物理[力学]例題マスター(第1巻)
〜 問題で学ぶ・物理基礎から入試基礎まで 〜
本書の構成と使い方
数学「例題マスター」シリーズと同じ、問題を解きながら学ぶ例題ベースの参考書の物理版・第1巻(力学)です。
| 区分 | レベル | 解答の位置 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 概念チェック | ○×・択一(5問) | 全問のあとにまとめて | 計算以前の「意味の理解」を確認 |
| A問題 | 物理基礎レベル(★)数値中心 | 問題のすぐ下 | 各テーマ3問(基本 → 類題 → 場面替え)で状況パターンを網羅 |
| B問題 | 「物理」・入試基礎(★★〜★★★)文字式中心 | 章末にまとめて | 複合状況・導出・記述の型 |
| 実戦問題 | 共通テスト形式+記述入試形式 | 章末にまとめて | 3題(グラフ・実生活文脈・誘導記述) |
使い方
1. 「公式・要点まとめ」と「解法チャート」に目を通す(公式は適用条件とセットで読む)
2. 概念チェックで意味を確認 → A問題を上から順に(解答を隠して自力で)
3. B問題は文字式のまま立式する練習。次元(単位)チェックを検算に使う
4. 実戦問題で共テ形式・記述形式の両方に慣れる
物理のルール(全巻共通)
• 数値は原則有効数字2桁で答える。単位を必ず付ける
• 重力加速度は g = 9.8 m/s²(問題文で指定。文字 g のまま扱う問題もある)
• 解答の第一手は「図示」— 力の矢印・グラフ・ベクトルを言葉の手順で描く(自分の紙に実際に描くこと)
• 記号の凡例:①②③ = 小問/[ア][イ] = マーク欄(共通テスト形式)/(a)(b)(c) = 選択肢
目次
第1章 運動の表し方
力学の最初の仕事は、「動き」を数で書けるようになること。主役は3つ — ①速度と加速度(向きを正負の符号で表す)②等加速度直線運動の3公式 ③v-tグラフ(傾き = 加速度、面積 = 変位)。とくにグラフは、公式を忘れても面積から答えを再建できる万能の道具。この章で身につける「正の向きを決めて、符号で運動を語る」習慣が、力学全体の文法になる。
この章の公式・要点まとめ
速さと速度
• 速さ = 道のり ÷ 時間(大きさだけ)/速度 = 変位 ÷ 時間(向きを含む)
• 直線運動では、正の向きを決めて速度を符号つきの数で表す(東向き +5.0 m/s、西向き −5.0 m/s)
• 平均の速度 = Δx/Δt(x-t グラフの2点を結ぶ直線の傾き)/瞬間の速度 = x-t グラフの接線の傾き
• 単位換算:72 km/h = 20 m/s(km/h → m/s は ÷3.6)
合成速度・相対速度(直線上)
• 合成速度:動く土台の上での運動は v = v₁+v₂(符号ごと足す。例:川を下る船 = 静水の速さ+流速)
• 相対速度(A から見た B)= v_B−v_A =「相手 − 自分」
• 平面では矢印(ベクトル)の足し算・引き算で同じことをする(→ B5)
加速度
• a = Δv/Δt(速度の変化 ÷ かかった時間)。単位 m/s²
• 減速や逆向きの運動も、符号つきの Δv で計算すれば1本の式で済む
等加速度直線運動の3公式(初速度 v₀、加速度 a、時刻 t、変位 x)
• ① v = v₀+at
• ② x = v₀t+(1/2)at²
• ③ v²−v₀² = 2ax(①②から t を消去した式)
• 使い分け:t が登場する →①②/t が不要・不明 →③
• 平均の速度 = (v₀+v)/2 → x = (v₀+v)t/2 も便利(等加速度のときだけ)
グラフの読み方(この章の心臓)
• v-t グラフ:傾き = 加速度、面積 = 変位(t 軸より下の面積は負の変位として引く)
• x-t グラフ:傾き = 速度(曲がっていれば接線の傾き = 瞬間の速度)
解法チャート(直線運動)
1. 正の向きを決めて明記する(以後、速度・加速度はすべて符号つき)
2. 分かっている量(v₀、a、t、x、v)を符号つきで書き出す
3. 公式を選ぶ:t あり →①②/t なし →③(またはグラフの面積)
4. 答えの符号を「向きの言葉」に翻訳し、単位を付ける(m/s² など次元の確認が検算になる)
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
「速さ」と「速度」は物理では同じ意味の言葉である。○か×か。
Q2
x-t グラフの傾きが表す量はどれか。
(a) 加速度
(b) 速度
(c) 変位
Q3
速度が 0 になった瞬間は、加速度も必ず 0 である。○か×か。
Q4
v-t グラフと t 軸の間の面積が表す量はどれか。
(a) 変位
(b) 加速度
(c) 平均の速さ
Q5
等加速度直線運動では、速度の変化量は経過時間に比例する。○か×か。
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — 速度は「大きさ(速さ)+向き」をもつ量。直線運動では向きを符号で背負わせる。この区別が本章のスタートライン。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(b) — 傾き = Δx/Δt = 速度。加速度が読めるのは v-t グラフの傾き。「どのグラフの傾き・面積か」を常にセットで言う。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:× — 反例:投げ上げた球の最高点(速度 0 だが重力による加速度は下向きに 9.8 m/s² のまま)。「速度」と「速度の変化率」は別の量。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(a) — 面積 = 変位(t 軸より下は負として引く)。符号を無視して全部足すと「道のり」になる — 使い分けは A8-3 で。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:○ — Δv = aΔt(a が一定だから)。「単位時間あたり同じだけ速度が変わる」が等加速度の定義そのもの。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
A1【平均の速さ・平均の速度】★
A1-1
100 m を 20 s で走った人の、平均の速さを求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
平均の速さ = 100/20 = 5.0 m/s
ポイント 「距離 ÷ 時間」— まずは単位付きで答える練習。5.0 m/s ≒ 18 km/h(短距離走の速さ)という量感も持つ。
A1-2(類題)
直線上を、東へ 60 m 進んだあと、向きを変えて西へ 20 m 戻った。全体で 20 s かかったとき、平均の速さと平均の速度をそれぞれ求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:東を正の向きにとる。
道のり = 60+20 = 80 m → 平均の速さ = 80/20 = 4.0 m/s
変位 = +60−20 = +40 m → 平均の速度 = 40/20 = +2.0 m/s、すなわち東向きに 2.0 m/s
ポイント 速さは道のり、速度は変位から作る — 戻った分は速さでは足し、速度では引く。答えの「東向きに」の一言(符号の翻訳)まで書いて完答。
A1-3(類題)
自動車で、行きは 60 km の道のりを 1.5 時間で、帰りは同じ 60 km を 1.0 時間で走った。往復全体の平均の速さを求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
全道のり = 120 km、全時間 = 2.5 h
平均の速さ = 120/2.5 = 48 km/h
ポイント 「行き 40 km/h と帰り 60 km/h の平均だから 50 km/h」は誤り — 平均の速さは必ず「全道のり ÷ 全時間」。遅い区間に長く時間を使うぶん、平均は 50 より遅い側にずれる。
A2【単位の換算・瞬間の速度】★
A2-1
72 km/h は何 m/s か。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
72 km/h = 72×1000 m ÷ 3600 s = 20 m/s
ポイント km/h → m/s は ÷3.6(m/s → km/h は ×3.6)。「高速道路の 100 km/h ≒ 28 m/s」など、両方の単位の量感をもつと検算が速い。
A2-2(類題)
15 m/s は何 km/h か。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
15×3.6 = 54 km/h
ポイント 1 s に 15 m → 3600 s(1時間)に 54000 m、と定義に戻れば係数 3.6 は自作できる — 換算係数は暗記でなく再現できる状態に。
A2-3(類題)
x-t グラフ上で、t = 2.0 s の点における接線が、2点 (1.0 s, 1.0 m) と (3.0 s, 5.0 m) を通る直線であった。t = 2.0 s における瞬間の速度を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
瞬間の速度 = 接線の傾き = (5.0−1.0)/(3.0−1.0) = 2.0 m/s
ポイント 瞬間の速度 = x-t グラフの接線の傾き(平均の速度の「区間を限りなく短くした極限」)。接線上の読み取りやすい2点で傾きを計算するのはグラフ問題の常套手段。
A3【合成速度(直線)】★
A3-1
静水上を 4.0 m/s で進む船が、流れの速さ 1.0 m/s の川を進む。
① 川を下るときの、岸から見た船の速さを求めよ。
② 川を上るときの、岸から見た船の速さを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:下流の向きを正にとる。
① v = 4.0+1.0 = 5.0 m/s
② v = 4.0−1.0 = 3.0 m/s
ポイント 動く水の上の運動は「静水での速度+流速」の符号つき足し算(合成速度)。船・動く歩道・エスカレーター、すべて同じ1本の式。
A3-2(類題)
速さ 1.2 m/s で動く「動く歩道」の上を、人が 1.5 m/s で歩く。
① 歩道と同じ向きに歩くとき、床(地面)から見た人の速さを求めよ。
② 歩道と逆向きに歩くとき、床から見た人の速さと向きを答えよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 1.5+1.2 = 2.7 m/s
② 人の歩く向きを正として 1.5−1.2 = +0.30 m/s → 人の歩く向きに 0.30 m/s
ポイント ②は「歩いているのにほとんど進まない」— 合成速度は打ち消し合うこともある。0.3 でなく 0.30 m/s と書く(有効数字2桁)のも物理の作法。
A3-3(類題)
流れのある川を船が上っている。岸から見た船の速さは 2.0 m/s、流れの速さは 1.5 m/s であった。静水上でのこの船の速さを求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
上流の向きを正とすると 2.0 = v−1.5
よって v = 3.5 m/s
ポイント 合成速度の式を「逆算」に使う場面替え — 式は同じでも、未知数がどれかで問題の顔が変わる。1本の式を双方向に使えるかの確認。
A4【相対速度(直線)】★
A4-1
直線道路を、車 A が東向きに 20 m/s、車 B が東向きに 15 m/s で走っている。A から見た B の相対速度を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:東を正にとる。
相対速度 = v_B−v_A = 15−20 = −5.0 m/s → 西向きに 5.0 m/s
ポイント 相対速度は「相手 − 自分」— 速い A から見ると、前の B は「後ろへ下がってくる」ように見える。日常の実感と符号が一致することを確認。
A4-2(類題)
東向きに 10 m/s で走る車 A と、西向きに 15 m/s で走る車 B がすれ違う。A から見た B の相対速度を求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
東を正として v_B = −15 m/s、v_A = +10 m/s
相対速度 = −15−10 = −25 m/s → 西向きに 25 m/s
ポイント 逆向きどうしは相対の速さが足し算で効く(すれ違いが速く見える理由)。符号つきで「相手 − 自分」を機械的に計算すれば、足すか引くかで迷わない。
A4-3(類題)
東向きに 25 m/s で走る電車 A の中から隣の線路の電車 B を見ると、B は東向きに 5.0 m/s で進んでいるように見えた。地面から見た B の速度を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
東を正として v_B−25 = +5.0
よって v_B = +30 m/s → 東向きに 30 m/s
ポイント 相対速度の式の逆算(A3-3 と同じ発想)。「見かけの速度」から「本当の速度」を復元する — 相対速度は情報の変換式でもある。
A5【加速度】★
A5-1
静止していた自動車が一定の割合で速さを増し、4.0 s 後に 12 m/s になった。加速度を求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
a = Δv/Δt = (12−0)/4.0 = 3.0 m/s²
ポイント 加速度 =「1 s あたり何 m/s 速くなるか」— 3.0 m/s² は「毎秒 3.0 m/s ずつ増える」と読む。単位 m/s² の意味(m/s を s で割る)まで言えるように。
A5-2(類題)
20 m/s で走っていた電車がブレーキをかけ、一定の割合で減速して 5.0 s 後に 5.0 m/s になった。加速度を求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
進行方向を正として
a = (5.0−20)/5.0 = −3.0 m/s²(大きさ 3.0 m/s²、運動と逆向き)
ポイント 減速 = 負の加速度(進行方向を正としたとき)。「大きさ+向き」で答える形と、符号つきの数で答える形、両方を行き来できるように。
A5-3(類題)
直線上を西向きに 6.0 m/s で進んでいた物体が、一定の加速度を受けて 3.0 s 後には東向きに 6.0 m/s で進んでいた。東向きを正として、この間の加速度を求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:東を正。はじめ v₀ = −6.0 m/s、あと v = +6.0 m/s。
a = {+6.0−(−6.0)}/3.0 = 12/3.0 = +4.0 m/s²(東向きに 4.0 m/s²)
ポイント 向きが変わる運動こそ符号の出番 — Δv = 6−(−6) = 12 m/s(速さの変化 0 ではない!)。「速さが同じだから加速度 0」が最頻出の誤り。
A6【等加速度運動の3公式(基本)】★
A6-1
初速度 2.0 m/s、加速度 3.0 m/s² で直線上を進む物体の、4.0 s 後の速度と、その間に進んだ距離を求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
v = v₀+at = 2.0+3.0×4.0 = 14 m/s
x = v₀t+(1/2)at² = 2.0×4.0+(1/2)×3.0×4.0² = 8.0+24 = 32 m
ポイント 3公式の①②をそのまま使う基本形。数値を入れる前に式を文字で書く(v = v₀+at と書いてから代入)— この1行が検算可能な答案を作る。
A6-2(類題)
静止していた物体が加速度 2.5 m/s² で動き出した。20 m 進んだときの速さを求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
時間 t が不要なので③式:v²−0² = 2×2.5×20 = 100
よって v = 10 m/s
ポイント 「t が問われず、与えられてもいない → ③式 v²−v₀² = 2ax」— 公式選択の判断基準そのもの。①②で t を求めてから、でも解けるが2度手間。
A6-3(類題)
直線上を 6.0 m/s で進んでいた物体が一定の加速度で速さを増し、4.0 s 後に 18 m/s になった。この間の加速度と、進んだ距離を求めよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
a = (18−6.0)/4.0 = 3.0 m/s²
距離は平均の速度を使って
x = (v₀+v)t/2 = (6.0+18)×4.0/2 = 48 m
ポイント 等加速度なら「平均の速度 = (はじめ+おわり)/2」が使える — x = v₀t+(1/2)at² より速い場面が多い。検算:8.0×4.0? いや 12×4.0 = 48、②式でも 24+24 = 48 ○。
A7【減速して止まる(制動)】★
A7-1
20 m/s で走っていた自動車がブレーキをかけ、大きさ 4.0 m/s² の一定の加速度で減速して止まった。止まるまでの時間と、その間に進んだ距離を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
進行方向を正として a = −4.0 m/s²。止まる:v = 0。
0 = 20−4.0t → t = 5.0 s
0²−20² = 2×(−4.0)×x → x = 400/8.0 = 50 m
ポイント 「止まる」は v = 0 という条件に翻訳する — 制動問題の入口。距離は③式が最短(t を経由してもよい:20×5−(1/2)×4×25 = 50 ○)。
A7-2(類題)
30 m/s で走っていた電車がブレーキをかけ、45 m 進んで止まった。加速度の大きさを求めよ(一定とする)。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
0²−30² = 2×(−a)×45
a = 900/90 = 10 m/s²
ポイント ③式の逆算で加速度を出す型。「新幹線級の速さ(108 km/h)を 45 m で止める」— 出てきた 10 m/s² が重力加速度なみの強い減速であることも感じ取る。
A7-3(類題)
15 m/s で走っていた自動車がブレーキをかけたところ、2.0 s 後に速さが 5.0 m/s になった。加速度は一定として、
① 加速度を求めよ。
② ブレーキをかけてから止まるまでに進む距離を求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① a = (5.0−15)/2.0 = −5.0 m/s²(大きさ 5.0 m/s²)
② 0²−15² = 2×(−5.0)×x → x = 225/10 = 22.5 ≒ 23 m
ポイント ①で求めた a を②に引き継ぐ2段問題(場面替え)。22.5 → 23 m の丸め(有効数字2桁)まで含めて答え。
A8【v-t グラフの読み取り】★
A8-1
直線上を動く物体の v-t グラフは、原点から一定の傾きで立ち上がり、t = 4.0 s で v = 8.0 m/s に達し、その後 t = 10 s まで 8.0 m/s のまま一定であった。
① 0〜4.0 s の間の加速度を求めよ。
② 0〜10 s の間に進んだ距離を求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:v-t グラフ(0 から (4.0, 8.0) へ直線、その後水平)を描く。
① 傾き = 8.0/4.0 = 2.0 m/s²
② 面積 = 三角形+長方形 = (1/2)×4.0×8.0+6.0×8.0 = 16+48 = 64 m
ポイント 傾き = 加速度、面積 = 変位 — グラフ問題はこの2行を書いてから計算を始める。面積は三角形・長方形・台形に分割して足すのが定石。
A8-2(類題)
v-t グラフが、t = 0 から 5.0 s までは v = 12 m/s で水平、その後一定の傾きで下がり、t = 9.0 s で v = 0 になる形であった。
① 減速中の加速度を求めよ。
② 全体で進んだ距離を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 傾き = (0−12)/(9.0−5.0) = −3.0 m/s²(大きさ 3.0 m/s²)
② 面積 = 長方形+三角形 = 12×5.0+(1/2)×4.0×12 = 60+24 = 84 m
ポイント 「等速 → 減速して停止」は電車・エレベーターの現実の運転そのもの。台形の面積 =(上底+下底)×高さ ÷2 = (9.0+5.0)×12/2 = 84 とまとめて出す別ルートも◎。
A8-3(類題)
直線上を動く物体の v-t グラフは、t = 0 で v = +6.0 m/s から一定の傾きで下がり続け、t = 3.0 s で v = 0、さらに同じ傾きのまま t = 5.0 s まで下がった。
① 加速度を求めよ。
② t = 5.0 s での速度を求めよ。
③ 0〜5.0 s の変位と道のりをそれぞれ求めよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 傾き = (0−6.0)/3.0 = −2.0 m/s²
② v = 6.0−2.0×5.0 = −4.0 m/s(負の向きに 4.0 m/s)
③ t 軸の上側の三角形 = (1/2)×3.0×6.0 = 9.0 m、下側の三角形 = (1/2)×2.0×4.0 = 4.0 m
変位 = 9.0−4.0 = +5.0 m、道のり = 9.0+4.0 = 13 m
ポイント t 軸の下の面積は「負の変位」(戻った距離)— 変位は引き算、道のりは足し算。速度が 0 を通り過ぎて負になる「折り返し運動」は、次章の投げ上げの予告編。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。文字式のまま立式し、最後に次元(単位)を確認するのがB問題の作法。B3(追いつき・すれ違い)とB4(グラフ設計)が入試の最頻出。
B1【公式の導出】★★
B1-1 初速度 v₀、加速度 a の等加速度直線運動について、v-t グラフの面積を利用して、変位の式 x = v₀t+(1/2)at² を導け。
B1-2 v = v₀+at と x = v₀t+(1/2)at² から t を消去して、v²−v₀² = 2ax を導け。
B1-3 等加速度直線運動では、時刻 0 から t までの平均の速度が (v₀+v)/2(v は時刻 t の速度)に等しいことを示せ。
B2【区間の分析】★★★
B2-1 静止していた物体が一定の加速度 a で動き出した。動き出してから (n−1) s 後から n s 後までの 1 秒間に進む距離 d_n を求めよ。また d₁:d₂:d₃ を最も簡単な整数比で表せ。
B2-2 静止していた物体が一定の加速度で動き出し、最初の T [s] で L [m] 進んだ。次の T [s] で進む距離を L で表せ。
B2-3 一定の加速度で直線上を進む物体が、点 A を速さ v_A で、点 B を速さ v_B で通過した。線分 AB の中点を通過するときの速さ v_M を求めよ。
B3【相対速度と追いつき・すれ違い】★★★
B3-1 長さ L の電車が速さ v で、同じ向きに速さ u(u < v)で走る長さ l の電車を追い越す。追い越し(先頭が相手の最後尾に並んでから、最後尾が相手の先頭を抜けるまで)にかかる時間を求めよ。
B3-2 B3-1 の2つの電車が逆向きに走ってすれ違うとき、すれ違いにかかる時間を求めよ。
B3-3
信号で止まっていた車 A が、一定の加速度 a で発進した。同じ瞬間に、一定の速さ v で走るバイク B が A の横を通過した。
① A が B に追いつく時刻 t₂ を求めよ。
② そのときの A の速さを求めよ。
③ 追いつくまでの間で、B から見て A が最も遅れるのはいつか。またそのときの2台の距離を求めよ。
B4【v-t グラフによる運動の設計】★★
B4-1 速さ v₀ で走行中の自動車が危険に気づき、反応時間 t₀ の間はそのままの速さで進み、その後ブレーキで大きさ a の一定の加速度で減速して止まった。止まるまでに進む全距離(停止距離)を求めよ。
B4-2 静止していた電車が駅 A を出発し、一定の加速度 a で最高速度 v まで加速したのち、v のまま等速で走って距離 L 離れた駅 B に着いた(B の直前で瞬時に止まるものとし、減速区間は考えない)。A から B までの所要時間を求めよ。ただし L > v²/(2a) とする。
B4-3 静止から出発して距離 L 先で静止する運動を、前半は一定の加速度 a で加速し、途中から一定の大きさ b の加速度で減速する、という v-t グラフ(三角形)で設計する。最高速度 v と全所要時間 t を、a、b、L で表せ。
B5【平面内の合成速度・相対速度】★★★
B5-1 川幅 d、流れの速さ u の川を、静水上の速さ v(v > u)の船で渡る。船首をつねに対岸へ垂直に向けて進むとき、対岸に着くまでの時間と、その間に下流へ流される距離を求めよ。
B5-2 B5-1 の船が、流されずに最短距離(真横)で対岸へ渡るには、船首を上流側へどのように向ければよいか。また渡るのにかかる時間を求めよ。
B5-3 雨が鉛直に速さ v で降っている。水平な道を速さ u で走る人から見ると、雨は鉛直から角 θ だけ傾いて降ってくるように見える。tanθ を求めよ。また、人から見た雨の速さを求めよ。
B6【いろいろな運動の解析】★★★
B6-1 距離 D 離れた2地点 P、Q から、2つの物体が同時に向かい合って出発した。P からの物体は静止から一定の加速度 a で、Q からの物体は一定の速さ v で進む。2つが出会うまでの時間を求めよ。
B6-2 直線上を動く物体の位置が x = At²+Bt(A、B は正の定数)で表される。等加速度直線運動の式と比較することにより、この運動の初速度と加速度を求めよ。また時刻 t の速度 v を表せ。
B6-3
x 軸上を、原点から初速度 v₀(正の向き)、一定の加速度 −a(a > 0)で動き出した物体がある。
① 速度が 0 になる時刻 t₁ を求めよ。
② 原点に戻ってくる時刻 t₂ を求めよ。
③ 原点に戻ったときの速度を求めよ。
B問題 解答・解説
B1【公式の導出】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:v-t グラフ — v₀ から出発し、傾き a の直線(時刻 t で v₀+at)。
0 から t までの変位 x は、このグラフと t 軸の間の面積。
下の長方形(高さ v₀、幅 t)と、上の三角形(底辺 t、高さ at)に分けると
x = v₀t+(1/2)×t×at = v₀t+(1/2)at² ∎
ポイント ②式の正体は「面積」— 長方形(初速のぶん)+三角形(加速で稼いだぶん)。導出を面積で覚えておくと、複雑な運動でも「グラフを描いて面積」で②式を自作できる。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
v = v₀+at より t = (v−v₀)/a。これを x = v₀t+(1/2)at² に代入:
x = v₀(v−v₀)/a+(1/2)a×(v−v₀)²/a²
= (v−v₀){v₀+(v−v₀)/2}/a = (v−v₀)(v+v₀)/(2a)
両辺に 2a を掛けて v²−v₀² = 2ax ∎
ポイント ③式は「①②から t を消しただけ」— 独立な公式は実質2本。和と差の積 (v−v₀)(v+v₀) が現れる整理は、数学第1巻の展開公式そのもの。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
時刻 t までの変位は x = v₀t+(1/2)at² だから
平均の速度 = x/t = v₀+(1/2)at = {v₀+(v₀+at)}/2 = (v₀+v)/2 ∎
ポイント 「最初と最後の速度のちょうど真ん中」が平均になるのは、v-t グラフが直線(等加速度)のときだけの特権 — 台形の面積 = (上底+下底)/2 × 高さ、と同じことを言っている。
B2【区間の分析】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
出発してから n s 後までの距離は (1/2)an²、(n−1) s 後までは (1/2)a(n−1)²。
d_n = (1/2)an²−(1/2)a(n−1)² = (1/2)a(2n−1) = a(2n−1)/2
よって d₁:d₂:d₃ = 1:3:5 → 1:3:5
ポイント 「区間の距離 = 位置の差」— 数学第2巻の aₙ = Sₙ−Sₙ₋₁ とまったく同じ引き算。静止から等加速度で進む距離が奇数比 1:3:5:… になるのは有名な性質(ガリレオの発見)。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
最初の T で:L = (1/2)aT²
最初の 2T で:(1/2)a(2T)² = 4×(1/2)aT² = 4L
よって次の T で進む距離は 4L−L = 3L
ポイント 距離 ∝ t²(静止から)なので、時間2倍 → 距離4倍。B2-1 の 1:3 がそのまま「L と 3L」— 同じ構造を文字で一般化した問題。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
A → 中点、A → B にそれぞれ③式を使う(AB = L、加速度 a):
v_M²−v_A² = 2a×(L/2) …(1)
v_B²−v_A² = 2a×L …(2)
(2)より 2aL = v_B²−v_A²。(1)に代入して
v_M² = v_A²+(v_B²−v_A²)/2 = (v_A²+v_B²)/2
よって v_M = √{(v_A²+v_B²)/2}
ポイント 中点で等しいのは「速さの平均」ではなく「速さの2乗の平均」— ③式が「距離と v² が比例して増える」ことを語っているから。(v_A+v_B)/2 と答えたくなる直感を、式が正しく裏切る良問。
B3【相対速度と追いつき・すれ違い】
考え方 2物体の問題は「一方に乗って眺める(相対速度)」と、動くのは相手だけになり、1物体の問題に落ちる。移動すべき「相対距離」を図で確定させるのが第一手。
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:追い越す側から見ると、相手は速さ v−u で後方へ動いて見える。
追い越し完了までに相手に対して進むべき距離は L+l(先頭が最後尾に並ぶ〜最後尾が先頭を抜ける)。
よって時間 = (L+l)/(v−u)
ポイント 「電車の長さの和 ÷ 相対の速さ」— 分子が L+l になる理由(両方の長さぶんズレる)を図で確認。次元:m ÷ (m/s) = s ○。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
逆向きなので相対の速さは v+u。
時間 = (L+l)/(v+u)
ポイント 式の形は B3-1 と同一で、分母だけが v−u ⇔ v+u — 「同じ向きは差、逆向きは和」の相対速度の2大パターンを1対で記憶する。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
① 同時刻の位置:A は (1/2)at²、B は vt。追いつく ⇔ 位置が等しい:
(1/2)at₂² = vt₂ → t₂(at₂−2v) = 0、t₂ > 0 より t₂ = 2v/a
② A の速さ = a×t₂ = 2v(B の 2 倍)
③ 差 d(t) = vt−(1/2)at² が最大になるのは、d の増え方が 0 になるとき、すなわち2台の速度が等しいとき:at₁ = v → t₁ = v/a
このとき d = v×(v/a)−(1/2)a×(v/a)² = v²/a−v²/(2a) = v²/(2a)
ポイント ②「追いつく瞬間、後発の速さは先行のちょうど2倍」は美しい定番。③「差が最大 ⇔ 速度が等しい」— v-t グラフを描くと、2本のグラフの間の面積(=距離の差)が交点まで増え続けることが一目で分かる。
B4【v-t グラフによる運動の設計】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:v-t グラフ — 高さ v₀ の水平線が t₀ まで、その後傾き −a で 0 まで下がる。
空走距離(長方形)= v₀t₀
制動距離(三角形)は③式で:0−v₀² = 2(−a)x → x = v₀²/(2a)
停止距離 = v₀t₀+v₀²/(2a)
ポイント 「空走(等速)+制動(等加速度)」の2段構成 — 実際の交通安全の計算式そのもの。制動距離は速さの2乗に比例(v₀ が2倍なら4倍)という事実が、実戦1-2 の主題になる。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
図示:v-t グラフ — 傾き a で v まで上がる三角形+高さ v の長方形。
加速にかかる時間 t₁ = v/a、その間の距離 = v²/(2a)
残りの距離 L−v²/(2a) を速さ v で走る時間 = L/v−v/(2a)
所要時間 = v/a+L/v−v/(2a) = L/v+v/(2a)
ポイント 結果の読み方:「全部を等速 v で走る時間 L/v」に「加速のロス v/(2a)」が上乗せされた形 — 式を分解して意味を読むのが文字式問題の醍醐味。次元:m/(m/s)+(m/s)/(m/s²) = s+s ○。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
図示:v-t グラフ — 傾き a で上がり、頂点 v から傾き −b で下りる三角形。
加速区間の距離 v²/(2a)、減速区間の距離 v²/(2b)。合計が L:
v²/(2a)+v²/(2b) = L → v² = 2abL/(a+b) → v = √{2abL/(a+b)}
所要時間 t = v/a+v/b = v(a+b)/(ab) に代入して
t = √{2L(a+b)/(ab)}
ポイント エレベーター・電車の実際の運転計画がこの三角形(または台形)— 「面積 = L」という1本の条件から全設計が決まる。a = b(対称)なら v = √(aL)、t = 2√(L/a) と簡単になることも確認。
B5【平面内の合成速度・相対速度】
考え方 平面では速度を矢印(ベクトル)で描き、合成は「つなぐ」、相対は「相手 − 自分(自分の矢印を逆向きにして足す)」— 第1手はつねにベクトル図の図示。直角三角形ができれば三平方と tan で数値化できる。
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:対岸向きに長さ v の矢印、下流向きに長さ u の矢印 — 合成速度はその対角線。
川を横切る方向の速さは v のままだから
渡る時間 t = d/v
その間に下流へ流される距離 = u×t = ud/v
ポイント 運動を「川を横切る成分」と「流される成分」に分けると、互いに独立 — 横切りは v だけ、流されは u だけが担当する。この「成分の独立」は次章の放物運動の心臓部の予行演習。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
図示:合成速度が真横(対岸向き)になるように、船首の矢印 v を上流側へ傾ける。
流速 u を打ち消す条件:v sinθ = u(θ は対岸向きから上流への傾き)
→ sinθ = u/v となる角 θ だけ上流に向ける
このとき対岸向きの速さは √(v²−u²) だから
渡る時間 t = d/√(v²−u²)
ポイント 直角三角形(斜辺 v、1辺 u)から残る辺 √(v²−u²) — 三平方が速度ベクトルに適用される場面。B5-1 より時間がかかる(まっすぐ渡る代償)ことも図から納得できる。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
図示:雨の速度(鉛直下向き v)から人の速度(水平 u)を引く — 人から見た雨 = 雨 − 自分。
自分の矢印を逆向き(後方へ u)にして足すと、鉛直 v と水平 u の直角三角形ができる。
tanθ = u/v
見かけの雨の速さ = 斜辺 = √(u²+v²)
ポイント 「走ると雨が前から斜めに来る」日常の体験が、相対速度のベクトル図そのもの。傾きは tan、速さは三平方 — 電車の窓の雨すじの角度から電車の速さを逆算する問題(場面替え)も同じ図で解ける。
B6【いろいろな運動の解析】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
出会うまでに2物体が進んだ距離の和が D:
(1/2)at²+vt = D → at²+2vt−2D = 0
t > 0 より t = {−2v+√(4v²+8aD)}/(2a) = {−v+√(v²+2aD)}/a
ポイント 「距離の和 = D」が出会いの条件(追いつきは「距離の差 = 0」)— 条件の立て方の対比で覚える。2次方程式の解の公式と「正の解を選ぶ」吟味は数学第1巻の技術。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
x = At²+Bt を x = v₀t+(1/2)at² と比較して
v₀ = B、(1/2)a = A
よって 初速度 B、加速度 2A、速度は v = v₀+at = B+2At
ポイント 「式の形を公式と係数比較」— 実験データの近似式から運動の正体(v₀ と a)を読み取る場面で使う。t² の係数は a でなく a/2 — ここを 2 倍し忘れるのが定番ミス。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
① 0 = v₀−at₁ → t₁ = v₀/a
② x = v₀t−(1/2)at² = 0 → t(v₀−(1/2)at) = 0、t > 0 より t₂ = 2v₀/a
③ v = v₀−a×(2v₀/a) = −v₀(出発と同じ速さで逆向き)
ポイント t₂ = 2t₁ — 「行きと帰りが対称」(最遠点までの時間の2倍で戻り、同じ速さで帰ってくる)。この対称性は次章の鉛直投げ上げでそのまま主役になる:−a を −g に置き換えれば投げ上げの式そのもの。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦1-1【共テ形式:エレベーターの v-t グラフ】★★
エレベーターが1階から上向きに動き出した。上向きを正とすると、その v-t グラフは次のようであった:t = 0 から 2.0 s までは一定の割合で速度が 0 から 4.0 m/s まで増加し、2.0 s から 8.0 s までは 4.0 m/s で一定、8.0 s から 10 s までは一定の割合で減少して 10 s に 0 になる。
① はじめの 2.0 s 間の加速度は [ア].0 m/s² である。
② この 10 s 間に上昇した距離は [イウ] m である。
③ この 10 s 間の平均の速さは [エ].[オ] m/s である。
④ 8.0 s から 10 s の間の加速度の向きとして正しいものを選べ:[カ]
(a) 上向き
(b) 下向き
(c) 加速度は 0
実戦1-2【共テ形式:停止距離の見積もり】★★
時速 72 km(= 20 m/s)で走る自動車の運転者が前方の危険に気づいた。気づいてからブレーキを踏むまでの反応時間は 0.50 s で、この間は 20 m/s のまま走る(空走)。ブレーキを踏むと、大きさ 5.0 m/s² の一定の加速度で減速する。
① 空走距離は [アイ] m である。
② ブレーキを踏んでから止まるまでの制動距離は [ウエ] m である。
③ 危険に気づいてから止まるまでの停止距離は [オカ] m である。
④ もし速さが 2 倍の 40 m/s だったとすると、制動距離は 20 m/s のときの [キ] 倍になる。
実戦1-3【記述形式:発進する電車とホームの点】★★★
長さ L の電車が駅に静止しており、その先頭はホーム上の点 P の位置にある。電車は一定の加速度 a で発進した。
① 電車の最後尾が点 P を通過するのは、発進から何秒後か。
② そのときの電車の速さを求めよ。
③ P から先の方に距離 D(D > L)だけ離れた地点 Q がある。電車の先頭が Q を通過してから、最後尾が Q を通過するまでの時間を求めよ。
実戦問題 解答・解説
実戦1-1
考え方 「加速 → 等速 → 減速」の台形グラフはエレベーター・電車の基本形。傾きと面積の2つの読みだけで全設問が終わる — 共テのグラフ問題の標準体験。
実戦1-1解答を見る解答を隠す
解答
① 傾き = 4.0/2.0 = 2.0 m/s²(ア = 2)
② 距離 = 台形の面積 = {(10−0)+(8.0−2.0)}×4.0/2 = 16×4.0/2 = 32 m(イウ = 32)
③ 平均の速さ = 32/10 = 3.2 m/s(エ = 3、オ = 2)
④ 速度は正(上向き)のまま減少 → 加速度は下向き:(b)(カ = (b))
ポイント
• ②は三角形+長方形+三角形(4+24+4)でも、台形公式でも同じ 32 m — 分割の仕方は自由。
• ④「上に動きながら、加速度は下向き」— 減速中は運動の向きと加速度の向きが逆になる。概念チェック Q3 の実物版で、共テ頻出の定性設問。
実戦1-2
考え方 B4-1(停止距離 = 空走+制動)の数値版。④は「制動距離 ∝ 速さの2乗」という比例関係の読み — 共テが最も好む「式の構造を問う」設問。
実戦1-2解答を見る解答を隠す
解答
① 空走距離 = 20×0.50 = 10 m(アイ = 10)
② 0²−20² = 2×(−5.0)×x → x = 400/10 = 40 m(ウエ = 40)
③ 停止距離 = 10+40 = 50 m(オカ = 50)
④ 制動距離 = v₀²/(2a) は v₀² に比例するから、速さ 2 倍で 4 倍(キ = 4)
ポイント
• 50 m は「教室の端から端の 5 倍以上」— 72 km/h の車は気づいてから 50 m 止まれない、という実感が交通安全教育の中身そのもの。
• ④のように公式の形(何に比例するか)を問うのが共テ流 — 数値を再計算するより v₀² の構造で即答する。
実戦1-3
考え方 「電車の最後尾が P を通る ⇔ 先頭が L 進む」— 長さのある物体の通過は、先頭(1点)の移動距離に翻訳するのが唯一のコツ。あとは静止から出発の②式・①式を淡々と。
実戦1-3解答を見る解答を隠す
解答
① 最後尾が P を通過するとき、電車(先頭)は L 進んでいる:
L = (1/2)at₁² → t₁ = √(2L/a)
② v₁ = at₁ = a√(2L/a) = √(2aL)
③ 先頭が Q を通過する時刻:D = (1/2)at² → t_D = √(2D/a)
最後尾が Q を通過する時刻:先頭が D+L 進んだとき → t' = √{2(D+L)/a}
求める時間 = t'−t_D = √(2/a){√(D+L)−√D}
ポイント
• ②は③式(v² = 2aL)でも一発:v = √(2aL) ○ — 2ルートの一致が検算。
• ③の答えの吟味:D が大きいほど電車は速くなっているので、同じ長さ L の通過時間は短くなるはず — √(D+L)−√D は D の増加とともに小さくなる(数学第4章の有理化 L/{√(D+L)+√D} で分母が育つ)○。物理の答えを数学の目で検算する、シリーズ縦断の仕上げ。
第2章 落体の運動
落体とは「加速度が鉛直下向きに g(= 9.8 m/s²)で一定」の運動 — つまり第1章の等加速度運動に a = ±g を入れるだけで、自由落下も投げ上げも全部の式が生まれる。後半の放物運動(水平投射・斜方投射)の鍵はただ1つ、「水平と鉛直は互いに独立」:水平は等速、鉛直は落体。時刻 t が2つの運動をつなぐ共通言語になる。
この章の公式・要点まとめ
重力加速度 g
• 大きさ g = 9.8 m/s²、向きはつねに鉛直下向き(空気抵抗を無視すれば、質量によらず同じ)
自由落下(初速 0、下向きを正)
• v = gt、y = (1/2)gt²、v² = 2gy
鉛直投げ下ろし(初速 v₀、下向きを正)
• v = v₀+gt、y = v₀t+(1/2)gt²、v²−v₀² = 2gy
鉛直投げ上げ(初速 v₀、上向きを正)
• v = v₀−gt、y = v₀t−(1/2)gt²、v²−v₀² = −2gy
• 最高点 ⇔ v = 0:到達時間 v₀/g、高さ v₀²/(2g)
• 対称性:上りと下りは同じ時間、同じ高さでは同じ速さ(向きだけ逆)
水平投射(高さ h から水平に v₀)
• 水平:x = v₀t(等速)/鉛直:y = (1/2)gt²(自由落下)— 2つは独立
• 落下時間は高さだけで決まる:t = √(2h/g)(初速 v₀ によらない!)
斜方投射(初速 v₀、仰角 θ)
• 水平:v_x = v₀cosθ(一定)、x = v₀cosθ×t
• 鉛直:v_y = v₀sinθ−gt、y = v₀sinθ×t−(1/2)gt²(投げ上げと同じ式)
• 最高点 ⇔ v_y = 0/水平到達距離 R = v₀²sin2θ/g(θ = 45° で最大)
解法チャート(落体・放物運動)
1. 軸と正の向きを決める(投げ上げは上向き正、落下は下向き正が計算しやすい)
2. 放物運動は水平と鉛直に分解し、独立に式を立てる(水平 = 等速、鉛直 = 落体)
3. 条件を式に翻訳:「最高点 ⇔ v_y = 0」「地面に着く ⇔ y = 0(高さ h の台上からなら y = −h)」
4. 一方の式で求めた t を相方の式へ渡す — 最後に符号を向きの言葉に直し、単位を付ける
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
重い鉄球と軽いゴム球を、同じ高さから同時に静かにはなす。空気抵抗を無視すると、地面に先に着くのはどれか。
(a) 重い鉄球
(b) 軽いゴム球
(c) 同時に着く
Q2
鉛直に投げ上げられた球の最高点では、速度も加速度も 0 である。○か×か。
Q3
崖の上から、1つの球は水平に投げ、もう1つの球は同時に静かに落とした。地面に先に着くのはどれか。
(a) 水平に投げた球
(b) 静かに落とした球
(c) 同時に着く
Q4
投げ上げた球がもとの高さに戻ってきたとき、その速さは投げたときの速さと等しい。○か×か(空気抵抗は無視)。
Q5
同じ速さで打ち出すとき、水平到達距離が最大になる仰角はどれか(地面は水平、空気抵抗は無視)。
(a) 30°
(b) 45°
(c) 60°
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:(c) — 落体の加速度 g は質量によらない(ガリレオの発見)。「重いほど速く落ちる」直感は空気抵抗が作る錯覚。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:× — 速度は 0 になるが、加速度は g のまま(だから次の瞬間落ち始める)。第1章 概念チェック Q3 の落体版。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:(c) — 鉛直方向の運動は水平の初速と無関係(独立)。どちらも鉛直には「自由落下」をしている。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:○ — 投げ上げの対称性:同じ高さでは同じ速さ。式では v²−v₀² = −2g×0 → |v| = v₀。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — R = v₀²sin2θ/g で sin2θ が最大(= 1)になるのは 2θ = 90°、つまり 45°。30° と 60° では同じ距離になる(B4-2)。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り g = 9.8 m/s² とし、空気抵抗は無視する。
A1【自由落下】★
A1-1
小球を静かにはなして落下させた。2.0 s 後の速さと、落下した距離を求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:下向きを正にとる。
v = gt = 9.8×2.0 = 19.6 ≒ 20 m/s
y = (1/2)gt² = 4.9×2.0² = 19.6 ≒ 20 m
ポイント 自由落下は「初速 0、a = g の等加速度運動」— 第1章の公式に代入するだけ。(1/2)g = 4.9 を係数として覚えておくと計算が速い。
A1-2(類題)
高さ 44.1 m のビルの屋上から小球を静かにはなした。地面に着くまでの時間と、着く直前の速さを求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
44.1 = 4.9t² → t² = 9.0 → t = 3.0 s
v = 9.8×3.0 = 29.4 ≒ 29 m/s
ポイント 「高さから時間、時間から速さ」の2段リレー。29 m/s ≒ 106 km/h — 3秒の落下で高速道路の車なみの速さになる、という量感も。
A1-3(類題)
小球を静かにはなしたところ、地面に速さ 14 m/s で着いた。はなした点の高さを求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
時間が不要なので v² = 2gy:
14² = 2×9.8×y → y = 196/19.6 = 10 m
ポイント 「t が不要 → v² = 2gy」— 第1章③式の落体版。逆算(速さ → 高さ)でも公式選択の基準は同じ。
A2【鉛直投げ下ろし】★
A2-1
初速 5.0 m/s で小球を真下に投げ下ろした。3.0 s 後の速さと、落下した距離を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
下向きを正として
v = 5.0+9.8×3.0 = 34.4 ≒ 34 m/s
y = 5.0×3.0+4.9×3.0² = 15+44.1 = 59.1 ≒ 59 m
ポイント 投げ下ろし = 「初速 v₀ をもつ落下」— 自由落下との違いは v₀ の項だけ。答えの丸め(34.4 → 34)は最後に1回だけ行う。
A2-2(類題)
橋の上から初速 4.9 m/s で小球を投げ下ろすと、2.0 s 後に水面に達した。橋の高さ(水面まで)と、水面に達する直前の速さを求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
高さ = 4.9×2.0+4.9×2.0² = 9.8+19.6 = 29.4 ≒ 29 m
v = 4.9+9.8×2.0 = 24.5 ≒ 25 m/s
ポイント 「初速で進むぶん+落下で進むぶん」の2階建て構造を式のまま読む。有効数字2桁への丸め(29.4 → 29、24.5 → 25)も答えの一部。
A2-3(類題)
ある高さから小球を投げ下ろしたところ、10 m 落下した地点で速さが 15 m/s になっていた。投げ下ろした初速を求めよ。√29 ≒ 5.4 とする。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
v²−v₀² = 2gy より
15²−v₀² = 2×9.8×10 → v₀² = 225−196 = 29
v₀ = √29 ≒ 5.4 m/s
ポイント ③式の逆算で初速を掘り出す場面替え。「与えられた√の近似値を使う」のは物理の数値問題の約束 — 問題文の √29 ≒ 5.4 は「③式を使え」のヒントでもある。
A3【鉛直投げ上げ(基本量)】★
A3-1
小球を初速 19.6 m/s で鉛直に投げ上げた。最高点に達するまでの時間と、最高点の高さを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:上向きを正にとる。最高点では v = 0。
0 = 19.6−9.8t → t = 2.0 s
高さ = 19.6×2.0−4.9×2.0² = 39.2−19.6 = 19.6 ≒ 20 m
ポイント 「最高点 ⇔ v = 0」— この翻訳が投げ上げのすべての入口。高さは v² 式(19.6² = 2×9.8×H → H = 19.6)でも出る:2ルートの一致が検算。
A3-2(類題)
A3-1 の小球が、投げた高さまで戻ってくるのは投げてから何秒後か。また、そのときの速度を求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
y = 0:0 = 19.6t−4.9t² = t(19.6−4.9t) → t > 0 より t = 4.0 s
v = 19.6−9.8×4.0 = −19.6 → 下向きに 20 m/s
ポイント 上り 2.0 s+下り 2.0 s — 対称性(最高点までの時間の2倍で戻り、同じ速さで帰る)。第1章 B6-3 の「−a」を「−g」に置き換えた実物。
A3-3(類題)
小球を鉛直に投げ上げたところ、3.0 s 後に最高点に達した。投げ上げの初速と、最高点の高さを求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
0 = v₀−9.8×3.0 → v₀ = 29.4 ≒ 29 m/s
高さ = (1/2)×9.8×3.0² = 44.1 ≒ 44 m
(下りの自由落下と対称なので、高さ = (1/2)gt² で計算できる)
ポイント 「最高点からの下り = 自由落下」という対称性を使うと、高さは 4.9t² の1発 — 対称性は計算の省略装置でもある。
A4【投げ上げの途中経過(2つの解)】★
A4-1
小球を初速 24.5 m/s で鉛直に投げ上げた。高さ 19.6 m の点を通過する時刻をすべて求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
19.6 = 24.5t−4.9t²
4.9 で割って t²−5.0t+4.0 = 0 → (t−1.0)(t−4.0) = 0
t = 1.0 s(上り)と t = 4.0 s(下り)
ポイント 途中の高さは上りと下りの2回通過する — 2次方程式の2解がそのまま2つの時刻。「解が2つ出た意味」を運動の言葉で言えることが理解の証。
A4-2(類題)
A4-1 と同じ小球が、高さ 29.4 m の点を通過する時刻をすべて求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
29.4 = 24.5t−4.9t² → t²−5.0t+6.0 = 0 → (t−2.0)(t−3.0) = 0
t = 2.0 s と 3.0 s
ポイント 高い点ほど2つの時刻が近づく(1.0 と 4.0 → 2.0 と 3.0)— 最高点(t = 2.5 s)で2解が重なる(重解)。2次方程式の判別式と最高点がつながる瞬間。
A4-3(類題)
A4-1 と同じ小球の速さが 14.7 m/s になる時刻をすべて求めよ。また、そのときの高さを求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
上り(v = +14.7):14.7 = 24.5−9.8t → t = 1.0 s
下り(v = −14.7):−14.7 = 24.5−9.8t → t = 4.0 s
t = 1.0 s と 4.0 s、高さはどちらも
y = 24.5×1.0−4.9×1.0² = 19.6 m(≒ 20 m)
ポイント 「同じ速さ」も上り・下りの2回 — しかも A4-1 と同じ時刻・同じ高さになった:「同じ高さでは同じ速さ」の対称性を数値で体感する仕掛け。
A5【ビルの上からの投げ上げ】★★
A5-1
高さ 19.6 m のビルの屋上から、小球を初速 14.7 m/s で鉛直に投げ上げた。
① 小球が地面に達するのは投げてから何秒後か。
② 地面に達する直前の速さを求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:上向きを正、投げた点を原点とする。地面は y = −19.6 m。
① −19.6 = 14.7t−4.9t²
4.9 で割って t²−3.0t−4.0 = 0 → (t−4.0)(t+1.0) = 0
t > 0 より t = 4.0 s
② v = 14.7−9.8×4.0 = −24.5 → 下向きに 24.5 m/s ≒ 25 m/s
ポイント ビルの上からの投げ上げは「地面 ⇔ y = −h(負の変位)」の翻訳が急所。2次方程式の負の解 t = −1.0 を捨てる吟味(数学第1巻の作法)まで書いて完答。
A5-2(類題)
A5-1 の小球について、地面から測った最高点の高さを求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
投げた点から最高点まで:v² = 0 より 高さ = 14.7²/(2×9.8) = 216.09/19.6 ≒ 11.0 m
地面からは 19.6+11.0 = 30.6 ≒ 31 m
ポイント 「どこから測った高さか」を必ず確認 — 基準点の明示は落体問題の事故防止装置。v₀²/(2g) は最高点の高さの即戦力公式。
A5-3(類題)
A5-1 と同じビルの屋上から、今度は同じ速さ 14.7 m/s で真下に投げ下ろした。
① 地面に達するのは何秒後か。
② 地面に達する直前の速さを求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
下向きを正とする。
① 19.6 = 14.7t+4.9t² → t²+3.0t−4.0 = 0 → (t−1.0)(t+4.0) = 0 → t = 1.0 s
② v = 14.7+9.8×1.0 = 24.5 m/s ≒ 25 m/s
ポイント 着地の速さが投げ上げ(A5-1)とまったく同じ 24.5 m/s — 投げ上げた球は元の高さに同じ速さで戻ってくるので、そこから先は投げ下ろしと同じ運動になるから。時間だけが 4.0 s と 1.0 s で違う。
A6【水平投射】★★
A6-1
高さ 19.6 m の崖の上から、小球を水平に速さ 10 m/s で投げ出した。
① 地面に着くまでの時間を求めよ。
② 崖の真下から着地点までの水平距離を求めよ。
③ 着地直前の速度の水平成分と鉛直成分を求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:水平に x 軸、鉛直下向きに y 軸。水平は等速 10 m/s、鉛直は自由落下。
① 19.6 = 4.9t² → t² = 4.0 → t = 2.0 s
② x = 10×2.0 = 20 m
③ 水平:10 m/s(変わらない)、鉛直:v_y = 9.8×2.0 = 19.6 ≒ 20 m/s
ポイント 時間は鉛直(自由落下)が決め、距離は水平(等速)が答える — 分業がすべて。水平成分が最後まで 10 m/s のままである事実に、「独立」の意味が詰まっている。
A6-2(類題)
高さ 4.9 m のテーブルの端から水平に転がり出た小球が、テーブルの端の真下から水平距離 2.0 m の床に落ちた。テーブルの端での小球の速さを求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
落下時間:4.9 = 4.9t² → t = 1.0 s
v₀ = 2.0/1.0 = 2.0 m/s
ポイント 着地点から初速を逆算する型(実験でボールの速さを測る定番の方法)。ここでも「時間は高さが決める」が最初の1手。
A6-3(類題)
崖の上から水平に速さ 15 m/s で投げた小球が、崖の真下から水平距離 30 m の地点に落ちた。崖の高さを求めよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
落下時間:t = 30/15 = 2.0 s
高さ = 4.9×2.0² = 19.6 ≒ 20 m
ポイント 今度は水平から時間を出して鉛直へ渡す逆向きのリレー — どちらの運動からでも t を取り出せる。「t が共通言語」の意味が体で分かる場面替え。
A7【斜方投射】★★
A7-1
小球を初速 19.6 m/s、仰角 30° で打ち出した。√3 ≒ 1.73 とする。
① 最高点に達するまでの時間と、最高点の高さを求めよ。
② 地面(打ち出した高さ)に戻るまでの時間と、水平到達距離を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:初速を分解 — 水平 19.6×cos30° = 9.8√3 m/s、鉛直 19.6×sin30° = 9.8 m/s。
① 最高点:v_y = 0 より 0 = 9.8−9.8t → t = 1.0 s
高さ = 9.8×1.0−4.9×1.0² = 4.9 m
② 滞空時間 = 2×1.0 = 2.0 s
水平距離 = 9.8√3×2.0 = 19.6×1.73 = 33.9 ≒ 34 m
ポイント 斜方投射 = 「鉛直は初速 v₀sinθ の投げ上げ、水平は v₀cosθ の等速」— 分解した瞬間、新しい公式は1つも要らない。滞空時間は対称性で「最高点の2倍」。
A7-2(類題)
小球を、初速の水平成分が 12 m/s、鉛直成分が 9.8 m/s になるように斜め上へ打ち出した。
① 滞空時間(打ち出した高さに戻るまで)を求めよ。
② 最高点の高さと、水平到達距離を求めよ。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 最高点まで 0 = 9.8−9.8t → t = 1.0 s、滞空 = 2.0 s
② 高さ = 9.8×1.0−4.9 = 4.9 m、水平距離 = 12×2.0 = 24 m
ポイント 成分が直接与えられれば角度は不要 — 運動を支配するのは角度でなく成分という本質が見える出題形。鉛直成分が同じ A7-1 と、滞空時間・高さが同じになっている(水平成分は無関係)。
A7-3(類題)
斜め上に打ち出した小球の最高点の高さが 19.6 m であった。
① 初速の鉛直成分を求めよ。
② 滞空時間(打ち出した高さに戻るまで)を求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① v_y² = 2×9.8×19.6 = 384.16 → v_y = 19.6 ≒ 20 m/s
② 最高点まで 19.6/9.8 = 2.0 s、滞空 = 4.0 s
ポイント 高さから鉛直成分を逆算(v² 式)する場面替え。最高点の高さと滞空時間は鉛直成分だけで決まり、水平成分の情報がなくても答えられる — 独立性の理解を試す問い。
A8【落体のグラフ】★★
A8-1
初速 19.6 m/s で鉛直に投げ上げた小球について、上向きを正とした v-t グラフの概形を述べよ。また、グラフの面積を使って最高点の高さを求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:切片 19.6、傾き −9.8 の直線 — t = 2.0 s で 0 を横切り、t = 4.0 s で −19.6 に達する。
最高点の高さ = 0〜2.0 s の三角形の面積 = (1/2)×2.0×19.6 = 19.6 ≒ 20 m
ポイント 投げ上げの v-t グラフは1本の直線(加速度が −g で一定だから)— 上りも下りも同じ直線の上。面積(三角形)から高さが出るのは第1章の技術の再演。
A8-2(類題)
自由落下(下向きを正)の y-t グラフの形として正しいものを選び、理由を述べよ。
(a) 原点を通る直線
(b) 原点を通り下に凸の放物線
(c) 原点を通り上に凸の放物線
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
(b) — y = (1/2)gt² は t² に比例するので、傾き(速度)がだんだん急になる下に凸の放物線。
ポイント x-t(y-t)グラフの曲がり方は加速の証拠 — 直線なら等速、下に凸なら加速。グラフの形を式(t の何次か)と往復して読む。
A8-3(類題)
初速 19.6 m/s の投げ上げについて、「速さ」(速度の大きさ)と時間のグラフの形として正しいものを選べ。また、t = 3.0 s のときの速さを求めよ。
(a) 右下がりの直線が1本
(b) V 字形(下がって 0 になり、同じ傾きで上がる)
(c) 水平な直線
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
(b) — 速度は直線的に +19.6 → −19.6 と変わるが、速さはその絶対値なので t = 2.0 s で 0 に触れて折り返す V 字形。
t = 3.0 s:v = 19.6−9.8×3.0 = −9.8 → 速さ 9.8 m/s
ポイント 「速度のグラフ」と「速さのグラフ」は別物 — 絶対値をとると t 軸で折り返す。概念チェック Q1(第1章)の速さ/速度の区別が、グラフの形の違いにまで現れる。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。文字式のまま立式し、次元と極端な場合(h → 0 など)で答えを検算するのがB問題の作法。B4(斜方投射の一般式)とB5(出会い・モンキーハンティング)が入試の最頻出。
B1【投げ上げの一般式と対称性】★★
B1-1 初速 v₀ で鉛直に投げ上げた小球について、最高点に達するまでの時間、最高点の高さ、もとの高さに戻るまでの時間を、v₀ と g で表せ。
B1-2 初速 v₀ で鉛直に投げ上げた小球が、高さ h(最高点より低い)を通過する2つの時刻を t₁、t₂(t₁ < t₂)とする。t₁+t₂ と t₁t₂ を v₀、g、h で表せ。また (t₁+t₂)/2 が何を表すか述べよ。
B1-3 初速 v₀ で鉛直に投げ上げた小球が、もとの高さに戻ってきたときの速さが v₀ に等しいことを、式 v²−v₀² = −2gy を用いて示せ。
B2【高さのある落体(文字)】★★★
B2-1 高さ h の塔の上から、小球を初速 v₀ で鉛直に投げ上げた。地面に達するまでの時間と、達する直前の速さを、v₀、g、h で表せ。
B2-2 同じ高さ h から、同じ速さ v₀ で鉛直に投げ下ろした場合の、地面に達する直前の速さを求めよ。また B2-1 の結果と比べて分かることを述べよ。
B2-3 小球を静かにはなして自由落下させたところ、落下の最後の 1.0 s 間に落ちた距離が、全体の高さのちょうど半分であった。落下の全時間 T を求めよ。√2 ≒ 1.41 とする。
B3【水平投射(文字)】★★★
B3-1 高さ h の点から水平に速さ v₀ で投げ出した小球について、地面に達するまでの時間、水平到達距離、着地直前の速さを、v₀、g、h で表せ。
B3-2 B3-1 の小球の着地直前の速度が、水平方向となす角を φ とする。tanφ を v₀、g、h で表せ。
B3-3 B3-1 の小球の軌道が放物線であることを、t を消去して y を x の式で表すことにより示せ(投げ出した点を原点、水平に x 軸、鉛直下向きに y 軸をとる)。
B4【斜方投射(文字)】★★★
B4-1 地面上の点から初速 v₀、仰角 θ で小球を打ち出す。最高点の高さ H、滞空時間 T、水平到達距離 R を、v₀、θ、g で表せ。ただし 2sinθcosθ = sin2θ を用いてよい。
B4-2 B4-1 の R について、① v₀ を一定として R が最大になる θ とそのときの R を求めよ。② 仰角 θ と 90°−θ では R が等しくなることを示せ。
B4-3 B4-1 の小球の軌道の式(打ち出した点を原点、水平に x 軸、鉛直上向きに y 軸)を導け。
B5【2物体の出会い】★★★
B5-1 点 O から水平距離 L、高さ H の位置に的がある。O から的をまっすぐ狙って(仰角 tanθ = H/L)小球を速さ v₀ で発射すると同時に、的は静かに落下し始めた。小球は必ず的に命中することを示せ(命中は地面より上で起こるとする)。
B5-2
地面から小球 A を初速 v₀ で鉛直に投げ上げると同時に、その真上の高さ h の点から小球 B を静かにはなした。
① 2球が出会うまでの時間を求めよ。
② 出会いが地面より上(空中)で起こるための v₀ の条件を求めよ。
B5-3 同じ点から、初速 v₀ の鉛直投げ上げを時間 t₀ の間隔で2回行った(t₀ < 2v₀/g)。2球が空中で出会う時刻(1球目を投げた瞬間から測る)を求めよ。
B6【放物運動の性質】★★★
B6-1 斜方投射された小球の最高点での速さが、初速の半分であった。打ち出しの仰角 θ を求めよ。
B6-2 斜方投射で、水平到達距離 R と最高点の高さ H が等しくなった。打ち出しの仰角 θ について tanθ の値を求めよ。
B6-3 斜方投射された小球が、打ち出し後の時刻 t₁ と t₂(t₁ < t₂)に同じ高さ y を通過した。y と、初速の鉛直成分 v₀ᵧ を、t₁、t₂、g で表せ。
B問題 解答・解説
B1【投げ上げの一般式と対称性】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
上向きを正とする。最高点で v = 0:
0 = v₀−gt → 最高点までの時間 t = v₀/g
高さは v²−v₀² = −2gH に v = 0 を代入して H = v₀²/(2g)
もとの高さ(y = 0):0 = v₀t−(1/2)gt² = t(v₀−gt/2) → t = 2v₀/g(最高点の2倍)
ポイント 投げ上げの3点セット「v₀/g、v₀²/(2g)、2v₀/g」— 以後の章でも即戦力で使う基本量。次元:v₀/g = (m/s)/(m/s²) = s ○、v₀²/(2g) = m ○。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
h = v₀t−(1/2)gt² を整理して
(1/2)gt²−v₀t+h = 0、すなわち gt²−2v₀t+2h = 0
t₁、t₂ はこの2次方程式の2解だから、解と係数の関係より
t₁+t₂ = 2v₀/g、t₁t₂ = 2h/g
(t₁+t₂)/2 = v₀/g は B1-1 より最高点に達する時刻 — 2つの通過時刻は最高点の時刻について対称。
ポイント 数学第1巻の解と係数の関係が投げ上げの対称性そのものを語る — 「和の半分 = 対称の中心」。A4 で数値として見た 1.0 と 4.0(和 5.0、中心 2.5)の一般化。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
《証明》もとの高さでは y = 0 だから
v²−v₀² = −2g×0 = 0 → v² = v₀² → |v| = v₀
向きは下向き(v = −v₀)なので、速さは投げたときと等しい ∎
ポイント v² 式は「高さが同じなら速さが同じ」を最短で言う道具 — 第5章(エネルギー保存)で同じ結論に再会する伏線。
B2【高さのある落体(文字)】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
上向きを正、投げた点を原点とすると、地面は y = −h:
−h = v₀t−(1/2)gt² → gt²−2v₀t−2h = 0
t > 0 より t = {v₀+√(v₀²+2gh)}/g
速さは v² 式で:v²−v₀² = −2g(−h) → v = √(v₀²+2gh)
ポイント 解の公式の正の根を選ぶ吟味と、「y = −h」の符号翻訳が2大チェックポイント。検算:h → 0 で t → 2v₀/g(B1-1 の滞空時間)○ — 極端な場合との一致は文字式の強力な検算法。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
下向きを正として v²−v₀² = 2gh → v = √(v₀²+2gh)
これは B2-1(投げ上げ)の着地の速さと同じ。
理由:投げ上げた球はもとの高さに速さ v₀ で戻り(B1-3)、そこから先は投げ下ろしと同じ運動になるから。
ポイント 「着地の速さは、上に投げても下に投げても同じ」(違うのは時間だけ)— A5 の数値実験(どちらも 24.5 m/s)の種明かし。エネルギーの言葉では「同じ高さ・同じ速さから出発すれば同じ」(第5章)。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
全時間 T、全高さ (1/2)gT²。最後の 1.0 s 間の落下距離は
(1/2)gT²−(1/2)g(T−1.0)² = (1/2)g(2T−1.0)
これが全体の半分に等しい:
(1/2)g(2T−1.0) = (1/2)×(1/2)gT²
2(2T−1.0) = T² → T²−4.0T+2.0 = 0 → T = 2.0±√2
T−1.0 > 0 が必要だから T = 2.0−√2(≒ 0.59)は不適。
T = 2.0+√2 ≒ 3.4 s
ポイント 「最後の1秒」= 位置の差(第1章 B2-1 と同じ引き算)。両辺から g が消える — 答えが g によらない(月面でも 3.4 s!)ことに気づけると一段深い。解の吟味(T > 1.0 s)も必須。
B3【水平投射(文字)】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
鉛直:h = (1/2)gt² → t = √(2h/g)
水平:距離 = v₀√(2h/g)
着地直前:水平成分 v₀、鉛直成分 gt = √(2gh) だから
速さ = √(v₀²+(√(2gh))²) = √(v₀²+2gh)
ポイント 着地の速さが B2 と同じ √(v₀²+2gh) — 投げる向きによらず、同じ高さ・同じ速さから出れば着地の速さは同じ(第5章エネルギーの大定理の先取り)。落下時間が v₀ を含まないことも再確認。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
tanφ = (鉛直成分)/(水平成分) = √(2gh)/v₀
tanφ = √(2gh)/v₀
ポイント 速度の向きは成分の比(tan)で語る — ベクトルの分解(第1章 B5)の逆再生。h が大きいほど φ が 90° に近づく(ほぼ真下に突き刺さる)ことも式から読める。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
x = v₀t より t = x/v₀。これを y = (1/2)gt² に代入して
y = g x²/(2v₀²)
y が x の2次式(原点を通り下に開く放物線の半分)なので、軌道は放物線である ∎
ポイント 「放物運動」の名の由来を自分の手で — t の消去(数学第3巻・媒介変数の消去)で軌道の式が出る。v₀ が大きいほど係数が小さく、平べったい放物線になる。
B4【斜方投射(文字)】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
鉛直は初速 v₀sinθ の投げ上げだから、B1-1 の v₀ を v₀sinθ に置き換えて
H = (v₀sinθ)²/(2g) = v₀²sin²θ/(2g)
T = 2v₀sinθ/g
水平は等速 v₀cosθ なので
R = v₀cosθ×T = 2v₀²sinθcosθ/g = v₀²sin2θ/g
ポイント 新しい導出は不要 — 「B1 の v₀ → v₀sinθ の置き換え+水平は掛け算」。sin2θ にまとめる最後の1手(数学第2巻・2倍角)が R の性質(B4-2)を見えるようにする。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
① R = v₀²sin2θ/g は sin2θ = 1 のとき最大:2θ = 90° → θ = 45°、最大値 R = v₀²/g
② θ を 90°−θ に置き換えると sin2(90°−θ) = sin(180°−2θ) = sin2θ
よって R は変わらない ∎(例:30° と 60° は同じ到達距離)
ポイント 「45° が最大」「θ と 90°−θ は同じ」— どちらも sin2θ のグラフ(90° で山、対称)を思い浮かべれば一目。低く速い弾道と高くゆっくりの弾道が同じ地点に届く、という図の理解まで。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
x = v₀cosθ×t より t = x/(v₀cosθ)。y = v₀sinθ×t−(1/2)gt² に代入:
y = v₀sinθ×x/(v₀cosθ)−(1/2)g×x²/(v₀cosθ)²
y = x tanθ−g x²/(2v₀²cos²θ)
ポイント 軌道の式は「直線 x tanθ(狙った向き)から、g の項のぶんだけ垂れ下がる」形 — この読み方が B5-1(モンキーハンティング)の証明を一瞬にする。
B5【2物体の出会い】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
《証明》時刻 t の小球の位置は
x = v₀cosθ×t、y = v₀sinθ×t−(1/2)gt²
的の位置は (L, H−(1/2)gt²)。
小球が x = L に達する時刻 t₁ = L/(v₀cosθ) での小球の高さは
y = L tanθ−(1/2)gt₁²
tanθ = H/L より L tanθ = H だから
y = H−(1/2)gt₁² = そのときの的の高さ
よって小球は必ず的に命中する ∎
ポイント 名高い「モンキーハンティング」— 種明かしは「小球も的も、狙いの直線から同じ (1/2)gt² だけ落ちる」こと(B4-3 の読み方そのもの)。重力は両者を平等に落とすので、狙いさえ正しければ落下は関係ない。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
① 上向きを正、地面を原点として
A:y_A = v₀t−(1/2)gt²、B:y_B = h−(1/2)gt²
出会い:y_A = y_B → v₀t = h → t = h/v₀
(−(1/2)gt² が両辺で消える:A から見た B は等速 −v₀ で近づくため)
② 出会いの高さ y = h−(1/2)g(h/v₀)² > 0 ⇔ 2v₀² > gh
v₀ > √(gh/2)
ポイント 落体どうしの相対運動は等加速度が消えて等速になる(相対加速度 = g−g = 0)— 「距離 h を相対速度 v₀ で詰める」だけの問題に落ちる。この視点は衝突・すれ違い問題の万能の近道。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
1球目:y₁ = v₀t−(1/2)gt²、2球目:y₂ = v₀(t−t₀)−(1/2)g(t−t₀)²(t ≧ t₀)
y₁ = y₂ を整理すると
0 = −v₀t₀+g t t₀−(1/2)g t₀²
t₀(≠ 0)で割って g t = v₀+(1/2)g t₀
t = v₀/g+t₀/2
ポイント 出会いの時刻は「最高点の時刻 v₀/g から t₀/2 だけあと」— 2球の運動は時間軸上で t₀ ずらした同じ放物線なので、出会いは2つの山のちょうど中間(対称の中心)で起こる。式の結果を対称性で言い直せると強い。
B6【放物運動の性質】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
最高点では鉛直成分が 0 で、速さ = 水平成分 v₀cosθ。
条件:v₀cosθ = v₀/2 → cosθ = 1/2 → θ = 60°
ポイント 「最高点でも水平成分はまるごと生き残る」ことの直接の応用。最高点で速さ 0 になるのは真上(90°)に投げたときだけ、という感覚の確認にもなる。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
H = v₀²sin²θ/(2g)、R = 2v₀²sinθcosθ/g。H = R より
sin²θ/2 = 2sinθcosθ → sinθ = 4cosθ(sinθ ≠ 0 で割る)
tanθ = 4
ポイント H と R の比は tanθ だけで決まる(H/R = tanθ/4)— v₀ と g が比をとると消える構造を見る。tanθ = 4 は約 76°:高々と上げないと「高さ = 距離」にならない、という図の感覚と一致。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
鉛直方向:y = v₀ᵧt−(1/2)gt² より、t₁、t₂ は
gt²−2v₀ᵧt+2y = 0 の2解。解と係数の関係から
t₁+t₂ = 2v₀ᵧ/g → v₀ᵧ = g(t₁+t₂)/2
t₁t₂ = 2y/g → y = g t₁t₂/2
ポイント B1-2 の斜方投射版 — 鉛直方向だけ見れば投げ上げと同じなので、結果もそのまま使える。「2つの通過時刻だけから高さと初速が復元できる」— ストロボ写真の解析などで実際に使われる関係式。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦2-1【共テ形式:投げ上げの総合】★★
小球を地面から初速 19.6 m/s で鉛直に投げ上げた。g = 9.8 m/s² とする。
① 最高点に達するのは投げてから [ア].0 s 後である。
② 最高点の高さは [イウ] m である。
③ 上向きを正とした v-t グラフとして正しいものは [エ] である。
(a) 正の切片から始まる右下がりの直線
(b) 原点から始まる上に凸の曲線
(c) 正の切片から始まる右上がりの直線
④ 投げてから 3.0 s 後の速度は、下向きに [オ].[カ] m/s である。
⑤ 小球が高さ 14.7 m を通過する時刻は、[キ].0 s と [ク].0 s である。
実戦2-2【記述形式:崖からの水平投射】★★★
高さ 19.6 m の崖の上の点から、小球を水平に速さ 14.7 m/s で投げ出した。g = 9.8 m/s² とし、空気抵抗は無視する。
① 小球が地面に達するまでの時間を求めよ。
② 崖の真下の地点から着地点までの水平距離を求めよ。
③ 着地直前の速度の鉛直成分を求めよ。
④ 着地直前の速さを求めよ。
⑤ 着地直前の速度が水平方向となす角を φ とするとき、tanφ の値を求めよ。
実戦2-3【記述形式:塔の頂上を通す斜方投射】★★★
水平な地面上の点 O から水平距離 L の位置に、高さ H の塔が立っている。O から初速 v₀、仰角 θ で小球を打ち出したところ、小球は塔の頂上をちょうど通過した。g を重力加速度とする。
① 小球が塔の真上(水平距離 L の位置)に達する時刻 t を、L、v₀、θ で表せ。
② このとき、H = L tanθ−gL²/(2v₀²cos²θ) が成り立つことを示せ。
③ θ = 45°、L = 40 m、H = 20 m のとき、必要な初速 v₀ を求めよ(g = 9.8 m/s²)。
実戦問題 解答・解説
実戦2-1
考え方 投げ上げの基本量(①②)→ グラフの形(③)→ 対称性の数値確認(④⑤)。A3・A4・A8 の部品の組み立て — 共テは1つの状況を多角的に読ませる。
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解答
① 0 = 19.6−9.8t → t = 2.0 s(ア = 2)
② H = 19.6²/(2×9.8) = 19.6 ≒ 20 m(イウ = 20)
③ v = 19.6−9.8t は切片 19.6、傾き −9.8 の直線 → (a)(エ = (a))
④ v = 19.6−9.8×3.0 = −9.8 → 下向きに 9.8 m/s(オ = 9、カ = 8)
⑤ 14.7 = 19.6t−4.9t² → t²−4.0t+3.0 = 0 → (t−1.0)(t−3.0) = 0
t = 1.0 s と 3.0 s(キ = 1、ク = 3)
ポイント
• ④と⑤がつながっている:t = 3.0 s は「高さ 14.7 m を下りで通過する瞬間」— 1.0 s(上り)と対称の中心 2.0 s をはさんで対になっている。
• ③のようなグラフ選択は共テの定番 — 「切片は初速、傾きは −g、直線」の3点で即断。
実戦2-2
考え方 水平投射のフルコース:時間(鉛直)→ 距離(水平)→ 成分 → 合成(三平方)→ 向き(tan)。①〜⑤が B3 の文字式の数値版になっている — 数値は 3:4:5 の直角三角形が仕込まれている。
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解答
① 19.6 = 4.9t² → t² = 4.0 → t = 2.0 s
② x = 14.7×2.0 = 29.4 ≒ 29 m
③ v_y = 9.8×2.0 = 19.6 ≒ 20 m/s
④ 速さ = √(14.7²+19.6²) = √(216.09+384.16) = √600.25 = 24.5 ≒ 25 m/s
⑤ tanφ = 19.6/14.7 = 4/3
ポイント
• ④は 14.7:19.6 = 3:4 に気づけば、三平方で斜辺は 5 の比 → 24.5 m/s と暗算できる(3-4-5 は物理の数値問題の常連)。
• ⑤の tanφ = 4/3(φ ≒ 53°)— 「速さ」と「向き」をセットで答えて初めて速度ベクトルの完全な記述になる。
実戦2-3
考え方 ①で水平の式から t を取り出し、②で鉛直の式へ渡す — 軌道の式(B4-3)を自力で再構成する誘導。③は文字の結果に数値を流し込む、記述問題の王道の締め。
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解答
① 水平方向は等速だから L = v₀cosθ×t → t = L/(v₀cosθ)
② 鉛直方向:y = v₀sinθ×t−(1/2)gt² に①を代入して
H = v₀sinθ×L/(v₀cosθ)−(1/2)g×L²/(v₀cosθ)²
H = L tanθ−gL²/(2v₀²cos²θ) ∎
③ θ = 45° では tanθ = 1、cos²θ = 1/2 だから
20 = 40−9.8×40²/(2×v₀²×(1/2)) = 40−9.8×1600/v₀²
9.8×1600/v₀² = 20 → v₀² = 784 → v₀ = 28 m/s
ポイント
• ②の式は「狙いの直線 L tanθ から、重力の項だけ垂れる」— モンキーハンティング(B5-1)と同じ構造が、今度は「垂れる量を計算して当てる」問題として現れた。
• ③の 784 = 28² のような平方数の出現は設計のサイン — きれいに開かない場合は途中の代入を疑う、という検算感覚も実戦力。
第3章 力のつり合いと剛体
力学の勝負は「力を全部、正しく図示できるか」でほぼ決まる — この章はその作法(重力 → 接触力の順に描く)を体に入れる章。静止 ⇔ 力のつり合い(成分ごとに和 = 0)、が唯一の方程式。後半では物体に「大きさ」を与え(剛体)、回転まで支配する第2の条件 — 力のモーメントのつり合い — を手に入れる。
この章の公式・要点まとめ
いろいろな力
• 重力:W = mg(鉛直下向き。質量 m [kg] に 9.8 を掛けると [N])
• 垂直抗力 N:面が面に垂直に押す力/張力 T:糸が糸の方向に引く力
• 弾性力(フックの法則):F = kx(k:ばね定数 [N/m]、x:自然長からの伸び・縮み)
• 静止摩擦力:必要なだけはたらく(0 ≦ f ≦ μN)。滑り出す直前が最大静止摩擦力 f₀ = μN
• 動摩擦力:f' = μ'N(滑っている間、速さによらず一定。μ' < μ)
• 圧力:p = F/S [Pa = N/m²]/浮力:F = ρVg(ρ:液体の密度、V:液面下の体積 — 押しのけた液体の重さ)
力の図示の3ステップ(この章の心臓)
1. 着目物体を1つ決める
2. 重力 mg を描く(必ずある)
3. 接触しているものからの力をすべて描く(面 → 垂直抗力+摩擦力/糸 → 張力/ばね → 弾性力/液体 → 浮力)。接触していない物体からの力は描かない(重力以外)
力のつり合い
• 静止(または等速直線運動)⇔ 合力 = 0:水平成分の和 = 0 かつ 鉛直成分の和 = 0
• 斜面では重力を分解:斜面方向 mgsinθ、斜面に垂直な方向 mgcosθ
• 作用反作用の法則:A が B を押せば、B は A を同じ大きさ・逆向きに押す — ただし2力は別々の物体にはたらく(つり合いは同じ物体にはたらく2力。混同注意!)
力のモーメントと剛体のつり合い
• 力のモーメント:M = F×l(l = 回転軸から力の作用線までの距離 =「うでの長さ」)。反時計回りを正とする
• 剛体のつり合い:①力のつり合い(ΣF = 0)かつ ②任意の点のまわりのモーメントの和 = 0
• 重心:一様な棒・板は中央。2物体なら x_G = (m₁x₁+m₂x₂)/(m₁+m₂)(てこの逆)
解法チャート(つり合い)
1. 着目物体を決め、3ステップで力を全部図示
2. 軸をとる(斜面問題は「斜面方向・垂直方向」が楽)
3. 成分ごとに「(一方の向きの力の和)=(逆向きの力の和)」
4. 剛体は「モーメントの和 = 0」を追加 — 未知の力が作用する点を回転軸に選ぶと、その力が式から消えて楽
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
机の上に静止する本について、「本にはたらく重力」と「机が本を押す垂直抗力」は作用反作用の関係にある。○か×か。
Q2
静止摩擦力の大きさは、物体が静止している間つねに μN である。○か×か。
Q3
天井から糸でつるされて静止している物体(質量 m)について、糸の張力の大きさはどれか。
(a) mg より大きい
(b) mg に等しい
(c) mg より小さい
Q4
水に浮かんで静止している氷にはたらく浮力の大きさは、氷にはたらく重力と比べてどうか。
(a) 重力より大きい
(b) 重力に等しい
(c) 重力より小さい
Q5
剛体に、大きさが等しく逆向きで、作用線が平行にずれた2つの力(偶力)がはたらいている。この剛体はどうなるか。
(a) 合力が 0 なので、静止していれば静止し続ける
(b) 回転を始める
(c) 平行移動を始める
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — この2力はどちらも「本にはたらく力」なので、つり合いの関係。作用反作用の相手は「本が机を押す力」(はたらく相手が違う)。「同じ物体か、別の物体か」で二つの法則を仕分ける。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:× — 静止摩擦力は必要なだけはたらく(押す力が 3 N なら 3 N)。μN は「これ以上は出せない」上限(最大静止摩擦力)にすぎない。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:(b) — 静止 ⇔ つり合い ⇔ 上向きの張力 = 下向きの重力。「つるされているから」ではなく「つり合っているから」mg。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(b) — 浮かんで静止 = つり合い。浮力 = 重力。「浮くもの =浮力が勝っている」ではない(勝っていたら上昇し続ける)。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — 合力は 0 でも、モーメントの和は 0 でない(作用線がずれているため)→ 回転する。「力のつり合い」だけでは剛体は静止しない — モーメント条件が必要な理由そのもの。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り g = 9.8 m/s² とし、糸・ばねの質量は無視できるものとする。
A1【重力とばねの弾性力】★
A1-1
① 質量 2.0 kg の物体にはたらく重力の大きさを求めよ。
② 質量 500 g の物体にはたらく重力の大きさを求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
① W = mg = 2.0×9.8 = 19.6 ≒ 20 N
② 500 g = 0.50 kg より W = 0.50×9.8 = 4.9 N
ポイント 重力 = 質量 × 9.8 — 「質量 [kg]」と「重力(重さ)[N]」は別の量。②のようなg → kg の単位換算を落とすのが最初の事故ポイント。
A1-2(類題)
ばね定数 49 N/m の軽いばねに、質量 1.0 kg のおもりをつるして静止させた。ばねの伸びを求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:おもりに、重力 mg(下向き)と弾性力 kx(上向き)。
つり合い:kx = mg → 49×x = 9.8
x = 0.20 m(= 20 cm)
ポイント ばねの問題は「弾性力 kx と重力のつり合い」の1本。k の単位 N/m は「1 m 伸ばすのに必要な力」— 単位から式が復元できる。
A1-3(類題)
軽いばねに質量 0.50 kg のおもりをつるすと、10 cm 伸びて静止した。
① このばねのばね定数を求めよ。
② 質量 1.5 kg のおもりをつるすと、伸びはいくらになるか。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① kx = mg より k = 0.50×9.8/0.10 = 49 N/m
② x = 1.5×9.8/49 = 14.7/49 = 0.30 m(= 30 cm)
ポイント ①は k の逆算(実験でばね定数を測る方法そのもの)。②は「質量3倍 → 伸び3倍」— フックの法則は比例なので、比で即答もできる。
A2【糸の張力】★
A2-1
天井から糸で質量 3.0 kg の物体をつるして静止させた。糸の張力の大きさを求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:物体に、重力 29.4 N(下)と張力 T(上)。
つり合い:T = mg = 3.0×9.8 = 29.4 ≒ 29 N
ポイント 概念チェック Q3 の計算版。「静止 → つり合い → T = mg」の3段論法を、どんなに簡単でも省略せずに書く癖をつける。
A2-2(類題)
天井から糸1で質量 2.0 kg の物体 A をつるし、A の下に糸2で質量 1.0 kg の物体 B をつるして全体を静止させた。糸1、糸2の張力をそれぞれ求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:まず B に着目 — 重力 9.8 N(下)と糸2の張力 T₂(上)。
T₂ = 1.0×9.8 = 9.8 N
次に A に着目 — 重力 19.6 N(下)、糸2が引く力 9.8 N(下)、糸1の張力 T₁(上)。
T₁ = 19.6+9.8 = 29.4 ≒ 29 N
(A と B をまとめて1つの物体と見れば T₁ = 3.0×9.8 とも出せる)
ポイント 着目物体を切り替える練習の第1歩 — 「B だけ」「A だけ」「A+B まとめて」のどれでも解ける。糸2が A を下向きに引く(作用反作用)ことの図示が急所。
A2-3(類題)
質量 4.0 kg の看板を、天井から2本の鉛直な糸で左右対称につるした。1本の糸の張力を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:看板に、重力 39.2 N(下)と張力 T が2本(上)。
2T = 39.2 → T = 19.6 ≒ 20 N
ポイント 対称なつるし方なら2本で半分ずつ分担 — 「上向きの力の合計 = 重力」というつり合いの式が、分担の根拠を与える。
A3【力の合成・分解】★
A3-1
物体に、東向きに 3.0 N、北向きに 4.0 N の力が同時にはたらいている。合力の大きさを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:直交する2つの矢印と、その対角線(合力)。
合力 = √(3.0²+4.0²) = √25 = 5.0 N
ポイント 力はベクトル — 合成は平行四辺形(直交なら三平方)。3:4:5 は物理の数値問題の常連(第2章 実戦2-2 と同じ)。
A3-2(類題)
水平から 30° 上向きの、大きさ 10 N の力を、水平成分と鉛直成分に分解せよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
水平成分 = 10×cos30° = 10×1.73/2 = 8.65 ≒ 8.7 N
鉛直成分 = 10×sin30° = 10×0.50 = 5.0 N
ポイント 分解は合成の逆再生:「角をはさむ側が cos、向かいが sin」。分解した2つの成分は、もとの力の完全な代役 — 以後もとの矢印は消してよい。
A3-3(類題)
大きさがともに 6.0 N の2つの力が、60° の角をなして1点にはたらいている。合力の大きさを求めよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:ひし形の対角線。対角線は角を2等分するから
合力 = 2×6.0×cos30° = 12×1.73/2 = 10.38 ≒ 10 N
ポイント 等しい2力の合成は「2Fcos(半分の角)」— ひし形の対角線の図から出る。角が 120° なら合力はもとと同じ 6.0 N(正三角形)になる、という感覚も持っておく。
A4【斜面上のつり合い】★★
A4-1
傾角 30° のなめらかな斜面上に質量 2.0 kg の物体を置き、斜面に沿って上向きに張った糸で支えて静止させた。√3 ≒ 1.73 とする。
① 糸の張力を求めよ。
② 斜面からの垂直抗力を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:物体に、重力 19.6 N(鉛直下)、張力 T(斜面上向き)、垂直抗力 N(斜面に垂直)。重力を斜面方向 mgsin30° と垂直方向 mgcos30° に分解。
① 斜面方向のつり合い:T = mgsin30° = 19.6×0.50 = 9.8 N
② 垂直方向のつり合い:N = mgcos30° = 19.6×1.73/2 = 16.95 ≒ 17 N
ポイント 斜面の合言葉「滑る向きに sin、面に垂直に cos」— θ が小さいと滑る成分が小さい(sin)、で対応を確認。軸を斜面に合わせると、分解するのは重力1本で済む。
A4-2(類題)
傾角 45° のなめらかな斜面上の質量 1.0 kg の物体を、斜面に沿う糸で支えた。張力と垂直抗力を求めよ。√2 ≒ 1.41 とする。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = mgsin45° = 9.8×1.41/2 = 6.90 ≒ 6.9 N
N = mgcos45° = 6.9 N(張力と同じ)
ポイント 45° では sin = cos なので T = N — 斜度が上がるにつれ T は増え N は減る(90° で T = mg、N = 0:壁ぎわの自由落下)という極端な場合の想像が式の検算になる。
A4-3(類題)
傾角 30° のなめらかな斜面上の質量 2.0 kg の物体を、今度は水平方向の力 F で押して静止させた。√3 ≒ 1.73 とする。
① F の大きさを求めよ。
② 斜面からの垂直抗力を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力 19.6 N(下)、F(水平)、N(斜面に垂直)。今回は水平・鉛直の軸で分解すると
水平:N sin30° = F、鉛直:N cos30° = 19.6
② N = 19.6/cos30° = 19.6×2/1.73 = 22.7 ≒ 23 N
① F = N sin30° = 22.7×0.50 = 11.3 ≒ 11 N
ポイント 力の向きが変われば楽な軸も変わる(今回は N を分解する方が1回で済む)。N = 23 N > mgcos30° = 17 N — 水平に押すぶん、斜面はより強く押し返している。「N はいつも mgcosθ」ではない、が本問の教訓。
A5【静止摩擦力】★★
A5-1
粗い水平な床の上に質量 5.0 kg の物体が置いてある。床との間の静止摩擦係数を 0.40 とする。
① この物体を水平に 10 N の力で押したが、動かなかった。このときの静止摩擦力の大きさを求めよ。
② 最大静止摩擦力の大きさを求めよ。
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解答
図示:重力 49 N(下)、垂直抗力 N(上)、押す力 10 N、摩擦力 f(押す向きと逆)。
① 水平のつり合いより f = 10 N
② 鉛直のつり合いより N = 49 N。f₀ = μN = 0.40×49 = 19.6 ≒ 20 N
ポイント ①の答えは μN ではなく「押した力と同じ 10 N」 — 静止摩擦力は必要なだけ(概念チェック Q2)。μN を使ってよいのは「滑り出す直前」だけ、という線引きがこのテーマの全て。
A5-2(類題)
粗い水平な床(静止摩擦係数 0.40)の上の質量 2.0 kg の物体を水平に押す。動き出す直前の、押す力の大きさを求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
N = mg = 19.6 N。動き出す直前:F = μN = 0.40×19.6 = 7.84 ≒ 7.8 N
ポイント 「動き出す直前」=「摩擦力が上限 μN に達した瞬間」— この言葉が出たときだけ f = μN と置ける。
A5-3(類題)
粗い水平な床の上の質量 6.0 kg の物体を水平に押したところ、押す力が 30 N になった瞬間に動き出した。床との間の静止摩擦係数を求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
動き出す直前:30 = μ×6.0×9.8 = 58.8μ
μ = 30/58.8 = 0.510 ≒ 0.51
ポイント μ の逆算(摩擦係数の測定実験そのもの)。μ は単位のない数(力 ÷ 力)であることも確認 — 答えに単位を付けない珍しい量。
A6【動摩擦力と等速運動】★★
A6-1
粗い水平な床の上の質量 4.0 kg の物体を、水平に 9.8 N の力で引いたところ、物体は等速で滑り続けた。
① 動摩擦力の大きさを求めよ。
② 動摩擦係数を求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
① 等速直線運動 ⇔ つり合いだから、動摩擦力 = 引く力 = 9.8 N
② N = mg = 39.2 N より μ' = 9.8/39.2 = 0.25
ポイント 「等速 = つり合い」— 動いていても合力 0(この橋渡しが次章・運動方程式 ma = F の a = 0 の場合)。動摩擦力は速さによらず μ'N で一定。
A6-2(類題)
動摩擦係数 0.30 の水平な床の上で、質量 3.0 kg の物体を等速で滑らせ続けるのに必要な水平力を求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = μ'mg = 0.30×3.0×9.8 = 8.82 ≒ 8.8 N
ポイント A6-1 の逆向きの計算。等速で「引き続ける」のに力が要るのは摩擦があるから — なめらかなら力 0 で滑り続ける(慣性)、との対比で理解する。
A6-3(類題)
傾角 30° の粗い斜面上に物体を置いたところ、物体は一定の速さで滑り降り続けた。√3 ≒ 1.73 とする。
① 質量を 2.0 kg とするとき、動摩擦力の大きさを求めよ。
② 動摩擦係数を求めよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力の斜面成分 mgsin30°(下向き)、動摩擦力 f'(滑りと逆 = 斜面上向き)、垂直抗力 N = mgcos30°。
① 等速 ⇔ 斜面方向のつり合い:f' = mgsin30° = 19.6×0.50 = 9.8 N
② f' = μ'N より μ' = mgsin30°/(mgcos30°) = tan30° = 1/1.73 = 0.578 ≒ 0.58
ポイント ②で mg が約分されて消える — μ' = tanθ は質量によらない。「等速で滑り降りる角度を測れば μ' が分かる」という実験法(摩擦角)の原理。
A7【圧力と浮力】★
A7-1
重さ 40 N、底面積 0.020 m² の物体を水平な床に置いた。物体が床に及ぼす圧力を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
p = F/S = 40/0.020 = 2000 = 2.0×10³ Pa
ポイント 圧力 = 力 ÷ 面積(単位 Pa = N/m²)。同じ重さでも面積が小さいほど圧力は大きい(針が刺さる理由)。答えの ×10ⁿ 表記もここから練習。
A7-2(類題)
体積 2.0×10⁻³ m³ の物体を水中に完全に沈めた。物体にはたらく浮力の大きさを求めよ。水の密度を 1.0×10³ kg/m³ とする。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = ρVg = 1.0×10³×2.0×10⁻³×9.8 = 19.6 ≒ 20 N
ポイント 浮力 = 押しのけた水の重さ(ρV が押しのけた水の質量、×g で重さ)。指数の計算 10³×10⁻³ = 1 を落ち着いて — ×10ⁿ どうしの掛け算は指数の足し算。
A7-3(類題)
体積 1.0×10⁻⁴ m³、質量 0.30 kg の物体を、糸につけて水中に完全に沈めて静止させた。糸の張力(ばねはかりの読み)を求めよ。水の密度を 1.0×10³ kg/m³ とする。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力 2.94 N(下)、浮力 F(上)、張力 T(上)。
浮力 F = 1.0×10³×1.0×10⁻⁴×9.8 = 0.98 N
つり合い:T = mg−F = 2.94−0.98 = 1.96 ≒ 2.0 N
ポイント 「水中では軽く感じる」の正体 — 読み = 重力 − 浮力。3つの力のつり合いを図から式にする、浮力問題の標準形。
A8【力のモーメント・てこ】★★
A8-1
水平な軽い棒が点 O で支えられている。O から 0.30 m の点に、下向きに 20 N の力を加えた。
① この力の O のまわりのモーメントの大きさを求めよ。
② O をはさんで反対側、O から 0.60 m の点に下向きの力を加えて棒を水平につり合わせたい。必要な力の大きさを求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
① M = F×l = 20×0.30 = 6.0 N·m
② つり合い:F×0.60 = 6.0 → F = 10 N
ポイント モーメント = 力 × うでの長さ(単位 N·m)。「時計回りのモーメント = 反時計回りのモーメント」がてこのつり合い — うでが2倍なら力は半分。
A8-2(類題)
長さ 1.0 m の軽い棒の両端 A、B に、それぞれ重さ 30 N、20 N のおもりをつるす。1点で支えて水平につり合わせるには、A から何 m の点を支えればよいか。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
支点を A から x の点とすると、支点まわりのモーメントのつり合い:
30×x = 20×(1.0−x) → 50x = 20 → x = 0.40 m
ポイント 支点は重いおもり側に寄る(30:20 の逆比 2:3 に内分)— この点が2物体の重心。数学第1巻の内分点と同じ計算が力学に現れる。
A8-3(類題)
軽くて丈夫な棒をてことして使い、重さ 300 N の岩を持ち上げたい。支点から岩までの距離を 0.20 m、支点から手までの距離を 1.2 m とするとき、手で加える力は最小でいくら必要か。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
支点まわりのモーメントのつり合い:
F×1.2 = 300×0.20 → F = 60/1.2 = 50 N
ポイント 力が 1/6 で済む代わりに、手は岩の 6 倍動く — てこは「力を薄めて距離で払う」道具(仕事の総量は変わらない:第5章への伏線)。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。文字式のまま立式し、極端な場合(θ → 0、90° など)で答えを検算するのが作法。B3(摩擦)とB5(剛体・はしご)が入試の最頻出。
B1【角度のあるつり合い】★★★
B1-1 重さ W の物体を天井から糸でつるし、水平方向の力 F で静かに引いたところ、糸が鉛直と角 θ をなして静止した。糸の張力 T と、力 F の大きさを、W と θ で表せ。
B1-2 重さ W の物体を2本の糸でつるした。糸1は鉛直と 30°、糸2は鉛直と 60° の角をなして(左右反対側に)張られている。それぞれの張力 T₁、T₂ を W で表せ。√3 を用いてよい。
B1-3 傾角 θ のなめらかな斜面上の質量 m の物体を、水平方向の力 F で押して静止させた。F と、斜面からの垂直抗力 N を、m、g、θ で表せ。
B2【ばねの応用】★★★
B2-1 ばね定数 k の同じばね2本を直列につなぎ、下端に質量 m のおもりをつるした。全体の伸びを求めよ。また、この直列ばねを1本のばねとみなしたときのばね定数を求めよ。
B2-2 ばね定数 k の同じばね2本を並列にして(2本で同時に)質量 m のおもりをつるした。全体の伸びと、合成のばね定数を求めよ。
B2-3 ばね定数 k のばねの両端を、左右から大きさ F の力で同時に引いた。ばねの伸びは F/k か、それとも 2F/k か。理由とともに答えよ。
B3【摩擦のつり合い(文字)】★★★
B3-1 静止摩擦係数 μ の粗い水平面上の質量 m の物体を、水平な力 F で押す。物体が動かないための F の条件を求めよ。
B3-2
静止摩擦係数 μ の粗い斜面(傾角 θ)の上に質量 m の物体を置いたところ、静止した。
① このとき物体にはたらいている摩擦力の大きさを求めよ。
② 物体が滑り出さないための θ の条件を、tanθ を用いて表せ。
B3-3 静止摩擦係数 μ の粗い水平面上の質量 m の物体を、水平から角 θ だけ上向きの力 F で引く。物体が動き出す直前の F の大きさを、m、g、μ、θ で表せ。
B4【浮力(文字)】★★★
B4-1 密度 ρ の液体に、密度 ρ₀(ρ₀ < ρ)、体積 V の物体を浮かべた。液面より下に沈んでいる部分の体積 V' を求めよ。
B4-2 密度 ρ の液体の中に、密度 ρ'(ρ' > ρ)、体積 V の物体を糸でつるして完全に沈め、静止させた。糸の張力 T を求めよ。
B4-3 ある物体をばねはかりにつるすと、空気中では W、水中(完全に沈めて)では W' を示した。水の密度を ρ として、この物体の体積 V と密度 ρ_物 を、W、W'、ρ、g で表せ。
B5【剛体のつり合い(棒・はしご)】★★★
B5-1 長さ L、重さ W の一様な棒の一端 A を蝶番で壁に取り付け、他端 B を鉛直上向きの力 F で支えて水平に保った。F と、蝶番が棒に及ぼす力(鉛直成分)を求めよ。
B5-2 長さ L、重さ W の一様な棒を、両端 A、B の下に置いた台ばかりで水平に支える。A から L/4 の点に重さ W₀ の荷物を置いたとき、A、B の台ばかりが示す力 N_A、N_B を求めよ。
B5-3
長さ L、重さ W の一様な棒(はしご)を、なめらかな鉛直の壁に上端を、粗い水平な床に下端を置いて、床と角 θ をなすように立てかけた。
① 壁からの垂直抗力 N₁、床からの垂直抗力 N₂、床からの摩擦力 f を求めよ。
② 床との静止摩擦係数を μ とするとき、はしごが滑らないための条件を tanθ で表せ。
B6【重心と転倒】★★★
B6-1 軽い棒の両端に質量 m₁、m₂ の小球を取り付けた。2球の間の距離を L とするとき、全体の重心の位置を、m₁ 側の球からの距離で表せ。
B6-2 長さ 2L、質量 2m の一様な棒の一端に、質量 m の小球を取り付けた。全体の重心の位置を、小球を付けた端からの距離で表せ。
B6-3 質量 M、長さ L の一様な棒を、机の端から長さ x だけ水平に突き出して置き、突き出した先端に質量 m のおもりをのせる。棒が傾かない(落ちない)ための x の条件を求めよ。
B問題 解答・解説
B1【角度のあるつり合い】
考え方 角度のある力は成分に分解して、水平・鉛直それぞれで「和 = 0」 — 式が2本立つので未知数2つまで解ける。分解の相方(sin か cos か)は「角をはさむ側が cos」で機械的に。
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力 W(下)、張力 T(鉛直から θ 傾いた糸の方向)、F(水平)。
水平:T sinθ = F
鉛直:T cosθ = W
よって T = W/cosθ、F = W tanθ
ポイント 検算は極端な場合:θ → 0 で T → W、F → 0(ただつるすだけ)○/θ → 90° で T、F → ∞(水平な糸では支えられない)○ — 「糸は完全に水平にはできない」という有名な事実が式から読める。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
図示:T₁(鉛直と 30°)、T₂(鉛直と 60°、反対側)、W(下)。
水平:T₁ sin30° = T₂ sin60° → T₁ = √3 T₂
鉛直:T₁ cos30°+T₂ cos60° = W → √3T₂×(√3/2)+T₂/2 = 2T₂ = W
よって T₂ = W/2、T₁ = (√3/2)W
ポイント 30°+60° = 90° — 2本の糸が直交しているので、W を糸の方向に分解して T₁ = Wcos30°、T₂ = Wcos60° と1手で出す別解もある。鉛直に近い糸(T₁)ほど大きく分担する。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力 mg(下)、F(水平)、N(斜面に垂直 — 鉛直から θ 傾く)。
水平:N sinθ = F、鉛直:N cosθ = mg
よって N = mg/cosθ、F = mg tanθ
ポイント A4-3(数値)の一般化。F = mgtanθ は B1-1 と同じ形 — 「鉛直の支え(糸 or 斜面)+水平の力」という構造が同じだから。θ → 90° で発散:垂直の壁は水平力では支えられない。
B2【ばねの応用】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:直列では、どちらのばねにも同じ大きさ mg の力がかかる(下のばねはおもりを、上のばねは「下のばね+おもり」を支えるが、ばねは軽いので張力は同じ mg)。
各ばねの伸び = mg/k、全体の伸び = 2mg/k
合成ばね定数 = mg÷(2mg/k) = k/2
ポイント 直列は「力が共通、伸びが足し算」→ 柔らかくなる(k/2)。ゴムひもを2本つなぐと伸びやすくなる日常感覚と一致。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
並列では、2本の伸び x が共通で、弾性力は 2 本ぶん:2kx = mg
伸び = mg/(2k)、合成ばね定数 = 2k
ポイント 並列は「伸びが共通、力が足し算」→ 硬くなる(2k)。直列・並列の合成則は、第3巻(電気)の抵抗の合成とちょうど逆の対応になる — 遠い伏線として。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
伸びは F/k。
理由:「壁に固定した一端を F で引く」場合と比べる — このとき壁も(作用反作用で)ばねを F で引き返しており、両端が F で引かれる状況は固定して引く場合とまったく同じ。ばねの各部分にかかる張力は F であって 2F ではない。
ポイント ばねはかりを両側から 1 kg ずつで引いても読みは「1 kg」— 有名な引っかけ。ばねの中の張力はどこでも同じ F(軽いばね)、が種明かし。
B3【摩擦のつり合い(文字)】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
N = mg。動かない ⇔ 必要な摩擦力 F が最大静止摩擦力以下:
F ≦ μmg
ポイント 「動かない条件」は不等式で答える — 等号(F = μmg)が「動き出す直前」。境目を等式、範囲を不等式で言い分ける。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
① 静止しているから、斜面方向のつり合いより
摩擦力 f = mgsinθ(μmgcosθ ではない!)
② 滑り出さない条件:f ≦ μN、すなわち mgsinθ ≦ μmgcosθ
tanθ ≦ μ
ポイント ①が本テーマ最大の罠 — 静止摩擦力はつり合いから決まる(A5-1 の教訓の斜面版)。②の「tanθ = μ となる角(摩擦角)」は、斜面を徐々に傾けて μ を測る実験の原理(A6-3 の静止版)。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
図示:mg(下)、N(上)、F(斜め上:水平成分 Fcosθ、鉛直成分 Fsinθ)、摩擦力 μN(F の水平成分と逆)。
鉛直:N+Fsinθ = mg → N = mg−Fsinθ
水平(動き出す直前):Fcosθ = μN = μ(mg−Fsinθ)
F について解いて F = μmg/(cosθ+μsinθ)
ポイント 斜め上に引くと N が減り、摩擦も減る — 荷物を「引きずるより少し持ち上げ気味に引く」と楽な理由。θ = 0 で F = μmg(B3-1)に戻ることを検算。
B4【浮力(文字)】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
浮かんで静止 ⇔ 浮力 = 重力:
ρV'g = ρ₀Vg → V' = (ρ₀/ρ)V
ポイント 沈む割合 = 密度の比。氷(ρ₀/ρ ≒ 0.92)なら体積の約 92% が水面下 — 「氷山の一角」の定量版。ρ₀ → ρ で V' → V(全部沈んでぎりぎり浮く)○。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力 ρ'Vg(下)、浮力 ρVg(上)、張力 T(上)。
つり合い:T = ρ'Vg−ρVg = (ρ'−ρ)Vg
ポイント 「水中での見かけの重さ」=(密度の差)×Vg — 差 ρ'−ρ が効く形。ρ' = ρ なら T = 0(浮きも沈みもしない)○。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
浮力 = 空気中と水中の読みの差:ρVg = W−W'
V = (W−W')/(ρg)
物体の質量は W/g だから
ρ_物 = (W/g)/V = ρW/(W−W')
ポイント 「はかり2回で体積と密度が測れる」— アルキメデスが王冠の金の純度を見破った方法そのもの。読みの差 = 浮力という1行がすべての入口。
B5【剛体のつり合い(棒・はしご)】
考え方 剛体は「力のつり合い」+「モーメントのつり合い」の2本立て。回転軸は未知の力が作用する点に置く(その力のモーメントが 0 になり、式から消える)— 蝶番・床との接点が定位置。
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:棒に、重力 W(中央、下向き)、F(B端、上向き)、蝶番の力 R(A端)。
A のまわりのモーメントのつり合い(反時計回りを正):
F×L−W×(L/2) = 0 → F = W/2
力のつり合い(鉛直):R+F = W → 蝶番の力 = 上向きに W/2
ポイント 軸を A に置いたので、未知の蝶番の力 R がモーメントの式に現れない — 軸選びの威力。重心(中央)に重力を集めて描くのが剛体の図示の約束。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
A のまわりのモーメント:N_B×L = W×(L/2)+W₀×(L/4)
N_B = W/2+W₀/4
力のつり合い:N_A+N_B = W+W₀ → N_A = W/2+3W₀/4
ポイント 荷物に近い側(A)が多く分担(W₀ の 3/4)— 荷物からの距離の逆比で配分される。検算:N_A+N_B = W+W₀ ○(合計は必ず全重量)。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力 W(中央)、壁から N₁(水平、壁に垂直)、床から N₂(鉛直上)と摩擦 f(壁向き=水平)。
① 鉛直:N₂ = W
水平:f = N₁
下端のまわりのモーメント:N₁×Lsinθ = W×(L/2)cosθ
N₁ = W/(2tanθ)、f = W/(2tanθ)
② 滑らない条件:f ≦ μN₂
W/(2tanθ) ≦ μW → tanθ ≧ 1/(2μ)
ポイント はしごは剛体の王様。うでの長さ(Lsinθ と (L/2)cosθ)を作用線までの垂直距離で正しくとるのが山場。②「立てるほど安全、寝かせるほど滑る」— 式 tanθ ≧ 1/(2μ) が日常の感覚を定量化する。
B6【重心と転倒】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
m₁ からの距離を x とすると、重心のまわりのモーメントのつり合い(重心 = 支えてつり合う点):
m₁gx = m₂g(L−x) → x = m₂L/(m₁+m₂)
ポイント 重心は重い方に寄る(m₂ が大きいほど x は…m₁ から遠く?いや近く — x = m₂L/(m₁+m₂) は m₂ 大で L に近づく:m₁ から遠ざかり m₂ に近づく ○)。A8-2 の数値(30 N と 20 N → 2:3 の内分)の一般化で、数学の内分点公式と同じ形。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
小球の端を原点にとる。小球(質量 m)は x = 0、棒(質量 2m)の重心は中央 x = L。
x_G = (m×0+2m×L)/(m+2m) = 2L/3
ポイント 複数の物体の重心は「各部分の重心に質量を集めてから平均」— 棒はまず中央の1点に置き換える。この2段構えで、どんな組み合わせ物体でも同じ計算になる。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
図示:机の端 O を回転軸に。棒の重心は O から机側に (L/2−x)、おもりは O から外側に x。
傾かない条件:O のまわりで、机側へ戻すモーメント ≧ 外へ倒すモーメント
Mg(L/2−x) ≧ mgx → ML/2 ≧ (M+m)x
x ≦ ML/{2(M+m)}
ポイント 転倒の境目は「机の端のまわりのモーメント勝負」— 全体の重心が机の端の真上に来た瞬間が限界、と言い換えてもよい。m = 0 で x ≦ L/2(棒単独なら半分まで出せる)○。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦3-1【共テ形式:ばねはかりと浮力の実験】★★
質量 0.50 kg の金属のかたまりをばねはかりにつるした。g = 9.8 m/s²、水の密度を 1.0×10³ kg/m³ とする。
① 空気中でのばねはかりの読みは [ア].[イ] N である。
② 全体を水中に沈めると、読みは 2.9 N になった。かたまりにはたらく浮力は [ウ].[エ] N であり、体積は [オ].[カ]×10⁻⁴ m³ である。
③ この金属の密度は [キ].[ク]×10³ kg/m³ である。
④ 次に、水のかわりに密度 1.2×10³ kg/m³ の食塩水に全体を沈めると、読みは約 [ケ].[コ] N になる。
⑤ 水中で、かたまりをさらに深く沈めると(全体は水中のまま)、読みはどうなるか:[サ]
(a) 大きくなる
(b) 変わらない
(c) 小さくなる
実戦3-2【記述形式:粗い斜面上のつり合い(文字式総合)】★★★
傾角 θ の粗い斜面上に、質量 m の物体を置く。斜面との静止摩擦係数を μ、重力加速度を g とする。
① 物体が静止しているとき、垂直抗力 N と摩擦力 f の大きさを求めよ。
② 物体が滑り出さないための条件を、tanθ を用いて表せ。
③ 以下では tanθ > μ とし、物体が滑らないよう、斜面に沿って上向きの力 F を加える。物体が滑り降りる直前の F の大きさを求めよ。
④ F を大きくしていくと、やがて物体は滑り上がる直前になる。このときの F の大きさを求めよ。
実戦3-3【記述形式:壁と糸で支えた棒】★★★
長さ L、重さ W の一様な棒 AB がある。A 端を鉛直な壁に蝶番で取り付け、B 端と壁の上方の点を糸で結んで、棒を水平に保った。糸と棒のなす角を θ とする。
① 糸の張力 T を求めよ。
② 蝶番が棒に及ぼす力の、水平成分 H と鉛直成分 V を求めよ。
③ 棒の中点に重さ W の荷物をつるすと、糸の張力はいくらになるか。
実戦問題 解答・解説
実戦3-1
考え方 「空気中の読み → 水中の読み → 差が浮力」の実験手順を式でなぞる。③④は浮力の公式 ρVg の ρ と V を入れ替えて使い回す — 数値の使い回しこそ共テの読解力。
実戦3-1解答を見る解答を隠す
解答
① mg = 0.50×9.8 = 4.9 N(ア = 4、イ = 9)
② 浮力 = 読みの差 = 4.9−2.9 = 2.0 N(ウ = 2、エ = 0)
ρVg = 2.0 より V = 2.0/(1.0×10³×9.8) = 2.04×10⁻⁴ ≒ 2.0×10⁻⁴ m³(オ = 2、カ = 0)
③ 密度 = 0.50/(2.0×10⁻⁴) = 2.5×10³ kg/m³(キ = 2、ク = 5)
④ 浮力は密度に比例:2.0×1.2 = 2.4 N → 読み = 4.9−2.4 = 2.5 N(ケ = 2、コ = 5)
⑤ 完全に沈んだ後は、押しのける体積 V が変わらないので浮力も不変 → (b)(サ = (b))
ポイント
• ③の 2.5×10³ kg/m³ という値から「アルミニウム(2.7×10³)に近い」など物質の見当までつけるのが理科の読み。
• ⑤は頻出の定性設問 — 浮力を決めるのは「深さ」ではなく「押しのけた体積」(厳密には上下面の水圧差だが、その差は深さによらない)。
実戦3-2
考え方 摩擦力の向きが状況で反転することがすべて:③(滑り降りる直前)では摩擦は上向きに目一杯、④(滑り上がる直前)では下向きに目一杯。図を2枚描き分けてから式へ。
実戦3-2解答を見る解答を隠す
解答
① 垂直方向:N = mgcosθ
斜面方向(静止):f = mgsinθ
② f ≦ μN より mgsinθ ≦ μmgcosθ → tanθ ≦ μ
③ 滑り降りる直前:摩擦は斜面上向きに最大 μN。斜面方向のつり合い:
F+μmgcosθ = mgsinθ → F = mg(sinθ−μcosθ)
④ 滑り上がる直前:摩擦は斜面下向きに最大 μN:
F = mgsinθ+μmgcosθ → F = mg(sinθ+μcosθ)
ポイント
• ③と④の間、mg(sinθ−μcosθ) ≦ F ≦ mg(sinθ+μcosθ) の幅のどの F でも静止できる — 静止摩擦が「必要なだけ」調整してくれる範囲。この「解が幅をもつ」感覚が摩擦問題の核心。
• ③で F ≧ 0 が要るのは tanθ > μ のとき(だから問題文に条件がある)— 条件の意味を答案で一言触れると格が上がる。
実戦3-3
考え方 蝶番の力は向きが未知(2成分)— だから回転軸を A(蝶番)に置いてモーメントの式から追い出すのが第一手(B5 の作法)。①モーメント → ②力のつり合い、の順で unknowns が順に決まる。
実戦3-3解答を見る解答を隠す
解答
① 図示:重力 W(中央)、張力 T(B端、棒と角 θ)、蝶番の力(A端、H と V)。
A のまわりのモーメント:張力の「棒に垂直な成分」は Tsinθ だから
Tsinθ×L = W×(L/2) → T = W/(2sinθ)
② 水平:H = Tcosθ = W/(2tanθ)(壁から離れる向き…蝶番は棒を壁側へ引く/押す — 大きさで答える)
鉛直:V+Tsinθ = W → V = W−W/2 = W/2
③ モーメント:Tsinθ×L = W×(L/2)+W×(L/2) = WL
T = W/sinθ(①の 2 倍)
ポイント
• ①でモーメントに効くのは張力の垂直成分 Tsinθ だけ — 「うでの長さ × 力」を「棒に垂直な力の成分 × 棒の長さ」と読み替える技術。
• ③で張力がちょうど2倍になるのは、荷物を重心と同じ点(中点)に置いたから — 実質、棒の重さが 2W になったのと同じ。構造で答えを予言してから計算で確かめる、が理想の順序。
第4章 運動方程式
力学の心臓 ma = F — 「力」(第3章)と「加速度」(第1・2章)がここで1本の式に結ばれる。合力が 0 ならつり合い(第3章)、0 でなければその向きに加速する:第3章はこの章の a = 0 という特別な場合だった。物体が複数あっても恐れることはない — 「1物体につき1本、運動方程式を立てて連立」が唯一にして万能の手順。
この章の公式・要点まとめ
運動の3法則
• 第1法則(慣性の法則):合力が 0 なら、静止している物体は静止を続け、動いている物体は等速直線運動を続ける(動き続けるのに力は不要!)
• 第2法則(運動方程式):ma = F(F は合力)。加速度は合力に比例し、質量に反比例。向きは合力の向き
• 第3法則(作用反作用):A が B に力を及ぼせば、B は A に同じ大きさ・逆向きの力を及ぼす(別々の物体にはたらく)
単位:1 N = 1 kg·m/s²(「質量 1 kg に 1 m/s² を生む力」— ma = F そのもの)
よく出る形(適用条件とセットで)
• 等速・静止 ⇔ 合力 0(つり合い)— 「等速」と見たら a = 0
• エレベーター内の垂直抗力(見かけの重さ):上向き加速度 a で N = m(g+a)、下向き a で N = m(g−a)
• なめらかな斜面:a = gsinθ(質量によらない)/粗い斜面(滑り降り):a = g(sinθ−μ'cosθ)、(滑り上がり):a = g(sinθ+μ'cosθ) の減速
• 軽い糸の張力は両端で同じ大きさ/軽い滑車は張力の向きを変えるだけ(大きさ不変)
解法チャート(運動方程式)
1. 着目物体を決める(複数あれば、物体の数だけ式を立てる)
2. 力をすべて図示(第3章の3ステップ:重力 → 接触力)
3. 加速度の向きを正として、各物体で ma = (正の向きの力の和)−(逆向きの力の和)
4. 運動と垂直な方向はつり合いの式(N = mgcosθ など)
5. 連立して解く — 連結体は式を足すと内力(張力)が消える(全体を1物体と見る技と同じ)
6. 検算:単位(次元)、極端な場合(θ → 0、m → 0 など)、「張力 < 引く力」などの大小関係
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
運動している物体には、必ずその運動の向きに力がはたらいている。○か×か。
Q2
同じ大きさの力を加えるとき、質量が 2 倍の物体に生じる加速度はどうなるか。
(a) 2 倍になる
(b) 1/2 倍になる
(c) 変わらない
Q3
物体が等速直線運動をしているとき、物体にはたらく力の合力は 0 である。○か×か。
Q4
馬が荷車を引く力と、荷車が馬を引き返す力は、作用反作用で常に同じ大きさである。それでも馬車が動き出せるのはなぜか。
(a) 実際には馬が引く力の方がわずかに大きいから
(b) 2つの力は別々の物体にはたらくので打ち消し合わず、荷車の運動は「荷車にはたらく力」だけで決まるから
(c) 動き出す瞬間だけ作用反作用の法則が成り立たないから
Q5
質量の大きい物体ほど、はたらく重力は大きい。それなのに自由落下の加速度が質量によらず同じ g になるのはなぜか。
(a) 質量が大きいほど「動かしにくさ」も比例して大きく、ちょうど打ち消すから
(b) 重力の大きさが実はどの物体も同じだから
(c) 空気が重い物体を余分に支えるから
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — 等速直線運動は合力 0 で続く(慣性の法則)。「動き続ける = 押され続けている」という日常の直感(アリストテレス的誤解)を、ここで正式に捨てる。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(b) — a = F/m:質量は「加速のしにくさ」。F 一定なら a は m に反比例。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:○ — 等速直線運動 ⇔ a = 0 ⇔ 合力 0。「動いているのに合力 0」があり得るのが第1法則の核心。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(b) — 作用反作用の2力は馬と荷車という別々の物体にはたらく。荷車が進むかどうかは「荷車にはたらく力」(馬が引く力 vs 摩擦)だけの勝負 — 概念チェック(第3章 Q1)の運動版。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(a) — F = mg を ma = F に入れると a = g:分子(重力)も分母(慣性)も m に比例して約分される。第2章 概念チェック Q1「同時に落ちる」の理論的な種明かし。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り g = 9.8 m/s² とし、糸・滑車は軽く、なめらかに回るものとする。
A1【ma = F の基本】★
A1-1
なめらかな水平面上の質量 2.0 kg の物体に、水平方向に大きさ 6.0 N の合力がはたらいている。加速度の大きさを求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
ma = F より 2.0×a = 6.0
a = 3.0 m/s²(力の向き)
ポイント 運動方程式は「式を書いてから代入」— ma = F の1行を省かない。答えには向き(合力の向き)まで添える。
A1-2(類題)
質量 4.0 kg の物体に 0.50 m/s² の加速度を生じさせるのに必要な合力の大きさを求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = ma = 4.0×0.50 = 2.0 N
ポイント N(ニュートン)= kg×m/s² — 単位が公式を覚えている。数値の掛け算と同時に単位も掛ける習慣を。
A1-3(類題)
ある物体に大きさ 12 N の合力を加えたところ、3.0 m/s² の加速度が生じた。この物体の質量を求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
m = F/a = 12/3.0 = 4.0 kg
ポイント 質量の逆算 — 「力を加えて加速度を測れば質量が分かる」:これが質量(慣性質量)の測定原理そのもの。無重力の宇宙船内でも使える体重測定法。
A2【複数の力と加速度】★
A2-1
なめらかな水平面上の質量 2.0 kg の物体に、右向きに 10 N、左向きに 4.0 N の力が同時にはたらく。加速度を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:右向きを正。合力 = 10−4.0 = 6.0 N(右向き)。
2.0a = 6.0 → a = 3.0 m/s²(右向き)
ポイント ma = F の F は合力 — まず力を全部図示して符号つきで足す。逆向きの力があっても式は1本のまま。
A2-2(類題)
なめらかな水平面上に静止していた質量 5.0 kg の物体に、右向きに 30 N、左向きに 10 N の力を加え続けた。
① 加速度を求めよ。
② 2.0 s 後の速さを求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 5.0a = 30−10 = 20 → a = 4.0 m/s²(右向き)
② v = at = 4.0×2.0 = 8.0 m/s
ポイント 運動方程式(この章)で a を求め、等加速度の公式(第1章)へ渡す — 章をまたぐリレーが力学の標準の流れ。
A2-3(類題)
なめらかな水平面上を右向きに 6.0 m/s で滑る質量 2.0 kg の物体に、左向きに 4.0 N の力を加え続けた。
① 物体が(いったん)止まるまでの時間を求めよ。
② その間に進む距離を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 右向きを正:2.0a = −4.0 → a = −2.0 m/s²
0 = 6.0−2.0t → t = 3.0 s
② v²の式:0−6.0² = 2×(−2.0)×x → x = 36/4.0 = 9.0 m
ポイント 運動と逆向きの力 → 負の加速度 — 第1章の制動問題の「原因(力)」がここで判明した形。力を加え続ければ、止まった後は左へ動き出す(投げ上げの水平版)。
A3【鉛直方向の運動方程式】★★
A3-1
質量 2.0 kg の物体を糸で、上向きに 2.0 m/s² の加速度で引き上げる。糸の張力を求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:張力 T(上)、重力 19.6 N(下)。上向きを正。
ma = T−mg:2.0×2.0 = T−19.6
T = 23.6 ≒ 24 N
ポイント 鉛直の運動方程式は「T − mg = ma」の型 — つり合い(T = mg)より加速のぶんだけ余計に引く必要がある。T = m(g+a) とまとめて覚えてもよい。
A3-2(類題)
質量 1.0 kg の物体を糸で真上に引き上げたところ、張力は 14.7 N であった。加速度を求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
1.0×a = 14.7−9.8 = 4.9
a = 4.9 m/s²(上向き)
ポイント 「張力から加速度を逆算」— 式は同じ1本。もし T < mg なら a は負(=減速しながら上昇 or 加速しながら下降)、と符号の意味まで読めるように。
A3-3(類題)
質量 1.5 kg の物体を糸で引き上げる。糸は 20 N までの張力に耐えられる。糸を切らずに引き上げられる加速度の最大値を求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 20 N(限界)のとき:1.5a = 20−1.5×9.8 = 20−14.7 = 5.3
a = 3.5 m/s²
ポイント 「切れる限界 = 張力が最大値ちょうど」という条件の翻訳(第3章の「動き出す直前 = μN」と同じ発想)。ゆっくり(小さい a で)引けば細い糸でも持ち上がる — エレベーターのワイヤ設計の原理。
A4【エレベーターと見かけの重さ】★★
A4-1
質量 50 kg の人が、エレベーターの床の上に立っている。エレベーターが上向きに 1.0 m/s² の加速度で上昇しているとき、床が人を押す垂直抗力(体重計の読み)を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:人に、垂直抗力 N(上)と重力 490 N(下)。上向きを正。
50×1.0 = N−490
N = 540 N
ポイント 体重計の読み = 垂直抗力 N(重力そのものではない!)。上向きに加速中は N > mg — 「体が重く感じる」の正体。
A4-2(類題)
A4-1 の人が、下向きに 1.4 m/s² の加速度で降下し始めたときの、体重計の読みを求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
下向きを正:50×1.4 = 490−N
N = 490−70 = 420 N
ポイント 下向き加速中は N < mg(体が浮く感じ)。まとめると N = m(g±a) — 「見かけの重力が g±a になる」という読み替えは第7章(慣性力)への伏線。
A4-3(類題)
質量 50 kg の人が乗ったエレベーターが動き出した瞬間、体重計は 588 N を示した。エレベーターの加速度の大きさと向きを求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
588 > 490(静止時)なので上向きの加速度。上向きを正:
50a = 588−490 = 98 → a = 2.0 m/s²(上向き)
ポイント 読みの逆算から運動を推定 — 「体重計はエレベーターの加速度計になる」。588 N を見た瞬間に「重い → 上向き加速(上昇開始 or 下降ブレーキ)」と定性判断してから計算に入る。
A5【動摩擦のある水平運動】★★
A5-1
動摩擦係数 0.25 の粗い水平面上で、質量 2.0 kg の物体を水平に 9.8 N の力で引き続けた。加速度を求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:引く力 9.8 N(前)、動摩擦力 μ'N(後)、N = mg = 19.6 N。
動摩擦力 = 0.25×19.6 = 4.9 N
2.0a = 9.8−4.9 = 4.9 → a = 2.45 ≒ 2.5 m/s²
ポイント 手順は「鉛直のつり合いで N を確定 → 摩擦 μ'N → 水平の運動方程式」の3段 — 摩擦のある問題の定跡。等速で引くには 4.9 N でよい(第3章 A6)から、超過分 4.9 N が加速を生む。
A5-2(類題)
動摩擦係数 0.50 の粗い水平面上を、速さ 9.8 m/s で滑ってきた物体が、摩擦だけを受けて減速する。
① 加速度を求めよ。
② 止まるまでの時間を求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① ma = −μ'mg → a = −μ'g = −0.50×9.8 = −4.9 m/s²(大きさ 4.9 m/s²)
② 0 = 9.8−4.9t → t = 2.0 s
ポイント m が約分されて消える:摩擦による減速の大きさは μ'g で質量によらない。「重い物ほど止まりにくい」わけではない(摩擦も重さに比例して増えるから)— Q5 と同じ約分の構造。
A5-3(類題)
粗い水平な床の上を初速 10 m/s で滑り出した物体が、20 m 滑って止まった。床との動摩擦係数を求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
v² の式:0−10² = 2×(−a)×20 → a = 2.5 m/s²
a = μ'g より μ' = 2.5/9.8 = 0.255 ≒ 0.26
ポイント 「滑った距離から μ' を逆算」— スリップ痕の長さから事故車の速度を推定する実務(交通鑑識)と同じ計算。第1章(運動)と本章(力)の往復で解く総合型。
A6【なめらかな斜面上の運動】★★
A6-1
傾角 30° のなめらかな斜面上で物体を静かにはなした。滑り降りる加速度を求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:重力の斜面成分 mgsin30°(斜面下向き)、垂直抗力 N(運動に垂直)。斜面下向きを正。
ma = mgsin30° → a = gsin30° = 9.8×0.50 = 4.9 m/s²
ポイント m が約分され a = gsinθ:質量によらない(重い物も軽い物も同じように滑る — 自由落下の斜面版)。θ = 90° で g(自由落下)、θ = 0 で 0、の極端検算も一瞬。
A6-2(類題)
A6-1 の物体が、斜面に沿って 5.0 m 滑り降りるのにかかる時間と、そのときの速さを求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
5.0 = (1/2)×4.9×t² → t² = 2.04 → t ≒ 1.4 s
v² = 2×4.9×5.0 = 49 → v = 7.0 m/s
ポイント 運動方程式で a を出せば、あとは第1章の等加速度公式の世界 — 速さは v² 式(t 不要)で出すと 49 = 7² ときれいに開く。
A6-3(類題)
傾角 30° のなめらかな斜面の下端から、斜面に沿って上向きに初速 7.0 m/s で物体を滑らせた。
① 斜面に沿って最高何 m の地点まで達するか。
② 下端に戻ってくるのは滑らせてから何秒後か。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
斜面上向きを正とすると a = −gsin30° = −4.9 m/s²(上りも下りも同じ)。
① 0−7.0² = 2×(−4.9)×L → L = 49/9.8 = 5.0 m
② 上り:0 = 7.0−4.9t → t = 10/7 s。対称性より往復は 2 倍:
t = 20/7 ≒ 2.9 s
ポイント なめらかな斜面の上り下りは「斜面上の投げ上げ」— 第2章の対称性(同じ時間で戻り、同じ速さ 7.0 m/s で帰着)がそのまま使える。加速度は上りでも下りでも斜面下向きに gsinθ、が肝。
A7【粗い斜面上の運動】★★★
A7-1
傾角 30°、動摩擦係数 0.20 の粗い斜面上を、物体が滑り降りている。加速度を求めよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:斜面下向きに mgsin30°、上向きに動摩擦 μ'N、垂直方向は N = mgcos30°。
ma = mgsin30°−μ'mgcos30°
a = 9.8×(0.50−0.20×1.73/2) = 9.8×(0.50−0.173) = 9.8×0.327 = 3.2 m/s²
ポイント 粗い斜面の下り:a = g(sinθ−μ'cosθ) — 「滑る成分から摩擦を引く」。N = mgcosθ(斜面!)を mg と書くのが最多の事故。ここでも m は消える。
A7-2(類題)
傾角 45°、動摩擦係数 0.50 の粗い斜面上を滑り降りる物体の加速度を求めよ。√2 ≒ 1.41 とする。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
a = g(sin45°−0.50×cos45°) = 9.8×(1.41/2)×(1−0.50) = 9.8×0.705×0.50 = 3.5 m/s²
ポイント sin45° = cos45° なので a = gcos45°(tan45°−μ') とくくれる — tanθ > μ' でないと加速しない(第3章 B3-2 の摩擦角と地続き)ことが式の形から見える。
A7-3(類題)
傾角 30°、動摩擦係数 0.20 の粗い斜面を、物体が斜面に沿って上向きに滑っている。この間の加速度の大きさを求めよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
上りでは動摩擦力は斜面下向き(運動と逆)。斜面上向きを正:
ma = −mgsin30°−μ'mgcos30°
a の大きさ = 9.8×(0.50+0.173) = 9.8×0.673 = 6.6 m/s²(減速)
ポイント 摩擦の向きは「運動と逆」— 上りと下りで反転し、上りの減速(sinθ+μ'cosθ)は下りの加速(sinθ−μ'cosθ)より大きい。だから粗い斜面では「上りにかかる時間 < 下り」で、戻ったときの速さは初速より遅い(エネルギーの散逸:第5章へ)。
A8【連結された2物体(水平)】★★★
A8-1
なめらかな水平面上に、物体 A(質量 2.0 kg)と物体 B(質量 3.0 kg)を軽い糸でつなぎ、B を右向きに 10 N の力で引いた(A が後ろ)。
① 加速度を求めよ。
② 糸の張力を求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:A には張力 T(右)。B には引く力 10 N(右)と張力 T(左)。
A:2.0a = T …(1) B:3.0a = 10−T …(2)
(1)+(2):5.0a = 10 → a = 2.0 m/s²
(1)より T = 4.0 N
ポイント 「物体の数だけ式 → 足すと内力 T が消える」— 連結体の基本操作。足した式 5.0a = 10 は「全体をひとかたまり(5.0 kg)と見た式」そのもの:2つの見方が同じ結論を出すことを確認。
A8-2(類題)
なめらかな水平面上で、A(質量 1.0 kg)と B(質量 4.0 kg)を糸でつなぎ、B を 15 N で引いた(A が後ろ)。加速度と張力を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
全体:5.0a = 15 → a = 3.0 m/s²
A:T = 1.0×3.0 = 3.0 N
(検算 B:15−3.0 = 12 = 4.0×3.0 ○)
ポイント 張力は「後ろの物体を加速させるのに必要なだけ」— T = (後ろの質量)×a。求めた T をもう一方の式に入れて成り立つか見る代入検算を習慣に。
A8-3(類題)
なめらかな水平面上で、物体 A(質量 3.0 kg)と物体 B(質量 2.0 kg)を接触させて置き、A の背後から水平に 10 N で押した(A が B を押す形)。
① 加速度を求めよ。
② A が B を押す力を求めよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 全体:5.0a = 10 → a = 2.0 m/s²
② B に着目:B を加速させる力は A からの押す力 N だけ。
2.0×2.0 = N → N = 4.0 N
ポイント 糸が「押す力」に変わっただけで構造は A8-1 と同一 — 前の物体だけ取り出すのが最短ルート。作用反作用より B も A を 4.0 N で押し返す(A の式:10−4.0 = 3.0×2.0 ○)。
A9【滑車を使った2物体】★★★
A9-1
軽い定滑車に糸をかけ、両端に質量 3.0 kg の物体 A と 2.0 kg の物体 B をつるして静かにはなした。
① 加速度を求めよ。
② 糸の張力を求めよ。
A9-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:A は下向きに動く(重い側)。A:下向き正、B:上向き正 — 動く向きにそろえる。
A:3.0a = 3.0×9.8−T B:2.0a = T−2.0×9.8
辺々足して:5.0a = 1.0×9.8 → a = 1.96 ≒ 2.0 m/s²
B の式より T = 2.0×(9.8+1.96) = 23.5 ≒ 24 N
ポイント アトウッドの器械:駆動するのは重さの差 9.8 N、動かすのは全質量 5.0 kg。張力 T(≒24 N)は「軽い側の重さ 19.6 N < T < 重い側の重さ 29.4 N」— このはさみ検算が滑車問題の品質保証。
A9-2(類題)
なめらかな机の上の物体 A(質量 4.0 kg)に糸をつけ、机の端の軽い滑車を通して、質量 1.0 kg のおもり B を鉛直につるした。加速度と張力を求めよ。
A9-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
A:4.0a = T B:1.0a = 9.8−T
足して:5.0a = 9.8 → a = 1.96 ≒ 2.0 m/s²
T = 4.0×1.96 = 7.84 ≒ 7.8 N
ポイント 駆動力は B の重さ 9.8 N だけ(A の重さは垂直抗力と相殺)、動かすのは 2 物体ぶん 5.0 kg — 「駆動する力 ÷ 全質量」の構図はどの滑車問題でも同じ。
A9-3(類題)
A9-2 で、机が粗く、A と机の間の動摩擦係数が 0.20 のとき(B の質量は 2.0 kg に変える)、加速度と張力を求めよ。
A9-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
A の摩擦力 = 0.20×4.0×9.8 = 7.84 N(運動と逆向き)。
A:4.0a = T−7.84 B:2.0a = 19.6−T
足して:6.0a = 11.76 → a = 1.96 ≒ 2.0 m/s²
T = 4.0×1.96+7.84 = 15.68 ≒ 16 N
ポイント 摩擦は「駆動力から先に引く」:a = (19.6−7.84)/6.0 — 分子が「正味の駆動力」。張力のはさみ検算:摩擦ぶん T は A9-2 より大きく、B の重さ 19.6 N よりは小さい ○。
A10【鉛直につながれた2物体】★★★
A10-1
物体 A(質量 2.0 kg)の下に、糸で物体 B(質量 1.0 kg)をつるし、A を上向きの力 F で引き上げて、全体を上向きに 1.2 m/s² で加速させた。
① F の大きさを求めよ。
② A と B の間の糸の張力を求めよ。
A10-1解答を見る解答を隠す
解答
① 全体(3.0 kg):3.0×1.2 = F−3.0×9.8 → F = 3.0×11 = 33 N
② B に着目:1.0×1.2 = T−9.8 → T = 11 N
ポイント 「全体で F、下の物体だけ切り出して内力 T」— A10 は A8 を縦にした問題。T = m_B(g+a) は「B の見かけの重さ」(A4)と同じ式:見方がつながる。
A10-2(類題)
A10-1 と同じ2物体を、上向きの力 F = 36 N で引き上げた。加速度と、間の糸の張力を求めよ。
A10-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
全体:3.0a = 36−29.4 = 6.6 → a = 2.2 m/s²
B:T = 1.0×(9.8+2.2) = 12 N
ポイント F → a → T の流れ作業。検算:A だけの式 36−T−2.0×9.8 = 2.0×2.2 → 36−12−19.6 = 4.4 ○ — 使わなかった物体の式が検算器になる。
A10-3(類題)
エレベーターの天井から糸で質量 0.50 kg のおもりをつるした。
① エレベーターが上向きに 1.8 m/s² で加速しているときの糸の張力を求めよ。
② エレベーターのワイヤが切れて自由落下(下向きに 9.8 m/s²)を始めたとき、糸の張力はいくらになるか。
A10-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 0.50×1.8 = T−0.50×9.8 → T = 0.50×11.6 = 5.8 N
② 下向きに a = 9.8:0.50×9.8 = 0.50×9.8−T → T = 0
ポイント ②は無重量状態 — おもりも糸も同じ g で落ちるので、糸はたるむだけで何も支えていない。「見かけの重さ = m(g−a) が a = g でゼロ」:宇宙ステーションの無重量も同じ原理(第8章・万有引力へ)。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。文字式のまま立式し、次元と極端な場合(m₂ → 0、θ → 0 など)で検算するのが作法。B4(アトウッド)とB5(斜面+滑車)が入試の最頻出、B6は「見かけの重力」の入口。
B1【運動方程式の基本(文字)】★★
B1-1 なめらかな水平面上の質量 m の物体に水平な力 F を加える。加速度 a を求めよ。また「1 N」とはどのような力か、この式に基づいて説明せよ。
B1-2 ある力 F を加えると、物体 1 には加速度 a₁ が、物体 2 には加速度 a₂ が生じる。2つの物体を一体にして同じ力 F を加えたときの加速度 a を、a₁、a₂ で表せ。
B1-3 質量 m の雨滴が、速さ v に比例する空気抵抗 kv(k は正の定数)を受けて落下する。落下の運動方程式を書け。また、十分時間がたったときの速さ(終端速度)v_f を求めよ。
B2【エレベーター(文字)】★★★
B2-1 質量 m の人が乗ったエレベーターが、上向きに大きさ a の加速度で運動するとき、床が人に及ぼす垂直抗力 N を求めよ。下向きに大きさ a のときはどうか。
B2-2 エレベーターが自由落下しているとき(下向きに加速度 g)、床が人に及ぼす垂直抗力を求めよ。この状態を何というか。
B2-3 エレベーターの天井からばねはかりで質量 m の物体をつるしたところ、読みは T であった。このエレベーターの加速度を、上向きを正として T、m、g で表せ。
B3【連結体と内力(文字)】★★★
B3-1 なめらかな水平面上で、前の物体(質量 m₁)と後ろの物体(質量 m₂)を軽い糸でつなぎ、前を水平な力 F で引く。加速度 a と糸の張力 T を求めよ。
B3-2 なめらかな水平面上で、物体 A(質量 M)と物体 B(質量 m)を接触させ、A の背後から力 F で押す(A が前の B を押す)。A が B を押す力 N を求めよ。また、同じ 2 物体で B の背後から押した場合に B が A を押す力 N' を求め、N と比べよ。
B3-3 なめらかな水平面上で、同じ質量 m の車両 3 両を軽い連結器でつなぎ、先頭を力 F で引く。加速度と、1–2 両目間、2–3 両目間の連結器の張力 T₁、T₂ を求めよ。
B4【アトウッドの器械(文字)】★★★
B4-1 軽い定滑車にかけた糸の両端に、質量 m₁、m₂(m₁ > m₂)の物体をつるして静かにはなす。加速度 a と張力 T を求めよ。
B4-2 なめらかな机の上の物体(質量 M)に糸をつけ、机の端の軽い滑車を通して質量 m のおもりを鉛直につるす。加速度 a と張力 T を求めよ。
B4-3 B4-2 で机が粗い場合(動摩擦係数 μ')の加速度を求めよ。また、静止摩擦係数を μ とするとき、静かにはなして動き出すための条件を求めよ。
B5【斜面と滑車の複合(文字)】★★★
B5-1 傾角 θ のなめらかな斜面上の物体 A(質量 M)に糸をつけ、斜面の頂上の軽い滑車を通して、おもり B(質量 m)を鉛直につるす。mg > Mgsinθ のとき、加速度 a と張力 T を求めよ。
B5-2 B5-1 で斜面が粗く(動摩擦係数 μ')、B が下がる向きに動いているときの加速度を求めよ。
B5-3 左右に傾角 θ₁、θ₂ のなめらかな斜面をもつ台の頂上に軽い滑車を置き、糸の両端の物体(質量 m₁ が θ₁ 側、m₂ が θ₂ 側)を各斜面上に置く。m₁sinθ₁ > m₂sinθ₂ のとき、加速度を求めよ。
B6【一体で動く条件・見かけの重力】★★★
B6-1 なめらかな床の上に台(質量 M)があり、その上に物体(質量 m)がのっている。台と物体の間の静止摩擦係数を μ とする。台を水平な力 F で引き、物体が台の上で滑らずに一体で動くとき、物体を加速させている力は何か。また、滑らないための F の条件を求めよ。
B6-2 トラックの荷台に質量 m の荷物が置いてある(荷台との静止摩擦係数 μ)。トラックが水平な道を加速するとき、荷物が滑らないための加速度 a の条件を求めよ。
B6-3 一定の加速度 a で水平に走る電車の天井から、糸で質量 m の小球をつるすと、糸は鉛直から角 θ 傾いて静止した(電車から見て)。tanθ と糸の張力 T を求めよ。
B問題 解答・解説
B1【運動方程式の基本(文字)】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
ma = F より a = F/m
1 N とは、ma = F で m = 1 kg、a = 1 m/s² となる力 — すなわち「質量 1 kg の物体に 1 m/s² の加速度を生じさせる力」。
ポイント 単位 N は独立した単位ではなく kg·m/s² の略称 — 力学のすべての式は、単位のレベルでも運動方程式でつながっている(次元チェックの根拠)。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
m₁ = F/a₁、m₂ = F/a₂。一体(m₁+m₂)に F を加えると
a = F/(m₁+m₂) = F/(F/a₁+F/a₂) = 1/(1/a₁+1/a₂)
a = a₁a₂/(a₁+a₂)
ポイント 質量は足し算、加速度は「逆数の足し算」(調和平均的な合成)— 合体すると必ず a < a₁ かつ a < a₂ になることも式から読める。抵抗の並列合成(第3巻)と同じ形が早くも登場。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
下向きを正として、重力 mg(下)と空気抵抗 kv(上・運動と逆):
ma = mg−kv
終端速度では a = 0(等速)だから 0 = mg−kv_f
v_f = mg/k
ポイント 「速くなるほど抵抗が増え、加速度が減り、やがて a = 0 の等速へ」— 落下し続けているのに合力 0、という第1法則の生きた実例(雨粒が人に刺さらない理由)。運動方程式は「加速度一定」以外の運動も支配する、その最初の一歩。
B2【エレベーター(文字)】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
上向き a:ma = N−mg → N = m(g+a)
下向き a:ma = mg−N → N = m(g−a)
ポイント まとめて「見かけの重さ = m(g±a)」— エレベーター内では重力加速度が g±a に化けたように見える、という読み替え(第7章・慣性力の先取り)。A4 の数値群の一般式。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
a = g(下向き)を N = m(g−a) に代入して N = 0
床と人が同じ加速度で落ちるため、押し合う力が消える — 無重量状態。
ポイント 「重力が消えた」のではなく「支えが消えた」— 重力 mg は健在で、それが全部加速に使われている。国際宇宙ステーションの無重量も「地球へ落ち続けている」状態(第8章)。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
上向きを正として ma = T−mg
a = T/m−g = (T−mg)/m
ポイント T > mg なら上向き加速、T = mg なら等速または静止、T < mg なら下向き加速 — ばねはかり1つがエレベーターの加速度計になる。A4-3・A10-3 の一般式。
B3【連結体と内力(文字)】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
前(m₁):m₁a = F−T 後(m₂):m₂a = T
足して:a = F/(m₁+m₂)
後の式より T = m₂F/(m₁+m₂)
ポイント T は F より必ず小さい(F の m₂/(m₁+m₂) 倍)— 糸が伝えるのは「後ろの荷物を加速させるぶんだけ」。m₂ → 0 で T → 0、m₁ → 0 で T → F、の極端検算が一瞬でできる形。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
全体:a = F/(M+m)。前の B に着目して
N = ma = mF/(M+m)
B の背後から押すと、前は A(質量 M)なので
N' = MF/(M+m)
M > m なら N' > N — 軽い方を前にして押すと、間の力は小さい。
ポイント 間の力は「前にある質量に比例」— どちらから押すかで内力が変わる、という結果は直感的でないぶん出題価値が高い。合計 N+N' = F になる対称性も美しい。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
全体:3ma = F → a = F/(3m)
T₂ は最後尾 1 両だけを引く:T₂ = ma = F/3
T₁ は後ろ 2 両を引く:T₁ = 2ma = 2F/3
ポイント 連結器の張力は「そこから後ろの質量ぶん」— 先頭に近いほど大きい(F → 2F/3 → F/3 と後ろへ等分ずつ減る)。列車の連結器が先頭側ほど頑丈な理由。
B4【アトウッドの器械(文字)】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
m₁ 側が下がる。動く向きを正として
m₁:m₁a = m₁g−T m₂:m₂a = T−m₂g
足して:a = (m₁−m₂)g/(m₁+m₂)
m₂ の式より T = m₂(g+a) = 2m₁m₂g/(m₁+m₂)
ポイント 検算3連発:m₁ = m₂ で a = 0(つり合い)○/m₂ = 0 で a = g(自由落下)○/T は m₂g < T < m₁g の間 ○。「差で駆動、和で慣性」がアトウッドの合言葉。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
M:Ma = T m:ma = mg−T
足して:a = mg/(M+m)
T = Ma = Mmg/(M+m)
ポイント 駆動力は mg だけ(M の重力は垂直抗力と相殺して不参加)。M → 0 で a → g、M → ∞ で a → 0 — 極端の確認が式の信頼を作る。A9-2 の一般式。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
摩擦力 μ'Mg を駆動力から引いて
a = (m−μ'M)g/(M+m)
動き出す条件:m の重さが最大静止摩擦力を上回ること
mg > μMg → m > μM
ポイント 「動くかどうか」は静止摩擦 μ、「動いてからの加速度」は動摩擦 μ' — 2つの係数の役割分担を1問の中で使い分ける。a の式は μ' = 0 で B4-2 に戻る ○。
B5【斜面と滑車の複合(文字)】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
B が下がり、A が斜面を上がる。動く向きを正として
A:Ma = T−Mgsinθ B:ma = mg−T
足して:a = (m−Msinθ)g/(M+m)
B の式より T = m(g−a) = Mm(1+sinθ)g/(M+m)
ポイント 駆動力は「mg と Mgsinθ の差」、慣性は「M+m の和」— アトウッドの構造そのまま(θ = 90° で B4-1、θ = 0° で B4-2 に一致する万能式)。この2つの極端チェックで式を信じられる。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
A は斜面を上るので、動摩擦力 μ'Mgcosθ は斜面下向き:
A:Ma = T−Mgsinθ−μ'Mgcosθ B:ma = mg−T
a = {m−M(sinθ+μ'cosθ)}g/(M+m)
ポイント 摩擦は例によって「駆動力から引く」— 分子の M(sinθ+μ'cosθ) は A7-3(粗い斜面の上り)の減速要因そのもの。部品の組み合わせで新しい式が組める感覚を。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
m₁ 側が下がる。動く向きを正として
m₁:m₁a = m₁gsinθ₁−T m₂:m₂a = T−m₂gsinθ₂
足して:a = (m₁sinθ₁−m₂sinθ₂)g/(m₁+m₂)
ポイント 各物体の「駆動への寄与」は mgsinθ(斜面成分) — 両側とも斜面になっても、「成分の差 ÷ 全質量」の設計思想は不変。θ₁ = 90° とすれば B5-1 に戻る。
B6【一体で動く条件・見かけの重力】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
一体で動くとき:a = F/(M+m)
上の物体を加速させている力は、台から受ける静止摩擦力 f(進行方向向き)だけ:
f = ma = mF/(M+m)
滑らない条件:f ≦ μmg より mF/(M+m) ≦ μmg
F ≦ μ(M+m)g
ポイント 摩擦力が物体を「加速させる」側に回る — 摩擦 = 邪魔者、という思い込みを壊す重要問題(歩行も車の発進も、進めるのは摩擦のおかげ)。静止摩擦なのに動いている(台と物体の間に滑りがないから静止摩擦)、という言葉の整理も。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
荷物を加速させるのは荷台からの静止摩擦力 f = ma。
滑らない条件:ma ≦ μmg → a ≦ μg
ポイント m が消えて「加速度の上限は μg」— 荷物の重さによらない。急発進・急ブレーキ(|a| > μg)で荷物が滑る境目を1つの数で言える。タイヤと路面でも同じ式(車の限界加速度)。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
電車(地面)から見て小球は加速度 a で運動している。水平・鉛直で運動方程式:
水平:Tsinθ = ma 鉛直:Tcosθ = mg
割って tanθ = a/g
2乗和より T = m√(a²+g²)
ポイント 糸の傾きが加速度計になる(tanθ を読めば a が分かる)。「重力 g と慣性の効果 a の合成が"見かけの重力" √(a²+g²)」という見方は、第7章(慣性力)でそのまま公式化される — 本章の到達点にして次章への橋。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦4-1【共テ形式:エレベーターの体重計】★★
質量 50 kg の人が体重計に乗ったままエレベーターで上昇する。エレベーターは、はじめの 2.0 s で速さ 0 から 2.0 m/s まで一定の割合で加速し、次の 6.0 s は等速、最後の 2.0 s で一定の割合で減速して止まった。g = 9.8 m/s² とする。
① 出発前、静止しているときの体重計の読みは [アイウ] N である。
② 加速中(はじめの 2.0 s)の読みは [エオカ] N である。
③ 等速中(2.0〜8.0 s)の読みとして正しいものは [キ] である。
(a) 540 N
(b) 490 N
(c) 440 N
④ 減速中(最後の 2.0 s)の読みは [クケコ] N である。
⑤ この間、人にはたらく重力の大きさはどうなっているか:[サ]
(a) 加速中は大きくなる
(b) つねに変わらない
(c) 減速中は小さくなる
実戦4-2【記述形式:連結体と糸の限界】★★★
なめらかな水平面上に物体 A(質量 M)があり、その後ろに物体 B(質量 m)を軽い糸でつないである。A を水平方向に一定の力 F で引き、全体を加速させる。
① 加速度 a を求めよ。
② 糸の張力 T を求めよ。
③ 糸は張力 T₀ までしか耐えられない。糸が切れないための F の最大値を求めよ。
④ F を大きくしすぎて糸が切れた。切れた直後の A、B それぞれの加速度を求め、その後の B の運動を説明せよ。
実戦4-3【記述形式:斜面と滑車の総合】★★★
傾角 30° のなめらかな斜面上に物体 A(質量 4.0 kg)を置き、A につけた糸を斜面の頂上にある軽い滑車にかけて、他端におもり B(質量 3.0 kg)を鉛直につるした。静かにはなすものとし、g = 9.8 m/s² とする。
① A と B はそれぞれどちら向きに動き出すか。理由とともに答えよ。
② 加速度の大きさを求めよ。
③ 糸の張力を求めよ。
④ はなしてから 2.0 s 後の B の速さを求めよ。
⑤ その瞬間に糸を切ると、直後の A の加速度はどうなるか。大きさと向きを答え、その後の A の運動を簡単に説明せよ。
実戦問題 解答・解説
実戦4-1
考え方 第1章のエレベーターの v-t グラフ(実戦1-1)に「力」の目が加わった完全版 — 各区間の a を読み、N = m(g±a) に流し込むだけ。⑤は「読み(垂直抗力)と重力の区別」を突く共テ的な締め。
実戦4-1解答を見る解答を隠す
解答
① N = mg = 50×9.8 = 490 N(アイウ = 490)
② a = 2.0/2.0 = 1.0 m/s²(上向き)。N = 50×(9.8+1.0) = 540 N(エオカ = 540)
③ 等速 ⇔ a = 0 ⇔ つり合い → 490 N:(b)(キ = (b))
④ a = 1.0 m/s²(下向き)。N = 50×(9.8−1.0) = 440 N(クケコ = 440)
⑤ 変わるのは垂直抗力(読み)だけで、重力 mg = 490 N はつねに不変:(b)(サ = (b))
ポイント
• 読みは 540 → 490 → 440 N と変わるのに重力は不動 — 「体重計は重力計ではなく垂直抗力計」が本問のメッセージ。
• 「上昇中なのに読みが軽くなる」④は、運動の向きでなく加速度の向きが読みを決めることの念押し(概念チェック第1章 Q3 と同族)。
実戦4-2
考え方 B3-1 の完全版。④の「切れた後」は、力が消えた瞬間に加速度は即座に変わるが、速度はそのまま(慣性)— 運動方程式と慣性の法則の合わせ技を言葉で説明させる、記述らしい設問。
実戦4-2解答を見る解答を隠す
解答
① 全体:(M+m)a = F → a = F/(M+m)
② B:T = ma = mF/(M+m)
③ T ≦ T₀ より mF/(M+m) ≦ T₀
F ≦ (M+m)T₀/m
④ 切れた直後 — A:引く力 F だけになるので a_A = F/M(進行方向、切れる前より大きくなる)
B:水平方向に力がなくなるので a_B = 0
その後の B は、切れた瞬間の速度のまま等速直線運動を続ける(慣性の法則。なめらかな面なので減速もしない)
ポイント
• ④で「B は急に止まる」が最頻出の誤答 — 力が消えて変わるのは加速度であって速度ではない。速度は履歴、加速度は現在の力、という時間構造の理解が試される。
• ③のような「限界条件 → 不等式」への翻訳は、第3章(切れる糸・滑る条件)から一貫する型。
実戦4-3
考え方 B5-1 の数値版+後日談(⑤)。①でまず綱引きの勝敗判定(mg vs Mgsinθ)をしてから式を立てる、という順序が斜面滑車の作法 — 向きを間違えたまま立式すると全部が崩れる。
実戦4-3解答を見る解答を隠す
解答
① B の重さ:3.0×9.8 = 29.4 N/A の斜面成分:4.0×9.8×sin30° = 19.6 N
29.4 N > 19.6 N なので B が下がり、A が斜面を上る向きに動き出す。
② 動く向きを正として
A:4.0a = T−19.6 B:3.0a = 29.4−T
足して:7.0a = 9.8 → a = 1.4 m/s²
③ B の式より T = 29.4−3.0×1.4 = 25.2 ≒ 25 N
(検算 A:25.2−19.6 = 5.6 = 4.0×1.4 ○)
④ v = at = 1.4×2.0 = 2.8 m/s
⑤ 糸を切ると A には斜面成分だけが残る:
a = gsin30° = 4.9 m/s²、斜面下向き
A は上向きに 2.8 m/s で動いているので、減速しながら斜面を上り続け、いったん止まってから滑り降りてくる(斜面上の「投げ上げ」— 第2章の対称運動)。
ポイント
• ③の張力 25 N は「A の斜面成分 19.6 N < T < B の重さ 29.4 N」の間 — 綱引きの仲裁人は両者の言い分の間、というはさみ検算。
• ⑤は「糸が切れても A はすぐ落ちない」— 実戦4-2 ④と同じ慣性のドラマを斜面で再演。加速度は瞬時に切り替わり、速度は連続:このコントラストが運動方程式の時間観。
第5章 仕事と力学的エネルギー
運動方程式が「各瞬間」を追う顕微鏡なら、エネルギーは「前と後」だけを見る望遠鏡 — 途中の道筋がどれほど複雑でも、2つの場面の収支だけで答えが出る。通貨は3種 — 運動エネルギー (1/2)mv²、重力の位置エネルギー mgh、ばねの (1/2)kx²。そして最重要の但し書き:力学的エネルギー保存が使えるのは、摩擦など(非保存力)が仕事をしないときだけ。摩擦があっても大丈夫 — 「減った分 = 摩擦熱」で帳簿は必ず合う。
この章の公式・要点まとめ
仕事(単位 J = N·m)
• W = Fx cosθ(θ:力と移動の向きのなす角)
• 同じ向き:W = Fx/垂直:W = 0(運ぶだけの手の力、垂直抗力、糸の張力など)/逆向き:W = −Fx(負の仕事:動摩擦力など)
• 仕事の原理:斜面・てこ・滑車で「力」は減らせるが「仕事」は減らせない(力 1/2 なら距離 2 倍)
仕事率(単位 W = J/s)
• P = W/t/一定の速さ v で力 F を出し続けるとき P = Fv
運動エネルギーと仕事の関係(エネルギー原理)
• 運動エネルギー K = (1/2)mv²
• (1/2)mv²−(1/2)mv₀² = W(された仕事の合計) — 運動方程式を距離で積み上げた式。正の仕事で速くなり、負の仕事で遅くなる
位置エネルギー
• 重力:U = mgh(基準の高さは自由に選べる — どこを 0 にしたか明示)
• 弾性力:U = (1/2)kx²(x は自然長からの伸び・縮み)
力学的エネルギー保存則
• E = K+U = 一定
• 適用条件:重力・弾性力(保存力)以外の力が仕事をしないとき(垂直抗力・張力は運動と垂直で仕事 0 → 保存 OK)
• 摩擦などがあるとき:(後の E)−(前の E)= 非保存力がした仕事(摩擦なら −f'×滑った距離。減った分がそのまま摩擦熱)
解法チャート(エネルギー)
1. 「前」と「後」の2場面を決める(途中は見なくてよい — エネルギーの強み)
2. 各場面の K と U を書き出す(高さの基準を明示)
3. 非保存力(摩擦・人が加える力)が仕事をするか確認:
しない → E(前)= E(後)/する → E(後)= E(前)+W(非保存)
4. 検算:単位はすべて J、摩擦ありなら E は必ず減、根号の中が負なら「そこへは届かない」の合図
※時間 t や加速度を問われたら運動方程式(第4章)、速さと位置の関係だけならエネルギーが速い — 道具の使い分け
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
重い荷物を手に持ったまま、水平な廊下を一定の速さで 10 m 歩いた。手が荷物にした仕事はどれか。
(a) 正の仕事
(b) 0
(c) 負の仕事
Q2
物体の速さが 2 倍になると、運動エネルギーも 2 倍になる。○か×か。
Q3
滑っている物体にはたらく動摩擦力がする仕事はどれか。
(a) つねに正
(b) つねに 0
(c) つねに負
Q4
同じ高さから、1つはなめらかな斜面に沿って滑らせ、もう1つは自由落下させた。地面に達したときの速さはどうなるか。
(a) 自由落下の方が速い
(b) 斜面の方が速い
(c) 同じ
Q5
ばねの伸びを 2 倍にすると、蓄えられる弾性エネルギーは 2 倍になる。○か×か。
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:(b) — 手の力は鉛直上向き、移動は水平:cos90° = 0 で仕事は 0。「疲れる」ことと物理の「仕事」は別物 — 仕事は「力の向きに動かした」ときだけ。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:× — K = (1/2)mv² は v の2乗に比例:速さ2倍で 4倍。時速 100 km の事故が 50 km の4倍破壊的な理由。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:(c) — 動摩擦力はつねに運動と逆向き(cos180° = −1)→ 負の仕事。奪われたエネルギーは熱になる。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(c) — どちらも mgh がそっくり (1/2)mv² に変わる(斜面の垂直抗力は仕事 0)→ v = √(2gh) で同じ。かかる時間と向きは違うが、速さは経路によらない — 保存則の威力。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:× — U = (1/2)kx² は x の2乗:伸び2倍で 4倍。力(kx:2倍)と距離(2倍)の両方が効くから。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り g = 9.8 m/s² とする。
A1【仕事の定義】★
A1-1
水平面上の物体を、水平方向に 20 N の力で引きながら 5.0 m 動かした。この力がした仕事を求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
W = Fx = 20×5.0 = 100 J(= 1.0×10² J)
ポイント 仕事 = 力 × 力の向きに動いた距離、単位 J = N·m。「100 J」の量感:リンゴ(約1 N)を 100 m 持ち上げるくらい。
A1-2(類題)
質量 10 kg の荷物を、一定の速さで 2.0 m 真上に持ち上げた。
① 持ち上げる力がした仕事を求めよ。
② その間に重力がした仕事を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 一定の速さ ⇔ つり合い:持ち上げる力 = mg = 98 N
W = 98×2.0 = 196 ≒ 2.0×10² J
② 重力は移動と逆向き:W = −98×2.0 = −2.0×10² J
ポイント ①+② = 0 — 合計の仕事が 0 だから運動エネルギーが変わらない(一定の速さ)、とエネルギー原理と整合。重力の「負の仕事」の分だけ位置エネルギーが蓄えられている(A5 へ)。
A1-3(類題)
水平な床の上の物体を、水平から 30° 上向きの 10 N の力で引きながら、床に沿って 4.0 m 動かした。この力がした仕事を求めよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
W = Fx cosθ = 10×4.0×cos30° = 40×1.73/2 = 34.6 ≒ 35 J
ポイント 斜めの力は「移動方向の成分 Fcosθ だけが仕事をする」— 鉛直成分は床への押しつけを弱めるだけで仕事はしない。cosθ の由来は力の分解(第3章)。
A2【正・負・ゼロの仕事】★
A2-1
粗い床の上の物体を、水平に 8.0 N の力で引いて 3.0 m 動かした。動摩擦力の大きさは 5.0 N であった。
① 引く力がした仕事を求めよ。
② 動摩擦力がした仕事を求めよ。
③ 重力と垂直抗力がした仕事をそれぞれ求めよ。
④ 物体がされた仕事の合計を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
① 8.0×3.0 = 24 J
② 移動と逆向き:−5.0×3.0 = −15 J
③ どちらも移動(水平)と垂直:ともに 0
④ 24+(−15)+0+0 = 9.0 J
ポイント 力ごとに仕事を出して符号つきで合計 — この合計(9.0 J)がそのまま運動エネルギーの増加分になる(A4 へ)。垂直な力の仕事 0 は毎回明記する癖を。
A2-2(類題)
重さ 20 N の物体を、一定の速さで 2.0 m 真上に持ち上げた。手の力・重力それぞれの仕事と、その合計を求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
手:+20×2.0 = 40 J/重力:−40 J/合計:0
ポイント 「ゆっくり(一定の速さで)」は「合計の仕事 0」の合図 — 運動エネルギーが変わらないから。手がした 40 J は消えたのではなく mgh として貯金された。
A2-3(類題)
傾角 30° のなめらかな斜面に沿って、質量 5.0 kg の物体を一定の速さで 4.0 m 引き上げた。
① 引く力がした仕事を求めよ。
② 重力がした仕事を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 一定の速さ ⇔ 引く力 = mgsin30° = 49×0.50 = 24.5 N
W = 24.5×4.0 = 98 J
② 高さの上昇 = 4.0×sin30° = 2.0 m
W = −mgh = −49×2.0 = −98 J
ポイント 重力の仕事は「−mg×(高さの変化)」— 斜めに動いても効くのは高さだけ(水平移動分は垂直で仕事 0)。①と②が打ち消し合うのは A2-2 と同じ構造。
A3【仕事の原理・仕事率】★★
A3-1
質量 30 kg の荷物を、高さ 1.5 m の台に載せたい。
① 真上に一定の速さで持ち上げるのに必要な仕事を求めよ。
② 長さ 3.0 m のなめらかな斜面を使うとき、斜面に沿って押す力と、必要な仕事を求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
① W = mgh = 30×9.8×1.5 = 441 ≒ 4.4×10² J
② 斜面の sinθ = 1.5/3.0 = 0.50。力 = mgsinθ = 294×0.50 = 1.5×10² N
仕事 = 147×3.0 = 441 ≒ 4.4×10² J(①と同じ)
ポイント 仕事の原理:力は半分、距離は2倍、仕事は同じ — 「道具は仕事をまけてくれない」。てこ(第3章 A8-3)も滑車もすべて同じ帳簿。
A3-2(類題)
クレーンが質量 1.0×10² kg の荷物を、一定の速さで 4.9 s かけて 2.0 m の高さまで持ち上げた。クレーンの仕事率を求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
W = mgh = 1.0×10²×9.8×2.0 = 1960 J
P = W/t = 1960/4.9 = 4.0×10² W
ポイント 仕事率 = 仕事のペース(1秒あたりの仕事、単位 W = J/s)。同じ仕事でも速くやるほど大きな P が要る — モーターの「能力」を表す量。
A3-3(類題)
自動車が、2.0×10³ N の駆動力を出しながら一定の速さ 20 m/s で走っている。エンジンの仕事率を求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
P = Fv = 2.0×10³×20 = 4.0×10⁴ W(= 40 kW)
ポイント P = Fv は「1秒に v [m] 進む間に Fv [J] の仕事」から。単位の検算:N×m/s = J/s = W ○。等速なのに仕事率が要るのは、抵抗(同じ 2.0×10³ N)が同じペースでエネルギーを奪っているから。
A4【運動エネルギーと仕事の関係】★★
A4-1
① 質量 2.0 kg、速さ 3.0 m/s の物体の運動エネルギーを求めよ。
② 速さが 6.0 m/s になると、運動エネルギーはいくらか。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
① K = (1/2)×2.0×3.0² = 9.0 J
② K = (1/2)×2.0×6.0² = 36 J(4倍)
ポイント 速さ2倍 → K は4倍(v²)。概念チェック Q2 の数値版 — 「2乗で効く」感覚は制動距離(第1章)ともつながる。
A4-2(類題)
なめらかな水平面上に静止していた質量 4.0 kg の物体に力を加え、合計 50 J の仕事をした。物体の速さはいくらになったか。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
エネルギー原理:(1/2)×4.0×v²−0 = 50
v² = 25 → v = 5.0 m/s
ポイント 「された仕事のぶんだけ運動エネルギーが増える」— 力の詳細(大きさ・時間)を知らなくても、仕事の合計さえ分かれば速さが出る。
A4-3(類題)
粗い水平面上を速さ 10 m/s で滑り出した質量 2.0 kg の物体が、やがて止まった。動摩擦係数を 0.25 とする。
① 止まるまでに動摩擦力がした仕事を求めよ。
② 止まるまでに滑った距離を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① K の変化 = 0−(1/2)×2.0×10² = −100 J = 摩擦の仕事 → −1.0×10² J
② 動摩擦力 = 0.25×2.0×9.8 = 4.9 N
100 = 4.9×d → d = 20.4 ≒ 20 m
ポイント 「失った運動エネルギー = 摩擦力 × 距離」— 第1章・第4章で運動方程式から出した停止距離と同じ答えが、1行の帳簿で出る。これがエネルギーで解く旨み。
A5【重力による位置エネルギー】★
A5-1
床から 1.5 m の高さにある質量 2.0 kg の物体の、床を基準とした重力による位置エネルギーを求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
U = mgh = 2.0×9.8×1.5 = 29.4 ≒ 29 J
ポイント U = mgh は「そこまで持ち上げるのに要した仕事の貯金」(A1-2)。基準(h = 0 の場所)を書くのが作法 — 基準が変われば値も変わる。
A5-2(類題)
地面から 8.0 m の高さの床に、質量 1.0 kg の物体が置いてある。
① 地面を基準としたときの位置エネルギーを求めよ。
② その床を基準としたときの位置エネルギーを求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① U = 1.0×9.8×8.0 = 78.4 ≒ 78 J
② h = 0 だから 0 J
ポイント 位置エネルギーの値は基準しだい(負にもなる)— 物理的に意味があるのは差だけ。保存則で使うのも差なので、基準はいちばん計算が楽な場所に置けばよい。
A5-3(類題)
質量 2.0 kg の物体が、ビルの屋上(高さ 30 m)からベランダ(高さ 10 m)まで落下した。この間に重力がした仕事を求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
W = mg×(高さの減少) = 2.0×9.8×20 = 392 ≒ 3.9×10² J
ポイント 重力の仕事 = 位置エネルギーの減少分 — U が W に「両替」される関係。途中の経路(まっすぐでも斜めでも)によらず、高さの差だけで決まる(保存力の性質)。
A6【弾性力による位置エネルギー】★★
A6-1
ばね定数 200 N/m のばねを 0.10 m 縮めた。ばねに蓄えられた弾性エネルギーを求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
U = (1/2)kx² = (1/2)×200×0.10² = 1.0 J
ポイント (1/2) を忘れるのが最頻出ミス — 弾性力は 0 から kx までだんだん増えるので、仕事は平均の力 (1/2)kx × 距離 x(F-x グラフの三角形の面積)。
A6-2(類題)
ばね定数 50 N/m のばねについて、
① 0.20 m 伸ばしたときの弾性エネルギーを求めよ。
② 0.40 m 伸ばしたときの弾性エネルギーを求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① (1/2)×50×0.20² = 1.0 J
② (1/2)×50×0.40² = 4.0 J(4倍)
ポイント 伸び2倍 → エネルギー4倍(概念チェック Q5)。「あと少し余計に引くほど大変になる」— 2乗の実感。
A6-3(類題)
ばね定数 400 N/m のばねに 8.0 J の弾性エネルギーを蓄えたい。何 m 縮めればよいか。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
8.0 = (1/2)×400×x² → x² = 0.040 → x = 0.20 m
ポイント エネルギーからの逆算。x² = 0.040 → x = 0.20 の平方根処理(0.04 = 0.2² を見抜く)は数値計算の腕の見せどころ。
A7【力学的エネルギー保存(重力)】★★★
A7-1
高さ 4.9 m のなめらかな斜面の頂上から、物体を静かに滑らせた。斜面の下端での速さを求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:「前」= 頂上(v = 0、h = 4.9 m)、「後」= 下端(v、h = 0)。垂直抗力は仕事をしないので保存則:
mgh = (1/2)mv² → v = √(2×9.8×4.9) = √96.04 = 9.8 m/s
ポイント m が消える(速さは質量によらない)。斜面の角度も長さも式に登場しない — 効くのは高さだけ。概念チェック Q4 の計算版。
A7-2(類題)
糸の長さ 1.0 m の振り子を、最下点から 0.40 m 高い位置まで持ち上げて静かにはなした。最下点での速さを求めよ。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
張力は運動とつねに垂直で仕事 0 → 保存則:
mg×0.40 = (1/2)mv² → v = √(2×9.8×0.40) = √7.84 = 2.8 m/s
ポイント 曲線運動でも「仕事をしない力(張力)は無視して保存則」— 運動方程式では手が出ない円弧の運動が、エネルギーなら1行。「なぜ張力は仕事をしないか」を言えること(B6-2)が理解の証。
A7-3(類題)
小球を初速 19.6 m/s で鉛直に投げ上げた。
① 最高点の高さを、エネルギー保存を使って求めよ。
② 高さ 14.7 m の点を通過するときの速さを求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① (1/2)mv₀² = mgh → h = v₀²/(2g) = 19.6²/19.6 = 19.6 ≒ 20 m
② (1/2)mv₀² = (1/2)mv²+mgh より
v² = 19.6²−2×9.8×14.7 = 384.16−288.12 = 96.04 → v = 9.8 m/s
ポイント 第2章 A3・実戦2-1 と同じ答えを別の道具で — 時刻を一切使わずに高さと速さが結ばれる。「t を問われたら運動の公式、v と h の関係ならエネルギー」の使い分けを体感する1問。
A8【力学的エネルギー保存(ばね)】★★★
A8-1
なめらかな水平面上で、ばね定数 100 N/m のばねに質量 0.50 kg の球を押しつけ、0.20 m 縮めて静かにはなした。ばねから離れた直後の球の速さを求めよ。√2 ≒ 1.41 とする。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
(1/2)kx² = (1/2)mv²:(1/2)×100×0.20² = 2.0 J
2.0 = (1/2)×0.50×v² → v² = 8.0 → v = 2√2 ≒ 2.8 m/s
ポイント ばねの貯金 (1/2)kx² が運動エネルギーに全額両替される(水平なので mgh は不動、面はなめらか)。「離れた直後」= ばねが自然長に戻った瞬間。
A8-2(類題)
なめらかな水平面上を速さ 4.0 m/s で滑ってきた質量 1.0 kg の物体が、ばね定数 400 N/m のばねに当たった。ばねの縮みの最大値を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
縮みが最大 ⇔ 物体の速さが 0 の瞬間:
(1/2)×1.0×4.0² = (1/2)×400×x² → 8.0 = 200x² → x = 0.20 m
ポイント 「最大の縮み」の翻訳は「速さ 0」— 運動エネルギーが全額ばねに預けられた瞬間。このあと球は押し返され、同じ速さ 4.0 m/s で戻っていく(可逆)。
A8-3(類題)
A8-1 で発射された球(質量 0.50 kg、速さ 2.8 m/s)が、続けてなめらかな曲面を駆け上がった。達する最高の高さを求めよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
弾性エネルギーがそのまま mgh になるまで追跡してよい:
(1/2)kx² = mgh → 2.0 = 0.50×9.8×h → h = 0.408 ≒ 0.41 m
ポイント ばね → 運動 → 高さの3段両替を、最初と最後だけで直結できる(途中の 2.8 m/s を経由しなくてよい)— 「前と後だけ見る」エネルギーの真骨頂。
A9【摩擦とエネルギーの散逸】★★★
A9-1
粗い水平面上を、質量 2.0 kg の物体が初速 6.0 m/s で滑り出した。動摩擦係数を 0.30 とする。止まるまでに滑る距離を求めよ。
A9-1解答を見る解答を隠す
解答
失う運動エネルギー = 摩擦熱:
(1/2)×2.0×6.0² = 0.30×2.0×9.8×d
36 = 5.88d → d = 6.12 ≒ 6.1 m
ポイント 摩擦がある = 保存則は使えない、が「E の減少 = f'×距離」の帳簿は必ず成立。左辺は J、右辺も N×m = J — 単位の照合が式の正しさを保証する。
A9-2(類題)
高さ 2.0 m、斜面に沿う長さ 4.0 m の粗い斜面の頂上から、質量 1.0 kg の物体を静かに滑らせた。斜面から受ける動摩擦力の大きさを 2.45 N とするとき、下端での速さを求めよ。
A9-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
mgh = (1/2)mv²+f'd(位置エネルギー = 運動エネルギー+摩擦熱):
1.0×9.8×2.0 = (1/2)×1.0×v²+2.45×4.0
19.6 = (1/2)v²+9.8 → v² = 19.6 → v = 4.4 m/s
ポイント 帳簿の型:「入り(mgh)= 残り(K)+目減り(f'd)」。摩擦がなければ v = √(2gh) = 6.3 m/s — 摩擦が半分(9.8 J)を熱として持っていった、と比較で読む。
A9-3(類題)
粗い水平面上を滑る質量 2.0 kg の物体が、6.0 m 滑る間に速さが 8.0 m/s から 4.0 m/s に減った。
① 失われた運動エネルギーを求めよ。
② 動摩擦力の大きさと、動摩擦係数を求めよ。
A9-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① (1/2)×2.0×(8.0²−4.0²) = 64−16 = 48 J
② 48 = f'×6.0 → f' = 8.0 N
μ' = 8.0/(2.0×9.8) = 0.408 ≒ 0.41
ポイント 速さ2点の測定から摩擦を逆算 — エネルギーは「測れる量(v、d)」から「見えない量(f'、μ')」を掘り出す測定器にもなる。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。文字式で立式し、単位(すべて J)と極端な場合(μ' → 0 で保存則に戻る等)で検算するのが作法。B4(摩擦との併用)とB5(ばねの複合)が入試の最頻出。
B1【エネルギー原理(文字)】★★
B1-1 なめらかな水平面上で静止していた質量 m の物体に、一定の水平力 F を加えて距離 d だけ動かした。このときの速さ v を、エネルギー原理から求めよ。また、運動方程式と等加速度の式(第1・4章)から同じ結果が出ることを確かめよ。
B1-2 粗い水平面(動摩擦係数 μ')上を初速 v₀ で滑り出した物体が止まるまでの距離 d を求めよ。
B1-3 質量 m の自動車が、傾角 θ の坂道を一定の速さ v で登っている。摩擦や空気抵抗は無視できるとして、エンジンの仕事率 P を求めよ。
B2【保存則の基本形(文字)】★★★
B2-1 高さ h のなめらかな斜面(傾角は任意)の頂上から物体を静かに滑らせたときの、下端での速さを求めよ。この結果が斜面の角度によらないことの意味を述べよ。
B2-2 長さ L の糸の振り子を、鉛直から角 θ だけ傾けて静かにはなした。最下点での速さを求めよ。
B2-3 地面から初速 v₀、仰角 α で打ち出した小球の、高さ h の点での速さ v を求めよ。また、この結果が仰角 α によらないことを確かめ、最高点(第2章 B4-1 の H)で v = v₀cosα となることと矛盾しないことを示せ。
B3【ばねと仕事(文字)】★★★
B3-1 なめらかな水平面上で、ばね定数 k のばねを x だけ縮めて質量 m の球を発射した。離れた直後の速さを求めよ。
B3-2 ばね定数 k のばねを、伸び x₁ の状態から伸び x₂(x₂ > x₁)の状態までゆっくり引き伸ばす。外力がする仕事を求めよ。
B3-3 なめらかな水平面上を速さ v で進む質量 m の物体が、ばね定数 k のばねに当たった。ばねの最大の縮みを求めよ。また「縮みが最大」をエネルギーの言葉でどう翻訳したかを述べよ。
B4【摩擦・非保存力との併用(文字)】★★★
B4-1 粗い水平面(動摩擦係数 μ')上を物体が距離 d 滑るとき、力学的エネルギーの変化を式で表せ(初速 v₀、終わりの速さ v)。
B4-2 傾角 θ の粗い斜面(動摩擦係数 μ'、tanθ > μ')の、高さ h の点から物体を静かに滑らせた。下端での速さを求めよ。
B4-3
なめらかな2つの坂の間に、長さ L の粗い水平部分(動摩擦係数 μ')がある。左の坂の高さ h の点から物体を静かにはなした。
① はじめて右の坂を登るとき、達する高さ h' を求めよ(h' > 0 とする)。
② 物体はやがて水平部分のどこかで止まる。止まるまでに水平部分を滑った総距離 D を求めよ。
B5【ばねと重力の複合(文字)】★★★
B5-1 なめらかな水平面上で、ばね定数 k のばねを x₀ だけ縮めて質量 m の球を発射した。球はその後、なめらかな坂を登った。高さ h の点を通過するときの速さを求めよ。
B5-2 鉛直に立てたばね(ばね定数 k)の上端に質量 m の球をのせ、手で押し下げて自然長から d だけ縮め、静かにはなした。球がばねから離れる位置(自然長の位置)での速さ v と、その後、自然長の位置から達する最高の高さ H を求めよ。
B5-3
天井からつるしたばね(ばね定数 k)の下端に質量 m の球を取り付け、ばねが自然長の位置で球を静かにはなした。
① ばねの伸びの最大値を求めよ。
② 球の速さが最大になるのはどこか。その速さを求めよ。
B6【使い分けと仕事率の応用】★★
B6-1 傾角 θ のなめらかな斜面に沿って距離 d 滑り降りたときの速さを、①運動方程式+等加速度の式、②エネルギー保存、の2通りで求め、一致することを確かめよ。
B6-2 振り子の糸の張力や、面からの垂直抗力が「仕事をしない」のはなぜか。仕事の定義に基づいて説明せよ。
B6-3 ポンプが毎秒 q [kg] の水を高さ h までくみ上げている(くみ上げた水の速さは無視できる)。ポンプの仕事率 P を求めよ。
B問題 解答・解説
B1【エネルギー原理(文字)】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
エネルギー原理:(1/2)mv²−0 = Fd → v = √(2Fd/m)
別ルート:a = F/m(運動方程式)、v² = 2ad(等加速度)→ v² = 2Fd/m — 一致 ○
ポイント エネルギー原理は「運動方程式を距離にそって積み上げた式」— 新しい法則ではなく、同じ法則の別の顔。2ルートの一致で、以後は安心して速い方(エネルギー)を使える。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
0−(1/2)mv₀² = −μ'mgd
d = v₀²/(2μ'g)
ポイント 第1章 B4-1 の制動距離、第4章 A5 の運動方程式ルートと同じ結果が1行 — v₀² に比例(速さ2倍で4倍)という構造が式の顔に出ている。m は消える。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
一定の速さ ⇔ つり合い:駆動力 F = mgsinθ
P = Fv = mgv sinθ
ポイント 「毎秒 vsinθ だけ高さを稼ぐ → 毎秒 mg×vsinθ の位置エネルギーを供給」と読むと、P = (mgh の増加ペース)そのもの。θ → 0 で P → 0(平地は力不要)○。
B2【保存則の基本形(文字)】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
mgh = (1/2)mv² → v = √(2gh)
角度が式に現れない理由:垂直抗力は仕事をせず、重力の仕事は高さの差だけで決まるから。どんな形の坂でも(曲がっていても)、なめらかなら下端の速さは同じ。
ポイント 「速さは高さが決める」— 自由落下(第2章)とも同じ値。ジェットコースターの設計が「高さ」を最重要視する理由。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
最下点からの高さ:h = L−Lcosθ = L(1−cosθ)
mgh = (1/2)mv² → v = √(2gL(1−cosθ))
ポイント 振り子の頻出量 h = L(1−cosθ) は図の「L から Lcosθ を引く」で作る — この1行が振り子・円運動(第7章)まで通用する部品。θ = 90° で v = √(2gL) ○。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
(1/2)mv₀² = (1/2)mv²+mgh → v = √(v₀²−2gh)
式に α が含まれない — 同じ高さなら速さは同じ(向きは異なる)。
最高点では h = H = v₀²sin²α/(2g) だから
v² = v₀²−v₀²sin²α = v₀²cos²α → v = v₀cosα ○(第2章 B6-1 と一致)
ポイント 「エネルギーは速さしか語らない(向きは語らない)」— それでも第2章の成分計算と完全に整合する。2つの道具の答え合わせは、理解の最良のテスト。
B3【ばねと仕事(文字)】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
(1/2)kx² = (1/2)mv² → v = x√(k/m)
ポイント 硬いばね(k 大)・軽い球(m 小)ほど速い — 比が根号に入る形。次元:√(N/m ÷ kg)×m = √(1/s²)×m = m/s ○。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
外力の仕事 = 弾性エネルギーの増加分:
W = (1/2)kx₂²−(1/2)kx₁² = (1/2)k(x₂²−x₁²)
ポイント (1/2)k(x₂−x₁)² は誤り — 仕事は「エネルギーの差」であって「差のエネルギー」ではない。F-x グラフの台形の面積((kx₁+kx₂)/2×(x₂−x₁))と一致することも確認 ○。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
縮み最大 ⇔ 物体の速さ 0:
(1/2)mv² = (1/2)kx² → x = v√(m/k)
翻訳:「縮みが最大になる瞬間 = 物体が一瞬止まる瞬間 = 運動エネルギーが全額弾性エネルギーに変わった瞬間」。
ポイント 「最大・最小」は必ずエネルギーの言葉に翻訳してから式にする(最高点 ⇔ v = 0、最大速さ ⇔ U 最小)。B3-1 と互いに逆の式になっている(発射と吸収の対称)。
B4【摩擦・非保存力との併用(文字)】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
(後の E)−(前の E)= 非保存力の仕事:
(1/2)mv²−(1/2)mv₀² = −μ'mgd
(水平なので位置エネルギーは変化しない)
ポイント これが摩擦つき問題の万能テンプレート — 右辺は必ず負(エネルギーは減る一方)。減った分 μ'mgd がそのまま発生した摩擦熱。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
滑る距離 d = h/sinθ、摩擦力 = μ'mgcosθ。
mgh−μ'mgcosθ×(h/sinθ) = (1/2)mv²
v = √{2gh(1−μ'/tanθ)}
ポイント μ' → 0 で √(2gh)(B2-1)に戻る ○/tanθ = μ' で v = 0(滑り出すぎりぎりの角:第3章の摩擦角!)○ — 2つの極端検算が式の信頼を作る。摩擦があると角度が式に復活する(経路が効く)ことに注意。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
① 出発点と到達点の高さの差ぶんが摩擦熱に:
mgh = mgh'+μ'mgL → h' = h−μ'L
② 最終的に止まる(K = 0、坂の上でもない)まで、失った位置エネルギー mgh がすべて摩擦熱 μ'mgD に:
mgh = μ'mgD → D = h/μ'
ポイント ②は往復の詳細を一切追わないのが正解 — 「最初の貯金 mgh を、1 m あたり μ'mg ずつ使い切る」だけの帳簿。何往復するかを数える解法(可能だが大変)との対比で、エネルギーの視点の強さが際立つ名問。
B5【ばねと重力の複合(文字)】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
(1/2)kx₀² = (1/2)mv²+mgh
v = √(kx₀²/m−2gh)
ポイント 3つの通貨(ばね・運動・高さ)が1つの式に同居する標準形。根号の中が負なら「その高さには届かない」— 届く条件 h ≦ kx₀²/(2mg) まで読めれば完璧。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
はなした点を高さの基準にすると、自然長の位置は高さ d:
(1/2)kd² = (1/2)mv²+mgd → v = √(kd²/m−2gd)
最高点(自然長から H)まで通して:
(1/2)kd² = mg(d+H) → H = kd²/(2mg)−d
ポイント 鉛直のばねでは「ばねを縮めている間も高さが変わる」— mgd の項を落とすのが最頻出ミス。最後の式は「弾性の貯金 = 持ち上げた全高さ分の mgU」と読める。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
① 自然長の位置を基準に、x 下がった点で(最下点では v = 0):
mgx = (1/2)kx² → x(kx−2mg) = 0 → 最大の伸び x = 2mg/k
② 速さ最大 ⇔ 加速度 0 ⇔ 力のつり合いの位置(伸び mg/k)。
そこでの保存則:mg×(mg/k) = (1/2)k(mg/k)²+(1/2)mv²
(1/2)mv² = m²g²/k−m²g²/(2k) = m²g²/(2k)
v = g√(m/k)
ポイント ①最大の伸びはつり合いの伸びのちょうど2倍(2mg/k vs mg/k)— 落とした球はつり合い点を通り過ぎて同じだけ下まで行く。②「つり合い点で最速」— つり合い点を中心に行き来するこの運動の正体は単振動(第8章)。エネルギーが先に答えの形を教えてくれる。
B6【使い分けと仕事率の応用】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
①運動方程式:a = gsinθ(第4章 A6)。等加速度:v² = 2ad = 2gdsinθ → v = √(2gdsinθ)
②高さの差 h = dsinθ。保存則:mgh = (1/2)mv² → v = √(2gdsinθ)
一致 ○
ポイント どちらでも解けるが、①は「途中の時刻・加速度も分かる」、②は「速い」。問われた量で道具を選ぶ — t なら①、v と位置だけなら② — が力学の作戦眼。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
仕事は W = Fxcosθ で、θ は力と移動の向きのなす角。
振り子の張力は糸の方向、運動(速度)は円の接線方向で、つねに垂直(θ = 90°、cosθ = 0)。垂直抗力も面に垂直、移動は面に沿う方向で垂直。
よってどちらも仕事をしない(W = 0)∎
ポイント 「仕事をしない力」の見分けは移動方向との角度だけ — 力の大きさがどれほど大きくても垂直なら 0。この一言が「曲線運動でも保存則が使える」根拠のすべて。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
1 秒間に持ち上がる水の位置エネルギー:qgh [J]
よって P = qgh
ポイント 仕事率 = 「毎秒のエネルギー供給」と読む型。単位:kg/s×m/s²×m = J/s = W ○。揚水発電・ダムの出力計算の骨格そのもの。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦5-1【共テ形式:ジェットコースターのモデル】★★
なめらかなレール上を走る質量 5.0×10² kg のコースター車両が、高さ 19.6 m の点 A から静かに動き出した。レールは最下点 B(高さ 0)を通り、高さ 14.7 m の丘 C へ続いている。g = 9.8 m/s² とする。
① B での速さは [アイ] m/s である。
② C での速さは [ウ].[エ] m/s である。
③ 車両の質量が 2 倍になると、B での速さはどうなるか:[オ]
(a) √2 倍になる
(b) 変わらない
(c) 2 倍になる
④ 実際には摩擦や空気抵抗がある。車両が C を通過できるためには、A から C までに失われる力学的エネルギーが [カ].[キ]×10⁴ J 未満でなければならない。
実戦5-2【記述形式:ばね発射と粗い区間】★★★
なめらかな水平面上に、ばね定数 100 N/m のばねが置いてある。質量 1.0 kg の物体をばねに押し当てて 0.40 m 縮め、静かにはなした。物体はばねから離れてなめらかな面を滑り、その先にある長さ 2.0 m の粗い区間(動摩擦係数 0.25)に入る。g = 9.8 m/s² とする。
① ばねに蓄えられていた弾性エネルギーを求めよ。
② ばねから離れた直後の物体の速さを求めよ。
③ 粗い区間を通り抜ける間に失われる力学的エネルギーを求めよ。
④ 粗い区間を抜けた直後の速さを求めよ。
⑤ もし縮みが 0.40 m でなく 0.20 m だったら、物体は粗い区間に入ってからどれだけ進んで止まるか。
実戦5-3【記述形式:粗い斜面の上りと下り(文字式)】★★★
傾角 θ の粗い斜面(動摩擦係数 μ'、ただし μ' < tanθ)の下端から、質量 m の物体を斜面に沿って上向きに初速 v₀ で滑らせた。重力加速度を g とする。
① 物体が斜面に沿って滑り上がる距離 d を求めよ。
② 物体はその後滑り降りてくる。下端に戻ったときの速さ v₁ を求めよ。
③ 往復の間に失われた力学的エネルギーが、摩擦熱(動摩擦力×滑った総距離)に等しいことを確かめよ。
実戦問題 解答・解説
実戦5-1
考え方 レールの形は一切問わない — 高さだけ拾って保存則。③は m の約分、④は「通過できる ⇔ C で E がぎりぎり足りる」の翻訳。共テらしい「式の構造を問う」構成。
実戦5-1解答を見る解答を隠す
解答
① mgh = (1/2)mv²:v = √(2×9.8×19.6) = 19.6 ≒ 20 m/s(アイ = 20)
② v² = 2g(19.6−14.7) = 2×9.8×4.9 = 96.04 → v = 9.8 m/s(ウ = 9、エ = 8)
③ 保存則の各項はすべて m に比例 → m は消える:(b)(オ = (b))
④ ぎりぎり C に届く条件:失う量 <(A と C の位置エネルギーの差)
mgΔh = 5.0×10²×9.8×4.9 = 2.401×10⁴ ≒ 2.4×10⁴ J(カ = 2、キ = 4)
ポイント
• ②は「A から B」でなく「A から C」を直結 — 高低差 4.9 m だけが効く。B を経由する計算(20 m/s から減速)でも同じ答え ○。
• ④の「失ってよい上限 = 余裕分の位置エネルギー」という読み替えは、安全設計の考え方そのもの。
実戦5-2
考え方 ①→②はばねの両替、③→④は摩擦の帳簿、⑤は「エネルギーが足りない場合」— 1つのストーリーで保存と散逸の両方を通しで演習する、この章の総まとめ。
実戦5-2解答を見る解答を隠す
解答
① (1/2)×100×0.40² = 8.0 J
② 8.0 = (1/2)×1.0×v² → v² = 16 → v = 4.0 m/s
③ μ'mgL = 0.25×1.0×9.8×2.0 = 4.9 J
④ 残り:8.0−4.9 = 3.1 J = (1/2)×1.0×v² → v² = 6.2 → v ≒ 2.5 m/s
⑤ 蓄えは (1/2)×100×0.20² = 2.0 J < 4.9 J なので区間内で停止。
2.0 = 0.25×1.0×9.8×d = 2.45d → d = 0.816 ≒ 0.82 m
ポイント
• ④で「速さが半分より少し上」になるのは、エネルギーが 8.0 → 3.1 J と半分以下になったから — 速さは √ でしか減らない(2乗の関係の逆向き)。
• ⑤の判定「持ち金 2.0 J vs 通行料 4.9 J」— 先にエネルギーの大小比較をしてから式を立てる、が散逸問題の作法。
実戦5-3
考え方 上りは「重力も摩擦も敵」、下りは「重力は味方、摩擦は敵」— 摩擦の向きが反転する(第4章 A7)ことを、今度はエネルギーの帳簿でさばく。B4-2 と対をなす完全版。
実戦5-3解答を見る解答を隠す
解答
① 上り:(1/2)mv₀² = mgd sinθ+μ'mgcosθ×d
d = v₀²/{2g(sinθ+μ'cosθ)}
② 下り:mgd sinθ−μ'mgcosθ×d = (1/2)mv₁²
v₁² = 2gd(sinθ−μ'cosθ) = v₀²×(sinθ−μ'cosθ)/(sinθ+μ'cosθ)
v₁ = v₀√{(sinθ−μ'cosθ)/(sinθ+μ'cosθ)}
③ 失われた力学的エネルギー:
(1/2)mv₀²−(1/2)mv₁² = (1/2)mv₀²×{1−(sinθ−μ'cosθ)/(sinθ+μ'cosθ)}
= (1/2)mv₀²×2μ'cosθ/(sinθ+μ'cosθ) = μ'mgcosθ×2d
これは 動摩擦力 μ'mgcosθ × 総距離 2d(往復)に等しい ∎
ポイント
• ②の形:v₁ < v₀(根号の中 < 1)— 「同じ高さに戻っても同じ速さでは戻れない」のが非保存力の世界。μ' → 0 で v₁ → v₀(第2章の対称性)に戻る ○。
• ③は「消えたエネルギーの行き先(摩擦熱)を特定して帳簿を閉じる」— エネルギーは消滅せず形を変える、という次章以降(熱・第2巻)へ続く大原則の力学版。
第6章 運動量と力積
エネルギーが運動方程式を「距離」で積んだものなら、運動量は「時間」で積んだもの — mv'−mv = FΔt。本章の主役は運動量保存則:衝突・分裂・合体では、作用反作用が内側で打ち消し合い、全体の運動量は向きごと不変。エネルギーとの決定的な違いは2つ — ①運動量はベクトル(符号・成分で扱う)②衝突では運動エネルギーは一般に保存しない(その減り具合を測る物差しが反発係数 e)。「衝突・分裂には運動量、高さ・ばねにはエネルギー」— 道具の使い分けがこの章で完成する。
この章の公式・要点まとめ
運動量と力積
• 運動量 p = mv kg·m/s
• 力積 I = FΔt N·s。N·s = kg·m/s — 運動量と同じ単位
• 運動量と力積の関係:mv'−mv = FΔt(受けた力積のぶんだけ運動量が変わる)
• 力が一定でないとき:F は平均の力/力積 = F-t グラフの面積
運動量保存則
• m₁v₁+m₂v₂ = m₁v₁'+m₂v₂'(向きを符号で!)
• 適用条件:物体系に外力がはたらかない、または衝突のような短時間で外力の力積が無視できるとき(内力 = 作用反作用は足すと必ず消える)
• 衝突・分裂・合体・打ち込み・飛び乗りが適用場面。衝突の瞬間にエネルギー保存を使ってはいけない(熱・変形で減る)
反発係数(はねかえり係数)
• e = −(v₁'−v₂')/(v₁−v₂)(遠ざかる速さ ÷ 近づく速さ)、0 ≦ e ≦ 1
• 床・壁との衝突:e = はね返る速さ ÷ 当たる速さ
• e = 1:弾性衝突(このときだけ運動エネルギーも保存)/0 ≦ e < 1:非弾性(K は減る)/e = 0:合体
• なめらかな床への斜め衝突:床に平行な成分は不変、垂直な成分だけ e 倍
解法チャート(衝突・分裂)
1. 正の向きを決め、前後2枚の図を描いて速度を符号つきで書き出す
2. 運動量保存の式を立てる(外力の力積が無視できることを一言)
3. 未知数が2つなら反発係数の式(または「合体 = 速度共通」)を連立
4. 検算:答えの符号を向きの言葉に翻訳/e = 1 なら K 保存を確認/K は決して増えない
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
同じ速さで走る軽自動車と大型トラックでは、運動量が大きいのはどちらか。
(a) 軽自動車
(b) 大型トラック
(c) 同じ
Q2
飛んできたボールを、手を引きながら受け止めると痛くない。これはボールから受ける力積が小さくなるからである。○か×か。
Q3
なめらかな氷の上で静止していた人がボールを投げると、人は後ろに動き出す。「人+ボール」の全体の運動量は、投げる前後でどうなるか。
(a) 変わらない(0 のまま)
(b) 投げた後は増える
(c) 投げた後は減る
Q4
2物体の衝突では、運動量も運動エネルギーも必ず保存する。○か×か。
Q5
反発係数 0.50 の床にボールを自由落下させると、はね返って達する高さは、落とした高さの何倍か。
(a) 0.50 倍
(b) 0.25 倍
(c) 0.71 倍
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:(b) — p = mv:同じ v なら質量に比例。「止めにくさ・進路を変えにくさ」の量が運動量 — トラックが急に止まれない理由。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:× — 力積(= 運動量の変化)は受け方によらず同じ。手を引くのは Δt を長くして「平均の力」を小さくする工夫(F = 一定の力積 ÷ 時間)。エアバッグ・マットも同じ原理。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:(a) — 投げる力は人とボールの内力(作用反作用)なので、全体の運動量は 0 のまま:mv(ボール)+MV(人)= 0。人が逆向きに動くのは保存則の要請そのもの。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:× — 運動量は(外力の力積が無視できれば)必ず保存、運動エネルギーは e = 1 のときだけ。減った分は熱や変形のエネルギーになる。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — 速さが e 倍(0.50 倍)→ 高さは v² に比例するので e² = 0.25 倍。速さと高さで「倍率が2乗ずれる」ことに注意。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り g = 9.8 m/s² とする。
A1【運動量の計算】★
A1-1
質量 2.0 kg の物体が速さ 5.0 m/s で運動している。運動量の大きさを求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
p = mv = 2.0×5.0 = 10 kg·m/s
ポイント 運動量の単位は kg·m/s(= N·s)。「向き」も持つ量なので、直線上では以後つねに符号つきで扱う。
A1-2(類題)
① 質量 1.0×10³ kg の軽自動車が 20 m/s で走っている。運動量の大きさを求めよ。
② 質量 0.15 kg のボールが 40 m/s で飛んでいる。運動量の大きさを求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 1.0×10³×20 = 2.0×10⁴ kg·m/s
② 0.15×40 = 6.0 kg·m/s
ポイント 速いボールより遅い車の方が桁違いに大きい — 運動量は質量の重みが効く量。①のような ×10ⁿ の掛け算(指数は足し算)も淡々と。
A1-3(類題)
運動量の大きさが 8.0 kg·m/s の物体の質量が 0.40 kg であった。速さを求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
v = p/m = 8.0/0.40 = 20 m/s
ポイント 割り算1回の逆算 — ただし 0.40 で割る計算(8.0/0.4 = 20)を暗算で誤らないこと。単位:kg·m/s ÷ kg = m/s ○。
A2【力積】★
A2-1
物体に 20 N の力を 0.30 s 間加え続けた。力積の大きさを求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
I = FΔt = 20×0.30 = 6.0 N·s
ポイント 力積 = 力 × 時間。「どれだけ強く」×「どれだけ長く」— 運動量をどれだけ変えられるかの通貨。
A2-2(類題)
物体に加わる力が、時刻 0 から一定の割合で増えて 0.20 s 後に 100 N に達し、直後に 0 になった(F-t グラフは三角形)。この間の力積を求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
力積 = F-t グラフの面積 = (1/2)×0.20×100 = 10 N·s
ポイント 力が変化するときは「F-t グラフの面積 = 力積」— v-t グラフの面積 = 変位(第1章)と同じ発想。衝突の瞬間の複雑な力も、面積なら扱える。
A2-3(類題)
バットがボールに与えた力積は 9.0 N·s で、接触時間は 0.030 s だった。ボールが受けた平均の力を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = I/Δt = 9.0/0.030 = 3.0×10² N
ポイント 平均の力 = 力積 ÷ 時間 — 一瞬の衝突でも「均せば何 N か」を語れる。接触時間が短いほど平均の力は巨大になる(A4 へ)。
A3【運動量と力積の関係】★★
A3-1
質量 2.0 kg の物体の速さが、力を受けて 3.0 m/s から 7.0 m/s に増した(向きは同じ)。物体が受けた力積を求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
I = mv'−mv = 2.0×7.0−2.0×3.0 = 8.0 N·s(運動の向き)
ポイント 力積 = 運動量の変化 — 「後 − 前」の順で引く。力の詳細(大きさ・時間の内訳)を知らなくても変化だけで力積が決まる。
A3-2(類題)
なめらかな水平面上に静止していた質量 0.50 kg の物体に、水平方向に 6.0 N·s の力積を与えた。物体の速さを求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
0.50×v−0 = 6.0 → v = 12 m/s
ポイント 力積からの逆算。エネルギー原理(仕事 → 速さ)の時間版 — 与えた力積のぶんだけ mv が生まれる。
A3-3(類題)
右向きに 15 m/s で飛んできた質量 0.20 kg のボールをバットで打ち返したところ、左向きに 25 m/s で飛んでいった。ボールが受けた力積を求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:右を正。前:+15 m/s、後:−25 m/s。
I = 0.20×(−25)−0.20×(+15) = −5.0−3.0 = −8.0 N·s、すなわち左向きに 8.0 N·s
ポイント 向きが変わる衝突は符号の見せ場 — 変化量は 25−15 = 10 ではなく 25+15 = 40 m/s ぶん(第1章 A5-3 と同じ罠)。打ち返しは「止めてから逆に打ち出す」2倍仕事。
A4【平均の力(衝突の力)】★★
A4-1
質量 0.15 kg のボールが 20 m/s で壁に垂直に当たり、同じ速さ 20 m/s ではね返った。接触時間を 0.010 s とするとき、壁がボールに及ぼした平均の力を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
はね返る向きを正:Δp = 0.15×{20−(−20)} = 6.0 N·s
F = 6.0/0.010 = 6.0×10² N
ポイント ボールの重さ(約 1.5 N)の 400 倍の力が一瞬はたらく — 衝突の力の激しさは「短い Δt で割る」ことから生まれる。
A4-2(類題)
静止していた質量 0.045 kg のゴルフボールをクラブで打ったところ、60 m/s で飛び出した。接触時間を 5.0×10⁻⁴ s とするとき、ボールが受けた平均の力を求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Δp = 0.045×60 = 2.7 N·s
F = 2.7/(5.0×10⁻⁴) = 5.4×10³ N
ポイント 5.4×10³ N ≒ 550 kg 相当の力 — 高速カメラでしか見えない世界を、力積の割り算が教えてくれる。10⁻⁴ で割る指数計算を丁寧に。
A4-3(類題)
質量 2.0 kg の荷物が 6.0 m/s で飛んできた。
① 0.30 s かけて受け止めたときの平均の力を求めよ。
② 0.10 s で受け止めたときの平均の力を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Δp = 2.0×6.0 = 12 N·s(どちらも同じ)
① F = 12/0.30 = 40 N
② F = 12/0.10 = 1.2×10² N
ポイント 力積 12 N·s は不変、時間 1/3 で力は 3 倍 — 概念チェック Q2 の数値版。「ふんわり受ける」の物理的意味が 40 N と 120 N の差。
A5【運動量保存(衝突・合体)】★★★
A5-1
なめらかな水平面上を右向きに 3.0 m/s で進む質量 4.0 kg の物体が、静止していた質量 2.0 kg の物体に衝突し、一体となって動き出した。一体となった後の速さを求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:前(4.0 kg が 3.0 m/s、2.0 kg が 0)/後(6.0 kg が v)。
運動量保存:4.0×3.0+0 = 6.0×v → v = 2.0 m/s(右向き)
ポイント 合体は「後の速度が共通」— 未知数が1つなので保存則1本で解ける最も基本の型。衝突の間の複雑な力は一切問わない、が保存則の強み。
A5-2(類題)
右向きに 4.0 m/s で進む質量 3.0 kg の物体と、左向きに 4.0 m/s で進む質量 1.0 kg の物体が正面衝突し、一体となった。衝突後の速度を求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
右を正:3.0×4.0+1.0×(−4.0) = 4.0×v
12−4.0 = 4.0v → v = 2.0 m/s(右向き)
ポイント 左向きの運動量は負で足す — 引き算になるのが「ベクトルの保存」の意味。答えの符号(+)を「右向き」と翻訳して締める。
A5-3(類題)
質量 5.0×10³ kg の車両が 2.0 m/s で走ってきて、静止していた質量 3.0×10³ kg の車両に連結した。連結後の速さを求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
5.0×10³×2.0 = 8.0×10³×v → v = 1.25 ≒ 1.3 m/s
ポイント 実際の鉄道の連結がこの計算そのもの。有効数字2桁への丸め(1.25 → 1.3)も答えの一部。
A6【運動量保存(分裂・反動)】★★★
A6-1
なめらかな氷の上に静止していた質量 60 kg の人が、質量 0.50 kg のボールを右向きに 8.0 m/s で投げた。人はどうなるか。速さも求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
右を正。前:全体で 0。後:0.50×8.0+60×V = 0
V = −4.0/60 ≒ −0.067 → 左向きに 6.7×10⁻² m/s で動き出す
ポイント 全体の運動量 0 は投げた後も 0 — ボールの +4.0 を人の −4.0 が打ち消す(運動量の等分配、速さは質量の逆比)。ロケット推進の原理の最小モデル。
A6-2(類題)
なめらかな水平面上で、質量 2.0 kg の台車 A と 3.0 kg の台車 B が、間に縮めたばねをはさんで静止している。静かにばねを解放すると、A は右向きに 3.0 m/s で動き出した。B の速度を求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
0 = 2.0×3.0+3.0×v → v = −2.0 → 左向きに 2.0 m/s
ポイント ばねの力も内力なので保存則がそのまま使える。運動量の大きさは両者 6.0 kg·m/s で等しく、軽い方が速い(逆比)— 分裂の一般則。
A6-3(類題)
なめらかな水平面上に静止している質量 50 kg の台車つき砲身から、質量 2.0 kg の砲弾を水平に(地面から見て)26 m/s で発射した。砲身の反動の速さを求めよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
0 = 2.0×26+50×V → V = −52/50 = −1.04 → 後方に 1.0 m/s
ポイント 大砲の反動(reaction)は保存則の請求書 — 砲身を重くするほど反動の速さは小さい(V = mv/M)。「地面から見た速さ」と明記されていることも確認(基準系の意識)。
A7【反発係数(床・壁)】★★
A7-1
ボールが 5.0 m/s で壁に垂直に当たり、3.0 m/s ではね返った。壁とボールの間の反発係数を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
e = はね返る速さ/当たる速さ = 3.0/5.0 = 0.60
ポイント 壁・床との e は「速さの比」(相手が動かないので)。e は単位のない数で、0 ≦ e ≦ 1。
A7-2(類題)
ボールを高さ 2.5 m から静かに落としたところ、床ではね返って 0.90 m の高さまで上がった。床との反発係数を求めよ。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
当たる速さ v = √(2g×2.5)、はね返る速さ v' = √(2g×0.90)
e = v'/v = √(0.90/2.5) = √0.36 = 0.60
ポイント e = √(はねた高さ/落とした高さ) — g が約分され、高さの比だけで測れる(ボールの弾み測定の実験式)。速さの比 e と高さの比 e² の「2乗ずれ」(概念チェック Q5)。
A7-3(類題)
反発係数 0.50 の床に、ボールを高さ 1.6 m から静かに落とした。
① 1回はね返って達する高さを求めよ。
② 2回はね返って達する高さを求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① h₁ = e²h = 0.25×1.6 = 0.40 m
② h₂ = e²h₁ = 0.25×0.40 = 0.10 m
ポイント はね返るたびに高さは e² 倍(等比数列!)— 第2巻…ではなく数学第2巻の数列がボールの運動に現れる。やがて高さは 0 に近づく(無限等比級数の香り)。
A8【2物体の衝突(保存則+反発係数)】★★★
A8-1
なめらかな水平面上を右向きに 5.0 m/s で進む質量 2.0 kg の球 A が、静止している質量 3.0 kg の球 B に正面衝突した。反発係数を 0.50 とする。衝突後の A、B の速度を求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
右を正、衝突後を v₁、v₂ とする。
運動量保存:2.0×5.0 = 2.0v₁+3.0v₂ …(1)
反発係数:v₂−v₁ = 0.50×(5.0−0) = 2.5 …(2)
(2)より v₂ = v₁+2.5。(1)へ:10 = 2v₁+3v₁+7.5 → 5v₁ = 2.5
v₁ = 0.50 m/s、v₂ = 3.0 m/s(ともに右向き)
ポイント 未知数2つ → 保存則+反発係数の連立が衝突問題の標準装備。反発係数の式は「遠ざかる速さ(v₂−v₁)= e×近づく速さ」の形で立てると符号事故が減る。
A8-2(類題)
質量 1.0 kg の球 A が 4.0 m/s で、静止した同じ質量 1.0 kg の球 B に正面衝突した。反発係数を 1(弾性衝突)とする。衝突後の A、B の速度を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
保存:4.0 = v₁+v₂/e = 1:v₂−v₁ = 4.0
連立して v₁ = 0、v₂ = 4.0 m/s
ポイント 同じ質量の弾性衝突は「速度の交換」 — A は完全に止まり、B が身代わりに飛んでいく。ビリヤードの止め球、ニュートンのゆりかご(B6-3)の正体。
A8-3(類題)
右向きに 6.0 m/s で進む質量 2.0 kg の球 A と、左向きに 3.0 m/s で進む質量 4.0 kg の球 B が正面衝突した。反発係数を 0.50 とする。衝突後のそれぞれの速度を求めよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
右を正:保存:2.0×6.0+4.0×(−3.0) = 2v₁+4v₂ → 2v₁+4v₂ = 0
反発:v₂−v₁ = 0.50×{6.0−(−3.0)} = 4.5
v₁ = −2v₂ を代入:3v₂ = 4.5 → v₂ = 1.5 m/s(右向き)、v₁ = −3.0 m/s(左向きに 3.0 m/s)
ポイント 全運動量がちょうど 0 の衝突 — 後も「2物体の運動量は等大逆向き」のまま。近づく速さは 6.0+3.0 = 9.0 m/s(差ではなく和:第1章の相対速度)— e の式の(v₁−v₂)は正面衝突で和になる。
A9【衝突と運動エネルギー】★★★
A9-1
A5-1 の合体(4.0 kg・3.0 m/s が静止した 2.0 kg と合体して 2.0 m/s)で、失われた運動エネルギーを求めよ。
A9-1解答を見る解答を隠す
解答
前:(1/2)×4.0×3.0² = 18 J
後:(1/2)×6.0×2.0² = 12 J
失われた量 = 6.0 J
ポイント 運動量は保存しても K は減る(合体 e = 0 が最も減る)。減った 6.0 J は変形・熱・音に化けた — 消えたのではなく「力学の帳簿の外」へ出ただけ。
A9-2(類題)
A8-2 の弾性衝突(速度の交換)で、衝突前後の運動エネルギーの合計をそれぞれ求め、比較せよ。
A9-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
前:(1/2)×1.0×4.0²+0 = 8.0 J
後:0+(1/2)×1.0×4.0² = 8.0 J
等しい(保存されている)
ポイント e = 1 ⇔ 運動エネルギー保存 — 「弾性」の名の由来。逆に、K が保存する衝突と言われたら e = 1 と置いてよい(同値)。
A9-3(類題)
A8-1 の衝突(2.0 kg・5.0 m/s → 0.50 m/s、3.0 kg・静止 → 3.0 m/s)で、失われた運動エネルギーを求めよ。
A9-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
前:(1/2)×2.0×5.0² = 25 J
後:(1/2)×2.0×0.50²+(1/2)×3.0×3.0² = 0.25+13.5 = 13.75 ≒ 14 J
失われた量 = 25−13.75 = 11.25 ≒ 11 J
ポイント e = 0.50 では半分近くが失われた — e が小さいほど損失大。検算の視点:「後の K ≦ 前の K」は絶対(増えたら計算ミス確定)。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。符号(向き)を最後まで文字のまま追うのがこの章の作法。B3(衝突の一般解)とB4(はね返り)は結果の形ごと覚える価値がある最頻出。
B1【関係式の成り立ち】★★
B1-1 運動方程式 ma = F と加速度の定義 a = (v'−v)/Δt から、運動量と力積の関係 mv'−mv = FΔt を導け。
B1-2 「仕事と運動エネルギーの関係」(第5章)と「力積と運動量の関係」は、どちらも運動方程式から導かれる。両者の違い(何で積み上げたか・スカラーかベクトルか)を整理して述べよ。
B1-3 衝突のように力が複雑に変化する場合、力積はどのように求められるか。「F-t グラフ」と「平均の力」の2つの言葉を使って説明せよ。
B2【運動量保存則の導出と適用】★★★
B2-1 2物体 A(質量 m₁)、B(質量 m₂)が衝突する。衝突中に A が B から受ける平均の力を F、接触時間を Δt として、作用反作用の法則と力積の関係から、運動量保存則を導け。
B2-2 空中でのボールどうしの衝突や、床の上での衝突では、重力や垂直抗力という「外力」がはたらいている。それでも衝突の前後で運動量保存則が使えるのはなぜか説明せよ。
B2-3
静止していた物体が、内部の力で質量 m₁ と m₂ の2つに分裂し、m₁ は速さ v₁ で飛んだ。
① m₂ の速さ v₂ を求めよ。
② 2つの破片の運動エネルギーの比 K₁:K₂ を求めよ。
B3【衝突の一般解】★★★
B3-1 速度 v₁ で進む質量 m₁ の球が、静止している質量 m₂ の球に正面衝突した。反発係数を e とする。衝突後のそれぞれの速度 v₁'、v₂' を求めよ。
B3-2 B3-1 で e = 1(弾性衝突)の場合の v₁'、v₂' を書き下せ。さらに、①m₁ = m₂ の場合 ②m₂ が m₁ よりはるかに大きい場合、について結果を解釈せよ。
B3-3 B3-1 で e = 0(合体)の場合の共通速度 v を求めよ。また、失われる運動エネルギー ΔK を求めよ。
B4【床へのはね返り(文字)】★★★
B4-1 高さ h から床にボールを静かに落とす。反発係数を e とする。はね返った直後の速さと、達する高さを求めよ。
B4-2 B4-1 のボールが n 回はね返った後に達する高さを求めよ。
B4-3 なめらかな床に、ボールが速さ v、床から角 θ の向きで衝突した(反発係数 e)。はね返った直後の速度の床に平行な成分・垂直な成分、はね返りの角 θ'(tanθ' で)、および速さを求めよ。
B5【平面内の運動量(ベクトル)】★★★
B5-1 速さ v で進む質量 2m の物体が、進行中に同じ質量 m の2つの部分に分裂した。一方の破片は元の進行方向に速さ 2v で飛んだ。他方の破片の速度を求めよ。
B5-2 速さ v で進む質量 m の球 A が、静止している質量 M の球 B に衝突し、A は元の進行方向と垂直な向きに速さ v₁ で飛んだ。B の速さと、B の進む向き(元の進行方向となす角 φ の tanφ)を求めよ。
B5-3 東向きに速さ v で飛んできた質量 m のボールを打ち、北向きに同じ速さ v で飛ばした。ボールが受けた力積の大きさと向きを求めよ。
B6【運動量の応用】★★★
B6-1 なめらかな水平面上に静止している質量 M の台車に、質量 m の人が水平方向に速さ v で走ってきて飛び乗った。一体となった後の速さを求めよ。
B6-2 質量 M の台車に質量 m の人が乗り、一体となって速さ v で進んでいる。人が台車の後方に、地面から見て速さ u で飛び降りた。飛び降りた後の台車の速さ V を求めよ。
B6-3 なめらかな水平面上に、同じ質量 m の球 B、C が静止して一直線上に並んでいる。球 A(質量 m)が速さ v でこの直線に沿って進み、まず B に、続いて B が C に衝突した。すべての衝突の反発係数を 1 とするとき、最終的な A、B、C の速度を求めよ。
B問題 解答・解説
B1【関係式の成り立ち】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
ma = F に a = (v'−v)/Δt を代入:
m(v'−v)/Δt = F → 両辺に Δt を掛けて mv'−mv = FΔt ∎
ポイント 力積・運動量の関係は運動方程式の変形にすぎない — 新法則ではない。だからこそ、どんな運動にも(向きが変わっても)通用する。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
どちらも ma = F の「積み上げ」:
仕事と運動エネルギー — 距離で積む(F×x)。スカラー(向きなし)。(1/2)mv²−(1/2)mv₀² = Fx
力積と運動量 — 時間で積む(F×t)。ベクトル(向きあり)。mv'−mv = FΔt
同じ力でも「どれだけの距離」効いたかと「どれだけの時間」効いたかで、変わる量(K か p か)が異なる。
ポイント この対比表が力学の見取り図 — 「高さ・距離の話 → エネルギー/時間・衝突の話 → 運動量」という道具選びの根拠になる。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
力積は F-t グラフの面積として求められる(細かい時間に区切れば各瞬間の FΔt の和)。
また、その面積を接触時間 Δt で割った高さをもつ長方形に均したときの高さが平均の力 — 「平均の力 × Δt = 実際の力積」となるように定めた力である。
ポイント 「グラフの面積」で複雑さを飲み込む発想は、v-t の面積 = 変位(第1章)、F-x の面積 = 仕事(第5章)に続く3例目 — 物理の通奏低音。
B2【運動量保存則の導出と適用】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
A が B から受ける力を F とすると、作用反作用より B は A から −F を受ける…(向きを込めて逆)。それぞれの力積の関係:
A:m₁v₁'−m₁v₁ = −FΔt
B:m₂v₂'−m₂v₂ = +FΔt
辺々加えると右辺が消えて
m₁v₁'+m₂v₂' = m₁v₁+m₂v₂ ∎
ポイント 保存則の正体は「作用反作用の力積が足すと必ず消える」こと — 内力がどれほど巨大でも複雑でも、和には現れない。第4章の連結体で「足すと張力が消えた」のと同じ構造。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
衝突の接触時間 Δt はきわめて短く、外力(重力など)の力積 mgΔt は、衝突の内力の力積(平均の力が重力の数百倍:A4)に比べて無視できるほど小さいから。
— 衝突の直前と直後を比べる限り、運動量保存則は良い近似で成り立つ。
ポイント 「保存則の適用条件」を自分の言葉で言えるかが記述の分かれ目。逆に、衝突後に時間が経てば(重力の力積が積もれば)運動量は変わっていく — 保存は「瞬間の前後」の話。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
① 0 = m₁v₁−m₂v₂(逆向き)→ v₂ = m₁v₁/m₂(m₁ と逆向き)
② K₁:K₂ = (1/2)m₁v₁²:(1/2)m₂v₂² = m₁v₁²:m₂×(m₁v₁/m₂)² = m₁:m₁²/m₂ = m₂:m₁
ポイント 運動量は等分(等大逆向き)なのに、エネルギーは軽い方が多く持つ(逆比)— 銃と弾丸なら弾丸がエネルギーのほぼ全部を持ち去る。K = p²/(2m) と書けば「p 同じなら K ∝ 1/m」が一目。
B3【衝突の一般解】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
保存:m₁v₁ = m₁v₁'+m₂v₂' …(1)
反発:v₂'−v₁' = ev₁ …(2)
(2)より v₂' = v₁'+ev₁ を(1)へ:
m₁v₁ = (m₁+m₂)v₁'+em₂v₁
v₁' = (m₁−em₂)v₁/(m₁+m₂)、v₂' = (1+e)m₁v₁/(m₁+m₂)
ポイント v₂' はつねに正(必ず押し出される)、v₁' の符号は m₁ と em₂ の大小で決まる — 「はね返されるか、進み続けるか」が式の分子で判定できる。A8-1 は m₁ = 2、m₂ = 3、e = 0.5 の代入例(v₁' = 0.5、v₂' = 3.0 ○)。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
e = 1:v₁' = (m₁−m₂)v₁/(m₁+m₂)、v₂' = 2m₁v₁/(m₁+m₂)
① m₁ = m₂:v₁' = 0、v₂' = v₁ — 速度の交換(A8-2)。
② m₂ ≫ m₁:v₁' ≒ −v₁、v₂' ≒ 0 — 巨大な壁に当たったのと同じで、同じ速さではね返る。
ポイント 一般式から極端を読む練習 — 「壁との衝突 e = 1 で速さ不変」は、この式の m₂ → ∞ の極限として導かれる。逆(m₁ ≫ m₂)なら v₁' ≒ v₁、v₂' ≒ 2v₁:軽い球は2倍速で弾き飛ばされる。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
e = 0 では v₁' = v₂' = v(共通):
v = m₁v₁/(m₁+m₂)
ΔK = (1/2)m₁v₁²−(1/2)(m₁+m₂)v² = (1/2)m₁v₁²{1−m₁/(m₁+m₂)}
ΔK = m₁m₂v₁²/{2(m₁+m₂)}
ポイント 合体(e = 0)は損失が最大の衝突。損失の式の m₁m₂/(m₁+m₂) という組み合わせ(換算質量)は物理の随所で再登場する名脇役 — 等質量なら初めの K の半分が失われる(m₁ = m₂ で ΔK = (1/4)m₁v₁² = K/2)。
B4【床へのはね返り(文字)】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
当たる直前の速さ:√(2gh)。はね返り直後:e√(2gh)
達する高さ:h' = (e√(2gh))²/(2g) = e²h
ポイント 「速さは e 倍、高さは e² 倍」— A7 の数値群の一般式。e は速さの比として定義されているので、高さで測るときは √ を忘れずに(e = √(h'/h))。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
1回ごとに高さが e² 倍になるから、n 回後は
hₙ = e²ⁿ h
ポイント 公比 e² の等比数列 — 数学第2巻(数列)がボールのバウンドに現れる。0 < e < 1 なら hₙ → 0:バウンドはやがて消える(その総時間が有限になる話は数IIIの無限級数)。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
床に平行な成分:vcosθ のまま(なめらかな床は水平方向に力を及ぼさない)
床に垂直な成分:vsinθ → evsinθ
はね返りの角:tanθ' = (evsinθ)/(vcosθ) = e tanθ
速さ:v' = v√(cos²θ+e²sin²θ)
ポイント 斜め衝突は「成分ごとに別ルール」— 平行は素通り、垂直だけ e 倍。e < 1 なら θ' < θ:はね返りは寝る(低くなる)。バウンドしたボールが伸びてくる感覚の正体。
B5【平面内の運動量(ベクトル)】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
進行方向の保存:2m×v = m×2v+m×v₂'
→ v₂' = 0:他方の破片はその場に静止する
ポイント 一方が2倍速をもらうと、もう一方は運動量をすべて譲って止まる — 保存則の帳尻。数値でなく式が結論を強制する気持ちよさを味わう1問。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
図示:衝突前の運動量 mv(x 方向)。後:A は y 方向に mv₁、B は p_B。
成分の保存:x:mv = p_Bx/y:0 = mv₁+p_By → p_By = −mv₁
B の運動量の大きさ:√{(mv)²+(mv₁)²} = m√(v²+v₁²)
B の速さ = (m/M)√(v²+v₁²)、向きは元の進行方向から A と反対側に tanφ = v₁/v の角
ポイント 平面の保存則は「x と y、成分ごとに独立に保存」— ベクトルの分解(第3章)がここでも主役。A が上に曲がれば B は必ず下に曲がる(y 成分の帳尻)。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
図示:前の運動量 mv(東)、後 mv(北)。力積 = 後 − 前 = mv(北)−mv(東)。
東向きの矢印を引いて北向きの矢印を足す — 直角二等辺三角形の斜辺:
大きさ = √2 mv、向きは北西(西と北のちょうど中間、元の進行方向から 135°)
ポイント 「速さが同じだから力積 0」は大誤り — 向きの変化そのものが運動量の変化。ベクトルの引き算を矢印の図で実行する、平面力積の代表問題。
B6【運動量の応用】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
mv+0 = (M+m)V → V = mv/(M+m)
ポイント 「飛び乗り」は人と台車の合体(e = 0)。摩擦(人の靴と台車の間)は内力なので保存則は無傷 — 「何が内力で何が外力か」は着目する系の決め方しだい、という視点が育つ問題。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
進行方向を正。前:(M+m)v。後:台車 MV、人 −mu。
(M+m)v = MV−mu
V = {(M+m)v+mu}/M
ポイント V > v — 人を後ろへ押し出した反動で台車は加速する(ロケットの原理を1回分だけやった形)。「地面から見た速さ u」という基準の明示が式を1通りに決める — 「台車から見て u」なら別の式になる(発展)。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
A → B:同質量・e = 1 なので速度交換(B3-2 ①)— A は止まり、B が v で進む。
B → C:同じく速度交換 — B が止まり、C が v で進む。
最終:A は静止、B は静止、C が速さ v で進む
ポイント 「ニュートンのゆりかご」の理論 — 端の1球だけが飛び出すのは、速度交換のバケツリレー。運動量保存だけなら「2球が v/2 で飛ぶ」解もあり得るが、e = 1(K 保存)がそれを禁止している:2つの保存則の合わせ技で答えが1つに絞られる。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦6-1【共テ形式:ボールのバウンド測定】★★
質量 0.20 kg のボールを高さ 1.6 m から床に静かに落としたところ、はね返って高さ 0.90 m まで上がった。g = 9.8 m/s² とする。
① 床に当たる直前の速さは [ア].[イ] m/s である。
② はね返った直後の速さは [ウ].[エ] m/s である。
③ 床とボールの間の反発係数は 0.[オカ] である。
④ 衝突でボールが床から受けた力積の大きさは [キ].[ク] N·s である(衝突中の重力の力積は無視できるとする)。
⑤ 衝突で失われた力学的エネルギーは [ケ].[コ] J である。
実戦6-2【記述形式:弾道振り子】★★★
軽い糸でつるした質量 0.95 kg の木片に、水平に飛んできた質量 0.050 kg の弾丸が命中してめり込み、一体となって振れ上がり、最下点から 0.20 m の高さで一瞬静止した。g = 9.8 m/s² とする。
① 一体となった直後の速さ V を求めよ。
② 命中直前の弾丸の速さ v を求めよ。
③ めり込む際に失われた力学的エネルギーを求めよ。また、それははじめの運動エネルギーの何 % か。
④ この問題では、「めり込む過程」と「振れ上がる過程」で使う法則を使い分けた。それぞれどの法則を使い、なぜもう一方の法則が使えないのかを説明せよ。
実戦6-3【記述形式:衝突の一般式と場合分け】★★★
なめらかな水平面上を速さ v₀ で進む質量 m の球 A が、静止している質量 2m の球 B に正面衝突した。反発係数を e(0 ≦ e ≦ 1)とする。
① 衝突後の A、B の速度 v₁、v₂ を求めよ(A のはじめの進行方向を正とする)。
② A が衝突後にはね返される(負の向きに進む)ための e の条件を求めよ。
③ e = 1 のときの v₁、v₂ を求め、運動エネルギーが保存されていることを確かめよ。
④ e = 0 のとき、失われる運動エネルギーを求めよ。
実戦問題 解答・解説
実戦6-1
考え方 落下(第2章)→ 衝突(本章)→ 上昇(第2章)の3幕構成 — 高さと速さの往復は √(2gh)、衝突の前後は力積とエネルギーで精算。実験プリントそのままの共テ的題材。
実戦6-1解答を見る解答を隠す
解答
① v = √(2×9.8×1.6) = √31.36 = 5.6 m/s(ア = 5、イ = 6)
② v' = √(2×9.8×0.90) = √17.64 = 4.2 m/s(ウ = 4、エ = 2)
③ e = 4.2/5.6 = 0.75(オカ = 75)
④ 上向きを正:I = 0.20×{4.2−(−5.6)} = 0.20×9.8 = 1.96 ≒ 2.0 N·s(キ = 2、ク = 0)
⑤ ΔK = (1/2)×0.20×(5.6²−4.2²) = 0.10×(31.36−17.64) = 1.372 ≒ 1.4 J(ケ = 1、コ = 4)
ポイント
• ③は e = √(0.90/1.6) = √0.5625 = 0.75 と高さの比の√でも出る — 2ルートの一致。
• ④の「9.8」は偶然ではなく 5.6+4.2:向きが変わる衝突は速さの和(A3-3 の型)。⑤で失われた 1.4 J は、mgh の差 0.20×9.8×0.70 = 1.372 J とも一致 ○。
実戦6-2
考え方 弾道振り子 — 「衝突は運動量、上昇はエネルギー」という2大保存則の分業を1問で完成させる、この章の集大成。後ろの過程(①)から前へ遡る解き順も特徴的。
実戦6-2解答を見る解答を隠す
解答
① 振れ上がり(エネルギー保存):(1/2)(M+m)V² = (M+m)gh
V = √(2×9.8×0.20) = √3.92 ≒ 2.0 m/s
② めり込み(運動量保存):mv = (M+m)V
0.050×v = 1.0×1.98 → v = 39.6 ≒ 40 m/s
③ 前:(1/2)×0.050×39.6² ≒ 39.2 J/後:(1/2)×1.0×1.98² ≒ 1.96 J
失われた量 ≒ 37 J、割合 = 37.2/39.2 ≒ 95 %
④ めり込む過程 — 運動量保存(内力のみ・一瞬)。エネルギー保存は使えない:弾丸がめり込む際、熱や変形に大きなエネルギーが逃げるから(実際 95 % が失われた)。
振れ上がる過程 — 力学的エネルギー保存(張力は仕事をしない)。運動量保存は使えない:張力・重力という外力の力積が、時間をかけて運動量を変えていくから。
ポイント
• 損失割合が M/(M+m) = 0.95 になるのは B3-3 の一般式の帰結 — 重い木片ほど「速さの情報」だけ残してエネルギーを食う。だからこの装置は弾速の測定器として機能する(K は失われても p は無傷)。
• ④の言語化がこの問題の本体 — 「どの区間でどの保存則か」を理由つきで言えれば、力学の設計思想を理解した証。
実戦6-3
考え方 B3-1 の一般解を m₂ = 2m で自分の手で再構成し、e をパラメータとして衝突の全スペクトル(はね返る/進む/合体)を眺める — 文字式の記述問題の王道。
実戦6-3解答を見る解答を隠す
解答
① 保存:mv₀ = mv₁+2mv₂/反発:v₂−v₁ = ev₀
連立して v₁ = (1−2e)v₀/3、v₂ = (1+e)v₀/3
② v₁ < 0 ⇔ 1−2e < 0 ⇔ e > 1/2
③ e = 1:v₁ = −v₀/3、v₂ = 2v₀/3
K(後)= (1/2)m(v₀/3)²+(1/2)(2m)(2v₀/3)² = mv₀²/18+8mv₀²/18 = (1/2)mv₀² = K(前)○
④ e = 0:v₁ = v₂ = v₀/3。
ΔK = (1/2)mv₀²−(1/2)(3m)(v₀/3)² = (1/2)mv₀²−mv₀²/6 = mv₀²/3
ポイント
• ②の境目 e = 1/2 は「m₁ = em₂」(B3-1 の分子)の実例 — 相手が重い(2m)ので、e が半分を超えると押し返される。
• ④は B3-3 の一般式 m₁m₂v₀²/{2(m₁+m₂)} = m×2m×v₀²/(2×3m) = mv₀²/3 と一致 ○ — はじめの K の 2/3 が失われる、e = 0 の激しさ。
第7章 円運動と慣性力
「速さが一定でも、向きが変わり続けるなら加速している」— 円運動の出発点はこの一言。等速円運動の加速度はつねに中心向きで a = v²/r。これに ma = F を当てるだけで、張力も摩擦も垂直抗力も「向心力の役」を演じ始める(向心力という新しい力があるのではない)。後半は"視点の物理" — 加速する乗り物の中では慣性力という見かけの力が現れ、回転する世界ではそれが遠心力と呼ばれる。「地上から見るか、乗り物から見るか」— 立場を決めて混ぜないことが、この章の規律。
この章の公式・要点まとめ
等速円運動の記述
• 周期 T s、回転数 n [回/s]:n = 1/T
• 角速度 ω = 2π/T = 2πn rad/s
• 速さ v = rω(円周 2πr ÷ 周期 T)
• 向心加速度 a = v²/r = rω²(向きはつねに中心向き — 速さは一定でも速度の向きが変わり続けるため)
円運動の運動方程式
• m×v²/r = F(中心向きの合力)(または mrω² = F)
• 「向心力」は合力の役割名 — 実体は張力・摩擦力・重力の成分・垂直抗力など
• 向心力は速度とつねに垂直 → 仕事をしない(等速円運動で速さが変わらない理由)
慣性力(加速度系の見かけの力)
• 加速度 a の乗り物の中の観測者には、すべての物体に大きさ ma、加速度と逆向きの力(慣性力)がはたらいて見える
• 乗り物の中では「実際の力+慣性力」でつり合い・運動を論じてよい
• 例:電車内の振り子 tanθ = a/g/エレベーター内の見かけの重力 g' = g±a
遠心力(回転系の慣性力)
• 円運動する物体と一緒に回る観測者から見た慣性力:大きさ mrω² = mv²/r、外向き
• 回る立場では「遠心力を含めた力のつり合い」/地上の立場では「向心力の運動方程式」— 答えは同じ、式の立て方だけが違う
鉛直面内の円運動(速さが変わる円運動)
• 各点で「中心向きの運動方程式」+「力学的エネルギー保存」の2本立て
• 最下点:T−mg = mv²/r/最高点:T+mg = mv²/r
• 糸がたるまない・レールから離れない条件:最高点で T ≧ 0(N ≧ 0)⇔ v² ≧ gr
• 最高点をぎりぎり回るための最下点の速さ:v₀ = √(5gr)
解法チャート(円運動)
1. 円の中心の位置を確認し、中心向きを正として力を図示
2. 等速円運動 → mv²/r(または mrω²)= 中心向きの合力
3. 鉛直面内 → その点の運動方程式+エネルギー保存の連立
4. 条件の翻訳:糸がたるまない ⇔ T ≧ 0/面から離れない ⇔ N ≧ 0/滑らない ⇔ f ≦ μN
5. 立場を宣言:地上(向心力)か、乗り物(慣性力・遠心力+つり合い)か — 混ぜたら事故
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
等速円運動をしている物体は、速さが一定なので加速度は 0 である。○か×か。
Q2
「向心力」とはどのような力か。
(a) 重力や張力と並ぶ、新しい種類の力
(b) 中心向きの合力に与えた役割の名前
(c) 遠心力の反作用
Q3
糸に球をつけて水平面内で回しているとき、糸が突然切れると、球は円の半径方向(外向き)に飛んでいく。○か×か。
Q4
カーブを曲がる電車の中で、体が外側へ押されるように感じる「遠心力」はどのような力か。
(a) 地上の観測者から見ても実在する力
(b) 電車内の観測者だけが導入する見かけの力
(c) レールが車体に及ぼす力
Q5
半径を変えずに円運動の速さを 2 倍にすると、必要な向心力は何倍になるか。
(a) 2 倍
(b) 4 倍
(c) 変わらない
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — 速度は「速さ+向き」:向きが変わり続ける = 加速している。加速度は中心向きに v²/r。「加速 = スピードアップ」という思い込みをここで完全に捨てる。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(b) — 力の図に「向心力」という矢印を描いてはいけない — 描くのは張力・重力・垂直抗力などの実在の力だけで、その中心向きの合力を mv²/r に等しいとおく。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:× — 切れた瞬間の速度は接線方向 — 慣性の法則により、球はそのまま接線方向へまっすぐ飛ぶ。「外向きに飛ぶ」ように見えるのは回転系の錯覚。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(b) — 地上から見れば「体はまっすぐ進もうとし、電車が内側へ曲がる」だけ。加速度系(電車内)に立ったときにだけ、つじつま合わせとして現れるのが慣性力・遠心力。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — F = mv²/r は v の2乗:速さ2倍で4倍。カーブの速度超過が急激に危険になる理由。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り g = 9.8 m/s²、円周率 π = 3.14 とする。
A1【周期・回転数・角速度】★
A1-1
半径 1.0 m の円周上を、物体が周期 0.50 s で等速円運動している。回転数と角速度を求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
n = 1/T = 1/0.50 = 2.0 回/s
ω = 2π/T = 2×3.14/0.50 = 12.56 ≒ 13 rad/s
ポイント ω は「1 秒あたり何ラジアン回るか」— 1 周 = 2π rad を T 秒で。T・n・ω は互いに換算できる3つの顔(どれか1つ分かれば全部出る)。
A1-2(類題)
毎秒 3.0 回転している物体の、周期と角速度を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 1/n = 1/3.0 = 0.333 ≒ 0.33 s
ω = 2πn = 2×3.14×3.0 = 18.84 ≒ 19 rad/s
ポイント モーターの「回転数」表示から ω へ:ω = 2πn の直行便が実用的。rad は角度の自然単位(無次元)なので、ω の単位は実質 1/s。
A1-3(類題)
時計の秒針の角速度を求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 60 s より ω = 2π/60 = 0.1047 ≒ 0.10 rad/s
ポイント 身近な回転の ω を見積もる感覚 — 秒針 0.10、分針はその 1/60、地球の自転は 7.3×10⁻⁵ rad/s(B4-3 へ)。
A2【v = rω と向心加速度】★
A2-1
半径 2.0 m の円周上を角速度 3.0 rad/s で等速円運動する物体の、速さと向心加速度を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
v = rω = 2.0×3.0 = 6.0 m/s
a = rω² = 2.0×3.0² = 18 m/s²(中心向き)
ポイント a は rω² と v²/r の2つの顔(v = rω でつながっている)— ω が与えられたら rω²、v が与えられたら v²/r と、持ち駒で選ぶ。向き(中心向き)まで書いて完答。
A2-2(類題)
半径 0.50 m の円周上を速さ 2.0 m/s で回る物体の、角速度と向心加速度を求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
ω = v/r = 2.0/0.50 = 4.0 rad/s
a = v²/r = 2.0²/0.50 = 8.0 m/s²(中心向き)
ポイント v = rω の逆算。同じ v でも半径が小さいほど a は大きい(急カーブほど激しい)— a = v²/r の r が分母にいる意味。
A2-3(類題)
自動車が半径 50 m のカーブを速さ 20 m/s で曲がっている。向心加速度を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
a = v²/r = 20²/50 = 8.0 m/s²(中心向き)
ポイント 重力加速度に迫る大きさ — 時速 72 km でこのカーブは「横向きに 0.8 G」の世界。数値に現実の感覚を対応させる訓練。
A3【向心力の計算】★★
A3-1
質量 0.20 kg の物体が、半径 0.50 m の円周上を速さ 3.0 m/s で等速円運動している。向心力の大きさを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
F = mv²/r = 0.20×3.0²/0.50 = 3.6 N
ポイント 円運動の運動方程式 mv²/r = F — 左辺が「必要量」、右辺が実在の力(張力など)の中心成分。この 3.6 N を「何が」担うかが次テーマ以降の主題。
A3-2(類題)
質量 2.0 kg の物体が、半径 1.5 m、角速度 4.0 rad/s で等速円運動している。向心力の大きさを求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = mrω² = 2.0×1.5×4.0² = 48 N
ポイント ω 版の mrω²。単位:kg×m×(1/s)² = kg·m/s² = N ○ — 次元チェックが公式の形を保証してくれる。
A3-3(類題)
なめらかな水平面上で、質量 0.50 kg の物体を長さ 0.40 m の糸で等速円運動させる。糸は 20 N までの張力に耐えられる。回せる最大の速さを求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
張力が向心力:mv²/r = T
0.50×v²/0.40 = 20 → v² = 16 → v = 4.0 m/s
ポイント 「切れる限界 = 張力が最大値」(第4章 A3-3 の円運動版)。v² で効くので、速さを少し上げただけで張力は急増する — ハンマー投げの緊張感。
A4【水平面内の円運動(糸・摩擦・カーブ)】★★
A4-1
なめらかな水平面上で、質量 0.30 kg の物体を長さ 0.80 m の糸につけ、速さ 4.0 m/s で等速円運動させた。糸の張力を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:中心向きの力は張力のみ(重力と垂直抗力は鉛直でつり合い)。
T = mv²/r = 0.30×4.0²/0.80 = 6.0 N
ポイント 水平面内の円運動は「鉛直はつり合い、水平(中心向き)は運動方程式」の2階建て — 鉛直方向を1行書いてから本題へ、が作法。
A4-2(類題)
回転する水平な円板の、中心から 0.50 m の位置に物体を置いた。物体と円板の間の静止摩擦係数を 0.50 とする。物体が滑らずに一緒に回れる角速度の最大値を求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
向心力を担うのは静止摩擦力。滑る直前:μmg = mrω²
ω² = μg/r = 0.50×9.8/0.50 = 9.8 → ω = 3.13 ≒ 3.1 rad/s
ポイント 摩擦力が中心向きにはたらく(物体が外へ滑ろうとするのを引き留める)— 摩擦が向心力を演じる代表例。m が消えるので、重くても軽くても限界は同じ。
A4-3(類題)
自動車が、水平な道路の半径 45 m のカーブを曲がる。タイヤと路面の間の静止摩擦係数を 0.50 とするとき、曲がりきれる最大の速さを求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
μmg = mv²/r → v² = μgr = 0.50×9.8×45 = 220.5
v ≒ 15 m/s(約 54 km/h)
ポイント 車がカーブを曲がれるのは摩擦のおかげ(第4章 B6-2 の親戚)。雨で μ が半分になれば限界速度は 1/√2 倍 — 「濡れた道でスピードを落とす」の定量的根拠。
A5【円錐振り子】★★★
A5-1
長さ 0.40 m の糸の先に質量 0.10 kg の小球をつけ、糸が鉛直と 60° の角をなすように水平面内で等速円運動させた(円錐振り子)。
① 糸の張力を求めよ。
② 角速度を求めよ。
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解答
図示:小球に重力 mg(下)と張力 T(糸の方向)。鉛直はつり合い、水平(中心向き)は運動方程式。
① 鉛直:Tcos60° = mg → T = 0.10×9.8/0.50 = 1.96 ≒ 2.0 N
② 半径 r = Lsin60°。水平:Tsin60° = mrω² より
mg tan60° = m(Lsin60°)ω² → ω² = g/(Lcos60°) = 9.8/0.20 = 49
ω = 7.0 rad/s
ポイント 円錐振り子は「鉛直つり合い+水平 mrω²」の代表格。整理すると ω² = g/(Lcosθ) — 半径 r でなく「高さ Lcosθ」だけで決まる、が結論の美点。
A5-2(類題)
長さ 0.90 m の糸に質量 0.20 kg の小球をつけ、鉛直と 30° をなす円錐振り子として回した。張力と角速度を求めよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = mg/cos30° = 1.96×2/1.73 = 2.26 ≒ 2.3 N
ω² = g/(Lcos30°) = 9.8/(0.90×0.865) = 9.8/0.779 = 12.6 → ω ≒ 3.5 rad/s
ポイント 角が小さいほど T は mg に近く、ω は小さい(ゆっくり)— 速く回すほど糸が持ち上がる(θ 増)という日常の観察が、ω² = g/(Lcosθ) の増加関数性そのもの。
A5-3(類題)
長さ 0.20 m の糸の円錐振り子を、鉛直と 60° をなすように回す。周期を求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
周期 T = 2π/ω = 2π√(Lcosθ/g) = 2×3.14×√(0.10/9.8)
= 6.28×0.101 = 0.634 ≒ 0.63 s
ポイント 周期の公式 2π√(Lcosθ/g) — 中の √(高さ/g) という形は、次章の単振り子 2π√(L/g) の予告編。質量 m が消えることも確認。
A6【慣性力(直線加速する乗り物)】★★
A6-1
電車が水平な線路を 2.0 m/s² で加速している。電車内に立つ質量 50 kg の人が受ける(電車内の観測者が考える)慣性力の大きさと向きを求めよ。
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解答
慣性力 = ma = 50×2.0 = 1.0×10² N、加速の向きと逆(進行方向の後ろ向き)
ポイント 慣性力は「乗り物の中に立った瞬間に発生する見かけの力」— 大きさ ma、向きは加速度の逆。発車で後ろへよろける体感の正体。
A6-2(類題)
一定の加速度 2.45 m/s² で加速する電車の天井から、糸で小球をつるした。電車内から見て糸が鉛直となす角 θ について、tanθ の値を求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
電車内では、重力 mg(下)と慣性力 ma(後ろ)と張力のつり合い。
tanθ = ma/mg = a/g = 2.45/9.8 = 0.25
ポイント 第4章 B6-3 と同じ答えを「車内のつり合い」で再現 — 地上(運動方程式)でも車内(慣性力+つり合い)でも物理は同じ。車内の方が式が「静力学」になって楽なことが多い。
A6-3(類題)
上向きに 1.2 m/s² で加速するエレベーターの天井から、ばねはかりで質量 0.50 kg のおもりをつるした。エレベーター内の観測者の立場(慣性力)で、ばねはかりの読みを求めよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
エレベーター内では、下向きの慣性力 ma が加わり、見かけの重力加速度は g' = g+a = 11 m/s²。
読み = mg' = 0.50×11 = 5.5 N
ポイント 「見かけの重力 g±a」という読み替えが慣性力の実用形 — 第4章 A10-3 の運動方程式と同じ答えに、つり合いだけで到達する。
A7【遠心力(回転系)】★★
A7-1
半径 0.40 m、角速度 5.0 rad/s で回転する円板の上の物体(質量 0.20 kg)が、円板と一緒に回っている。物体と一緒に回る観測者から見た遠心力の大きさを求めよ。また、この観測者から見て物体が静止している理由を述べよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
遠心力 = mrω² = 0.20×0.40×5.0² = 2.0 N(外向き)
回る観測者から見ると、外向きの遠心力 2.0 N と中心向きの静止摩擦力 2.0 N がつり合って静止している。
ポイント 地上:「摩擦力が向心力(mrω²)」/回転系:「摩擦力と遠心力がつり合い」— 同じ 2.0 N を2つの文法で語る。どちらか一方の立場で最後まで書き切ること。
A7-2(類題)
A5-1 の円錐振り子(θ = 60°、ω = 7.0 rad/s、r = Lsin60°)を、小球と一緒に回る観測者の立場で考える。重力・張力・遠心力の3力のつり合いから tan60° = rω²/g が成り立つことを数値で確かめよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
r = 0.40×sin60° = 0.40×1.73/2 = 0.346 m
rω²/g = 0.346×49/9.8 = 1.73 = tan60° ○(成立)
ポイント 回転系では円錐振り子は「ただの3力のつり合い」(第3章 B1-1 と同じ図で、水平の力が遠心力に変わっただけ)。2つの立場の答えの一致は、慣性力という道具の健全性の証明。
A7-3(類題)
洗濯機の脱水槽(半径 0.25 m)が毎秒 15 回転している。槽の壁にはりついた衣類にはたらく遠心力は、重力の約何倍か。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
ω = 2πn = 2×3.14×15 = 94.2 rad/s
遠心力/重力 = rω²/g = 0.25×94.2²/9.8 = 0.25×8874/9.8 ≒ 226
約 2.3×10² 倍
ポイント 「230 G」の世界 — 水滴は重力の数百倍の"見かけの重力"で外へ絞り出される。遠心分離機・遠心力の応用は rω² が ω の2乗で稼ぐ(高速回転の威力)ことに尽きる。
A8【鉛直面内の円運動】★★★
A8-1
長さ 0.50 m の軽い糸の先に質量 0.20 kg の小球をつけ、鉛直面内で円運動させた。最下点を速さ 3.5 m/s で通過する瞬間の、糸の張力を求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:最下点では張力 T(上 = 中心向き)、重力 mg(下)。中心向きを正:
mv²/r = T−mg
T = m(g+v²/r) = 0.20×(9.8+3.5²/0.50) = 0.20×(9.8+24.5) = 6.86 ≒ 6.9 N
ポイント 最下点の張力は mg より大きい(重力を支えた上で、さらに向心力ぶんを引く)— ブランコの最下点でずしりと重くなる感覚。
A8-2(類題)
A8-1 と同じ装置で、小球が最高点を速さ 3.5 m/s で通過する瞬間の張力を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
最高点では張力 T も重力 mg も下向き = 中心向き:
mv²/r = T+mg
T = m(v²/r−g) = 0.20×(24.5−9.8) = 2.94 ≒ 2.9 N
ポイント 最高点では重力が向心力を手伝うので張力は軽い。同じ速さなら T(下)−T(上)= 2mg — 最下点と最高点の張力差は必ず重力2つ分以上になる(実際は速さも違うので差はさらに開く:B5)。
A8-3(類題)
長さ 0.40 m の糸の先の小球を鉛直面内で回す。最高点で糸がたるまないための、最高点での速さの最小値を求めよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
たるむ直前:T = 0。このとき重力だけが向心力:
mg = mv²/r → v² = gr = 9.8×0.40 = 3.92
v ≒ 2.0 m/s
ポイント 「たるまない ⇔ T ≧ 0」の翻訳(第3章・第4章の「限界 = 等号」の系譜)。限界では重力がちょうど全部の向心力 — √(gr) は鉛直円運動の合言葉。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。立場(地上か回転系か)を宣言してから立式するのが作法。B5(鉛直面内)とB6(面から離れる条件)が入試の最頻出。
B1【円運動の基礎式の導出】★★
B1-1 半径 r、角速度 ω の等速円運動について、速さが v = rω となることを、円周と周期の関係から導け。
B1-2 等速円運動の速度ベクトルは、微小時間 Δt の間に角 Δθ = ωΔt だけ向きを変える。速度ベクトルの変化の大きさが |Δv| ≒ vΔθ とみなせることを用いて、加速度の大きさが a = vω = v²/r となることを導け。
B1-3 等速円運動において、向心力が物体にする仕事が 0 であることを説明せよ。また、それが「等速」であることとどう整合するかを述べよ。
B2【水平円運動の応用(文字)】★★★
B2-1 長さ L の糸の先の質量 m の小球を、糸が鉛直と角 θ をなす円錐振り子として回す。張力 T、角速度 ω、周期を求めよ。
B2-2 回転する水平な円板の中心から r の位置に質量 m の物体を置く。円板との静止摩擦係数を μ とするとき、物体が滑らずに回れる角速度の最大値を求めよ。
B2-3
自動車が半径 r のカーブを速さ v で曲がる。
① 水平な道路(静止摩擦係数 μ)で曲がりきれる条件を求めよ。
② 路面が内側に角 θ 傾いたバンクで、摩擦にたよらずに曲がれる速さ v を求めよ(なめらかとする)。
B3【慣性力(文字)】★★★
B3-1 一定の加速度 a で水平に走る電車の天井から、糸で質量 m の小球をつるす。電車内の観測者の立場(慣性力)で、糸が鉛直となす角 θ と張力 T を求めよ。
B3-2 上向きに加速度 a で上昇するエレベーターの中で、床から高さ h の位置から小球を静かにはなした。エレベーター内の観測者から見て、小球が床に達するまでの時間を求めよ。
B3-3 一定の加速度 a で走る電車の中で、天井から小球を静かにはなした。電車内の観測者から見て、小球はどの向きに、どんな運動をして落ちるか述べよ。
B4【遠心力の応用(文字)】★★★
B4-1 B2-2 の問題(回転円板上の物体)を、物体と一緒に回る観測者の立場(遠心力)で解き直し、同じ結論になることを確かめよ。
B4-2 円錐振り子(B2-1)を回転系で考え、重力・張力・遠心力のつり合いから tanθ = rω²/g を導き、B2-1 の結果と一致することを確かめよ。
B4-3 地球(半径 R)は周期 T で自転している。赤道上の物体の見かけの重力加速度 g' を、g、R、T で表せ。また R = 6.4×10⁶ m、T = 8.6×10⁴ s として、g との差 Rω² の値を見積もれ。
B5【鉛直面内の円運動(文字)】★★★
B5-1 長さ r の軽い糸の先の質量 m の小球が、最下点を速さ v₀ で通過した。糸が鉛直(下向き)と角 θ をなす位置での、小球の速さ v と糸の張力 T を求めよ。
B5-2 B5-1 の小球が最高点を通過して1回転するために必要な、v₀ の最小値を求めよ。
B5-3 糸のかわりに軽い棒の先に小球をつけて鉛直面内で回す場合、1回転するために必要な最下点の速さの最小値を求めよ。また、糸の場合との違いの理由を述べよ。
B6【面から離れる・その他の総合】★★★
B6-1 半径 r のなめらかな半球面の頂上に置いた質量 m の小球が、静かに滑り出した。頂上から測った角 θ の位置での垂直抗力 N を求めよ。また、小球が面から離れる位置の cosθ を求めよ。
B6-2 鉛直面内の半径 r の円形レール(ループ)を、内側に沿って小球が回る。ループの最高点をぎりぎり通過するために必要な、①最高点での速さ、②ループ最下点での速さ、③最下点から測った、静かにはなすスタート地点の高さ h(レールはなめらか)を求めよ。
B6-3 水の入ったバケツを、鉛直面内で半径 r の円を描くように回す。最高点で水がこぼれないための、最高点での速さの条件を求めよ。また、等速で回すとして、回転の周期の条件に直せ。
B問題 解答・解説
B1【円運動の基礎式の導出】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
1 周の道のりは円周 2πr、かかる時間は周期 T。
v = 2πr/T。ここで ω = 2π/T だから v = rω ∎
ポイント 「弧の長さ = 半径 × 角(rad)」を時間で割っただけ — rad という単位が v = rω をこの単純さにしている(度のままなら換算係数まみれ)。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
速さは v のまま向きだけ Δθ 変わるので、速度ベクトルの変化は、半径 v・中心角 Δθ の弧の長さで近似できて
|Δv| ≒ vΔθ = vωΔt
a = |Δv|/Δt = vω = (rω)ω = rω² = v²/r ∎
ポイント 「速度ベクトルの先端も円を描く」— 位置の円運動(半径 r、速さ v)と相似な"速度の円運動"(半径 v、速さ a)。この見方ができれば a = vω は暗記でなく風景になる。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
向心力はつねに中心向き、速度はつねに接線方向で、両者はつねに垂直。
仕事 W = Fxcosθ で θ = 90° だから W = 0 ∎
仕事が 0 なら運動エネルギーは変化しない(第5章)— よって速さは一定のまま:「等速」円運動であることと整合する。
ポイント 「向きだけ変えて速さを変えない」のが垂直な力の役割 — 第5章 B6-2(張力・垂直抗力)と同じ論法が、円運動の「等速」の保証書になる。
B2【水平円運動の応用(文字)】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
鉛直:Tcosθ = mg → T = mg/cosθ
水平(半径 r = Lsinθ):Tsinθ = mrω² → mgtanθ = mLsinθ·ω²
ω = √{g/(Lcosθ)}、周期 = 2π√(Lcosθ/g)
ポイント 答えに入るのは L でも r でもなく Lcosθ(振り子の"高さ") — 同じ高さの円錐振り子は角度によらず同じ周期で回る、という隠れた美しい定理。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
向心力を担うのは静止摩擦力。滑る直前で f = μN = μmg:
mrω² ≦ μmg → ω ≦ √(μg/r)
ポイント m が消える(限界は質量によらない)。r が大きいほど限界 ω は小さい — 回転円板の外側ほど先に滑る(メリーゴーラウンドの端の危うさ)。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
① 摩擦が向心力:mv²/r ≦ μmg → v ≦ √(μgr)
② バンクでは垂直抗力 N の水平成分が向心力:
水平:Nsinθ = mv²/r/鉛直:Ncosθ = mg
割って tanθ = v²/(gr) → v = √(gr tanθ)
ポイント ②は摩擦ゼロでも曲がれる「設計解」— 高速道路・競技場のカーブが傾いている理由。第3章 B1-3(斜面を水平力で支える)と同じ図で、水平力の役が mv²/r に変わっただけ。
B3【慣性力(文字)】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
電車内では、小球に重力 mg(下)・慣性力 ma(後ろ)・張力 T の3力がつり合う。
水平:Tsinθ = ma/鉛直:Tcosθ = mg
tanθ = a/g、T = m√(a²+g²)
ポイント 第4章 B6-3(地上・運動方程式)と同じ答え — 慣性力を入れると動力学が静力学に化けるのが最大の御利益。√(a²+g²) は「見かけの重力の大きさ」。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
エレベーター内の見かけの重力加速度は g' = g+a(下向き)。
内から見れば「加速度 g' の自由落下」:
h = (1/2)g't² → t = √{2h/(g+a)}
ポイント 「g を g+a に置き換えるだけで、第2章の落体の公式が全部使える」— 慣性力は公式の再利用装置。a → 0 で通常の √(2h/g) ○、a = −g(自由落下)で t → ∞(浮いたまま:無重量)○。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
車内では、重力 mg(下)と慣性力 ma(後ろ)の合力 — 鉛直から後方に tanφ = a/g 傾いた「見かけの重力」m√(a²+g²) — だけを受ける。
初速 0 だから、小球はその傾いた向きにまっすぐ、等加速度で落ちる(車内から見た"斜めの自由落下")。
ポイント 「見かけの重力の向きに世界が傾く」— 振り子(B3-1)が傾いて止まる向きと、物が落ちる向きが同じであることに気づけば、加速度系の世界観が1枚の絵になる。
B4【遠心力の応用(文字)】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
回転系では、物体は静止して見え、外向きの遠心力 mrω² と中心向きの静止摩擦力 f がつり合う:
f = mrω²
滑らない条件 f ≦ μmg より mrω² ≦ μmg → ω ≦ √(μg/r)(B2-2 と一致 ○)
ポイント 運動方程式(地上)とつり合い(回転系)— 式は同じ1本に帰着する。検算にもう一方の立場を使う、という二刀流が円運動の安全運転。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
回転系での3力のつり合い:
水平:Tsinθ = mrω²(遠心力と張力の水平成分)
鉛直:Tcosθ = mg
割って tanθ = rω²/g → r = Lsinθ を代入して ω² = g/(Lcosθ)(B2-1 と一致 ○)
ポイント A7-2 の数値確認の一般化。第3章の「角度のあるつり合い」(B1)に遠心力を1本足すだけ — 静力学の技術がそのまま円運動に輸出できる。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
赤道上の物体は半径 R、角速度 ω = 2π/T の円運動をしている。回転系(地表)では外向きの遠心力 mRω² がはたらき、見かけの重力は
g' = g−Rω² = g−4π²R/T²
数値:ω = 2π/(8.6×10⁴) ≒ 7.3×10⁻⁵ rad/s
Rω² = 6.4×10⁶×(7.3×10⁻⁵)² ≒ 3.4×10⁻² m/s²(g の約 0.3 %)
ポイント 体重計の読みは赤道でわずかに軽い — 遠心力は日常に実在する(見かけの)効果。もし自転が約 17 倍速ければ Rω² = g:赤道の物は浮く(その周期が第8章・万有引力の「地表すれすれの人工衛星」につながる)。
B5【鉛直面内の円運動(文字)】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
最下点から角 θ の位置の高さは r(1−cosθ)(第5章 B2-2)。
エネルギー保存:(1/2)mv₀² = (1/2)mv²+mgr(1−cosθ)
v² = v₀²−2gr(1−cosθ)
中心向きの運動方程式:T−mgcosθ = mv²/r
T = m{v₀²/r+g(3cosθ−2)}
ポイント 「その場の運動方程式+区間のエネルギー保存」— 鉛直円運動の2本柱を1問に凝縮した基本形。θ = 0 で T = m(v₀²/r+g)(A8-1)○、cosθ の係数 3g は「エネルギー由来の 2g+力の分解由来の g」の合算。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
最高点(θ = 180°)で糸がたるまない条件:T ≧ 0。
B5-1 の式に cosθ = −1 を代入:
T = m{v₀²/r−5g} ≧ 0 → v₀ ≧ √(5gr)
(最高点での速さは v² = v₀²−4gr ≧ gr — 「最高点で v² ≧ gr」と同じこと)
ポイント √(5gr) は鉛直円運動の代名詞 — 内訳は「最高点に登る 4gr+最高点で回り続ける gr」。数字の 5 を暗記するのでなく、この分解で再構成できるように。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
棒は押す力も出せるので、最高点で T < 0(棒が支える)でもよく、条件は「最高点で v ≧ 0」だけ:
(1/2)mv₀² ≧ mg×2r → v₀ ≧ 2√(gr)
糸は引くことしかできない(T ≧ 0 が必須)ため √(5gr) が必要 — 道具の力学的性質(引く専用か、押し引き両用か)が条件式を変える。
ポイント √(5gr) ≒ 2.24√(gr) > 2√(gr):糸の方が厳しい。「糸・レール(内側)は T, N ≧ 0」「棒・溝つきレールは v ≧ 0」— 条件の翻訳表として整理。
B6【面から離れる・その他の総合】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
頂上から角 θ の位置:高さは r(1−cosθ) 下がる。
エネルギー保存:(1/2)mv² = mgr(1−cosθ) → v² = 2gr(1−cosθ)
中心向き(中心は球の中心、mgcosθ が中心向き、N が外向き):
mgcosθ−N = mv²/r
N = mg(3cosθ−2)
離れる条件 N = 0:cosθ = 2/3
ポイント 「面から離れる ⇔ N = 0」— 半球の名問。答え cosθ = 2/3 は半径・質量・g によらない普遍の角(約 48°)。離れた後は放物運動(第2章)へバトンタッチ、という続きも描ける。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
① 最高点ぎりぎり:N = 0 で重力が全向心力:mg = mv²/r → v = √(gr)
② エネルギー保存(最下点 ⇔ 最高点、高低差 2r):
(1/2)mv₀² = (1/2)m(gr)+mg×2r → v₀² = 5gr → v₀ = √(5gr)
③ スタート(静止、高さ h)⇔ 最下点:mgh = (1/2)m×5gr → h = 5r/2
ポイント ジェットコースターのループの設計式 — 「ループの高さ 2r より半径1つ半だけ高く(5r/2)」からはなす必要がある。①→②→③と条件が数珠つなぎになる、この章の集大成。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
最高点で水がこぼれない ⇔ バケツの底が水を押している(N ≧ 0)⇔ 重力だけで足りる円運動より速い:
mg ≦ mv²/r → v ≧ √(gr)
等速円運動とみなすと v = 2πr/T だから
2πr/T ≧ √(gr) → T ≦ 2π√(r/g)
ポイント r = 1 m なら T ≦ 2.0 s — 「1周2秒より速く回せばこぼれない」という体で覚えている感覚の定量化。水に注目すれば B6-2 ①と同じ式(こぼれる = 面から離れる)。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦7-1【共テ形式:回転円板の上の物体】★★
水平な円板の中心から 0.20 m の位置に、質量 0.10 kg の物体を置き、円板の回転を静かに速くしていく。物体と円板の間の静止摩擦係数を 0.50、g = 9.8 m/s² とする。
① 角速度が 4.0 rad/s のとき、物体に必要な向心力は [ア].[イウ] N であり、これを担うのは静止摩擦力である。
② 最大静止摩擦力は [エ].[オカ] N である。
③ 物体が滑り出すときの角速度は [キ].[ク] rad/s である。
④ 滑り出す直前、物体と一緒に回る観測者から見た物体の力の状態として正しいものは [ケ] である。
(a) 中心向きの向心力だけがはたらいている
(b) 外向きの遠心力と中心向きの摩擦力がつり合っている
(c) 力は何もはたらいていない
⑤ 物体を中心から 0.40 m の位置に置き直すと、滑り出す角速度は 0.20 m のときの [コ] になる。
(a) √2 倍
(b) 1/√2 倍
(c) 1/2 倍
実戦7-2【記述形式:円錐振り子の完全解】★★★
長さ L の軽い糸の先に質量 m の小球をつけ、糸が鉛直と角 θ をなすように水平面内で等速円運動させた。重力加速度を g とする。
① 円運動の半径 r を求めよ。
② 糸の張力 T を求めよ。
③ 角速度 ω を求めよ。
④ 回転の周期を求めよ。
⑤ L = 0.40 m、θ = 60°、m = 0.10 kg のとき、T、ω、周期の値を求めよ(π = 3.14)。
実戦7-3【記述形式:鉛直面内の円運動の総合】★★★
長さ r の軽い糸の一端を固定し、他端の質量 m の小球に、最下点で水平に速さ v₀ を与えた。重力加速度を g とする。
① 最下点を通過した直後の糸の張力を求めよ。
② 糸が鉛直(下向き)と角 θ をなす位置での小球の速さ v を求めよ。
③ その位置での糸の張力 T を求めよ。
④ 小球が最高点を通過して1回転するための v₀ の条件を求めよ。
⑤ v₀ = √(3gr) のとき、糸がたるむ位置の cosθ の値を求めよ。
実戦問題 解答・解説
実戦7-1
考え方 「必要な向心力(mrω²)」と「供給できる力(摩擦、上限 μmg)」の需給で読む — 回転を速めると需要だけが ω² で増え、供給の上限を超えた瞬間に滑る。④⑤で立場の切り替えとスケーリングを確認する共テ構成。
実戦7-1解答を見る解答を隠す
解答
① mrω² = 0.10×0.20×4.0² = 0.32 N(ア = 0、イウ = 32)
② μmg = 0.50×0.10×9.8 = 0.49 N(エ = 0、オカ = 49)
③ mrω² = μmg → ω = √(μg/r) = √(0.50×9.8/0.20) = √24.5 ≒ 4.9 rad/s(キ = 4、ク = 9)
④ 回転系では遠心力と摩擦のつり合い:(b)(ケ = (b))
⑤ ω_max = √(μg/r) ∝ 1/√r:半径2倍で 1/√2 倍:(b)(コ = (b))
ポイント
• ①の摩擦力は 0.32 N であって 0.49 N ではない — 静止摩擦は必要なだけ(第3章 A5)の円運動版。
• ⑤のように「式の形(∝ 1/√r)で即答」するのが共テの時間術 — 数値を再計算するより構造で読む。
実戦7-2
考え方 円錐振り子のフルコース(B2-1)を、①〜④の誘導で自力再構成 → ⑤で数値化。鉛直つり合いと水平の運動方程式、2本の式の役割分担を答案の形で残す練習。
実戦7-2解答を見る解答を隠す
解答
① r = Lsinθ
② 鉛直方向のつり合い:Tcosθ = mg → T = mg/cosθ
③ 水平方向(中心向き)の運動方程式:Tsinθ = mrω²
mgtanθ = mLsinθ·ω² → ω = √{g/(Lcosθ)}
④ 周期 = 2π/ω = 2π√(Lcosθ/g)
⑤ T = 0.10×9.8/0.50 = 1.96 ≒ 2.0 N
ω = √(9.8/0.20) = √49 = 7.0 rad/s
周期 = 2π/7.0 = 0.897 ≒ 0.90 s
ポイント
• ③で sinθ が両辺から消える整理(tanθ×→ Lsinθ)を丁寧に — ここが円錐振り子の計算の芯。
• ⑤の検算:1 秒間に 7.0 rad ≒ 1.1 回転 → 周期 0.9 s ○ — 数値どうしの整合を見る癖が事故を防ぐ。
実戦7-3
考え方 B5 の完全再構成。「その場の運動方程式(①③)」と「区間のエネルギー保存(②)」の2本柱を組み上げ、④で限界条件、⑤で「たるむ位置」— 鉛直円運動で問われうる全要素を1本のストーリーに。
実戦7-3解答を見る解答を隠す
解答
① 中心向き:T₀−mg = mv₀²/r → T₀ = m(g+v₀²/r)
② エネルギー保存(高低差 r(1−cosθ)):
(1/2)mv₀² = (1/2)mv²+mgr(1−cosθ) → v = √{v₀²−2gr(1−cosθ)}
③ 中心向き:T−mgcosθ = mv²/r
T = m{v₀²/r+g(3cosθ−2)}
④ 最高点(cosθ = −1)で T ≧ 0:
m(v₀²/r−5g) ≧ 0 → v₀ ≧ √(5gr)
⑤ v₀² = 3gr を③に代入し、T = 0:
3g+g(3cosθ−2) = 0 → g(1+3cosθ) = 0 → cosθ = −1/3
ポイント
• ⑤の cosθ = −1/3(θ ≒ 109°)— 糸は真横(90°)を過ぎた上側でたるむ:√(3gr) は横までは十分(v² = gr > 0)だが最高点には足りない、という④との整合。たるんだ後の小球は放物運動(第2章)へ — 章と章がリレーする終幕。
• ①〜⑤を通じて m は一度も答えから消えない(張力)/条件(④⑤)からは消える — 「何が質量によるか」を見届けるのも文字式の読解。
第8章 単振動と万有引力
力学の最終章は、2つの「宇宙的な運動」— ゆれ(単振動)とめぐり(万有引力)。単振動の合言葉は F = −Kx(復元力):中心に引き戻す力が変位に比例するとき、周期 T = 2π√(m/K) の振動が生まれる — ばねも振り子も、この1つの型の変奏にすぎない。万有引力では GM = gR² を鍵に、人工衛星・宇宙速度・ケプラーの法則まで、地上の力学がそのまま天へ伸びていく。実は単振動は「等速円運動(第7章)の影」— 前章と本章は1つの円でつながっている。
この章の公式・要点まとめ
単振動の記述(単振動 = 等速円運動を真横から見た影)
• 変位 x = A sinωt(A:振幅、ω:角振動数)、周期 T = 2π/ω、振動数 f = 1/T
• 速度の最大値 v_max = Aω(振動の中心で)/端(x = ±A)で v = 0
• 加速度 a = −ω²x(端で最大 Aω²、中心で 0。つねに中心向き)
単振動の条件と周期
• F = −Kx(復元力:変位に比例、中心向き)ならば単振動
• ma = −Kx より ω = √(K/m)、T = 2π√(m/K)
• ばね振り子:K = k → T = 2π√(m/k)(水平でも鉛直でも同じ — 重力は中心の位置をずらすだけ)
• 単振り子:T = 2π√(L/g)(振幅が小さいとき。質量にも振幅にもよらない = 等時性)
単振動のエネルギー
• (1/2)kx²+(1/2)mv² = (1/2)kA² = (1/2)mv_max² = 一定
• 中心:運動エネルギーが全額/端:ばねのエネルギーが全額
万有引力
• F = GMm/r²(G = 6.7×10⁻¹¹ N·m²/kg²。r は中心間距離)
• 地表:mg = GMm/R² → GM = gR²(G・M を知らずとも gR² で置換 — 最重要の橋)
• 位置エネルギー:U = −GMm/r(無限遠を基準。負の値)
• 力学的エネルギー:E = (1/2)mv²−GMm/r
人工衛星・宇宙速度
• 円軌道:GMm/r² = mv²/r → v = √(GM/r)(高い軌道ほど遅い)
• 第一宇宙速度 v₁ = √(gR) ≒ 7.9 km/s(地表すれすれの円軌道)
• 第二宇宙速度 v₂ = √(2gR) = √2 v₁ ≒ 11 km/s(無限遠へ脱出:E ≧ 0)
ケプラーの法則(惑星・衛星に共通)
• 第1法則:軌道は楕円(太陽は焦点の1つ)
• 第2法則:面積速度一定(近いところで速い:r₁v₁ = r₂v₂ — 近日点・遠日点)
• 第3法則:T²/a³ = 一定(a:半長軸。円軌道なら a = r)
解法チャート(単振動)
1. 力のつり合いの位置を探す — そこが振動の中心
2. 中心からの変位 x で合力を書き、F = −Kx の形を確認して K を読む
3. ω = √(K/m) → 周期・最大速度(v_max = Aω)
4. 途中の速さはエネルギー保存/時刻の問いは「円運動の影」で1周期の何分の1かを読む
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
単振動する物体の速さが最大になるのはどこか。
(a) 振動の端
(b) 振動の中心
(c) どこでも一定
Q2
単振動の加速度の大きさは、振動の中心で最大になる。○か×か。
Q3
単振り子の周期を長くする方法として正しいものはどれか。
(a) おもりを重いものに替える
(b) 糸を長くする
(c) 振幅を大きくする
Q4
万有引力による位置エネルギー(無限遠を基準)は、負の値をとる。○か×か。
Q5
地球を回る人工衛星の中が無重量状態になる理由として正しいものはどれか。
(a) 地球から離れていて、重力がはたらいていないから
(b) 重力がすべて向心力に使われ、衛星も中の人も同じ加速度で「落ち続けて」いるから
(c) 宇宙空間には空気がないから
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:(b) — 端で止まり(v = 0)、中心へ加速し続けて中心で最速。ブランコの最下点が一番速いのと同じ。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:× — a = −ω²x:加速度は変位に比例するので、端で最大・中心で 0。「速さ最大の場所」と「加速度最大の場所」が正反対 — 単振動の指紋。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:(b) — T = 2π√(L/g):L だけが効く。質量にも(小さい)振幅にもよらない — 等時性(ガリレオの発見、振り子時計の原理)。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:○ — 無限遠(U = 0)から近づくとき万有引力が正の仕事をする → U は 0 から減って負に。「重力の井戸の深さ」を負の数で測っている。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — 高度 400 km でも重力は地表の約 9 割ある。支えなしに共に落ち続ける(第4章 A10-3 のワイヤの切れたエレベーターと同じ状態)から浮くのであって、重力が消えたのではない。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り g = 9.8 m/s²、円周率 π = 3.14 とする。
A1【単振動の基本量】★
A1-1
振幅 0.20 m、周期 0.50 s の単振動がある。振動数と角振動数を求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
f = 1/T = 1/0.50 = 2.0 Hz
ω = 2π/T = 2×3.14/0.50 = 12.56 ≒ 13 rad/s
ポイント T・f・ω の換算は円運動(第7章 A1)とまったく同じ — 単振動は円運動の影なので、時間の言葉を共有している。
A1-2(類題)
変位が x = 0.10 sin(5.0t) mで表される単振動の、振幅・角振動数・周期を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
振幅 0.10 m、ω = 5.0 rad/s
T = 2π/ω = 6.28/5.0 = 1.256 ≒ 1.3 s
ポイント 式 x = A sinωt から係数を読むだけ — sin の中の「t の係数」が ω。式とグラフと数値を行き来できることが単振動の読み書き能力。
A1-3(類題)
振幅 0.20 m、角振動数 10 rad/s の単振動の、速さの最大値と加速度の最大値を求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
v_max = Aω = 0.20×10 = 2.0 m/s(振動の中心で)
a_max = Aω² = 0.20×10² = 20 m/s²(振動の端で)
ポイント v_max = Aω、a_max = Aω² — 円運動の v = rω、a = rω² の影(半径 A の円の速さ・加速度がそのまま最大値)。「どこで最大か」まで添えて完答。
A2【ばね振り子(水平)】★★
A2-1
ばね定数 20 N/m のばねに質量 0.80 kg の物体をつけ、なめらかな水平面上で単振動させた。周期を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
T = 2π√(m/k) = 2×3.14×√(0.80/20) = 6.28×√0.040 = 6.28×0.20 = 1.256 ≒ 1.3 s
ポイント ばね振り子の周期は 2π√(m/k) — 重いほどゆっくり(√m)、硬いほど速い(1/√k)。振幅は式に入らない(大きく振っても周期は同じ)ことに注目。
A2-2(類題)
質量 0.50 kg の物体をばねにつけて単振動させたところ、周期は 0.63 s であった。ばね定数を求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 2π√(m/k) より k = 4π²m/T² = 4×9.86×0.50/0.63² = 19.7/0.397 ≒ 50 N/m
ポイント 周期の測定から k を逆算 — ばね定数の精密測定は「伸びを測る」より「振らせて時間を測る」方が正確、という実験の知恵(時間は精度よく測れる)。
A2-3(類題)
A2-1 の装置で、おもりを質量 3.2 kg(4 倍)のものに替えると、周期はいくらになるか。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T ∝ √m:質量 4 倍で周期 2 倍。
T = 1.3×2 = 2.51 ≒ 2.5 s
ポイント 「4 倍で 2 倍」— √ のスケーリングを即答する練習(第7章 実戦7-1 ⑤と同じ読み方)。計算し直すより構造で答える。
A3【ばね振り子(鉛直)】★★
A3-1
ばね定数 49 N/m の軽いばねを天井からつるし、下端に質量 0.50 kg のおもりをつけた。
① つり合いの位置でのばねの伸びを求めよ。
② この鉛直ばね振り子の周期を求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
① kx₀ = mg → x₀ = 0.50×9.8/49 = 0.10 m
② T = 2π√(m/k) = 6.28×√(0.50/49) = 6.28×0.101 = 0.634 ≒ 0.63 s
ポイント 鉛直でも周期は水平と同じ式(g が入らない!)— 重力は振動の中心をつり合いの位置にずらすだけで、振動のリズムには関与しない(理由は B2-2 で証明)。
A3-2(類題)
A3-1 のおもりを、つり合いの位置から 0.050 m 引き下げて静かにはなした。振幅と、速さの最大値を求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
はなした点が端なので 振幅 A = 0.050 m
ω = √(k/m) = √(49/0.50) = √98 = 9.9 rad/s
v_max = Aω = 0.050×9.9 = 0.495 ≒ 0.50 m/s(つり合いの位置で)
ポイント 「静かにはなした点 = 振動の端」(v = 0 だから)— 振幅は「はなした点と中心の距離」で決まる。最速点は必ず中心(つり合いの位置)。
A3-3(類題)
A3-2 の振動で、おもりが最も高い位置・最も低い位置は、ばねが自然長のときのおもりの位置から測ってそれぞれ何 m 下か。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
振動の中心 = つり合いの位置 = 自然長から 0.10 m 下。振幅 0.050 m だから
最高点:0.10−0.050 = 0.050 m 下/最低点:0.10+0.050 = 0.15 m 下
ポイント 「自然長の位置」と「つり合いの位置」を混同しないこと — 振動はつり合いの位置を中心に対称。位置の基準を図に描いてから答える。
A4【単振り子】★★
A4-1
長さ 0.98 m の糸の先に小球をつけた単振り子の周期を求めよ(振幅は小さいとする)。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
T = 2π√(L/g) = 6.28×√(0.98/9.8) = 6.28×√0.10 = 6.28×0.316 = 1.99 ≒ 2.0 s
ポイント 「長さ約 1 m の振り子は周期約 2 秒」— 振り子時計(1往復2秒)の由来であり、単振り子の代表値として体に入れておく。
A4-2(類題)
周期がちょうど 1.0 s の単振り子を作りたい。糸の長さを何 m にすればよいか。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 2π√(L/g) より L = gT²/(4π²) = 9.8×1.0²/(4×9.86) = 9.8/39.4 ≒ 0.25 m
ポイント 周期を半分にするには長さを 1/4(T ∝ √L)。逆算式 L = gT²/4π² は、g の測定実験(振り子で重力加速度を測る)の心臓部でもある。
A4-3(類題)
① 地上で周期 2.0 s の単振り子を、重力加速度が地上の 1/6 の月面に持っていくと、周期はいくらになるか。√6 ≒ 2.4 とする。
② 地上でこの振り子のおもりを 2 倍の質量に替え、振幅を半分にすると、周期はどうなるか。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① T ∝ 1/√g:g が 1/6 → 周期は √6 倍。2.0×2.4 = 4.8 s
② T = 2π√(L/g) は質量にも振幅にもよらない:2.0 s のまま変わらない
ポイント ②が等時性(概念チェック Q3)— 「重い方が速く振れそう」という直感を式が退ける。①は「月ではすべてがゆっくり振れる」— 重力が振り子の復元力の源だから。
A5【単振動のエネルギー】★★★
A5-1
ばね定数 50 N/m のばねにつけた質量 0.50 kg の物体が、なめらかな水平面上で振幅 0.20 m の単振動をしている。
① 振動の全力学的エネルギーを求めよ。
② 振動の中心を通過するときの速さを求めよ。
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解答
① 端ではエネルギーがすべて弾性エネルギー:
E = (1/2)kA² = (1/2)×50×0.20² = 1.0 J
② 中心ではすべて運動エネルギー:
(1/2)×0.50×v² = 1.0 → v² = 4.0 → v = 2.0 m/s
ポイント 単振動のエネルギーは「端で全額ばね、中心で全額運動」の往復 — E = (1/2)kA² が振動の"総資産"。②は v_max = Aω = 0.20×10 = 2.0 とも一致 ○(ω = √(k/m) = 10)。
A5-2(類題)
A5-1 の振動で、中心から 0.10 m の位置を通過するときの速さを求めよ。√3 ≒ 1.73 とする。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
エネルギー保存:(1/2)kx²+(1/2)mv² = (1/2)kA²
(1/2)×50×0.10²+(1/2)×0.50×v² = 1.0
0.25+(0.25)v² = 1.0 → v² = 3.0 → v ≒ 1.7 m/s
ポイント 途中の速さはエネルギー保存が最短(時刻を経由しない)。x = A/2 でも U はまだ E の 1/4 — 2乗の配分なので、エネルギーの大半は中心寄りで運動側にある。
A5-3(類題)
A5-1 の振動で、速さが最大値の半分になるのは、中心から何 m の位置か。√3 ≒ 1.73 とする。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
v = v_max/2 のとき K = E/4。よって U = 3E/4:
(1/2)kx² = (3/4)×(1/2)kA² → x² = (3/4)A² → x = (√3/2)A = 0.866×0.20
x ≒ 0.17 m
ポイント 「速さ半分 ⇔ 運動エネルギー 1/4 ⇔ 位置エネルギー 3/4」の翻訳リレー — 速さと位置の対応は必ずエネルギーを経由して結ぶ(x と v は比例しない)。
A6【万有引力の法則】★★
A6-1
1.0 m 離れて立つ、質量 50 kg と 60 kg の2人の間にはたらく万有引力の大きさを求めよ。G = 6.7×10⁻¹¹ N·m²/kg² とする。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
F = GMm/r² = 6.7×10⁻¹¹×50×60/1.0² = 6.7×10⁻¹¹×3.0×10³
= 2.0×10⁻⁷ N
ポイント 砂粒の重さの千分の一ほど — G が極端に小さいため、万有引力は天体級の質量で初めて主役になる。指数の掛け算(−11+3 = −8 → 2.0×10⁻⁷)を丁寧に。
A6-2(類題)
A6-1 の2人の距離が 2.0 m になると、万有引力はいくらになるか。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
距離 2 倍 → 力は 1/2² = 1/4:
F = 2.0×10⁻⁷/4 = 5.0×10⁻⁸ N
ポイント 逆2乗則 — 距離 2 倍で 1/4、3 倍で 1/9。光の明るさ・電気の力(第3巻)とも共通する、自然界の基本の減り方。
A6-3(類題)
地表の重力が万有引力であることを用いて、地球の質量 M を見積もれ。地球の半径 R = 6.4×10⁶ m、g = 9.8 m/s²、G = 6.7×10⁻¹¹ N·m²/kg² とする。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
mg = GMm/R² より M = gR²/G
M = 9.8×(6.4×10⁶)²/(6.7×10⁻¹¹) = 9.8×4.1×10¹³/(6.7×10⁻¹¹)
≒ 6.0×10²⁴ kg
ポイント 「地球の重さを量る」— 手元の g と R から惑星の質量が出る、万有引力の法則の威力。使った関係 mg = GMm/R²、すなわち GM = gR² は本章の万能の橋(B4・B5 で主役)。
A7【人工衛星(円軌道)】★★★
A7-1
地表すれすれ(軌道半径 = 地球の半径 R = 6.4×10⁶ m)を回る人工衛星の速さを求めよ。g = 9.8 m/s² とする。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
重力が向心力:mg = mv²/R
v = √(gR) = √(9.8×6.4×10⁶) = √(6.3×10⁷) ≒ 7.9×10³ m/s
ポイント 第一宇宙速度 7.9 km/s — 秒速約 8 km で水平に投げれば「落ち続けながら地球を一周する」。第2章の水平投射の究極形が人工衛星。
A7-2(類題)
A7-1 の衛星が地球を一周する時間(周期)を求めよ。π = 3.14 とする。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 2πR/v = 2×3.14×6.4×10⁶/(7.9×10³) = 4.0×10⁷/7.9×10³
≒ 5.1×10³ s(約 85 分)
ポイント 国際宇宙ステーション(高度約 400 km)の周期が約 90 分 — 計算値と現実がほぼ一致する。「1時間半で世界一周」の物理的根拠。
A7-3(類題)
軌道半径が 4R(地球の半径の 4 倍)の円軌道を回る衛星の速さは、第一宇宙速度の何倍か。また値を求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
v = √(GM/r) ∝ 1/√r:半径 4 倍で 1/2 倍。
v = 7.9×10³/2 ≒ 4.0×10³ m/s
ポイント 高い軌道ほど遅い(月は秒速約 1 km)— 直感に反するが、遠いほど重力が弱く、ゆるい向心力で足りるから。「加速すると高い軌道に移って遅くなる」という軌道力学の逆説の入り口。
A8【ケプラーの法則】★★
A8-1
ある彗星は、太陽から 1.0×10¹¹ m の近日点で速さ 4.0×10⁴ m/s であった。太陽から 2.0×10¹¹ m の遠日点での速さを求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
面積速度一定(第2法則)より r₁v₁ = r₂v₂:
1.0×10¹¹×4.0×10⁴ = 2.0×10¹¹×v₂ → v₂ = 2.0×10⁴ m/s
ポイント 「近いところで速く、遠いところで遅く」— 面積速度一定の実用形は r v = 一定(近日点・遠日点では速度が動径と垂直なので)。距離2倍で速さ半分。
A8-2(類題)
半長軸が地球の 4 倍の軌道を回る惑星の公転周期は、地球の何倍か。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
第3法則 T² ∝ a³ より T ∝ a^(3/2):
T = 4^(3/2) = (√4)³ = 8 倍
ポイント T²/a³ = 一定の使い方は「比で使う」— 定数の値を知る必要はない。a^(3/2) の計算は「√してから3乗」が安全。
A8-3(類題)
火星の軌道半径(半長軸)は地球の約 1.5 倍である。火星の公転周期は約何年か。√1.5 ≒ 1.22 とする。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 1.5^(3/2) = 1.5×√1.5 = 1.5×1.22 = 1.83 ≒ 約 1.8 年
ポイント 実際の火星年は約 1.88 年 — 3 つの数(1.5、法則、1.8 年)で太陽系が検算できる。ケプラーが観測データだけから見抜いたこの規則性は、のちにニュートンの万有引力で「証明」される(B5-1)。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。「つり合いの位置 = 振動の中心」を式で確かめてから公式を使うのが単振動の作法。B2(鉛直ばね)・B5(人工衛星)・B6(エネルギー)が入試の最頻出。
B1【単振動と等速円運動】★★
B1-1 半径 A、角速度 ω の等速円運動を真横から見た影(正射影)の運動について、変位が x = A sinωt と表されることを説明し、速さの最大値と加速度の最大値を、円運動の速さ・加速度から読み取れ。
B1-2 B1-1 の考え方から、単振動の加速度が a = −ω²x と表されることを導け。また、これより単振動する物体にはたらく力が F = −mω²x(復元力)の形になることを示せ。
B1-3 質量 m の物体が F = −Kx(K は正の定数)の力を受けて運動するとき、この運動が単振動になることを述べ、角振動数 ω と周期 T を求めよ。
B2【ばね振り子(文字)】★★★
B2-1 ばね定数 k のばねと質量 m のおもりからなる水平ばね振り子(なめらかな面)の周期を求めよ。また、振幅 A で振動するときの速さの最大値を、エネルギー保存から求めよ。
B2-2 鉛直につるしたばね振り子(ばね定数 k、質量 m)について、つり合いの位置からの変位を x(下向き正)とするとき、おもりにはたらく合力が F = −kx となることを示せ。これより、鉛直ばね振り子の周期が水平の場合と同じであることを述べよ。
B2-3 鉛直ばね振り子で、ばねが自然長の位置でおもりを静かにはなした(第5章 B5-3 と同じ状況)。この運動を単振動として、①振動の中心と振幅、②周期、③最下点の位置、④速さの最大値を求めよ。
B3【単振り子(文字)】★★★
B3-1 長さ L の単振り子(質量 m)が、鉛直から小さい角 θ だけ傾いているとき、円弧に沿った変位を x(= Lθ)として、復元力が F ≒ −(mg/L)x と表せることを示せ(θ が小さいとき sinθ ≒ θ を用いてよい)。これより周期 T = 2π√(L/g) を導け。
B3-2 単振り子の「等時性」とは何か。また、それが成り立つための条件を述べよ。
B3-3
次の場合の単振り子の周期を求めよ。
① 上向きに加速度 a で上昇するエレベーター内
② 水平に加速度 a で走る電車内(振り子は見かけの重力の向きを中心に小さく振れる)
B4【万有引力と重力(文字)】★★★
B4-1 地表での重力加速度 g、地球の半径 R、万有引力定数 G、地球の質量 M の間に GM = gR² が成り立つことを示せ。この関係式は何の役に立つか。
B4-2 地表から高さ h の位置での重力加速度 g' を、g、R、h で表せ。また h = R のとき g' は g の何倍か。
B4-3 質量が地球の α 倍、半径が β 倍の惑星の表面での重力加速度を、g、α、β で表せ。
B5【人工衛星(文字)】★★★
B5-1 半径 r の円軌道を回る人工衛星の速さ v と周期 T を、g、R、r で表せ(GM = gR² を用いよ)。また、T² が r³ に比例すること(ケプラーの第3法則)を確かめよ。
B5-2 第一宇宙速度 v₁(地表すれすれの円軌道の速さ)と、第二宇宙速度 v₂(地表から打ち出して無限遠に達するための最小の速さ)を、g、R で表せ。また v₂/v₁ の値を求めよ。
B5-3 静止衛星(地球の自転と同じ周期 T₀ で赤道上空を回る衛星)の軌道半径 r を、g、R、T₀ で表せ。また R = 6.4×10⁶ m、T₀ = 8.6×10⁴ s、g = 9.8 m/s² として r の値を見積もれ。
B6【万有引力とエネルギー(文字)】★★★
B6-1 万有引力による位置エネルギー U = −GMm/r について、①なぜ無限遠を基準にとるのか、②なぜ負の値になるのか、を説明せよ。
B6-2 半径 r の円軌道を回る質量 m の衛星について、運動エネルギー K と力学的エネルギー E = K+U を、G、M、m、r で表せ。E の符号について述べよ。
B6-3 地表(半径 R)から速さ v で打ち上げた物体が無限遠に達するための条件を、エネルギーを用いて立式し、第二宇宙速度 v₂ = √(2gR) を導け。
B問題 解答・解説
B1【単振動と等速円運動】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
円運動する点の位置ベクトルが基準方向と角 ωt をなすとき、直径方向への射影は x = A sinωt。
影の速さの最大値 = 円運動の速さそのもの(円上の点が真横に動く瞬間)= Aω
影の加速度の最大値 = 向心加速度そのもの(端で)= Aω²
ポイント 円運動の v = rω、a = rω²(第7章)が、そのまま単振動の v_max、a_max — 「影」という1枚の絵で2つの章の公式群が接続される。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
向心加速度(大きさ Aω²、中心向き)の射影は、変位 x に比例して中心(原点)向き:
a = −ω²x
運動方程式より F = ma = −mω²x — 変位に比例し、つねに中心へ引き戻す力(復元力)∎
ポイント マイナスは「変位と逆向き」の記号 — この F ∝ −x の形こそ単振動の定義であり判定条件。逆に F = −Kx を見たら ω² = K/m と読める(B1-3)。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
F = −Kx は復元力の形なので、この運動は単振動である。
ma = −Kx と a = −ω²x を比べて mω² = K:
ω = √(K/m)、T = 2π√(m/K)
ポイント 単振動の解法はこの係数比較に尽きる — 「合力を −(何とか)×x の形に整理 → 何とか = K → 周期」。以後のばね・振り子はすべてこの手順の適用例。
B2【ばね振り子(文字)】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
復元力は F = −kx(K = k)なので
T = 2π√(m/k)
エネルギー保存(端 ⇔ 中心):(1/2)kA² = (1/2)mv_max²
v_max = A√(k/m)(= Aω ○)
ポイント エネルギー(第5章)と単振動の公式(v_max = Aω)が同じ答えを出す — 2つの道具の答え合わせで、公式が暗記から理解に変わる。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
つり合いの伸びを x₀ とすると kx₀ = mg。
つり合いからさらに x 下がった位置での合力(下向き正)は
F = mg−k(x₀+x) = mg−kx₀−kx = −kx ∎
これは水平の場合と同じ復元力(K = k)なので、周期も同じ 2π√(m/k) — 重力は振動の中心をつり合いの位置へずらすだけで、振動のリズムには関与しない。
ポイント mg と kx₀ が打ち消し合って消えるこの1行が、鉛直ばねのすべて — 「g が周期に入らない」理由を証明つきで言えるかが記述の分かれ目。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
① 振動の中心はつり合いの位置(自然長から mg/k 下)。はなした点(自然長)は端だから
振幅 A = mg/k
② T = 2π√(m/k)(B2-2 より鉛直でも同じ)
③ 最下点 = 中心からさらに A 下 = 自然長から 2mg/k 下
④ v_max = Aω = (mg/k)×√(k/m) = g√(m/k)
ポイント 第5章 B5-3 でエネルギー保存から出した「最大の伸び 2mg/k、つり合い点で最速 g√(m/k)」と完全に一致 — あの運動の正体が単振動だったことの種明かし。1つの現象を2章の道具で解ける快感を。
B3【単振り子(文字)】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
振れの角 θ のとき、円弧に沿って中心(最下点)へ引き戻す力は、重力の接線成分:
F = −mg sinθ ≒ −mgθ = −mg×(x/L) = −(mg/L)x
K = mg/L の復元力なので
T = 2π√(m/K) = 2π√(mL/mg) = 2π√(L/g) ∎
ポイント 近似 sinθ ≒ θ(振幅小)がこの公式の生まれる瞬間 — だから等時性は「小さい振幅」の世界の法則。m が約分で消える様子(重力が源だから)も見届ける。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
等時性:単振り子の周期が、振幅(小さい範囲)にもおもりの質量にもよらず、糸の長さ L と重力加速度 g だけで決まる性質。
成立条件:振れの角が十分小さいこと(sinθ ≒ θ が使える範囲)。
ポイント ガリレオがランプの揺れを脈拍で測って気づいたと伝わる発見 — 「大きく揺れても小さく揺れても同じ時を刻む」から振り子は時計になれた。振幅が大きいと周期はわずかに伸びる(発展)。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
振り子の周期は「見かけの重力加速度 g'」で決まる:T = 2π√(L/g')
① エレベーター内:g' = g+a → T = 2π√{L/(g+a)}(速く振れる)
② 電車内:見かけの重力は重力と慣性力の合成で g' = √(g²+a²)(第7章 B3)
T = 2π√{L/√(g²+a²)}(これも速くなる。振動の中心は鉛直から tanθ = a/g 傾いた向き)
ポイント 「g を見かけの g' に置き換えるだけ」— 慣性力(第7章)が公式の再利用装置としてここでも働く。a = g の自由落下では g' = 0 で T → ∞:振り子は振れない(無重量)○。
B4【万有引力と重力(文字)】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
地表の物体(質量 m)にはたらく万有引力が重力そのものだから
mg = GMm/R² → GM = gR² ∎
役立ち方:人工衛星などの式に現れる GM を、測りやすい g と R で置き換えられる(G や M の値を知らなくても計算が進む)。
ポイント 本章の「翻訳辞書」— 以後 GM を見たら gR² と読み替える。A6-3(地球の質量)はこの式を M について解いただけ。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
g' = GM/(R+h)² = gR²/(R+h)² → g' = g×{R/(R+h)}²
h = R のとき g' = g×(1/2)² = g/4
ポイント 高度とともに重力は逆2乗で減る — ただし ISS の高度(h ≒ R/16)では g' ≒ 0.89g:ほとんど減っていない。無重量の理由が「重力が弱いから」ではない(概念チェック Q5)ことの定量的裏づけ。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
g' = G(αM)/(βR)² = (α/β²)×GM/R² = (α/β²)g
ポイント 「質量で稼ぎ、半径の2乗で損する」— 月は α ≒ 1/81、β ≒ 0.27 で g' ≒ g/6、と有名な値が再現できる。惑星カタログを読む公式。
B5【人工衛星(文字)】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
万有引力が向心力:GMm/r² = mv²/r → v = √(GM/r) = √(gR²/r)
v = R√(g/r)
T = 2πr/v = 2πr×√r/(R√g) → T = (2π/R)√(r³/g)
両辺2乗して T² = (4π²/gR²)×r³ — T² ∝ r³(ケプラーの第3法則) ∎
ポイント ケプラーが観測から見つけた法則が、万有引力+円運動の2行から導出できる — ニュートン力学の金字塔を自分の手で。比例定数 4π²/GM は中心天体だけで決まる(だから「同じ太陽を回る惑星たち」で共通)。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
第一宇宙速度:r = R として v₁ = √(gR)
第二宇宙速度:エネルギー E ≧ 0(B6-3)より v₂ = √(2gR)
v₂/v₁ = √2 ≒ 1.4
ポイント 「回る」に 7.9 km/s、「離れる」にその √2 倍の 11 km/s — 2つの宇宙速度は √2 の関係、とセットで記憶。√2 の由来は「(1/2)mv² と GMm/r の係数比」にある。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
B5-1 の T² = 4π²r³/(gR²) を r について解いて
r = {gR²T₀²/(4π²)}^(1/3)
数値:gR² = 9.8×(6.4×10⁶)² ≒ 4.0×10¹⁴、T₀² ≒ 7.4×10⁹
r³ = 4.0×10¹⁴×7.4×10⁹/39.4 ≒ 7.5×10²² → r ≒ 4.2×10⁷ m(地球半径の約 6.6 倍、高度約 3.6 万 km)
ポイント 気象衛星ひまわり・放送衛星の実際の軌道(約 36000 km 上空)がこの計算で出る — 「止まって見える」ためにはこの高さしかない(周期が高さで決まるから)。3乗根の見積もりは「4.2³ ≒ 74」で検算。
B6【万有引力とエネルギー(文字)】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
① 万有引力はどこまでも届くため、「力がなくなる遠さ」= 無限遠を基準(U = 0)にとるのが自然だから(mgh の「地面」に相当する特別な場所が他にない)。
② 無限遠から r まで物体が近づくとき、万有引力は引き寄せる向き = 正の仕事をする。位置エネルギーはその分だけ減るので、0 から出発して U = −GMm/r < 0 になる。
ポイント 「負のエネルギー = 重力の井戸の深さ」— 井戸から抜け出す(無限遠へ行く)には +GMm/r のエネルギーが要る、と読むと B6-3 が見える。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
円軌道では GMm/r² = mv²/r より mv² = GMm/r:
K = (1/2)mv² = GMm/(2r)
E = K+U = GMm/(2r)−GMm/r = −GMm/(2r) < 0
ポイント 円軌道の美しい関係:E = −K = U/2 — 束縛された軌道は必ず E < 0(井戸の中)。E ≧ 0 なら無限遠へ逃げられる(B6-3)、という符号の物理。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
地表で (1/2)mv²−GMm/R、無限遠(U = 0)にぎりぎり達するとき速さ 0(E = 0)。
エネルギー保存:(1/2)mv²−GMm/R ≧ 0
v² ≧ 2GM/R = 2gR²/R = 2gR → v₂ = √(2gR) ∎
ポイント 「無限遠に達する ⇔ E ≧ 0」の翻訳が全て — mgh では書けない「無限の彼方」を、U = −GMm/r が扱えるようにした。等号(ぎりぎり)で最小速度、という限界条件の作法は第3章から一貫。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦8-1【共テ形式:水平ばね振り子】★★
ばね定数 20 N/m のばねの一端を壁に固定し、他端に質量 0.20 kg の物体をつけて、なめらかな水平面上に置いた。物体をつり合いの位置から 0.10 m 引いて静かにはなすと、物体は単振動を始めた。π = 3.14 とする。
① 角振動数は [アイ] rad/s である。
② 周期は 0.[ウエ] s である。
③ 速さの最大値は [オ].[カ] m/s である。
④ この振動の全力学的エネルギーは 0.[キク] J である。
⑤ 物体を質量 0.80 kg のものに替えると、周期はもとの何倍になるか:[ケ]
(a) 4 倍
(b) 2 倍
(c) 変わらない
実戦8-2【記述形式:鉛直ばね振り子の完全解】★★★
ばね定数 k の軽いばねを天井からつるし、下端に質量 m のおもりをつけて静止させた。次に、おもりをつり合いの位置から d だけ引き下げて静かにはなした。重力加速度を g とする。
① つり合いの位置でのばねの伸び x₀ を求めよ。
② この振動の中心の位置と振幅を答えよ。
③ つり合いの位置からの変位を x(下向き正)として、おもりにはたらく合力が F = −kx となることを示し、振動の周期を求めよ。
④ おもりが達する最高点は、ばねが自然長のときのおもりの位置から測ってどれだけ下か(d < mg/k とする)。
⑤ 速さの最大値を求めよ。
実戦8-3【記述形式:人工衛星と宇宙速度】★★★
地球を質量 M、半径 R の一様な球とし、地表での重力加速度を g、万有引力定数を G とする。
① GM = gR² が成り立つことを示せ。
② 地表すれすれの円軌道を回る人工衛星の速さ v₁ を g、R で表し、R = 6.4×10⁶ m、g = 9.8 m/s² としてその値を求めよ。
③ 半径 r(r > R)の円軌道を回る衛星の速さ v と周期 T を、g、R、r で表せ。
④ ③の結果から、T² が r³ に比例することを示せ。
⑤ 地表から打ち上げた物体が無限遠に達するための最小の速さ v₂ を g、R で表し、その値を求めよ。万有引力による位置エネルギーは −GMm/r(無限遠基準)としてよい。√2 ≒ 1.41 とする。
実戦問題 解答・解説
実戦8-1
考え方 単振動の基本量を「ω → T → v_max → E」と一本道で組み立てる — ①〜④はすべて ω = √(k/m) から芋づる式。⑤は √ のスケーリング(第7章から続く共テの定番の問い方)。
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解答
① ω = √(k/m) = √(20/0.20) = √100 = 10 rad/s(アイ = 10)
② T = 2π/ω = 6.28/10 = 0.63 s(ウエ = 63)
③ v_max = Aω = 0.10×10 = 1.0 m/s(オ = 1、カ = 0)
④ E = (1/2)kA² = (1/2)×20×0.10² = 0.10 J(キク = 10)
⑤ T ∝ √m:質量 4 倍で 2 倍:(b)(ケ = (b))
ポイント
• ④の検算:(1/2)mv_max² = (1/2)×0.20×1.0² = 0.10 J ○ — 端(ばね)と中心(運動)の両側から同じ E。
• はなした位置がそのまま振幅(A = 0.10 m)— 「静かにはなす = 端」の翻訳が①以降の前提になっている。
実戦8-2
考え方 B2-2・B2-3 の統合完全版。③の「mg と kx₀ が打ち消し合う」1行が答案の心臓 — これさえ書ければ、鉛直ばねは水平ばねと同じ土俵に乗る。
実戦8-2解答を見る解答を隠す
解答
① つり合い:kx₀ = mg → x₀ = mg/k
② 静かにはなした点が端だから、中心 = つり合いの位置、振幅 A = d
③ つり合いから x 下がった位置で(下向き正)
F = mg−k(x₀+x) = mg−kx₀−kx = −kx ∎(kx₀ = mg で相殺)
復元力の係数 K = k なので T = 2π√(m/k)(g を含まない)
④ 最高点 = 中心から d 上 = 自然長から (mg/k)−d だけ下
⑤ v_max = Aω = d√(k/m)
ポイント
• ④で d < mg/k という条件の意味:最高点でもばねが伸びたまま(たるまない)— d がこれを超えるとおもりがばねを追い越して運動が変わる、という限界の読みまでできれば満点超え。
• ⑤はエネルギー((1/2)kd² = (1/2)mv²)でも同じ — 単振動は「つり合いからの変位」で見れば重力を忘れてよい、が本問の総括。
実戦8-3
考え方 万有引力の章の全部品(GM = gR² → 円軌道 → ケプラー → 脱出)を1本の誘導で組み上げる、第1巻のフィナーレ。②③④は「重力 = 向心力」、⑤だけ「エネルギー」— 使う法則の切り替えを意識して。
実戦8-3解答を見る解答を隠す
解答
① 地表の重力 = 万有引力:mg = GMm/R² → GM = gR² ∎
② mg = mv₁²/R → v₁ = √(gR) = √(9.8×6.4×10⁶) ≒ 7.9×10³ m/s
③ GMm/r² = mv²/r → v = √(GM/r) = √(gR²/r) → v = R√(g/r)
T = 2πr/v = (2π/R)√(r³/g)
④ T² = (4π²/gR²)×r³ — 係数は定数なので T² ∝ r³ ∎
⑤ エネルギー保存(無限遠でぎりぎり速さ 0):
(1/2)mv₂²−GMm/R = 0 → v₂ = √(2GM/R) = √(2gR)
= √2×√(gR) = 1.41×7.9×10³ ≒ 1.1×10⁴ m/s
ポイント
• ③の v は r が大きいほど遅く、T は r^(3/2) で長くなる — 低い軌道の ISS は 90 分、静止衛星は 24 時間、月は 27 日:1本の式が全部を説明する。
• ⑤の v₂ = √2 v₁ — 「回る速さの √2 倍で振り切れる」。この係数 √2 は、円軌道のエネルギー E = −K(B6-2)の裏返しでもある。第2章の「投げ上げの脱出版」として、力学の旅がここで天に届く。
おわりに
「物理[力学]例題マスター」全8章、お疲れさまでした。
運動の表し方/落体の運動/力のつり合いと剛体/運動方程式/仕事と力学的エネルギー/運動量と力積/円運動と慣性力/単振動と万有引力 — 概念チェック・A問題(数値)・B問題(文字式)・実戦問題(共テ+記述)の4層構成、1章あたり約50問です。
続巻は第2巻「熱・波動」、第3巻「電磁気・原子」です。