体を真上近くから見ると、深さ d' = d/n の位置にあるように見える(浮き上がって見える)。角度が小さいとき tanθ ≒ sinθ とみなせることを使って、これを導け。

B3-2 屈折率 4/3 の水の、深さ 80 cm の底に沈むコインは、深さ何 cm にあるように見えるか。

B3-3 厚さ t、屈折率 n のガラス板を通して、板の真下の物体を見ると、物体は実際より浮き上がって見える。浮き上がりの量を t、n で表せ。

B4【写像公式の導出】★★★

B4-1 焦点距離 f の凸レンズの前方 a(> f)に高さ h の物体を置き、後方 b に高さ h' の倒立実像ができた。「中心を通る光線」がつくる相似と、「光軸に平行に入り焦点を通る光線」がつくる相似の2組から、1/a+1/b = 1/f を導け。

B4-2 B4-1 の相似から、倍率が m = b/a と表せることを示せ。

B4-3 物体を焦点の内側(a < f)に置いた場合、写像公式の b は負になる。このことが「レンズの前方にできる虚像」を表していることを、1/b = 1/f−1/a の符号から説明せよ。

B5【2位置問題(物体とスクリーンの距離一定)】★★★

B5-1 物体とスクリーンの距離を L に固定し、間で焦点距離 f の凸レンズを動かす。スクリーン上に鮮明な実像ができるときのレンズの位置(物体からの距離 a)が満たす2次方程式を導け。また、実像ができるための L の条件を求めよ。

B5-2 B5-1 で、実像ができるレンズの位置は一般に2つある。2つの位置の関係と、それぞれの倍率の積がいくらになるかを示せ。

B5-3 2つの位置が一致する(実像の位置がただ1つになる)のはどんなときか。そのときの配置と倍率を述べよ。

B6【虚像の扱いと組み合わせ】★★★

B6-1 焦点距離 f₀ の凹レンズ(f = −f₀)の前方 a に物体を置いたときの像の位置 b を求め、像がつねに「正立・縮小の虚像」であることを式から示せ。

B6-2 平面鏡の像はなぜ「虚像」と呼ばれるのか。凸レンズの実像との違い(スクリーンに映るか)に触れて説明せよ。

B6-3 焦点距離 10 cm の凸レンズ L1 の前方 15 cm に物体を置き、L1 の後方 50 cm に焦点距離 10 cm の凸レンズ L2 を置いた。L1 のつくる像を L2 の「物体」として扱う手順で、最終的な像の位置・種類・全体の倍率を求めよ。


B問題 解答・解説


B1【屈折の法則の整理(文字)】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
境界では波面がつながったまま進むので、同じ時間に媒質1側は v₁ に比例した距離、媒質2側は v₂ に比例した距離を進む — 幾何より sinθ₁/sinθ₂ = v₁/v₂。
関係式 n = c/v より v₁ = c/n₁、v₂ = c/n₂ を代入:
sinθ₁/sinθ₂ = (c/n₁)/(c/n₂) = n₂/n₁ → n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂
また f 不変(B1-2)より λ = v/f は v に比例するので sinθ₁/sinθ₂ = v₁/v₂ = λ₁/λ₂ = n₂/n₁(4点セット)。

ポイント 屈折の原因は「媒質による速さの違い」— 砂浜へ斜めに乗り上げる車列が向きを変えるイメージ。4 つの比がすべて等しい"翻訳表"を1枚にしておく。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
振動数は不変(理由:境界の1点では、両側の媒質が同じ振動を共有してつながっている — 1 秒に届く波の数と送り出す数は等しい)。
よって λ = v/f = (c/n)/f = (c/f)/n = λ₀/n

ポイントf は波源と境界の連続性が守る、v と λ は媒質が変える」— 第4章 B4-3・第6章 A2-3 から続く原則の光版。色(f)が水中でも変わらない理由。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
屈折の法則 n₁sinθ₁ = n₂sinθ₂ は、添字 1 と 2 を入れ替えても同じ式になる(左右対称)。
つまり「媒質1から θ₁ で入射して θ₂ へ屈折する」なら、「媒質2から θ₂ で入射すれば θ₁ へ屈折する」— 光は来た道をそのまま引き返せる ∎

ポイント 逆進性は A5-2(a と b の入れ替え)や B5-2(2位置問題)のレンズ対称性の源 — 1本の式の対称性が、章の後半の現象まで支配している。


B2【全反射(文字)】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
臨界角は屈折角がちょうど 90° になる入射角:
n₁sinθc = n₂sin90° = n₂
sinθc = n₂/n₁ ∎(n₁ > n₂ のときだけ sinθc < 1 となり存在する)

ポイント 「θc の定義 = 屈折角 90°」を式に翻訳するだけ — n₁ < n₂ だと sinθc > 1 で解なし:全反射が密 → 疎限定である理由が式の存在条件として現れる。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
光源から水面へ、入射角 θc 以内で届いた光だけが空気へ出られる。
出られる範囲の縁は入射角 θc の光が水面に達する点 — 真上を中心とする半径 r = d tanθc の円。
sinθc = 1/n より tanθc = 1/√(n²−1):
r = d/√(n²−1)

ポイント 水中から見上げる空は円形の窓(スネルの窓)— 窓の外側は全反射で水底が鏡のように映る。n = 4/3 なら r ≒ 1.1d:深さと同程度の半径。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
条件:光が芯とクラッドの境界に、臨界角 θc(sinθc = n₂/n₁)より大きい入射角で当たり続けること — 全反射を繰り返して光は芯の中に閉じ込められる。
包む理由の例:芯がむき出しだと、表面の傷・汚れ・接触で全反射の条件が乱れて光が漏れるため(境界の屈折率差を清浄なクラッドで一定に保つ)。

ポイント 「全反射は境界の条件がすべて」— クラッドは"境界の品質保証"。曲げても浅い角で当たり続ける限り漏れない、が光ファイバーの設計思想。


B3【見かけの深さ】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
物体から出て水面で屈折し目に届く光を考える。水中の角 θ₂、空気中の角 θ₁ とすると、屈折の法則(水 → 空気):n sinθ₂ = sinθ₁。
真上近くから見るので角は小さく、tanθ ≒ sinθ。
水面上の同じ点を通ることから、実際の深さ d と見かけの深さ d' は
d tanθ₂ = d' tanθ₁ ≒ の関係で d sinθ₂ = d' sinθ₁
よって d' = d×(sinθ₂/sinθ₁) = d/n

ポイント 「同じ水面の点・同じ横ずれ」を d tanθ で2通りに書く — 近似 tanθ ≒ sinθ が屈折の法則との橋になる。プールの底が浅く見える(n = 4/3 で 3/4 の深さ)日常の定量化。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
見かけの深さ d' = d/n = 80×(3/4) = 60 cm

ポイント 4分の1だけ浮き上がる — 「水深は見た目より深い」ことの数値。川や プールの事故防止の物理でもある。

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
板の下面(物体側)から見た厚さ t が、見かけ上 t/n に縮む(B3-1)。
浮き上がり = t−t/n = t(1−1/n)

ポイント ガラス越しの世界はわずかに「持ち上がって」見える — n = 1.5 なら厚さの 1/3。顕微鏡でカバーガラスの補正が要る理由につながる、見かけの深さの応用形。


B4【写像公式の導出】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:高さ h の物体(距離 a)、高さ h' の倒立実像(距離 b)。
①中心を通る光線:物体の頭・レンズ中心・像の頭が一直線 — 相似より
h'/h = b/a …(1)
②光軸に平行に入り、後方の焦点 F を通る光線:レンズ面と光軸の交点まわりの相似(焦点から像まで b−f)より
h'/h = (b−f)/f …(2)
(1) = (2):b/a = (b−f)/f → bf = ab−af
両辺を abf で割って 1/a+1/b = 1/f

ポイント 材料は相似2組だけ — 3本の光線のうち2本が、そのまま証明の補助線になる。導出を一度手で通せば、公式の符号や形を忘れても再建できる。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
(1) より倍率は
m = h'/h = b/a

ポイント 倍率の正体は「中心光線の相似比」— だから実像でも虚像でも m = |b|/a(距離の比)が通用する。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
a < f では 1/f−1/a < 0、すなわち 1/b < 0 → b < 0。
b は「レンズ後方を正」と約束した距離なので、負の b はレンズ前方を指す — 光線は実際には交わらず、前方で延長線が交わる虚像(作図の結果)と一致する ∎

ポイント 符号は方角の記号 — 「式が作図を知っている」ことの確認。b < 0 を見たら機械的に「前方・正立・虚像」へ翻訳(凸の拡大鏡も凹レンズもこの一つの規則で読める)。


B5【2位置問題(物体とスクリーンの距離一定)】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
関係:a+b = L と 1/a+1/b = 1/f。
第2式より (a+b)/(ab) = 1/f → ab = fL。
b = L−a を代入して a(L−a) = fL:
条件式:a²−La+fL = 0
実数解(実像の位置)が存在する条件は判別式 ≧ 0:
L²−4fL ≧ 0 → L ≧ 4f

ポイント 「物体とスクリーンは、少なくとも 4f 離れていないと実像は結べない」— 実験室でスクリーンに像が出ないときの最初のチェック項目。等号は B5-3 の等倍配置。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
2次方程式の解 a₁、a₂ について、解と係数の関係より a₁+a₂ = L — よって a₂ = L−a₁ = b₁:
一方の位置の a と b を入れ替えたものが、もう一方の位置(光路の逆進性:B1-3)。
倍率:m₁ = b₁/a₁、m₂ = b₂/a₂ = a₁/b₁
積 m₁m₂ = 1

ポイント 2つの像は「拡大」と「縮小」のペアで、倍率は互いに逆数 — 一方で 2 倍なら他方は 1/2 倍。測って掛ければ 1 になる、実験の検算式としても優秀。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
2解が一致するのは判別式 = 0、すなわち L = 4f のとき。
このとき a = L/2 = 2f、b = 2f — 物体もスクリーンも焦点距離の2倍の位置、倍率 1(等倍)(A5-3 の配置)。

ポイント 「最短のスクリーン距離 4f で等倍」— 2位置問題の縮退点。a = b = 2f はレンズの世界の"対称の中心"として何度も現れる。


B6【虚像の扱いと組み合わせ】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
写像公式(f = −f₀):1/b = −1/f₀−1/a = −(a+f₀)/(af₀)
b = −af₀/(a+f₀)
a > 0、f₀ > 0 よりつねに b < 0 — 前方の虚像(正立)
大きさ:|b| = af₀/(a+f₀) は a より小さく(分母 > f₀)、m = |b|/a = f₀/(a+f₀) < 1 — つねに縮小

ポイント A7 の3例の一般証明 — 分数の形 af₀/(a+f₀)(第3章の m₁m₂/(m₁+m₂) と同じ"並列の顔")が、a によらず |b| < a、|b| < f₀ を保証する。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
平面鏡の像の位置から光が出ているように見えるだけで、実際にその位置に光は集まっていない(鏡の後ろに光は無い)。
スクリーンをその位置に置いても何も映らない — これが虚像。
凸レンズの実像は光が実際に集まる点なので、スクリーンに映せる(カメラ・プロジェクター)。

ポイント 実像と虚像の判定基準は「スクリーンに映るか」ただ1つ — 「見える/見えない」ではない(虚像も目にはちゃんと見える)。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
第1段(L1):1/b₁ = 1/10−1/15 = 1/30 → b₁ = 30 cm(後方、倒立実像、m₁ = 30/15 = 2.0)
第2段(L2):L1 の像は L2 の前方 50−30 = 20 cm — これを物体として
1/b₂ = 1/10−1/20 = 1/20 → b₂ = 20 cm(L2 の後方、再び倒立、m₂ = 20/20 = 1.0)
最終像:L2 の後方 20 cm、正立(倒立の倒立)の実像、全体の倍率 m = m₁m₂ = 2.0

ポイント 組み合わせは「前段の像 = 後段の物体」のバケツリレー — 倍率は積、倒立は回数の偶奇で決まる(2回で正立)。望遠鏡・顕微鏡の設計は、この手順の反復にすぎない。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦7-1【共テ形式:液体の屈折と全反射】★★

屈折率 1.4 の透明な液体がある。空気の屈折率を 1、真空(空気)中の光速を 3.0×10⁸ m/s、√2 ≒ 1.4 とする。
① 空気側から液面に入射角 45° で光を入れた。屈折角は [アイ]° である。
② 液体中の光の速さは [ウ].[エ]×10⁸ m/s である。
③ 真空中で波長 5.6×10⁻⁷ m の光の、液体中での波長は [オ].[カ]×10⁻⁷ m である。
④ 液体中から液面(空気との境界)へ向かう光の臨界角は [キク]° である。
⑤ 液体中から液面に入射角 50° で光を当てると、光はどうなるか:[ケ]
(a) 一部が屈折して空気中へ出て、一部が反射する
(b) すべて反射する(全反射)
(c) すべて空気中へ出る

実戦7-2【記述形式:凸レンズの像の総合】★★★

焦点距離 12 cm の凸レンズがある。
① レンズの前方 36 cm に物体を置いたときの、像の位置・種類・倍率を求めよ。
② 前方 18 cm に置いたときの、像の位置・種類・倍率を求めよ。
③ ①と②の結果(a と b の値の組)にはどんな関係があるか。その理由を光の性質から一言で述べよ。
④ 前方 8.0 cm に置いたときの、像の位置・種類・倍率を求めよ。
⑤ 像が「実像」から「虚像」に切り替わる境目の物体の位置を答え、そのとき光がどうなるかを述べよ。

実戦7-3【記述形式:物体とスクリーンの間のレンズ(2位置問題)】★★★

物体とスクリーンを 90 cm 離して固定し、その間で焦点距離 20 cm の凸レンズを動かして、スクリーン上に鮮明な像を作りたい。
① 物体からレンズまでの距離を a として、a の満たす2次方程式を導け。
② 鮮明な像ができるレンズの位置(a の値)をすべて求めよ。
③ それぞれの位置での像の倍率を求めよ。
④ ③の2つの倍率の積を求め、そうなる理由を述べよ。
⑤ この配置(距離 90 cm)で実像が作れることを、実像ができるための一般条件を示して確かめよ。


実戦問題 解答・解説


実戦7-1

考え方 1つの液体で「屈折 → 速さ → 波長 → 臨界角 → 全反射」を一気通貫 — n = 1.4(≒ √2)が 45° と 30° の"きれいな角"を生む設計。②③は「n に反比例」の仕分け、④⑤は限界と超過。

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解答
① sin45° = 1.4×sinθ → sinθ = 0.71/1.4 = 0.50 → θ = 30°(アイ = 30)
② v = c/n = 3.0×10⁸/1.4 ≒ 2.1×10⁸ m/s(ウ = 2、エ = 1)
③ λ = λ₀/n = 5.6×10⁻⁷/1.4 = 4.0×10⁻⁷ m(オ = 4、カ = 0)
④ sinθc = 1/1.4 ≒ 0.71 = sin45° → θc = 45°(キク = 45)
⑤ 入射角 50° > 臨界角 45° → 全反射:(b)(ケ = (b))

ポイント
• ①④が同じ「0.71(= 1/√2)」を軸に対になっている — 45° で入れると 30° に折れ、45° を超えて出ようとすると閉じ込められる:1つの n が両方を決める。
• ③のあと f = c/λ₀ が液体中でも不変であること(v = fλ の帳尻:2.1×10⁸ ≒ 5.4×10¹⁴×4.0×10⁻⁷)まで見れば、屈折の3点セット(v・λ・f)が完成する。


実戦7-2

考え方 1枚のレンズで a を 36 → 18 → 8.0 cm と動かし、実像(縮小・拡大)→ 虚像へと像の一生をたどる。各問とも「作図 → 公式 → 符号の翻訳」の3拍子で。

実戦7-2解答を見る解答を隠す

解答
① 1/b = 1/12−1/36 = 1/18 → b = 18 cm(後方)、倒立実像、m = 18/36 = 0.50
② 1/b = 1/12−1/18 = 1/36 → b = 36 cm(後方)、倒立実像、m = 36/18 = 2.0
a と b がちょうど入れ替わっている(36、18)⇄(18、36)。
理由:光路の逆進性 — 光は同じ道を逆向きにもたどれるため、物体と像の位置は交換できる。
④ 1/b = 1/12−1/8.0 = −1/24 → b = −24 cm(前方)、正立虚像、m = 24/8.0 = 3.0
⑤ 境目は a = f = 12 cm。このとき物体の各点から出た光はレンズ通過後平行光線となり、像はできない(実像と虚像の分水嶺)。

ポイント
• ①→②→④で倍率 0.50 → 2.0 → 3.0:物体をレンズへ近づけるほど像は大きくなる — ただし f を切った瞬間、像は後方の実像から前方の虚像へ姿を変える(⑤がその境界)。
• ④の答案では「b < 0 = レンズ前方・正立・虚像」の翻訳の一文を必ず添える — 数値と像の言葉の対応が採点の核心。


実戦7-3

考え方 B5 の完全数値版。連立(a+b = 90、写像公式)→ 2次方程式 → 2解 → 倍率が逆数ペア、の流れを自分の手で再構成する。⑤の一般条件 L ≧ 4f が問題設定の"種明かし"。

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解答
① a+b = 90 と 1/a+1/b = 1/20 から ab = 20×90 = 1800。
b = 90−a を代入して:
a²−90a+1800 = 0
② 解の公式:a = {90±√(8100−7200)}/2 = (90±30)/2
a = 30 cm と 60 cm
③ a = 30 のとき b = 60:m = 60/30 = 2.0
a = 60 のとき b = 30:m = 30/60 = 0.50
④ 積:2.0×0.50 = 1.0
理由:2つの位置は a と b を入れ替えた配置(光路の逆進性)なので、倍率 b/a と a/b は互いに逆数になるから。
⑤ 実像ができる一般条件は判別式 ≧ 0 より L ≧ 4f
本問では 4f = 80 cm ≦ 90 cm — 条件を満たすので実像が作れる ○

ポイント
• ②の検算:1/30+1/60 = 1/20 ○(両方の解を公式に戻す 10 秒の習慣)。2 解の和 90 = L、積 1800 = fL — 解と係数の関係(数学第1巻)がそのまま光学の検算装置になる。
• L = 80 cm ちょうどなら a = b = 40 cm(= 2f)の1点だけで等倍(B5-3)— ⑤の等号の意味まで言えれば完答を超える。


第8章 光の干渉

最終章は、光が波であることの決定的な証拠 — 干渉。2つの光の「経路差」が λ の整数倍なら明、半端なら暗:この1行に、反射の位相変化(屈折率 小 → 大 の反射は π 反転 = 固定端反射:第4章の再演)という薬味を加えれば、ヤングの縞・回折格子の虹・シャボン玉の色・ニュートンリングまで、すべて同じ型で解ける。波長 10⁻⁷ m という見えない長さを、mm の縞に拡大して測る — 干渉は「光のものさし」である。


この章の公式・要点まとめ

干渉の条件(同位相の2波源)
• 経路差 = mλ → 強め合い(明)/経路差 = (m+1/2)λ → 弱め合い(暗)(m = 0、1、2、…)
• 反射で位相が反転する場合は、この条件が入れ替わる(下記)

ヤングの実験(2スリット)
• スリット間隔 d、スクリーンまで L、中央から x の点:経路差 ≒ dx/L(L ≫ d、x)
• 明線:dx/L = mλ → x = mLλ/d
縞の間隔 Δx = Lλ/d — 波長の測定式:λ = dΔx/L

回折格子(多数スリット)
• 格子定数 d(1 cm に N 本 → d = 1/N cm)
• 明線:d sinθ = mλ — 多数の波がそろう方向だけ鋭く明るい
• 白色光では m ≧ 1 が虹(スペクトル)に分かれる:波長の長い赤ほど外側

反射の位相変化(この章の急所)
• 屈折率 小 → 大 の境界での反射:位相が π ずれる(山谷が反転:固定端反射)
• 屈折率 大 → 小 の境界での反射:位相はずれない(自由端反射)
反転の合計回数が偶数(0、2)→ 通常の条件/奇数(1)→ 明暗の条件が逆転

薄膜の干渉(垂直入射)
• 光路差 = 2nd(n:膜の屈折率、d:厚さ)— 膜の中では波長が λ/n に縮むため n 倍で数える
• シャボン膜(空気/膜/空気):反転1回 → 2nd = mλ で暗、(m+1/2)λ で明
• 反射防止膜(空気/膜/ガラス、n が階段状):反転2回 → 2nd = (m+1/2)λ で暗(反射が消える)

くさび形空気層
• 端から x、傾き θ(≪1):空気層の厚さ D = xθ、経路差 2D。反転1回。
• 暗線:2xθ = mλ/縞の間隔 Δx = λ/(2θ)

ニュートンリング(曲率半径 R の平凸レンズ+平面ガラス)
• 中心から r:空気層の厚さ D ≒ r²/(2R)、経路差 2D = r²/R。反転1回。
暗環:r = √(mλR)、明環:r = √{(m+1/2)λR}。中心(D = 0)は暗い

解法チャート(干渉)
1. 2つの光の経路差(媒質中は n 倍した光路差)を図から求める
2. 反射の回数と種類を数える:小 → 大 の反射1回ごとに条件が反転
3. 反転が偶数回 → 差 = mλ で明/奇数回 → 差 = mλ で暗
4. 縞の間隔は「m が 1 変わる」条件の差から
5. 検算:λ が長い(赤)ほど縞は広い/媒質(n)で満たすと縞は縮む


概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて

Q1
同位相の2つの波源からの経路差が、波長のちょうど整数倍になる点ではどうなるか。
(a) 強め合う(明)
(b) 弱め合う(暗)
(c) 干渉は起こらない

Q2
ヤングの実験で、スリットの間隔 d を狭くすると、スクリーン上の縞の間隔は広がる。○か×か。

Q3
光が、屈折率の小さい媒質から大きい媒質へ向かう境界で反射するとき、どうなるか。
(a) 位相が π ずれる(山と谷が反転する)
(b) 位相はずれない
(c) 反射は起こらない

Q4
シャボン玉や水面の油膜が色づいて見えるのは、膜の厚さや見る角度によって、強め合う波長(色)が変わるからである。○か×か。

Q5
ニュートンリングの中心(レンズとガラスの接点)は、反射光で見るとどうなっているか。
(a) 明るい
(b) 暗い
(c) 使う波長によって明にも暗にもなる

概念チェック 解答

Q1解答を見る解答を隠す

Q1:(a) — 整数倍なら山と山がそろって到着(強め合い)。半端(m+1/2)なら山と谷で打ち消し。干渉のすべての条件式はこの1行の言い換え。

Q2解答を見る解答を隠す

Q2:○ — Δx = Lλ/d:d が分母 — 狭いスリットほど縞は広がる。「小さいものほど大きく回り込む」波の性質の現れ。

Q3解答を見る解答を隠す

Q3:(a) — 小 → 大は固定端反射(第4章:動きにくい相手にぶつかる)で山谷反転。大 → 小は自由端でそのまま。この対応が薄膜問題の生命線。

Q4解答を見る解答を隠す

Q4:○ — 白色光のうち、その厚さ・角度で強め合う波長だけが強く返る — 場所ごとに選ばれる色が違うから虹色に見える。膜が薄すぎる(≪ λ)と全色暗くなり黒く見える(割れる直前のシャボン玉)。

Q5解答を見る解答を隠す

Q5:(b) — 接点では経路差 0 だが、反転1回のぶん山谷が食い違い、弱め合う — 「差がゼロなのに暗い」ことが、位相反転の実在の証拠になっている。


A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下

※特に断らない限り、光は単色で、空気の屈折率を 1 とする。


A1【干渉の条件(基本)】★★

A1-1
同位相で振動する2つの波源から出た波長 6.0×10⁻⁷ m の光が、ある点に届いた。経路差が 1.2×10⁻⁶ m のとき、この点は明るいか暗いか。

A1-1解答を見る解答を隠す

解答
経路差/λ = 1.2×10⁻⁶/(6.0×10⁻⁷) = 2(整数)
強め合う(明るい)

ポイント 判定は「経路差を λ で割る」だけ — 整数なら明、整数+1/2 なら暗。÷ の前に指数をそろえる(1.2×10⁻⁶ = 12×10⁻⁷)と事故が減る。

A1-2(類題)
A1-1 と同じ光で、経路差が 9.0×10⁻⁷ m の点は明るいか暗いか。

A1-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
9.0×10⁻⁷/(6.0×10⁻⁷) = 1.5(= 1+1/2)
弱め合う(暗い)

ポイント 山と谷が出会う「半波長のずれ」— m+1/2 の形かどうかを見る。1.5 = 「1 と半分」:半分がある限り暗。

A1-3(類題)
同位相の2つの波源 S₁、S₂ から出た光が点 P に届く。S₁P = 2.4×10⁻⁶ m、S₂P = 3.0×10⁻⁶ m で、波長は 6.0×10⁻⁷ m である。P は明るいか暗いか。

A1-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
経路差 = 3.0×10⁻⁶−2.4×10⁻⁶ = 6.0×10⁻⁷ m = λ(1 倍)
強め合う(明るい)

ポイント距離の差」を作ってから λ と比べる — 第4章 B6-3(中点は腹)の一般化。以後のすべての干渉装置は、この経路差の作り方(dx/L、2nd、2D…)が違うだけ。


A2【ヤングの実験(縞の位置と間隔)】★★★

A2-1
スリット間隔 d = 0.20 mm、スリットからスクリーンまで L = 1.0 m、波長 6.0×10⁻⁷ m の単色光でヤングの実験を行った。明線の間隔を求めよ。

A2-1解答を見る解答を隠す

解答
Δx = Lλ/d = 1.0×6.0×10⁻⁷/(2.0×10⁻⁴) = 3.0×10⁻³ m(3.0 mm)

ポイント Δx = Lλ/d — 10⁻⁷ m の波長が、L/d(= 5000 倍)に拡大されて mm の縞になる。単位換算(mm → m)を最初に済ませてから代入。

A2-2(類題)
A2-1 で、中央の明線から数えて 2 番目の明線(m = 2)は、中央から何 mm の位置にあるか。

A2-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
x = mLλ/d = 2×3.0 mm = 6.0 mm

ポイント 明線は Δx 間隔で等間隔に並ぶ — m 番目は中央から mΔx。中央(m = 0)は経路差 0 の特等席で、必ず明るい。

A2-3(類題)
A2-1 で、中央の明線に最も近い暗線は、中央から何 mm の位置にあるか。

A2-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
最初の暗線は経路差 λ/2:dx/L = λ/2
x = Lλ/(2d) = 3.0/2 = 1.5 mm

ポイント 暗線は明線と明線のちょうど中間(Δx/2 ずれた位置)— 明線の"すき間"を λ/2 が埋めている。明と暗、2 本のはしごが半目盛りずれて並ぶ図を描く。


A3【ヤングの実験(波長測定と条件変更)】★★★

A3-1
スリット間隔 0.30 mm、スクリーンまで 1.5 m のヤングの実験で、明線の間隔が 2.5 mm であった。光の波長を求めよ。

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解答
λ = dΔx/L = 3.0×10⁻⁴×2.5×10⁻³/1.5 = 5.0×10⁻⁷ m

ポイント ヤングの実験は波長の測定装置 — 定規で測れる 3 つの長さ(d、L、Δx)から、目に見えない λ が出る。1801 年、光の波動説を決定づけた歴史的実験。

A3-2(類題)
同じ装置で、光を赤色(波長 7.0×10⁻⁷ m)と紫色(波長 4.0×10⁻⁷ m)に取り替えた。縞の間隔が広いのはどちらか。また何倍か。

A3-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Δx ∝ λ:赤の方が広い。7.0/4.0 ≒ 1.8 倍

ポイント赤は広く、紫は狭い」— 白色光では中央だけ白く、外側の縞は色ずれして虹になる(内側が紫・外側が赤)。波長と縞幅の比例が色分解の正体。

A3-3(類題)
A2-1 の装置全体を水(屈折率 4/3)の中に沈めた。明線の間隔はいくらになるか。

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解答
水中では波長が λ/n に縮む:
Δx' = L(λ/n)/d = 3.0×(3/4) = 2.25 ≒ 2.3 mm(狭くなる)

ポイント 干渉を支配するのは「その場の波長」 — 媒質に沈めると λ → λ/n で縞ごと縮む(f は不変:第7章)。「縞の間隔は波長の物差し」の裏返しの確認。


A4【回折格子】★★★

A4-1
1 cm あたり 5000 本の筋をもつ回折格子に、波長 6.0×10⁻⁷ m の光を垂直に当てた。
① 格子定数 d を求めよ。
② 1 次(m = 1)の明線の方向について、sinθ を求めよ。

A4-1解答を見る解答を隠す

解答
① d = 1.0×10⁻² m/5000 = 2.0×10⁻⁶ m
② d sinθ = λ より sinθ = 6.0×10⁻⁷/(2.0×10⁻⁶) = 0.30

ポイント 格子定数は「筋 1 本ぶんの間隔」= 全長 ÷ 本数。条件式 d sinθ = mλ は、隣どうしのスリットの経路差が d sinθ であることの直訳。

A4-2(類題)
A4-1 の格子で、明線は何本観測できるか(m = 0 を含め、両側まで数える)。

A4-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
sinθ = mλ/d = 0.30m ≦ 1 → m ≦ 3.3 → m = 0、±1、±2、±3
合計 7 本

ポイント 明線の本数は「sinθ ≦ 1 の壁」が決める — m = 4 は sinθ = 1.2 で存在しない。±両側と中央を忘れず数える(2×3+1 = 7)。

A4-3(類題)
格子定数 2.0×10⁻⁶ m の回折格子で、1 次の明線が sinθ = 0.25 の方向に観測された。光の波長を求めよ。

A4-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
λ = d sinθ = 2.0×10⁻⁶×0.25 = 5.0×10⁻⁷ m

ポイント 回折格子も波長の測定器(ヤングより明線が鋭く高精度)— 分光器の心臓部。角度 1 つで λ が決まる素直さが強み。


A5【薄膜の干渉(シャボン膜)】★★★

A5-1
空気中に浮かぶ薄い膜(屈折率 1.3)に光が垂直に入射し、膜の上面で反射した光と、下面で反射して戻ってきた光が干渉する。位相が反転する反射はどちらで起こるか。また、干渉の条件は通常と同じか、逆転するか。

A5-1解答を見る解答を隠す

解答
上面:空気(1)→ 膜(1.3)= 小 → 大:反転する(固定端反射)
下面:膜(1.3)→ 空気(1)= 大 → 小:反転しない(自由端反射)
反転は合計 1 回(奇数)→ 明暗の条件が逆転する

ポイント 薄膜の第一手は反転の勘定 — 「上面と下面、それぞれ小 → 大か?」を図に書き込む。1 回なら逆転、0 回・2 回なら通常。式より先にこの表を作る。

A5-2(類題)
A5-1 の膜(n = 1.3)で、波長 5.2×10⁻⁷ m の光の反射光が強め合う(明るく見える)ための、膜の最小の厚さを求めよ。

A5-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
反転 1 回なので、明の条件:2nd = (m+1/2)λ
最小は m = 0:d = λ/(4n) = 5.2×10⁻⁷/(4×1.3) = 1.0×10⁻⁷ m

ポイント 最小厚は λ/(4n) — 「膜の中の波長 λ/n の 4 分の 1」。シャボン膜の厚さは 10⁻⁷ m 級:干渉が"厚さ計"として機能している。

A5-3(類題)
A5-2 の膜で、反射光が弱め合う(その色が消える)ための、0 でない最小の厚さを求めよ。

A5-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
暗の条件:2nd = mλ。d ≠ 0 の最小は m = 1:
d = λ/(2n) = 5.2×10⁻⁷/(2×1.3) = 2.0×10⁻⁷ m

ポイント m = 0(d = 0)は「膜がない」ので除外 — 「0 でない最小」は m = 1 から。明(λ/4n)と暗(λ/2n)が交互に現れる階段を、厚さ方向にイメージする。


A6【反射防止膜(反転 2 回)】★★★

A6-1
ガラスレンズ(屈折率 1.5)の表面に、屈折率 1.25 の薄膜をコーティングした。空気側から垂直に入射する光について、膜の上面・下面での反射の位相はどうなるか。また干渉の条件は通常か、逆転か。

A6-1解答を見る解答を隠す

解答
上面:空気(1)→ 膜(1.25)= 小 → 大:反転
下面:膜(1.25)→ ガラス(1.5)= 小 → 大:反転
反転は合計 2 回(偶数)→ 条件は通常のまま(2nd = mλ で明、(m+1/2)λ で暗)

ポイント シャボン膜(1 回)との違いは下面の相手 — 屈折率が「階段状に増える」構造では両面で反転し、差し引きゼロ。反転の勘定が結論を分ける好対照。

A6-2(類題)
A6-1 の膜で、波長 5.5×10⁻⁷ m(緑)の反射光を弱め合いで消したい(反射防止)。膜の最小の厚さを求めよ。

A6-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
暗の条件:2nd = (m+1/2)λ。最小は m = 0:
d = λ/(4n) = 5.5×10⁻⁷/(4×1.25) = 1.1×10⁻⁷ m

ポイント カメラ・めがねのコーティングの設計式 — 視感度の高い緑を狙って λ/(4n) に作る。反射で消えた分は透過へ回る(エネルギー保存):「消す」= 「よく通す」。

A6-3(類題)
反射防止膜つきのレンズを見ると、表面がうっすら紫(赤紫)に色づいて見えることが多い。その理由を説明せよ。

A6-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
膜は緑(スペクトルの中央)を最もよく消す厚さに設計されている。
そのため反射光では緑が欠け、両端の赤と紫(青)が相対的に残って混ざり、赤紫に見える。

ポイント 「消した色の補色が残る」— 白色光から一部の波長を引き算する、干渉の色の見方。シャボン玉の色(足し算で選ばれた色)と対にして理解する。


A7【くさび形空気層】★★★

A7-1
2 枚の平らなガラス板を重ね、一端に薄い紙をはさんで、くさび形の空気層を作った。板の長さは 0.10 m、紙の厚さは 2.5×10⁻⁵ m である。波長 5.0×10⁻⁷ m の光を真上から当てるとき、干渉縞(暗線)の間隔を求めよ。

A7-1解答を見る解答を隠す

解答
傾き:θ = a/L = 2.5×10⁻⁵/0.10 = 2.5×10⁻⁴ rad
縞の間隔:Δx = λ/(2θ) = 5.0×10⁻⁷/(5.0×10⁻⁴) = 1.0×10⁻³ m(1.0 mm)

ポイント 隣の暗線までに空気層の厚さが λ/2 増える(経路差 2D が λ 増える)— Δx = λ/(2θ)。紙 1 枚の傾きが、等間隔の縞として可視化される。

A7-2(類題)
同じ長さ 0.10 m の 2 枚のガラス板ではさんだ紙の厚さを知りたい。波長 6.0×10⁻⁷ m の光で縞の間隔が 2.0 mm だったとき、紙の厚さを求めよ。

A7-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
Δx = λL/(2a) より a = λL/(2Δx) = 6.0×10⁻⁷×0.10/(2×2.0×10⁻³)
a = 1.5×10⁻⁵ m(0.015 mm)

ポイント 干渉縞で紙 1 枚の厚さ(15 μm)が測れる — mm の縞から 10⁻⁵ m を逆算する「光のマイクロメーター」。干渉測定の実用感を体で覚える1問。

A7-3(類題)
① くさびの接触している端(空気層の厚さ 0)は、反射光で見ると明か暗か。理由も述べよ。
② 空気層を水(屈折率 4/3)で満たすと、縞の間隔はどうなるか。

A7-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
。経路差は 0 だが、下のガラス面での反射(空気 → ガラス:小 → 大)で位相が 1 回反転するため、2 つの反射光は逆位相で弱め合う。
② 層内の波長が λ/n になるので、Δx' = Δx×(3/4) — 3/4 倍に狭くなる

ポイント ①は「差 0 なのに暗い」= 位相反転の動かぬ証拠(概念チェック Q5 と同じ論理)。②は A3-3 と同じ「その場の波長」原理 — 装置が変わっても原理は 1 つ。


A8【ニュートンリング】★★★

A8-1
平凸レンズを平面ガラスの上に置き、真上から単色光を当てると、同心円状の縞(ニュートンリング)が見える。中心(接点)が暗い理由を述べよ。

A8-1解答を見る解答を隠す

解答
中心では空気層の厚さ 0 で経路差 0。しかし下面(空気 → ガラス:小 → 大)の反射で位相が 1 回反転するため、2 つの光は逆位相 — 弱め合って暗くなる

ポイント くさび(A7-3)と同じ結論を円形で — 「中心暗」はニュートンリングの指紋。もし中心が明るく見えたら、接点にすき間かごみがある(検査に使える)。

A8-2(類題)
曲率半径 2.0 m の平凸レンズによるニュートンリングを、波長 5.0×10⁻⁷ m の光で観察した。中心から数えて 1 番目(m = 1)の暗環の半径を求めよ。

A8-2(類題)解答を見る解答を隠す

解答
暗環:r = √(mλR) = √(1×5.0×10⁻⁷×2.0) = √(1.0×10⁻⁶)
r = 1.0×10⁻³ m(1.0 mm)

ポイント 暗環の半径は √(mλR) — 空気層の厚さ D ≒ r²/(2R)(B5-1)に暗の条件 2D = mλ を入れた形。R が大きい(平らに近い)ほど環は大きく緩やか。

A8-3(類題)
A8-2 で、4 番目(m = 4)の暗環の半径を求めよ。また、環の間隔は外側ほどどうなるか。

A8-3(類題)解答を見る解答を隠す

解答
r = √(4)×1.0 = 2.0 mm
半径は √m に比例(1.0、1.41、1.73、2.0 mm、…)— 外側ほど間隔は狭くなる

ポイント 厚さが r² で増えるため、同じ「λ/2 きざみ」を消化する Δr は外ほど小さい — 等間隔のくさび縞との対比で、縞の形は空気層の形の等高線だと分かる。


B問題(応用力養成)

※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。経路差の導出 → 反転の勘定 → 条件式の3段を、どの装置でも同じ順で書くのが作法。B1(ヤングの導出)とB3(位相反転の整理)が入試の最頻出


B1【ヤングの実験の理論】★★★

B1-1 スリット S₁、S₂(間隔 d)から距離 L のスクリーン上、中央から x の点 P について、経路差 S₂P−S₁P ≒ dx/L となることを導け(L は d、x より十分大きい)。

B1-2 B1-1 から、明線の位置 x と、隣り合う明線の間隔 Δx を求めよ。

B1-3 単色光の代わりに白色光を使うと、スクリーンの縞はどう見えるか。「中央」と「その外側」に分けて述べよ。

B2【回折格子の理論】★★★

B2-1 格子定数 d の回折格子に光を垂直に当てるとき、角 θ の方向で明線ができる条件が d sinθ = mλ となることを、隣り合うスリットの経路差から導け。

B2-2 回折格子の明線は、ヤングの実験(2 スリット)の明線よりはるかに鋭い。多数のスリットからの光の重なりに注目して、その理由を説明せよ。

B2-3 回折格子に白色光を当てると、m = 0 と m ≧ 1 の明線はそれぞれどう見えるか。また、同じ次数の中で赤と紫はどちらが外側に来るか。

B3【薄膜干渉の理論】★★★

B3-1 屈折率 n、厚さ d の膜に垂直入射する光について、上面反射光と下面反射光の「光路差」が 2nd となる理由を、膜の中の波長に注目して説明せよ。

B3-2 反射の位相変化(小 → 大で π 反転、大 → 小でそのまま)を、第4章の固定端反射・自由端反射と対応づけて説明せよ。

B3-3 「位相の反転の合計回数が偶数なら通常の条件、奇数なら明暗が逆転」— この規則を、シャボン膜(空気/膜/空気)と反射防止膜(空気/膜/ガラス)のそれぞれに適用し、反射光が明るくなる条件を書け。

B4【くさび形の理論】★★★

B4-1 接触端から距離 x の位置での空気層の厚さを D として、反射光の暗線の条件を書け(くさびの角 θ は小さいとする)。また暗線の位置 x を m、λ、θ で表せ。

B4-2 隣り合う暗線の間隔が Δx = λ/(2θ) となることを導け。

B4-3 このくさびを、反射光ではなく透過光で観察すると、縞の明暗は反射のときと入れ替わる。その理由を、位相の反転とエネルギーの行き先に触れて説明せよ。

B5【ニュートンリングの理論】★★★

B5-1 曲率半径 R の球面と平面の接点から、水平距離 r の位置での空気層の厚さが D ≒ r²/(2R) となることを、三平方の定理と近似(D ≪ R)から導け。

B5-2 暗環・明環の半径をそれぞれ m、λ、R で表せ。

B5-3 環の間隔が外側ほど狭くなる理由を、B5-1 の式から説明せよ。また、この縞がレンズ表面の検査に使える理由を一言述べよ。

B6【干渉の応用・総合】★★★

B6-1 ヤングの実験と回折格子は、どちらも光の波長の測定に使える。それぞれの測定式を挙げ、共通する考え方(何を何に「拡大」しているか)を述べよ。

B6-2 媒質(屈折率 n)の中を長さ ℓ だけ通る光は、真空中の長さ nℓ を通ったのと同じだけ波の数を刻む(光学距離)。このことを波長 λ/n を使って説明し、薄膜の 2nd がこの考えの実例であることを述べよ。

B6-3 干渉縞は「λ/2 きざみのものさし」として、微小な長さの測定に使える。くさび形(A7-2)を例に、この測定の原理と、なぜ 10⁻⁵ m 程度の厚さが測れるのかを説明せよ。


B問題 解答・解説


B1【ヤングの実験の理論】

B1-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:三平方の定理で2つの距離を書く。
経路1:S₁P² = L²+(x−d/2)²/経路2:S₂P² = L²+(x+d/2)²
辺々引くと S₂P²−S₁P² = 2xd
左辺 = (S₂P+S₁P)(S₂P−S₁P) ≒ 2L×(S₂P−S₁P)(L が十分大きいので和 ≒ 2L)
よって S₂P−S₁P ≒ dx/L

ポイント2乗の差 → 和と差の積」で根号を避けるのが定跡(数学第1巻の因数分解が光学を支える)。「和 ≒ 2L」という近似の入れ所まで含めて手が覚えるべき導出。

B1-2解答を見る解答を隠す

解答
明線:dx/L = mλ → x = mLλ/d
間隔:Δx = x(m+1)−x(m) = Lλ/d

ポイント 「間隔 = m が 1 増えたときの差」— どの干渉装置でも縞間隔はこの引き算で出す。L/d が波長の拡大率(A2-1 で 5000 倍)。

B1-3解答を見る解答を隠す

解答
中央(x = 0):どの波長でも経路差 0 で強め合う — 白い明線
外側:明線の位置 x = mLλ/d が波長ごとに違うため、縞が色ずれして虹色になる(各次数で内側が紫、外側が赤)。次数が上がるほど色が重なり合い、やがて縞は見えなくなる。

ポイント 「中央だけ白」はヤングの実験の指紋 — 経路差 0 は全波長の共通の明 という一点が、白色光でも生き残る。


B2【回折格子の理論】

B2-1解答を見る解答を隠す

解答
角 θ の方向へ進む光について、隣り合うスリットからの経路差は d sinθ(スリット間隔 d の斜辺への射影)。
これが λ の整数倍なら、すべての隣どうしが同時に強め合う:
d sinθ = mλ

ポイント 条件は「隣と 1 波長ずれる」だけ — 隣と揃えば、その隣とも、さらに隣とも自動的に揃う(等間隔の威力)。図は 2 本のスリットで描けば十分。

B2-2解答を見る解答を隠す

解答
明線の方向では、何千本ものスリットの波がすべて同位相で重なり、強大な明るさになる。
方向がわずかにずれると、隣とのずれは微小でも、遠くのスリットとのずれは(本数分)積み重なって大きくなり、多数の波が互いに打ち消し合う。
よって明線条件のごく近くだけが明るく、鋭い線になる ∎

ポイント 「多数決の干渉」— 2 スリット(ゆるやかな縞)との違いは参加者の数。鋭いほど角度(→ 波長)が精密に読める:分光器の性能の源。

B2-3解答を見る解答を隠す

解答
m = 0(θ = 0):全波長で条件成立 — 白い明線
m ≧ 1:sinθ = mλ/d が波長ごとに違うため虹(スペクトル)に分かれる。
λ が大きい赤ほど sinθ が大きく、外側に来る(紫が内側)。

ポイント CD・DVD の虹はまさにこれ(トラックが回折格子)。プリズムの分散(屈折率の差)とは別の原理で虹を作る、と区別できれば一段上。


B3【薄膜干渉の理論】

B3-1解答を見る解答を隠す

解答
膜の中では波長が λ/n に縮む。下面まで往復する幾何的な距離は 2d だが、その間に刻まれる波の数は
2d ÷ (λ/n) = 2nd/λ(個)
— 真空中の距離 2nd を進んだのと同じ数。よって干渉の勘定では、往復路を 光路差 2nd として λ と比べればよい ∎

ポイント距離を n 倍して波の数で数える」= 光学距離(B6-2)。媒質の中は"距離が濃い" — 2nd の n はこの濃さの補正。

B3-2解答を見る解答を隠す

解答
小 → 大(硬い相手・動きにくい媒質へ):固定端反射に対応 — 反射波は山谷が反転(位相 π ずれ)。
大 → 小(柔らかい相手・動きやすい媒質へ):自由端反射に対応 — そのまま返る。
第4章でロープの端について学んだ規則が、光と媒質の境界でもそのまま成り立っている。

ポイント 「屈折率の大きい媒質 = 動きにくい壁」という対応 1 つで、暗記が第4章の記憶に接続される — 位相反転は新法則ではなく固定端反射の再演

B3-3解答を見る解答を隠す

解答
シャボン膜(空気/膜/空気):上面のみ反転(1 回・奇数)→ 条件逆転:
明:2nd = (m+1/2)λ(暗:2nd = mλ)
反射防止膜(空気/膜/ガラス、屈折率が階段状):両面で反転(2 回・偶数)→ 通常:
明:2nd = mλ(暗:2nd = (m+1/2)λ)

ポイント 同じ「膜」でも下の相手で条件が丸ごと入れ替わる — 反転の勘定を飛ばして式を暗記すると即死する箇所。解法チャート手順 2 の存在理由。


B4【くさび形の理論】

B4-1解答を見る解答を隠す

解答
経路差は空気層の往復 2D。下面(空気 → ガラス:小 → 大)で反転 1 回なので、
暗線:2D = mλ
厚さは D = xθ(tanθ ≒ θ)だから 2xθ = mλ:
x = mλ/(2θ)

ポイント 「反転 1 回 → 2D = mλ が」— くさび・ニュートンリングに共通の勘定。空気層の屈折率は 1 なので光路差 = 経路差のまま。

B4-2解答を見る解答を隠す

解答
間隔:Δx = x(m+1)−x(m) = λ/(2θ)
(隣の暗線までに、空気層の厚さがちょうど λ/2 増える)

ポイント厚さ λ/2 きざみの等高線」が縞の正体 — θ が小さい(板が平行に近い)ほど縞は広がる。板のわずかな傾き・うねりが縞の乱れとして見える(平面度検査)。

B4-3解答を見る解答を隠す

解答
透過光どうしの干渉では、位相の反転を伴う反射の組み合わせが反射光の場合と異なり、明暗の条件が反射光と入れ替わる
エネルギーの面からも:ある場所で反射光が強め合う(明)なら、そのぶん透過は弱く(暗)、反射が弱め合う場所では光はよく透過する(明)— 反射の明 ⇔ 透過の暗は、エネルギー保存の要請でもある。

ポイント 「反射で消えた光は透過に回る」— 反射防止膜(A6-2)が"よく通すコーティング"である理由と同じ論理。表と裏で縞のネガとポジ。


B5【ニュートンリングの理論】

B5-1解答を見る解答を隠す

解答
図示:球面の中心 O から接点まで R。半径 r の位置での層の厚さを D とすると、三平方より
R² = (R−D)²+r² → R² = R²−2RD+D²+r²
D ≪ R なので D² を無視して 2RD ≒ r²
D ≒ r²/(2R)

ポイント2乗の微小量を捨てる」近似の練習台として最頻出の導出 — 円のふくらみは中心付近で放物線(r²)で近似できる、という幾何の常識にもなる。

B5-2解答を見る解答を隠す

解答
反転 1 回なので、暗環:2D = r²/R = mλ → r = √(mλR)
明環:2D = (m+1/2)λ → r = √{(m+1/2)λR}

ポイント 半径が √m に比例 — 1、1.4、1.7、2、… と伸びが鈍る数列(A8-3)。式に λR がペアで入るので、R が既知なら λ が、λ が既知なら R が測れる。

B5-3解答を見る解答を隠す

解答
D ∝ r² なので、同じ厚さの増分 λ/2 を稼ぐのに必要な Δr は、r が大きいほど小さい — 外側ほど環の間隔が狭くなる
検査への応用:縞は「厚さの等高線」なので、環が真円からゆがんでいれば、レンズ面がその場所で設計からずれていることが波長単位(10⁻⁷ m 級)で分かる。

ポイント ニュートンリングは美しい現象であると同時に、光学工場の検査装置 — 「縞 1 本 = λ/2 の高低差」という読み方まで持ち帰る。


B6【干渉の応用・総合】

B6-1解答を見る解答を隠す

解答
ヤング:λ = dΔx/L(縞間隔を測る)/回折格子:λ = d sinθ/m(明線の角度を測る)
共通の考え方:どちらも 10⁻⁷ m の波長を、装置の幾何(L/d や 1/d)で mm・度の量に拡大して、普通の物差し・分度器で測れるようにしている。

ポイント 「小さすぎて測れないものは、干渉で拡大してから測る」— 波長測定の思想の総括。拡大率を決めるのはスリット間隔 d(小さいほど拡大大)。

B6-2解答を見る解答を隠す

解答
媒質中の波長は λ/n。長さ ℓ の間に刻む波の数は ℓ/(λ/n) = nℓ/λ — 真空中で nℓ 進むのと同じ数。
よって干渉の勘定では、媒質中の道のりを n 倍した光学距離 nℓ で比べればよい。
薄膜の 2nd(往復 2d × n)は、この規則の最も基本的な実例である。

ポイント 「波の数 = 光学距離 ÷ λ」— 経路差から光路差への一般化。実戦8-1 ⑤(ガラスで覆ったスリット)もこの目で読める。

B6-3解答を見る解答を隠す

解答
くさびでは、縞 1 本ごとに空気層の厚さが λ/2(約 2.5×10⁻⁷ m)ずつ増える — 縞の本数や間隔を数えることは、この極小のきざみで厚さを測ることに等しい。
A7-2 では、mm 単位で測れる縞間隔 Δx から、式 a = λL/(2Δx) を通じて 10⁻⁵ m の紙の厚さが求められた — 光の波長そのものを目盛りに使うため、通常の物差しでは届かない精度が出る。

ポイントλ/2 が最小目盛りのものさし」— 干渉計測の一言要約。現代の精密加工・重力波検出(光路差 10⁻¹⁸ m!)まで、この章の原理の延長線上にある。


実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)

実戦8-1【共テ形式:ヤングの実験】★★

スリット間隔 d = 0.20 mm の複スリットに単色光を当て、L = 2.0 m 離れたスクリーンに干渉縞を作ったところ、明線の間隔は 6.0 mm であった。
① この光の波長は [ア].[イ]×10⁻⁷ m である。
② 中央の明線から 3 番目の明線までの距離は [ウエ] mm である。
③ スリット間隔 d を 2 倍にすると、縞の間隔はどうなるか:[オ]
(a) 2 倍になる
(b) 1/2 倍になる
(c) 変わらない
④ 光をより波長の長い赤色の光に変えると、縞の間隔はどうなるか:[カ]
(a) 広がる
(b) 狭まる
(c) 変わらない
⑤ 一方のスリット S₁ だけを薄い透明なガラス板で覆うと、干渉縞全体はどうなるか:[キ]
(a) S₁ 側へ平行移動する
(b) S₂ 側へ平行移動する
(c) 動かない

実戦8-2【記述形式:くさび形空気層】★★★

長さ L の 2 枚の平面ガラス板を重ね、一端に厚さ a の薄片をはさんで、くさび形の空気層を作った。波長 λ の単色光を真上から当て、反射光を観察する。
① 接触端から距離 x の位置での空気層の厚さ D を求めよ。
② 暗線ができる条件を書け。また、なぜ 2D = mλ が「暗」になるのか、反射の位相に触れて説明せよ。
③ 隣り合う暗線の間隔 Δx を求めよ。
④ L = 0.10 m、a = 2.0×10⁻⁵ m、λ = 6.0×10⁻⁷ m のとき、Δx の値を求めよ。
⑤ 空気層を屈折率 n の液体で満たすと、縞の間隔はどうなるか。理由とともに答えよ。

実戦8-3【記述形式:ニュートンリング】★★★

曲率半径 R の平凸レンズを平面ガラスの上に置き、真上から波長 λ の単色光を当てて反射光を観察すると、同心円状の縞(ニュートンリング)が見えた。
① 接点から水平距離 r の位置での空気層の厚さ D ≒ r²/(2R) を導け(D は R より十分小さい)。
② 暗環ができる条件と、m 番目の暗環の半径 r を求めよ。
③ 中心(接点)が暗くなる理由を述べよ。
④ R = 4.0 m、λ = 6.0×10⁻⁷ m のとき、3 番目(m = 3)の暗環の半径を求めよ。
⑤ 環の間隔が外側ほど狭くなる理由を述べよ。


実戦問題 解答・解説


実戦8-1

考え方 ヤングの実験の全論点を 1 セットで:測定(①②)→ スケーリング(③④)→ 光路差の応用(⑤)。Δx = Lλ/d の 3 文字の役割(拡大率 L/d と目盛り λ)を問い続ける構成。

実戦8-1解答を見る解答を隠す

解答
① λ = dΔx/L = 2.0×10⁻⁴×6.0×10⁻³/2.0 = 6.0×10⁻⁷ m(ア = 6、イ = 0)
② 3Δx = 3×6.0 = 18 mm(ウエ = 18)
③ Δx = Lλ/d ∝ 1/d:(b) 1/2 倍(オ = (b))
④ Δx ∝ λ:赤(長波長)で (a) 広がる(カ = (a))
⑤ ガラスで覆うと S₁ 経路の光学距離が伸びる(nℓ > ℓ:B6-2)。経路差 0 の位置(中央明線)は、幾何的な道のりが S₁ 側で短くなる S₁ 側へ移動し、縞全体も (a) S₁ 側へ平行移動(キ = (a))

ポイント
• ③④は式を書き直さず比例・反比例の即答 — Δx = Lλ/d の「λ は分子、d は分母」を体で覚えているかのチェック。
• ⑤は光路差(nℓ)の考えの実戦投入 — 「ガラスの分だけ遠回りになった S₁ 側へ、中央線が歩み寄る」と物語で理解する。


実戦8-2

考え方 B4 の理論を答案として書き切る。「経路差 2D → 反転 1 回 → 2D = mλ が暗」の 3 段論法(②)が心臓部 — ①③は幾何、④は代入、⑤は「その場の波長」原理。

実戦8-2解答を見る解答を隠す

解答
① 相似(傾き一定)より D = ax/L
② 上のガラス下面での反射(ガラス → 空気:大 → 小)は位相がずれず、下のガラス上面での反射(空気 → ガラス:小 → 大)は位相が π 反転する — 反転は合計 1 回。
よって経路差 2D = mλ のとき 2 つの光は逆位相となり弱め合う:
暗線の条件:2D = 2ax/L = mλ
③ x = mλL/(2a) より Δx = λL/(2a)
④ Δx = 6.0×10⁻⁷×0.10/(2×2.0×10⁻⁵) = 1.5×10⁻³ m(1.5 mm)
⑤ 液体中では波長が λ/n に縮むので、
Δx' = Δx/n — 1/n 倍に狭くなる(縞の目盛りは"その場の波長")

ポイント
• ②の説明は「どの面で・どちら向きの反射か」を面ごとに指名して書く — 「反転 1 回」の結論だけでは説明にならない。
• ④の検算:縞 1 本 = 厚さ λ/2 = 3.0×10⁻⁷ m きざみ。全長 0.10 m で厚さ 2.0×10⁻⁵ m → 縞の総数 ≒ 2.0×10⁻⁵/(3.0×10⁻⁷) ≒ 67 本 → 間隔 ≒ 0.10/67 ≒ 1.5 mm ○ — 別ルートの一致。


実戦8-3

考え方 B5 の完全再構成。①の近似(D² を捨てる)→ ②条件と √(mλR) → ③位相反転の証拠 → ④代入 → ⑤ r² の幾何。「縞 = 空気層の等高線」という一枚絵で全問がつながる。

実戦8-3解答を見る解答を隠す

解答
① 三平方:R² = (R−D)²+r² = R²−2RD+D²+r²
D ≪ R より D² を無視して 2RD ≒ r² → D ≒ r²/(2R)
② 下面の反射(空気 → ガラス)で位相が 1 回反転するので、暗の条件は
2D = r²/R = mλ → r = √(mλR)
③ 中心は D = 0 で経路差 0 だが、反転 1 回のぶん 2 つの光は逆位相 — 弱め合って暗い
④ r = √(3×6.0×10⁻⁷×4.0) = √(7.2×10⁻⁶) ≒ 2.7×10⁻³ m(2.7 mm)
⑤ D ∝ r² のため、厚さが λ/2 増えるのに必要な Δr は r が大きいほど小さい — 外側ほど環は密になる。

ポイント
• ③の「差 0 で暗」は、位相反転が実在する観測的証拠 — もし反転がなければ中心は明るいはず(逆に、すき間があると中心が明るくなる:検査の原理)。
• ④の途中 √7.2 ≒ 2.68 — √72 = 6√2 ≒ 8.49 から 10 で割る、など平方根の見積もり技(数学第1巻)が最後まで相棒。


おわりに

「物理[熱・波動]例題マスター」全8章、お疲れさまでした。
熱量の保存/気体の状態方程式と分子運動論/熱力学第一法則/波の性質と定常波/弦・気柱の振動/音の伝わり方とドップラー効果/光の反射・屈折とレンズ/光の干渉 — 概念チェック・A問題(数値)・B問題(文字式)・実戦問題(共テ+記述)の4層構成、1章あたり約47問です。
続巻は第3巻「電磁気・原子」です。