物理[電磁気・原子]例題マスター(第3巻)
〜 問題で学ぶ・物理基礎から入試基礎まで 〜
本書の構成と使い方
「物理[力学]」(第1巻)・「物理[熱・波動]」(第2巻)に続く第3巻(電磁気・原子)です。構成・使い方・記号のルールは既刊と共通です。
| 区分 | レベル | 解答の位置 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 概念チェック | ○×・択一(5問) | 全問のあとにまとめて | 計算以前の「意味の理解」を確認 |
| A問題 | 物理基礎レベル(★)数値中心 | 問題のすぐ下 | 各テーマ3問(基本 → 類題 → 場面替え)で状況パターンを網羅 |
| B問題 | 「物理」・入試基礎(★★〜★★★)文字式中心 | 章末にまとめて | 複合状況・導出・記述の型 |
| 実戦問題 | 共通テスト形式+記述入試形式 | 章末にまとめて | 3題(グラフ・実生活文脈・誘導記述) |
使い方
1. 「公式・要点まとめ」と「解法チャート」に目を通す(公式は適用条件とセットで読む)
2. 概念チェックで意味を確認 → A問題を上から順に(解答を隠して自力で)
3. B問題は文字式のまま立式する練習。単位チェックを検算に使う
4. 実戦問題で共テ形式・記述形式の両方に慣れる
物理のルール(全巻共通)
• 数値は原則有効数字2桁で答える。単位を必ず付ける
• クーロンの法則の比例定数 k = 9.0×10⁹ N·m²/C²、電気素量 e = 1.6×10⁻¹⁹ C(問題文で指定)
• 大きな数・小さな数は ×10ⁿ で表記(指数の足し引きを丁寧に)
• 解答の第一手は「図示」— 電磁気では「電荷の正負・力や電場の矢印・回路図」を描くことがそれにあたる
• 記号の凡例:①②③ = 小問/[ア][イ] = マーク欄(共通テスト形式)/(a)(b)(c) = 選択肢
目次
第1章 静電気と電場
第3巻の主役は「電気の力学」。クーロンの法則 F = kq₁q₂/r² は、万有引力(第1巻・第8章)と同じ逆2乗 — ただし正負があり、桁違いに強い。本章の設計思想は2枚の地図:力の地図 = 電場 E(ベクトル:F = qE)と、エネルギーの地図 = 電位 V(スカラー:U = qV)。「ベクトルは合成、スカラーは符号込みで足すだけ」— この区別と、V = Ed(電場は電位の坂の傾き)がつながれば、電磁気の土台は完成する。以降の全章(コンデンサー・回路・粒子の運動)は、この2枚の地図の上に建つ。
この章の公式・要点まとめ
電気量と電荷保存
• 電気量(電荷)q [C]。電気素量 e = 1.6×10⁻¹⁹ C — 電子1個は −e、陽子1個は +e
• 電荷保存則:電気は移動するだけで、生まれも消えもしない(摩擦帯電は電子の引っ越し)
• 同種の電荷は斥け合い、異種は引き合う
クーロンの法則
• F = k×q₁q₂/r²(k = 9.0×10⁹ N·m²/C²)
• 万有引力と同じ逆2乗則 — ただし電気には正負があり、強さは桁違い(B1-3)
電場(力の地図:ベクトル)
• 電場 E:その点に +1 C を置いたとき受ける力 → F = qE(単位 N/C)
• 点電荷 Q のまわり:E = kQ/r²(Q > 0 なら外向き、Q < 0 なら内向き)
• 複数の電荷 → ベクトルとして合成(第1巻・第3章の力の合成と同じ)
• 電気力線:正電荷から出て負電荷へ入る/密なほど電場が強い/交わらない・枝分かれしない
電位(エネルギーの地図:スカラー)
• 電位 V:+1 C あたりの位置エネルギー → U = qV(単位 V = J/C)
• 点電荷 Q のまわり:V = kQ/r(無限遠基準。符号込みのただの数 — 足し算だけで合成できる)
• 電位差(電圧)と仕事:W = qV(電場が電荷にする仕事 = 電気量 × 下った電位差)
• 正電荷は電位の高い方から低い方へ力を受ける(坂を転がる)。負電荷は逆に登る
一様な電場(平行板の間)
• V = Ed、E = V/d(単位 V/m = N/C)— 電場は「電位の坂の傾き」
• 板の間では、どこでも E は同じ大きさ・同じ向き
• 等電位面:電位の等しい面。電気力線とつねに直交し、面に沿った移動では仕事 0
導体と不導体
• 静電誘導(導体):帯電体を近づけると自由電子が移動し、近い側に異種の電荷が現れる
• 誘電分極(不導体):分子の中で電荷の配置がわずかに偏る
• どちらも「近い側の異種電荷」が強く引かれ、全体として引き寄せられる
解法チャート(静電気)
1. 図示:電荷の正負を書き込み、力・電場は矢印で(向きが命)
2. 力・電場はベクトル合成(成分か対称性)/電位はスカラーの和(符号込み)— 混同厳禁
3. エネルギーの問いは U = qV、仕事は W = q×(電位差)へ
4. 荷電粒子の運動は F = qE を入口に、第1巻の力学(運動方程式・エネルギー)へ接続
5. 検算:正電荷は高電位 → 低電位へ加速するか/単位(N/C = V/m)は合うか
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
ガラス棒を絹の布でこすると帯電するのは、摩擦によって電気が新しく生み出されるからである。○か×か。
Q2
電場の向きはどう定義されるか。
(a) その点に置いた正電荷が受ける力の向き
(b) その点に置いた負電荷が受ける力の向き
(c) 電荷の種類によって変わるので定義できない
Q3
電気力線が密に集まっているところほど、電場は強い。○か×か。
Q4
電位はどんな量か。
(a) 向きをもつベクトル
(b) 符号(正負)をもつスカラー
(c) つねに正の値をとるスカラー
Q5
正電荷を、電位の高い点から低い点まで動かすとき、電場(静電気力)がする仕事はどうなるか。
(a) 正
(b) 0
(c) 負
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — 摩擦は電子の引っ越しを起こすだけ(電荷保存則)。ガラス棒が正になるのは電子が絹へ移ったから — 絹は同じ量だけ負に帯電している。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(a) — 電場は「+1 C の受ける力」で定義。負電荷はその逆向きに力を受ける(F = qE の q が負)— 定義は正電荷基準、と固定しておく。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:○ — 電気力線は電場の「見える化」:向きは接線、強さは密度。点電荷の近くで線が集中する図が、E = kQ/r² の絵解きになっている。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(b) — 電位は高さのようなただの数(負にもなる:負電荷のまわりは V < 0)。だから合成は符号込みの足し算だけ — ベクトル合成が要る電場との最大の違い。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(a) — 正電荷にとって電位の坂を下る向きは力の向き — 電場は正の仕事をする(重力が落下で正の仕事をするのと同じ構図:W = qV)。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り、k = 9.0×10⁹ N·m²/C²、電気素量 e = 1.6×10⁻¹⁹ C とする。
A1【電気量と電気素量】★
A1-1
−4.8×10⁻⁹ C に帯電した物体は、電子を何個余分にもっているか。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
個数 = 4.8×10⁻⁹/(1.6×10⁻¹⁹) = 3.0×10¹⁰ 個
ポイント どんな帯電も e の整数倍 — 電気量の"最小コイン"が電気素量。10¹⁰ 個という膨大な数でも、電気量としてはナノクーロン級にすぎない。
A1-2(類題)
2つの中性の物体 A、B をこすり合わせたところ、A から B へ電子が 2.0×10¹⁰ 個移った。A、B の電気量をそれぞれ求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
移った電気量:2.0×10¹⁰×1.6×10⁻¹⁹ = 3.2×10⁻⁹ C
A:+3.2×10⁻⁹ C(電子を失った)/B:−3.2×10⁻⁹ C
ポイント 帯電はつねにペアで等量・逆符号(電荷保存則)— 「片方だけ帯電する」ことはあり得ない。符号は「電子がどちらへ動いたか」で決まる。
A1-3(類題)
+6.0×10⁻⁹ C と −2.0×10⁻⁹ C に帯電した、同じ大きさの2つの導体球を接触させてから離した。それぞれの電気量を求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
合計(+6.0−2.0 = +4.0×10⁻⁹ C)が保存し、同じ球なので等分される:
それぞれ +2.0×10⁻⁹ C
ポイント 接触 = 電荷の合算 → 等分(同形の導体の場合)。合計が保存することと、負の電荷は引き算で効くこと — 電荷保存則の計算版。
A2【クーロンの法則】★★
A2-1
+2.0×10⁻⁶ C と +3.0×10⁻⁶ C の点電荷が 0.30 m 離れて置かれている。働く力の大きさと種類(引力か斥力か)を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
F = kq₁q₂/r² = 9.0×10⁹×2.0×10⁻⁶×3.0×10⁻⁶/0.30²
= 5.4×10⁻²/0.090 = 0.60 N の斥力
ポイント 指数の処理(9+(−6)+(−6) = −3 → 5.4×10⁻²)を落ち着いて。同符号 → 斥力の判定と、力の大きさは別々に答える(作用・反作用で両方の球に 0.60 N:第1巻・第4章)。
A2-2(類題)
A2-1 の2つの電荷の距離を 0.60 m(2 倍)にすると、力はいくらになるか。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
逆2乗:距離 2 倍で 1/4。
F = 0.60/4 = 0.15 N
ポイント 逆2乗のスケーリング即答(第1巻・第8章の万有引力と同じ)— 2 倍で 1/4、3 倍で 1/9。計算し直すより構造で。
A2-3(類題)
等しい電気量 q をもつ2つの小球を 0.10 m 離すと、0.90 N の斥力が働いた。q を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
kq²/r² = F より q² = Fr²/k = 0.90×0.010/(9.0×10⁹) = 1.0×10⁻¹²
q = 1.0×10⁻⁶ C
ポイント 力の測定から電気量を逆算 — クーロンが実際にねじり秤で行った測定の型。q² を出してから √、の2段を丁寧に。
A3【電場の定義 F = qE】★★
A3-1
ある点に +2.0×10⁻⁶ C の電荷を置いたところ、8.0×10⁻³ N の力を受けた。この点の電場の強さを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
E = F/q = 8.0×10⁻³/(2.0×10⁻⁶) = 4.0×10³ N/C
ポイント 電場 = 「+1 C あたりの力」(定義そのもの)。試験電荷 q を取り除いても、その場所には E が"待機"している — 場という考え方の入口。
A3-2(類題)
強さ 5.0×10² N/C の電場の中に、−4.0×10⁻⁶ C の電荷を置いた。受ける力の大きさと向きを求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = |q|E = 4.0×10⁻⁶×5.0×10² = 2.0×10⁻³ N、電場と逆向き
ポイント 負電荷は電場と逆向きに押される(F = qE の符号の意味)。大きさと向きを分けて処理する — 向きの一言を落とすと減点。
A3-3(類題)
強さ 3.0×10⁴ N/C の電場の中の電子(電気量 −e)が受ける力の大きさと向きを求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = eE = 1.6×10⁻¹⁹×3.0×10⁴ = 4.8×10⁻¹⁵ N、電場と逆向き
ポイント 極小の力に見えるが、電子の質量(約 9×10⁻³¹ kg)で割れば巨大な加速度(B4)— 電気の世界では「小さい力 × 極小の質量 = 猛烈な運動」が日常。
A4【点電荷の電場と重ね合わせ】★★★
A4-1
+4.0×10⁻⁶ C の点電荷から 0.20 m 離れた点の、電場の強さと向きを求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
E = kQ/r² = 9.0×10⁹×4.0×10⁻⁶/0.20² = 3.6×10⁴/0.040
= 9.0×10⁵ N/C、電荷から遠ざかる向き(外向き)
ポイント 点電荷の電場 E = kQ/r² — クーロンの法則から q を1つ外した形(F = qE と照合 ○)。正電荷なら放射状に外向き、が電気力線の絵。
A4-2(類題)
x 軸上の原点に +4.0×10⁻⁶ C、x = 0.60 m の点に −4.0×10⁻⁶ C の点電荷を置いた。中点(x = 0.30 m)の電場の強さと向きを求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
図示:正電荷からは遠ざかる向き(x 正)、負電荷へは近づく向き(これも x 正)— 同じ向きに加算。
各電荷の寄与:E₀ = 9.0×10⁹×4.0×10⁻⁶/0.30² = 4.0×10⁵ N/C
合成:E = 2×4.0×10⁵ = 8.0×10⁵ N/C、x 軸の正の向き
ポイント 重ね合わせの第一手は「各電荷の矢印を別々に描く」— 異符号の中点では2本が同じ向きを向き、強め合う。矢印なしの計算は事故のもと。
A4-3(類題)
x 軸上の原点と x = 0.60 m の点に、どちらも +4.0×10⁻⁶ C の点電荷を置いた。中点の電場を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
2本の矢印は互いに逆向きで同じ大きさ — 打ち消し合う。
E = 0
ポイント 同符号の中点は電場ゼロの「凪」— ただし電位はゼロではない(A5-3)。「E = 0 と V = 0 は別事件」という本章最大の落とし穴の前半分。
A5【電位と位置エネルギー】★★★
A5-1
+6.0×10⁻⁶ C の点電荷から 0.30 m 離れた点の電位を求めよ(無限遠を基準とする)。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
V = kQ/r = 9.0×10⁹×6.0×10⁻⁶/0.30 = 1.8×10⁵ V
ポイント 点電荷の電位 V = kQ/r — 電場(r²)と違い r の 1 乗。電場は「坂の傾き」、電位は「高さ」:同じ地形の2つの読み方で、式の r の次数が 1 つずれる。
A5-2(類題)
A5-1 の点に +2.0×10⁻⁶ C の電荷を置いた。この電荷のもつ静電気力による位置エネルギーを求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
U = qV = 2.0×10⁻⁶×1.8×10⁵ = 0.36 J
ポイント U = qV(電位は「+1 C あたりの位置エネルギー」の定義そのまま)。mgh に対応する電気の"高さのエネルギー" — 以後のエネルギー保存の部品になる。
A5-3(類題)
x 軸上の原点に +4.0×10⁻⁶ C、x = 0.60 m の点に −4.0×10⁻⁶ C を置いた(A4-2 と同じ配置)。中点(x = 0.30 m)の電位を求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
各電荷の寄与(スカラー):
正電荷から:+kQ/r = 9.0×10⁹×4.0×10⁻⁶/0.30 = +1.2×10⁵ V
負電荷から:−1.2×10⁵ V
和:V = 0
ポイント 同じ点で E = 8.0×10⁵ N/C(A4-2)なのに V = 0 — 「電場ゼロと電位ゼロは別事件」の後半分。電位は矢印なしの符号込み足し算だけ、という気楽さも味わう。
A6【電位差と仕事】★★★
A6-1
電位差 100 V の 2 点間(高電位側から低電位側へ)で、+2.0×10⁻⁶ C の電荷が電場から受ける仕事を求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
W = qV = 2.0×10⁻⁶×100 = 2.0×10⁻⁴ J
ポイント W = qV(電気量 × 下った電位差) — 「q クーロンが V ボルト落ちると qV ジュール」。mgh の完全な相似形(m ↔ q、gh ↔ V)。
A6-2(類題)
A6-1 と同じ 2 点間で、+2.0×10⁻⁶ C の電荷を低電位側から高電位側へゆっくり運びたい。外力がする仕事を求めよ。また、このとき電場がする仕事はいくらか。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
外力の仕事 = 位置エネルギーの増加 = qV = +2.0×10⁻⁴ J
電場のする仕事 = −2.0×10⁻⁴ J
ポイント 「坂を押し上げる」構図(第1巻・第5章の位置エネルギーと同じ)— 外力と電場の仕事は符号が逆で、絶対値は等しい(ゆっくり = 運動エネルギー変化なし)。
A6-3(類題)
静止していた陽子(電気量 +e)を、電位差 500 V で加速した。得られる運動エネルギーを求めよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
K = eV = 1.6×10⁻¹⁹×500 = 8.0×10⁻¹⁷ J
ポイント 「電位差 V で加速 → 運動エネルギー qV」— 加速器・ブラウン管・X線管、すべてこの1行。単位 eV(電子ボルト)の由来でもある(第7章で再会)。
A7【一様な電場と V = Ed】★★★
A7-1
間隔 2.0×10⁻² m の平行な金属板に 100 V の電圧を加えた。板の間の電場の強さを求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
E = V/d = 100/(2.0×10⁻²) = 5.0×10³ V/m
ポイント E = V/d — 電場は「1 m あたり何ボルト下がるか」= 電位の坂の傾き。単位 V/m は N/C と同じもの(A7-3 で確認)。
A7-2(類題)
強さ 4.0×10² V/m の一様な電場の中で、電気力線に沿って 0.30 m 離れた 2 点間の電位差を求めよ。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
V = Ed = 4.0×10²×0.30 = 1.2×10² V
ポイント 一様な電場では「距離に比例して電位が下がる」— 傾き一定の坂。電気力線の向きに進むほど電位は低くなる(下り坂の向き)。
A7-3(類題)
A7-1 の電場の中に +2.0×10⁻⁶ C の電荷を置いた。受ける力を求めよ。また、単位について N/C = V/m であることを確かめよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = qE = 2.0×10⁻⁶×5.0×10³ = 1.0×10⁻² N
単位:V/m = (J/C)/m = (N·m/C)/m = N/C ○
ポイント 単位の分解(V = J/C、J = N·m)で 2 つの顔が同一と示せる — 「力の地図(N/C)」と「坂の傾き(V/m)」が同じ E であることの、単位による証明。
A8【静電誘導と誘電分極】★★
A8-1
帯電していない金属球(導体)に、正に帯電した棒を近づけると、金属球は棒に引き寄せられる。理由を説明せよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
静電誘導:金属内の自由電子が棒に引かれて棒側へ移動し、近い側が負、遠い側が正に帯電する。
近い側の負電荷が受ける引力の方が、遠い側の正電荷が受ける斥力より強い(距離が近いほど強い:クーロンの法則)ため、全体として引き寄せられる。
ポイント 「近い側の異種が勝つ」— 逆2乗則の距離差が引力の正体。中性のままでも引かれる、静電気の不思議の種明かし。
A8-2(類題)
帯電していないはく検電器に、正に帯電した棒を(触れずに)近づけると、はくはどうなるか。理由とともに答えよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
はくは開く。
自由電子が棒に引かれて上部(金属板)へ移動し、下のはくは正に帯電する。2 枚のはくが正どうしで斥け合うため開く。
ポイント はく検電器は静電誘導の可視化装置 — 「電子がどちらへ動いたか」を上下で追えば、はくの符号と開閉が読める。棒を遠ざければ元に戻る(電子が帰る)ことも確認。
A8-3(類題)
プラスチックの下じき(帯電体)に、小さな紙片(不導体)が吸いつくのはなぜか。導体の場合との違いにも触れて説明せよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
紙は不導体で自由電子はないが、誘電分極:分子の中で電荷の配置がわずかに偏り、帯電体に近い側に異種の電荷が顔を出す。
近い側の引力が勝って吸いつく — 引かれる理屈(近い側の異種が勝つ)は導体と同じで、電荷が「移動する」(静電誘導)か「偏るだけ」(誘電分極)かが違い。
ポイント 導体 = 引っ越し、不導体 = 姿勢を変えるだけ — どちらも表面に異種電荷が現れる点は共通。この分極の考えが第2章(コンデンサーの誘電体)へ直結する。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。電場はベクトル(矢印を描く)・電位はスカラー(符号で足す)の宣言から始めるのが作法。B2(電場の合成)とB4(荷電粒子の運動)が入試の最頻出。
B1【クーロンの法則と力のつり合い】★★★
B1-1 x 軸上の原点に +4Q、x = L の点に +Q の点電荷を固定した。その間の x 軸上のどこに正の点電荷 +q を置けば、q にはたらく力がつり合うか。原点からの距離を求めよ。
B1-2 同じ点から長さ L の 2 本の軽い糸をつるし、それぞれの先に質量 m、電気量 q(同量の正)の小球をつけたところ、各糸が鉛直と角 θ をなして静止した。重力加速度を g として、①小球間の距離 r、②小球間にはたらくクーロン力 F、③電気量 q を求めよ。
B1-3 水素原子の中の陽子(質量 1.7×10⁻²⁷ kg)と電子(質量 9.1×10⁻³¹ kg)の間には、クーロン力と万有引力の両方がはたらく。その比(クーロン力/万有引力)を有効数字 1 桁で見積もれ。G = 6.7×10⁻¹¹ N·m²/kg² とする(距離は共通なので比には現れない)。
B2【電場のベクトル合成】★★★
B2-1 1 辺 a の正三角形の 2 つの頂点に +Q の点電荷を置いた。残りの頂点における電場の強さと向きを求めよ。
B2-2 x 軸上の x = −a に +Q、x = +a に −Q の点電荷を置いた。y 軸上、原点から距離 y の点 P における電場の強さと向きを求めよ。
B2-3
x 軸上の原点に +4Q、x = L に点電荷を置く。
① x = L の電荷が +Q のとき、電場が 0 になる点の位置を求めよ。
② x = L の電荷が −Q のとき、電場が 0 になる点の位置を求めよ。
B3【電位の性質と等電位面】★★★
B3-1 「電場が 0 の点でも電位は 0 とは限らず、電位が 0 の点でも電場は 0 とは限らない」— 等量の 2 つの点電荷(同符号の場合と異符号の場合)の中点を例に、このことを説明せよ。
B3-2 等電位面と電気力線がつねに直交する理由を、「等電位面に沿って電荷を動かすときの仕事」に注目して説明せよ。
B3-3 点電荷 +Q から距離 r_A の点 A から、距離 r_B の点 B(r_B > r_A)まで、電荷 +q を運んだ。この間に静電気力がする仕事を求めよ。
B4【電場中の荷電粒子の運動】★★★
B4-1 強さ E の一様な電場の中に、質量 m、電気量 +q の粒子を静かに置いた。①加速度、②時間 t 後の速さ、③その間に進む距離を求めよ。
B4-2 電位差 V で加速された質量 m、電気量 q の粒子(初速 0)の、加速後の速さを求めよ。
B4-3 強さ E の一様な電場(鉛直方向とし、重力は無視)の領域(水平方向の長さ L)に、質量 m、電気量 q の粒子が電場と垂直に速さ v₀ で入射した。領域を通り抜けるまでの時間と、その間の電場方向のずれ(変位)を求めよ。
B5【一様な電場と電位(文字)】★★★
B5-1 強さ E の一様な電場の中で、電気力線に沿って距離 d 離れた 2 点間の電位差が V = Ed となることを、仕事の関係(W = qEd と W = qV)から導け。
B5-2 E = V/d の単位 [V/m] は、電場のもう1つの単位 [N/C] と同じであることを示せ。また「電場は電位の傾きである」という言い方の意味を述べよ。
B5-3 ①平行板間、②正の点電荷のまわり、のそれぞれについて、電位 V を距離の関数として表し、グラフの概形(直線か曲線か、傾きの意味)を述べよ。
B6【静電誘導の応用】★★★
B6-1 はく検電器に正に帯電した棒を近づけたまま、金属板に指で触れ(接地)、指を離してから棒を遠ざけた。はく検電器は最終的にどうなっているか。電子の動きを追って説明せよ。
B6-2 B6-1 の操作(誘導帯電)でつくられる電荷の符号は、近づけた帯電体の符号とどんな関係にあるか。理由とともに述べよ。
B6-3 静電誘導(導体)と誘電分極(不導体)の違いを、「電荷の担い手の動き」に注目して整理せよ。また、どちらの場合も帯電体に引き寄せられる理由の共通点を述べよ。
B問題 解答・解説
B1【クーロンの法則と力のつり合い】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
原点から x の位置(0 < x < L)。+4Q からの斥力(x 正の向き)と +Q からの斥力(x 負の向き)がつり合う:
k×4Qq/x² = kQq/(L−x)²
2/x = 1/(L−x) → 2(L−x) = x
x = 2L/3(強い +4Q から遠い側に寄る)
ポイント 平方根をとって 2/x = 1/(L−x) と1次式に落とすのが手筋。つり合い点は「強い電荷から遠く」— 4:1 の強さ差が距離の 2:1(の2乗)で相殺されている。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
① 図示:糸の傾きから r = 2Lsinθ
② 各球のつり合い(張力 T、重力 mg、クーロン力 F):
水平:Tsinθ = F/鉛直:Tcosθ = mg
割って F = mg tanθ
③ クーロンの法則 F = kq²/r² に代入:
kq²/(2Lsinθ)² = mg tanθ
q = 2Lsinθ×√(mg tanθ/k)
ポイント 第1巻・第3章(角度のあるつり合い)にクーロン力が参加しただけ — 力学の型がそのまま電気の測定式になる。tanθ = F/mg の関係は電車内の振り子とも同型。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
比 = ke²/(Gm_p m_e)(距離 r² は分母子で消える)
分子:9.0×10⁹×(1.6×10⁻¹⁹)² ≒ 2.3×10⁻²⁸
分母:6.7×10⁻¹¹×1.7×10⁻²⁷×9.1×10⁻³¹ ≒ 1.0×10⁻⁶⁷
比 ≒ 2×10³⁹ 倍(クーロン力が圧倒的)
ポイント 原子の世界で重力は完全に無視できる(39 桁差!)— 原子・分子の構造はすべて電気の仕事。逆に天体で電気が効かないのは、正負が打ち消し合って中性だから — 2 つの逆2乗則の役割分担。
B2【電場のベクトル合成】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
図示:各電荷からの電場は大きさ E₀ = kQ/a² で、それぞれの電荷から遠ざかる向き — 2 本の矢印のなす角は 60°。
対称性より合成は二等分線方向(三角形の外向き):
E = 2E₀cos30° = √3×kQ/a²、2 つの電荷を結ぶ辺の垂直二等分線に沿って外向き
ポイント ベクトル合成は「矢印 2 本 → 対称軸に射影」(第1巻・第3章)。cos30° の 30° は「矢印と対称軸のなす角」— なす角 60° の半分、と図で確認。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
図示:P から見て、+Q の電場は +Q から遠ざかる向き、−Q の電場は −Q へ向かう向き — y 成分は打ち消し、x 成分(+ から − へ)が加算される。
各電場の大きさ:E₀ = kQ/(a²+y²)、その x 成分:E₀×a/√(a²+y²)
E = 2kQa/(a²+y²)^(3/2)、x 軸の正の向き(+Q から −Q へ向かう向き)
ポイント 対の電荷(電気双極子)の中垂線上の電場 — 「打ち消す成分と生き残る成分」を最初に見切るのが時短の鍵。y → 0 で E = 2kQ/a²(2 本が並ぶ A4-2 の形)○。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
① 同符号(+4Q と +Q):間の点でだけ 2 本の電場が逆向き — B1-1 と同じ計算で
原点から 2L/3 の点
② 異符号(+4Q と −Q):間では 2 本が同じ向き(0 にならない)。外側では逆向きになり、弱い −Q に近い側の外でつり合う:
k×4Q/(L+x')² = kQ/x'²(x':x = L から外への距離)
2x' = L+x' → x' = L
x = 2L の点(−Q の外側、L だけ離れた点)
ポイント 「電場 0 の点はどちら側か」— 同符号なら間、異符号なら弱い方の外側、とまず定性で当たりをつけてから計算する。①②とも「√ をとって 1 次式」の同じ手筋。
B3【電位の性質と等電位面】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
同符号(+Q、+Q)の中点:電場は逆向きで打ち消し E = 0。しかし電位は同符号の和で V = 2kQ/r ≠ 0。
異符号(+Q、−Q)の中点:電位は +kQ/r−kQ/r = 0。しかし電場は同じ向きに加算され E ≠ 0。
— 電場(ベクトル)は向きで消え、電位(スカラー)は符号で消える:消える条件が別物だから、一方が 0 でも他方は 0 とは限らない ∎
ポイント A4-3・A5-3 の対比を一般論に — 「ベクトルは向き、スカラーは符号」という消え方の違いが本質。共テの正誤問題の常連。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
等電位面に沿って電荷を動かしても、電位が変わらないので仕事は 0(W = qΔV = 0)。
もし電場(力)が面に沿った成分をもてば、その向きの移動で仕事が生じて矛盾する。
よって電場は等電位面に垂直な成分しかもてない — 電気力線と等電位面は直交する ∎
ポイント 「仕事 0 ⇔ 力と移動が垂直」(第1巻・第5章)からの背理法 — 地図の等高線と最大傾斜の向き(川の流れ)の直交と同じ幾何。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
W = q(V_A−V_B) = q(kQ/r_A−kQ/r_B)
W = kqQ×(1/r_A−1/r_B)(r_B > r_A なので W > 0:斥力が遠ざける向きに正の仕事)
ポイント 仕事は「電位差 × 電気量」の一手 — 途中の道筋によらない(静電気力は保存力:第1巻・第5章の思想)。r_B → ∞ で W = kqQ/r_A:無限遠まで送り出す仕事 = はじめの位置エネルギー ○。
B4【電場中の荷電粒子の運動】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
① 運動方程式 ma = qE より a = qE/m(電場の向き)
② v = at = qEt/m
③ 距離 = (1/2)at² = qEt²/(2m)
ポイント F = qE が決まれば、あとは第1巻・第2章の等加速度公式がそのまま走る — 電磁気の運動問題は「力の出どころが電気になった力学」。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
エネルギー:qV = (1/2)mv²
v = √(2qV/m)
ポイント 「電位差で加速 → qV が運動エネルギーに」(A6-3 の文字版)。時間や距離を聞かれなければ、運動方程式よりエネルギーが最短(第1巻・第5章の使い分けと同じ)。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
電場と垂直な方向:等速 — 通過時間 t = L/v₀
電場方向:初速 0・加速度 qE/m の等加速度 —
ずれ y = (1/2)×(qE/m)×(L/v₀)²
ポイント 水平投射(第1巻・第2章)と完全に同型 — 「垂直は等速、電場方向は落下」。重力 g を qE/m に置き換えただけで、放物線の物語が再演される(ブラウン管・インクジェットの偏向の原理)。
B5【一様な電場と電位(文字)】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
電荷 q を電場に沿って d 運ぶとき、電場(力 qE)がする仕事は W = qEd。
一方、電位差 V の定義から W = qV。
2 つを等しいとおいて qEd = qV → V = Ed ∎
ポイント V = Ed は「同じ仕事の 2 通りの表現」の橋 — 力の言葉(qEd)とエネルギーの言葉(qV)の辞書。一様な場(E 一定)でだけ成り立つ点も添える。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
V/m = (J/C)/m = (N·m/C)/m = N/C ○
「電場は電位の傾き」:E = V/d は「距離 1 m あたり電位が何 V 下がるか」— 電位を高さとみなした地形図で、E は坂の勾配、電気力線は水の流れる向き(最大傾斜の下り)にあたる。
ポイント 単位の分解は定義の分解 — J = N·m の 1 行が 2 つの顔を接続する。「E は V の傾き」という見方は、グラフ問題(B5-3)の読解装置になる。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
① 平行板間:V は距離に比例して一直線に下がる(傾き −E の直線)— 傾き一定 = 電場一定。
② 点電荷のまわり:V = kQ/r の曲線(近くで急、遠くで緩やか)— 接線の傾きが急な近距離ほど電場が強い(E = kQ/r²)。
ポイント 「V-グラフの傾き = 電場」— 直線なら一様、曲線なら場所ごとに違う。グラフの形から装置(平行板か点電荷か)を逆に当てる設問も定番。
B6【静電誘導の応用】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
正の棒を近づける → 自由電子が金属板側へ引き寄せられ、はくは正に帯電して開く。
指で触れる(接地)→ 地面から電子が流れ込み、はくの正電荷が中和されてはくは閉じる(棒側の負電荷は棒に引き止められて残る)。
指を離し、棒を遠ざける → 残った負電荷が全体に広がり、はくは負どうしで再び開く。
最終状態:はく検電器は負に帯電して開いている。
ポイント 誘導帯電の3幕劇 — 「開く → 閉じる → また開く」。各幕で電子の出入りだけを追えば、符号は間違えない(正電荷は動かない:動くのは電子)。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
近づけた帯電体と逆の符号に帯電する。
理由:帯電体に引かれた(または押された)電子の移動を、接地が"固定"するため — 正の棒なら電子が流れ込んで負に、負の棒なら電子が逃げて正になる。
ポイント 「触れずに、逆符号に帯電させる」— 誘導帯電の要点は非接触と逆符号の 2 語。摩擦帯電(接触・電子の直接移動)との対比で整理。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
静電誘導(導体):自由電子が物体の中を大きく移動し、両端に正負が分かれる。
誘電分極(不導体):電子は分子から離れられず、分子の中で配置が偏るだけ。
共通点:どちらも帯電体に近い側に異種の電荷が現れ、逆2乗則により「近い側の引力 > 遠い側の斥力」となって、全体として引き寄せられる。
ポイント 違いは「引っ越し」か「姿勢の偏り」か、共通点は「近い側の異種が勝つ」— A8 の3問をこの 2 行に圧縮して携帯する。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦1-1【共テ形式:点電荷の電場と電位】★★
x 軸上の原点 O に +4.0×10⁻⁶ C、x = 0.60 m の点 A に −4.0×10⁻⁶ C の点電荷を固定した。k = 9.0×10⁹ N·m²/C² とする。
① 線分 OA の中点 M(x = 0.30 m)の電場の強さは [ア].[イ]×10⁵ N/C で、向きは x 軸の正の向きである。
② M の電位は [ウ] V である。
③ 線分 OA 上に、電場が 0 になる点は:[エ]
(a) 中点 M にある
(b) 存在しない
(c) M 以外の 2 か所にある
④ M に +2.0×10⁻⁶ C の電荷を置くと、受ける力の大きさは [オ].[カ] N である。
⑤ ④の電荷を、M から x 軸に垂直な方向へ少しだけ動かすとき、静電気力がする仕事は:[キ]
(a) 正
(b) 0
(c) 負
実戦1-2【共テ形式:平行板の間の電場】★★
間隔 d = 4.0×10⁻² m の平行な金属板に、電圧 V = 200 V を加えた。板の間には一様な電場ができている。
① 電場の強さは [ア].[イ]×10³ V/m である。
② 板の間に電気量 +3.2×10⁻¹⁹ C の粒子を置くと、受ける力は [ウ].[エ]×10⁻¹⁵ N である。
③ この粒子が正極板から負極板まで移動する間に、電場がする仕事は [オ].[カ]×10⁻¹⁷ J である。
④ 板の間での、粒子が受ける力の大きさについて正しいものは:[キ]
(a) 正極板に近いほど大きい
(b) 負極板に近いほど大きい
(c) どこでも同じ
⑤ 粒子が正極板で静止した状態から出発したとき、負極板に達した瞬間の運動エネルギーは [ク].[ケ]×10⁻¹⁷ J である。
実戦1-3【記述形式:糸でつるした帯電小球のつり合い】★★★
同じ点から長さ L の軽い糸 2 本をつるし、それぞれの先に質量 m の小さな導体球をつけて、どちらにも同じ電気量 q(> 0)を与えたところ、各糸は鉛直と角 θ をなして静止した。重力加速度を g、クーロンの法則の比例定数を k とする。
① 2 球の間の距離 r を求めよ。
② 一方の球にはたらく力をすべて図示し、つり合いの式を水平・鉛直方向について書け。
③ 2 球の間にはたらくクーロン力 F を、m、g、θ で表せ。
④ 電気量 q を、L、θ、m、g、k で表せ。
⑤ θ = 45°、m = 1.0×10⁻² kg、2 球間の距離が r = 3.0×10⁻² m のとき、F と q の値を求めよ。g = 9.8 m/s² とする。
実戦問題 解答・解説
実戦1-1
考え方 同じ配置(±Q)で「電場(ベクトル)と電位(スカラー)」を並走させる、この章の中心対比の共テ版。③⑤は定性 — 矢印と等電位面の絵が描けているかを問う。
実戦1-1解答を見る解答を隠す
解答
① 各電荷の寄与:E₀ = 9.0×10⁹×4.0×10⁻⁶/0.30² = 4.0×10⁵ N/C — 中点では 2 本とも x 正の向きで加算:
E = 8.0×10⁵ N/C(ア = 8、イ = 0)
② 電位は +1.2×10⁵+(−1.2×10⁵) = 0 V(ウ = 0)
③ 線分上では、正電荷から遠ざかる向きと負電荷へ向かう向きがつねに同じ向き(x 正)で、打ち消し合う場所がない:(b) 存在しない(エ = (b))
④ F = qE = 2.0×10⁻⁶×8.0×10⁵ = 1.6 N(オ = 1、カ = 6)
⑤ 中点を通り x 軸に垂直な面は、2 電荷から等距離 — どこでも V = 0 の等電位面。等電位面に沿った移動の仕事は 0:(b)(キ = (b))
ポイント
• ①②が「E ≠ 0 なのに V = 0」の実例(B3-1)— 逆(同符号の中点)とセットで携帯する。
• ⑤は「垂直二等分面 = 等電位面」という対称性の読み — 計算せずに仕事 0 と断定できるのが等電位面の御利益。
実戦1-2
考え方 平行板の 3 点セット「E = V/d → F = qE → W = qV」を一直線に。④で一様場の意味、⑤でエネルギー保存(W = ΔK)へ — 第1巻・第5章のエネルギー原理の電気版。
実戦1-2解答を見る解答を隠す
解答
① E = V/d = 200/(4.0×10⁻²) = 5.0×10³ V/m(ア = 5、イ = 0)
② F = qE = 3.2×10⁻¹⁹×5.0×10³ = 1.6×10⁻¹⁵ N(ウ = 1、エ = 6)
③ W = qV = 3.2×10⁻¹⁹×200 = 6.4×10⁻¹⁷ J(オ = 6、カ = 4)
④ 一様な電場なので:(c) どこでも同じ(キ = (c))
⑤ 仕事がすべて運動エネルギーに:K = W = 6.4×10⁻¹⁷ J(ク = 6、ケ = 4)
ポイント
• ③の検算:W = Fd = 1.6×10⁻¹⁵×4.0×10⁻² = 6.4×10⁻¹⁷ J ○ — 「qV」と「力 × 距離」の2ルートが同じ値を指す(V = Ed の実演)。
• ⑤は「電位差 V で加速 → qV」(A6-3)の再現 — 距離 d も E も経由せずに一撃で出るのがエネルギーの強み。
実戦1-3
考え方 第1巻・第3章(角度のつり合い)+ クーロンの法則の融合 — 電磁気の記述問題の第一歩は、結局力の図示から始まる。⑤で「実験から q を測る」ところまで到達する。
実戦1-3解答を見る解答を隠す
解答
① 糸の傾きの幾何より r = 2Lsinθ
② 図示:重力 mg(下)、張力 T(糸の方向)、クーロン力 F(水平・外向き)。
水平:Tsinθ = F/鉛直:Tcosθ = mg
③ 2 式を割って F = mg tanθ
④ クーロンの法則 kq²/r² = mg tanθ に r = 2Lsinθ を代入:
q = 2Lsinθ×√(mg tanθ/k)
⑤ F = mg tan45° = 1.0×10⁻²×9.8×1 = 9.8×10⁻² N
q = r√(F/k) = 3.0×10⁻²×√(9.8×10⁻²/(9.0×10⁹))
= 3.0×10⁻²×3.3×10⁻⁶ ≒ 1.0×10⁻⁷ C
ポイント
• ②の図示が答案の得点源 — 3 力の閉じた三角形(第1巻・第3章)がそのまま tanθ = F/mg を生む。
• ⑤の √(9.8×10⁻²/9.0×10⁹) は「≒ √(1.1×10⁻¹¹) = √11×10⁻⁶ ≒ 3.3×10⁻⁶」— ×10 の偶数乗をくくり出す平方根の見積もり(第2巻から続く技)。0.1 μC という答えの規模感(静電気の典型値)も持ち帰る。
第2章 コンデンサー
2 枚の金属板を向かい合わせるだけの装置 — コンデンサーは「電荷の貯水池」。憲法は Q = CV(たまる電荷は電圧に比例)、器の大きさは C = ε₀S/d(広く・近く・誘電体で大きく)。直列・並列の合成、たくわえたエネルギー U = (1/2)CV²、そして「電池をつないだまま(V 一定)か、切り離したか(Q 一定)」の場合分け — この章の判断はすべて「何が一定か」の宣言から始まる。
この章の公式・要点まとめ
コンデンサーの基本
• Q = CV(Q:たくわえられる電気量 [C]、V:極板間の電圧 [V]、C:電気容量 [F])
• 両極板には +Q と −Q が対でたまる(全体では中性)
• 1 F = 1 C/V。実用は μF(10⁻⁶ F)や pF(10⁻¹² F)
平行板コンデンサーの容量
• C = ε₀S/d(ε₀:真空の誘電率、S:極板の面積、d:間隔)
• 広いほど(S ∝)・近いほど(1/d ∝)大容量
• 誘電体(比誘電率 εr)を満たすと C' = εr×C(εr 倍)— 分極(第1章 A8)が電場を弱めるため
• 極板間は一様な電場:E = V/d(第1章)
直列・並列の合成容量
• 並列:C = C₁+C₂(V が共通、Q は和)— 面積を広げたのと同じ
• 直列:1/C = 1/C₁+1/C₂(Q が共通、V は和)— 間隔を広げたのと同じ
• ※抵抗(第3章)とは直列・並列で式の形が入れ替わるので注意
静電エネルギー
• U = (1/2)QV = (1/2)CV² = Q²/(2C)(3 つの顔 — 一定な文字に合わせて選ぶ)
• 1/2 の由来:電荷を運ぶ間、電圧が 0 → V と成長する(平均 V/2)— Q-V グラフの三角形の面積
2 大場合分け(この章の心臓)
• 電池につないだまま操作:V 一定(Q = CV が変わる — 差額は電池と出入り)
• 電池を切り離して操作:Q 一定(V = Q/C が変わる — 極板の電荷に逃げ場がない)
• 孤立した部分(スイッチで切り離された島)では電気量の合計が保存
解法チャート(コンデンサー)
1. 回路図を描き、各コンデンサーの +Q/−Q を書き込む
2. 「何が一定か」を宣言:電池接続 → V/切り離し → Q/孤立部分 → 電荷の和
3. 並列は V 共通、直列は Q 共通 — 合成するか、共通量から各量を割り出す
4. エネルギーは 3 つの顔から一定の文字を含む形を選ぶ
5. 検算:電圧の和が電源電圧か/電荷保存が成り立つか/エネルギーの増減の行き先を言えるか
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
コンデンサーにたくわえられる電気量は、加える電圧に比例する。○か×か。
Q2
平行板コンデンサーの極板の間隔を狭くすると、電気容量はどうなるか。
(a) 大きくなる
(b) 小さくなる
(c) 変わらない
Q3
2 つのコンデンサーを並列につなぐと、合成容量は各容量の和になる。○か×か。
Q4
充電したコンデンサーを電池から切り離して極板間隔を変えるとき、一定に保たれるのはどれか。
(a) 電圧 V
(b) 電気量 Q
(c) 電気容量 C
Q5
コンデンサー(電気量 Q、電圧 V)にたくわえられているエネルギーはどれか。
(a) QV
(b) (1/2)QV
(c) 2QV
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:○ — Q = CV:比例定数 C が「器の大きさ」。電圧 2 倍で電荷も 2 倍、が Q-V グラフの原点を通る直線になる(Q5 の伏線)。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(a) — C = ε₀S/d:d が分母。極板が近いほど正負の電荷が引き合って安定 → 同じ電圧でも多くたまる。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:○ — 並列は「極板の面積を広げた」のと同じ(C = C₁+C₂)。直列は逆に「間隔を広げた」ので 1/C の和 — 抵抗とは形が入れ替わる。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(b) — 切り離すと極板の電荷に逃げ道がない → Q 一定。つないだままなら電池が電圧を保証して V 一定 — 「何が一定か」がこの章の全操作問題の入口。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — 電荷を運ぶ間、電圧は 0 から V へ成長する(平均 V/2)— だから (1/2)QV。QV だと「最初から満額の電圧で運んだ」ことになり過大。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※ 1 μF = 1.0×10⁻⁶ F とする。
A1【Q = CV】★
A1-1
電気容量 2.0 μF のコンデンサーに 100 V の電圧を加えた。たくわえられる電気量を求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
Q = CV = 2.0×10⁻⁶×100 = 2.0×10⁻⁴ C
ポイント Q = CV はこの章の憲法。μF → 10⁻⁶ F の換算を最初に済ませる — 単位の直し忘れが最多の事故。
A1-2(類題)
あるコンデンサーに 30 V を加えると 6.0×10⁻⁵ C たくわえられた。電気容量を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
C = Q/V = 6.0×10⁻⁵/30 = 2.0×10⁻⁶ F = 2.0 μF
ポイント 容量の逆算 — C は「1 V あたり何 C たまるか」という器の指標(単位 F = C/V の読み下しそのもの)。
A1-3(類題)
4.0 μF のコンデンサーに 2.0×10⁻⁴ C をたくわえた。極板間の電圧を求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
V = Q/C = 2.0×10⁻⁴/(4.0×10⁻⁶) = 50 V
ポイント Q = CV は 3 文字のどれについても解ける 1 本の関係式 — 「2 つ分かれば残り 1 つ」(v = fλ と同じ 3 点セットの型)。
A2【平行板の容量 C = ε₀S/d】★★
A2-1
電気容量 3.0 μF の平行板コンデンサーの、極板間隔だけを半分にした。容量はいくらになるか。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
C ∝ 1/d:間隔半分で 2 倍 → 6.0 μF
ポイント C = ε₀S/d の比例・反比例で即答 — S に比例、d に反比例。数値を作り直すより構造で(第1巻から続くスケーリングの型)。
A2-2(類題)
極板の面積 2.0×10⁻² m²、間隔 1.0×10⁻³ m の平行板コンデンサーの電気容量を求めよ。真空の誘電率を ε₀ = 8.9×10⁻¹² F/m とする。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
C = ε₀S/d = 8.9×10⁻¹²×2.0×10⁻²/(1.0×10⁻³) = 1.8×10⁻¹⁰ F
ポイント 手のひらサイズの極板でも 10⁻¹⁰ F(0.18 nF) — 実用の μF がいかに大容量か。市販のコンデンサーが「薄い膜を巻いて S を稼ぐ」構造である理由。
A2-3(類題)
A2-2 のコンデンサーの極板間を、比誘電率 4.0 の誘電体で満たした。電気容量を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
C' = εr×C = 4.0×1.8×10⁻¹⁰ = 7.1×10⁻¹⁰ F
ポイント 誘電体は分極(第1章 A8-3)して極板の電荷を部分的に打ち消し、内部の電場を弱める — 同じ Q でも V が下がる = C が上がる。εr は「何倍ためやすくなるか」。
A3【極板間の電場】★★
A3-1
極板間隔 2.0×10⁻³ m のコンデンサーに 200 V を加えた。極板間の電場の強さを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
E = V/d = 200/(2.0×10⁻³) = 1.0×10⁵ V/m
ポイント 極板間は一様な電場(第1章 A7)— コンデンサーは「一様電場の製造装置」でもある。荷電粒子の実験(第1章 B4-3)の舞台はここ。
A3-2(類題)
2.0 μF・極板間隔 1.0×10⁻³ m のコンデンサーに 100 V を加えた。たくわえられる電気量と、極板間の電場を求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Q = CV = 2.0×10⁻⁶×100 = 2.0×10⁻⁴ C
E = V/d = 100/(1.0×10⁻³) = 1.0×10⁵ V/m
ポイント Q は「C 経由」、E は「d 経由」— 同じ V から2 系統の計算が枝分かれする。回路量(Q、C、V)と場の量(E、d)の橋が V。
A3-3(類題)
充電したコンデンサーを電池から切り離し、極板間隔を 2 倍にした。①電気量、②電圧、③極板間の電場は、それぞれ何倍になるか。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 切り離し → Q 一定(1 倍)
② C が半分なので V = Q/C は 2 倍
③ E = V/d = 2 倍/2 倍 = 1 倍(変わらない)
ポイント E が変わらないのがこの操作の名所 — 極板間の電場は E = Q/(ε₀S)(電荷だけで決まる:B1)なので、Q 一定なら間隔によらない。「V は倍、E は不変」のセットで記憶。
A4【並列接続】★★
A4-1
2.0 μF と 3.0 μF のコンデンサーを並列につないだ。合成容量を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
C = C₁+C₂ = 5.0 μF
ポイント 並列 = 足すだけ(面積の合体)。並列の合言葉は「電圧が共通」— 次問で使う。
A4-2(類題)
A4-1 の並列接続に 100 V を加えた。各コンデンサーの電気量と、全体の電気量を求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
どちらも 100 V:
2.0 μF 側:Q₁ = 2.0×10⁻⁴ C/3.0 μF 側:Q₂ = 3.0×10⁻⁴ C
合計 Q = 5.0×10⁻⁴ C(= 合成 5.0 μF×100 V ○)
ポイント 並列は「同じ V、Q は容量に比例して分配」。合成容量で出した全体の Q と、各々の和が一致 — 二重の計算が互いの検算になる。
A4-3(類題)
2.0 μF と 3.0 μF の並列接続全体に、合計 1.0×10⁻³ C の電気量がたくわえられている。各コンデンサーの電気量を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Q は容量の比 2:3 で分配:
2.0 μF 側:4.0×10⁻⁴ C/3.0 μF 側:6.0×10⁻⁴ C
ポイント 「合計から比で割り戻す」逆算 — V = Q/C が共通、という並列の性質を比の言葉で使う。分配の比は容量に正比例(直列の電圧分配とは逆:A5-2)。
A5【直列接続】★★★
A5-1
2.0 μF と 3.0 μF のコンデンサーを直列につないだ。合成容量を求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
1/C = 1/2.0+1/3.0 = 5/6 [1/μF]
C = 1.2 μF
ポイント 直列は 1/C の和(間隔を広げた効果)— 合成はどの容量よりも小さくなる(1.2 < 2.0)。「和分の積」C₁C₂/(C₁+C₂) = 6/5 でも同じ。
A5-2(類題)
A5-1 の直列接続の全体に 100 V を加えた。各コンデンサーの電気量と電圧を求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
直列は Q が共通:Q = CV = 1.2×10⁻⁶×100 = 1.2×10⁻⁴ C(両方とも)
各電圧:V₁ = Q/C₁ = 60 V、V₂ = Q/C₂ = 40 V(和 100 V ○)
2.0 μF に 60 V、3.0 μF に 40 V
ポイント 直列の合言葉は「Q が共通、V は容量の逆比」— 小さい容量ほど大きな電圧を引き受ける(器が小さいほど水位が上がる)。和が電源電圧に戻るかの検算を忘れずに。
A5-3(類題)
3.0 μF のコンデンサーを 2 個直列にした。合成容量を求めよ。また、この結果を「極板間隔」の言葉で解釈せよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
同容量 2 個の直列:C = 3.0/2 = 1.5 μF
解釈:直列は間隔 d を 2 倍にしたのと同じ(C ∝ 1/d)— 2 つのコンデンサーの間の導体部分は電場に寄与せず、実質的に隙間が 2d になる。
ポイント 「n 個直列 = C/n、n 個並列 = nC」。合成則を幾何(S と d)の言葉に翻訳できると、公式が構造として腑に落ちる。
A6【静電エネルギー】★★★
A6-1
2.0 μF のコンデンサーを 100 V で充電した。たくわえられたエネルギーを求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
U = (1/2)CV² = (1/2)×2.0×10⁻⁶×100² = 1.0×10⁻² J
ポイント C と V が分かっているときは (1/2)CV² — 3 つの顔から「手持ちの文字」で選ぶ。10⁻² J:小さく見えるが一瞬で放出できる(カメラのフラッシュの原理)。
A6-2(類題)
電気量 2.0×10⁻⁴ C がたくわえられた 2.0 μF のコンデンサーのエネルギーを、Q²/(2C) の形で求め、A6-1 と一致することを確かめよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
U = Q²/(2C) = (2.0×10⁻⁴)²/(2×2.0×10⁻⁶) = 4.0×10⁻⁸/(4.0×10⁻⁶) = 1.0×10⁻² J ○
ポイント (1/2)QV・(1/2)CV²・Q²/(2C) は Q = CV でつながった同一人物の 3 変装 — 場面(何が一定か:A7)に応じて衣装を選ぶ練習。
A6-3(類題)
コンデンサーのエネルギーが (1/2)QV であって QV でない理由を、Q-V グラフ(横軸 V・縦軸 Q の原点を通る直線)を使って説明せよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
充電の途中、電圧は 0 から V まで成長していく — 電荷 ΔQ を運ぶのに必要な仕事はそのときの電圧 × ΔQ で、グラフの直線の下の三角形の面積が総仕事:
U = (1/2)×Q×V ∎(平均の電圧 V/2 で Q を運んだ、と読んでもよい)
ポイント 「グラフの面積 = 仕事」(第1巻 F-x、第2巻 P-V に続く面積シリーズ)。QV は「最初から満額 V で運んだ」誤り — ばねの (1/2)kx² と同じ"成長する相手"の 1/2。
A7【V 一定と Q 一定の操作】★★★
A7-1
コンデンサーを電池につないだまま、極板間隔を 2 倍にした。①電圧、②電気量、③極板間の電場は、それぞれ何倍になるか。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
① 電池が保証:V 一定(1 倍)
② C が半分 → Q = CV は 1/2 倍(差額は電池へ戻る)
③ E = V/d = 1 倍/2 倍 = 1/2 倍
ポイント V 一定では Q と E が動く — Q 一定(A3-3:V と U が動き、E 不変)と結果が全部入れ替わる。まず「何が一定か」を書いてから表を埋める。
A7-2(類題)
充電後に電池を切り離してから極板間隔を 2 倍にした。エネルギーは何倍になるか。また、増えた分はどこから来たか。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Q 一定、C は 1/2:U = Q²/(2C) は 2 倍
増加分は、引き合う極板を引き離した外力の仕事から来た。
ポイント エネルギー収支の「出どころ」まで言うのが完答 — 極板は引き合っている(B5)ので、離すには正の仕事が要る。それがそのまま U に貯金される。
A7-3(類題)
コンデンサーを電池につないだまま、極板間に比誘電率 εr = 2.0 の誘電体を満たした。①電気容量、②電気量は何倍になるか。また電気量の増加分はどこから来たか。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① C は 2.0 倍
② V 一定なので Q = CV も 2.0 倍 — 増加分は電池から新たに流れ込んだ。
ポイント V 一定の操作では、電池が電荷の出納係 — Q の増減は必ず電池との出入り。Q 一定(切り離し)で誘電体を入れれば、逆に V が半分に下がる(比較表は B4-3)。
A8【充電済みコンデンサーの接続(電荷保存)】★★★
A8-1
2.0 μF のコンデンサーを 100 V で充電し、電池から切り離して、帯電していない 3.0 μF のコンデンサーに並列に接続した。接続後の共通の電圧を求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
接続前の電気量:Q₀ = 2.0×10⁻⁶×100 = 2.0×10⁻⁴ C
接続後は電荷が保存し、並列(V 共通):
V = Q₀/(C₁+C₂) = 2.0×10⁻⁴/(5.0×10⁻⁶) = 40 V
ポイント 切り離された島では電気量の合計が保存 — 「たまった水を 2 つの器に分け合う」構図。合成容量 5.0 μF に Q₀ が入り直した、と読む。
A8-2(類題)
A8-1 の接続後、各コンデンサーの電気量を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
共通の 40 V で:
2.0 μF 側:Q₁ = 8.0×10⁻⁵ C/3.0 μF 側:Q₂ = 1.2×10⁻⁴ C
(和 2.0×10⁻⁴ C = Q₀ ○:電荷保存の検算)
ポイント 分配は容量比 2:3(並列の性質:A4-3)。和が元の Q₀ に戻ることを必ず確かめる — 電荷保存が答案の検算装置。
A8-3(類題)
A8-1 の操作の前後で、静電エネルギーの合計はどう変化したか。また、その差はどうなったと考えられるか。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
前:U = (1/2)×2.0×10⁻⁶×100² = 1.0×10⁻² J
後:U' = (1/2)×5.0×10⁻⁶×40² = 4.0×10⁻³ J
6.0×10⁻³ J 減少 — 接続の瞬間に流れた電流により、導線のわずかな抵抗でジュール熱(および一部は電磁波)として失われた。
ポイント 電荷は保存するがエネルギーは保存しない、有名な"消えたエネルギー"問題 — 減少は必然(B3-3 で一般証明)。「どこへ行ったか」まで一言添えるのが記述の作法。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。「何が一定か(V か Q か)」の宣言と、±Q の書き込みから始めるのが作法。B3(エネルギー)とB6(電荷保存の回路)が入試の最頻出。
B1【C = ε₀S/d の導出】★★★
B1-1 面積 S の極板に ±Q がたくわえられているとき、極板間の電場は E = Q/(ε₀S) と表せる(結果として用いてよい)。V = Ed と Q = CV を使って、平行板コンデンサーの容量が C = ε₀S/d となることを導け。
B1-2 C = ε₀S/d をもとに、電気容量を大きくする 3 つの方法を挙げ、それぞれの理由を一言ずつ述べよ。
B1-3 電気容量の単位 F(ファラド)を、C(クーロン)・V(ボルト)で表せ。さらに ε₀ の単位が F/m と書ける理由を C = ε₀S/d から説明せよ。
B2【合成容量の導出】★★★
B2-1 容量 C₁、C₂ のコンデンサーを並列につなぎ、電圧 V を加えた。全体の電気量を考えて、合成容量が C = C₁+C₂ となることを導け。
B2-2 容量 C₁、C₂ のコンデンサーを直列につなぎ、全体に電圧 V を加えた。各コンデンサーの電気量が等しいことを使って、1/C = 1/C₁+1/C₂ を導け。また、なぜ直列では電気量が等しくなるのかを説明せよ。
B2-3 2.0 μF のコンデンサー 3 個を、「2 個を直列にしたものに、残り 1 個を並列」につないだ。合成容量を求めよ。
B3【静電エネルギーの理論】★★★
B3-1 電気容量 C のコンデンサーを電圧 V まで充電する。Q-V グラフの面積を根拠に、たくわえられるエネルギーが U = (1/2)QV となることを導け。
B3-2 U = (1/2)QV から、U = (1/2)CV² と U = Q²/(2C) を導け。また「V 一定の操作」「Q 一定の操作」でそれぞれどの形が便利かを述べよ。
B3-3 電圧 V₀ で充電した容量 C₁ のコンデンサーを、帯電していない容量 C₂ のコンデンサーに並列接続した。接続の前後でのエネルギーの減少量を C₁、C₂、V₀ で表せ。
B4【Q 一定・V 一定の一般論】★★★
B4-1 電池を切り離した(Q 一定の)コンデンサーの極板間隔を d から 2d にした。V、E、U がそれぞれ何倍になるかを式で示し、U の増加分が何によって供給されたかを述べよ。
B4-2 電池につないだまま(V 一定で)極板間隔を d から 2d にした。Q、E、U がそれぞれ何倍になるかを式で示せ。
B4-3 「間隔 2 倍」「誘電体(εr)で満たす」の 2 操作 × 「V 一定」「Q 一定」の 2 条件、計 4 通りについて、Q・V・E・U の変化をまとめた表を作れ。
B5【極板間引力】★★★
B5-1 帯電した平行板コンデンサーの一方の極板が、他方の極板の位置につくる電場は、極板間の電場 E の半分(E/2)である。このことを用いて、極板間にはたらく引力が F = QE/2 と表せる理由を述べよ。
B5-2 F = QE/2 を、Q と ε₀、S で表せ(E = Q/(ε₀S) を用いよ)。
B5-3 Q 一定のまま極板間隔を Δd だけ広げるとき、外力の仕事 FΔd がエネルギーの増加 ΔU に等しいことを使って、B5-2 の F を検算せよ(U = Q²d/(2ε₀S) と書けることを用いてよい)。
B6【電荷保存と回路】★★★
B6-1 電圧 V₀ で充電した容量 C₁ のコンデンサーを、帯電していない C₂ に並列接続したときの共通電圧 V を、電荷保存から導け。
B6-2 電圧 V₁ で充電した C₁ と、電圧 V₂ で充電した C₂ を、正極どうし・負極どうしをつないで並列にした。共通電圧を求めよ。また、正極と負極を逆につないだ場合はどうなるか。
B6-3 直列につながれた 2 つのコンデンサーの「間の部分」(一方の負極板ともう一方の正極板を結ぶ島)について、電気量の保存がどう使えるかを説明せよ。はじめ帯電していなければ、2 つのコンデンサーの電気量が等しくなることを示せ。
B問題 解答・解説
B1【C = ε₀S/d の導出】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
極板間の電圧:V = Ed = Qd/(ε₀S)
Q = CV と比べて C = Q/V = ε₀S/d ∎
ポイント 部品は「E = Q/(ε₀S)(電荷が場を作る)」と「V = Ed(場が電位差を作る)」の 2 つ — Q → E → V の因果の鎖をたどると C が正体を現す。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
①面積 S を広げる — 電荷の置き場が増える。
②間隔 d を狭める — 正負が強く引き合い、同じ電圧で多くたまる。
③誘電体(εr)で満たす — 分極が電場を弱め、同じ Q でも V が下がる(= C 増)。
ポイント 実物のコンデンサー(薄い誘電体フィルムを電極ではさんで巻く)は、この 3 方法の全部乗せ — 式が製品の設計図になっている。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
Q = CV より F = C/V。
式:C = ε₀S/d より ε₀ = Cd/S — 単位は F×m/m² = F/m ∎
ポイント 単位は定義の要約 — 「1 V あたり 1 C ためられて 1 F」。ε₀ = 8.9×10⁻¹² F/m の小ささが、真空が"ためにくい"ことを語っている。
B2【合成容量の導出】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
並列では両方に同じ電圧 V。
全体の電気量:Q = Q₁+Q₂ = C₁V+C₂V = (C₁+C₂)V
Q = CV と比べて C = C₁+C₂ ∎
ポイント 「V 共通・Q は和」を式にしただけ — 合成則は暗記でなく、共通量の宣言から 2 行で再建できる。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
直列の中間部分(2 つのコンデンサーをつなぐ島)は外部から孤立しており、はじめ中性 — 一方の極板に −Q が現れれば、隣の極板には +Q が現れるしかない:電気量は共通。
電圧の和:V = V₁+V₂ = Q/C₁+Q/C₂
V = Q/C と比べて 1/C = 1/C₁+1/C₂ ∎
ポイント 「なぜ Q が共通か」= 間の島の電荷保存(B6-3)— 直列の性質は約束事ではなく保存則の帰結。ここを言えると記述で一段上。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
直列部分:2.0 μF×2 個 → 1.0 μF
これと 2.0 μF の並列:C = 1.0+2.0 = 3.0 μF
ポイント 直並列は「内側から順に畳む」— 回路図を描き、まとまった部分を 1 つの箱に置き換えていく(第3章の抵抗でも同じ手順)。
B3【静電エネルギーの理論】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
横軸 V・縦軸 Q のグラフで、充電の道筋は原点から (V、Q) への直線(Q = CV)。
微小電荷 ΔQ を運ぶ仕事は「そのときの電圧 × ΔQ」— 積み上げると直線の下の三角形の面積:
U = (1/2)QV ∎
ポイント 「相手が成長するときの 1/2」— ばねの (1/2)kx²、等加速度の (1/2)at² と同族。面積 = 仕事シリーズの最終メンバー。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
Q = CV を代入して:
U = (1/2)(CV)V = (1/2)CV²/U = (1/2)Q(Q/C) = Q²/(2C)
V 一定の操作 → V を含む (1/2)CV²/Q 一定の操作 → Q を含む Q²/(2C) が便利(一定量を固定して C の変化だけ追える)。
ポイント 「一定の文字を含む顔を選ぶ」— A7 の場合分けとエネルギーの 3 表現が、ここで 1 つの作戦に統合される。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
接続前:U_before = (1/2)C₁V₀²
接続後:電圧 V = C₁V₀/(C₁+C₂)(B6-1)で
U_after = (1/2)(C₁+C₂)V² = C₁²V₀²/{2(C₁+C₂)}
減少量:ΔU = U_before−U_after = (1/2)C₁V₀²×{1−C₁/(C₁+C₂)}
ΔU = C₁C₂V₀²/{2(C₁+C₂)}
ポイント C₂ > 0 である限り必ず減る(式が正)— 電荷の再配置には"手数料"が避けられない。行き先は導線の抵抗のジュール熱(抵抗がどんなに小さくても、失う総量はこの式で同じ、が有名な深掘り)。
B4【Q 一定・V 一定の一般論】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
Q 一定、C → C/2(d が 2 倍)。
電圧:V = Q/C → 2 倍/電場:E = Q/(ε₀S) → 1 倍(不変)/エネルギー:U = Q²/(2C) → 2 倍
増加分は、引き合う極板を引き離した外力の仕事による。
ポイント Q 一定の世界では E が絶対不変(電荷だけが場を決める)— V は「E×距離」なので距離に比例して伸びるだけ、と因果で読む。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
V 一定、C → C/2。
電気量:Q = CV → 1/2 倍(半分は電池へ帰る)/電場:E = V/d → 1/2 倍/エネルギー:U = (1/2)CV² → 1/2 倍
ポイント V 一定では電池が出納係 — Q の減少分は電池に戻り、U の減少分も(外力の仕事とともに)電池のエネルギー勘定に入る。「どの量が誰に支配されるか」の整理。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
(基準を 1 として)
| 操作 × 条件 | Q | V | E | U |
|---|---|---|---|---|
| 間隔 2 倍・V 一定 | 1/2 | 1 | 1/2 | 1/2 |
| 間隔 2 倍・Q 一定 | 1 | 2 | 1 | 2 |
| 誘電体 εr・V 一定 | εr | 1 | 1 | εr |
| 誘電体 εr・Q 一定 | 1 | 1/εr | 1/εr | 1/εr |
ポイント 16 マスは暗記しない — 一定量を書き、C の変化を出し、残りを Q = CV・E = V/d・U(適切な顔)で埋める、の 3 手で毎回その場生成する。
B5【極板間引力】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
極板間の電場 E は、正負両方の極板が半分ずつ(E/2 ずつ)作っている。
一方の極板(電気量 Q)が受ける力は、相手の極板が作る場 E/2 による力 — 自分の作る場からは力を受けない:
F = Q×(E/2) = QE/2 ∎
ポイント 「自分の場では自分を押せない」— F = QE としない理由がこの一点。E/2 の由来(重ね合わせの半分)まで言えれば論述完成。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
E = Q/(ε₀S) を代入して
F = QE/2 = Q²/(2ε₀S)
ポイント 引力は Q² に比例、S に反比例 — 符号によらず必ず引力(±Q が引き合う)。d を含まない(一様場は距離で減衰しない)点も特徴。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
Q 一定で d → d+Δd:U = Q²d/(2ε₀S) より ΔU = Q²Δd/(2ε₀S)
外力の仕事 = ΔU:FΔd = Q²Δd/(2ε₀S)
F = Q²/(2ε₀S) — B5-2 と一致 ○
ポイント 「力の直接計算」と「エネルギーの傾き」の 2 ルートが同じ答えを指す — 第2巻・実戦3-3(ばねつきピストン)と同じ二重帳簿の思想。エネルギー法は"E/2 の議論"を経由せずに済む強みがある。
B6【電荷保存と回路】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
切り離された正極側の島の電荷が保存:C₁V₀ = (C₁+C₂)V
V = C₁V₀/(C₁+C₂)
ポイント 分母は「合成容量」、分子は「元の電気量」— V = (総電荷)/(総容量) と読める。第2巻・気体の 2 容器接続(mol 保存 → 加重平均)と同じ顔の式。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
同符号どうしの接続:総電荷 C₁V₁+C₂V₂ が保存 —
V = (C₁V₁+C₂V₂)/(C₁+C₂)(容量を重みにした加重平均)
逆向き(正極と負極)の接続:電荷が打ち消し合い —
V = |C₁V₁−C₂V₂|/(C₁+C₂)(C₁V₁ = C₂V₂ なら電圧 0:完全中和)
ポイント 保存するのは符号込みの電気量 — 逆接続は「+の水と−の水を混ぜる」。差だけが生き残る、という電荷の代数。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
2 つのコンデンサーの間の島(導体部分)は外部と絶縁されており、電気量の合計が保存する。
はじめ中性(合計 0)なら、接続後も(−Q₁)+(+Q₂) = 0、すなわち Q₁ = Q₂ — 直列の 2 つのコンデンサーの電気量は等しい ∎
ポイント 「島を見つけて合計を書く」— 直列 Q 共通(B2-2)の根拠であり、初めから帯電した島(合計 ≠ 0)の応用問題への入口。島の囲い方が電荷保存の使い方のすべて。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦2-1【共テ形式:コンデンサーの操作】★★
電気容量 4.0 μF の平行板コンデンサーを 50 V の電池で充電した。
① たくわえられた電気量は [ア].[イ]×10⁻⁴ C である。
② たくわえられたエネルギーは [ウ].[エ]×10⁻³ J である。
③ 電池を切り離してから、極板間隔を 2 倍にした。極板間の電圧は [オカキ] V になる。
④ ③のとき、極板間の電場の強さは:[ク]
(a) 2 倍になる
(b) 1/2 倍になる
(c) 変わらない
⑤ ③のとき、たくわえられたエネルギーは [ケ].[コ]×10⁻² J になる。この増加分を供給したものとして最も適当なのは:[サ]
(a) 電池
(b) 極板を引き離した外力
(c) 極板間の空気
実戦2-2【記述形式:直列と直並列】★★★
2.0 μF のコンデンサー C₁ と 3.0 μF のコンデンサー C₂ を直列につなぎ、全体に 100 V の電池を接続した。
① 合成容量を求めよ。
② 各コンデンサーにたくわえられる電気量を求めよ。
③ 各コンデンサーの電圧を求めよ。
④ 各コンデンサーの静電エネルギーを求め、その和が (1/2)QV(Q:共通の電気量、V = 100 V)に等しいことを確かめよ。
⑤ 次に、電池をつないだまま C₂ に 3.0 μF のコンデンサー C₃ を並列に追加した。全体の合成容量と、C₁ の電圧を求めよ。
実戦2-3【記述形式:充電済みコンデンサーの接続】★★★
電気容量 C₁ のコンデンサーを電圧 V₀ で充電し、電池から切り離した。その後、帯電していない電気容量 C₂ のコンデンサーに並列に接続した。
① 接続前に C₁ にたくわえられていた電気量 Q₀ を求めよ。
② 接続後の共通の電圧 V を、電荷保存を用いて求めよ。
③ 接続後の各コンデンサーの電気量を求めよ。
④ この操作で失われた静電エネルギー ΔU を、C₁、C₂、V₀ で表せ。
⑤ C₁ = 2.0 μF、C₂ = 3.0 μF、V₀ = 100 V のとき、V と ΔU の値を求めよ。また、失われたエネルギーは何になったか。
実戦問題 解答・解説
実戦2-1
考え方 「充電 → 切り離し(Q 一定)→ 間隔 2 倍」の定番操作 — ③④⑤は A3-3・A7-2 の再演。Q 一定の宣言を最初に書けば、あとは Q = CV と 3 つのエネルギーの顔が自動で答える。
実戦2-1解答を見る解答を隠す
解答
① Q = CV = 4.0×10⁻⁶×50 = 2.0×10⁻⁴ C(ア = 2、イ = 0)
② U = (1/2)CV² = (1/2)×4.0×10⁻⁶×2500 = 5.0×10⁻³ J(ウ = 5、エ = 0)
③ Q 一定、C は 1/2(2.0 μF)→ V = Q/C = 100 V(オカキ = 100)
④ E = Q/(ε₀S) は Q だけで決まる:(c) 変わらない(ク = (c))
(検算:E = V/d = 2 倍/2 倍 = 1 ○)
⑤ U' = Q²/(2C') = (2.0×10⁻⁴)²/(2×2.0×10⁻⁶) = 1.0×10⁻² J(ケ = 1、コ = 0)
増加分 5.0×10⁻³ J は (b) 外力の仕事(サ = (b))
ポイント
• ④は 2 ルート(E = Q/ε₀S 不変/E = V/d = 2/2)の一致で確信をもって選べる — 一様場の E は「電荷の量」だけが決める。
• ⑤の選択肢 (a) は切り離した時点で退場済み — 操作の時系列(いつ切ったか)が解答の分かれ目。
実戦2-2
考え方 直列(Q 共通・V 逆比)の完全処理 ①〜④に、⑤で「並列を抱えた直列」への拡張 — 内側から畳む合成の手順(B2-3)と、電圧の再分配を一気に。
実戦2-2解答を見る解答を隠す
解答
① 1/C = 1/2.0+1/3.0 = 5/6 → C = 1.2 μF
② 直列は共通:Q = CV = 1.2×10⁻⁶×100 = 1.2×10⁻⁴ C(両方)
③ V₁ = Q/C₁ = 60 V、V₂ = Q/C₂ = 40 V(和 100 V ○)
④ U₁ = (1/2)QV₁ = 3.6×10⁻³ J、U₂ = (1/2)QV₂ = 2.4×10⁻³ J
和 = 6.0×10⁻³ J = (1/2)×1.2×10⁻⁴×100 ○
⑤ 並列部:C₂+C₃ = 6.0 μF。直列合成:1/C = 1/2.0+1/6.0 = 4/6 → C = 1.5 μF
新しい共通電気量:Q' = 1.5×10⁻⁶×100 = 1.5×10⁻⁴ C
C₁ の電圧:V₁' = Q'/C₁ = 75 V(並列部は 25 V:和 100 ○)
ポイント
• ③の「小さい容量に大きい電圧」(60 > 40)— 直列の逆比を体感する数字。④のエネルギーも同じ比 3:2 で分配((1/2)QV の Q が共通だから)。
• ⑤で C₁ の電圧が 60 → 75 V に上がった — 相方の容量が増えるほど、直列の相手はより多くの電圧を背負う。変化の向きの吟味まで。
実戦2-3
考え方 A8 と B3-3・B6-1 を 1 本の記述に統合 — 「電荷保存で V → 分配 → エネルギーの差 → 行き先」という、コンデンサー章の定番ストーリーの完全版。
実戦2-3解答を見る解答を隠す
解答
① Q₀ = C₁V₀
② 孤立した正極側の島で電荷保存:C₁V₀ = (C₁+C₂)V
V = C₁V₀/(C₁+C₂)
③ Q₁ = C₁V = C₁²V₀/(C₁+C₂)、Q₂ = C₂V = C₁C₂V₀/(C₁+C₂)(和 = Q₀ ○)
④ ΔU = (1/2)C₁V₀²−(1/2)(C₁+C₂)V²
ΔU = C₁C₂V₀²/{2(C₁+C₂)}
⑤ V = 2.0×100/5.0 = 40 V
ΔU = 2.0×3.0×10⁻¹²×10⁴/(2×5.0×10⁻⁶) = 6.0×10⁻³ J
失われた分は、接続の瞬間の電流が導線の抵抗で発生させたジュール熱(一部は電磁波)になった。
ポイント
• ④は「差をとって共通因数でくくる」だけだが、結果が必ず正(C₁C₂ > 0)であることが物理の主張 — 電荷のお引っ越しに無料はない。
• ⑤の数値が A8 の 3 問と完全に一致 — 文字の一般式と数値の各論が同じ物語の 2 つの解像度であることを、章の最後に確認する設計。
第3章 直流回路
電荷が流れ出すと「回路」が始まる。憲法は オームの法則 V = RI と 電力 P = VI — そして回路のすべてを支配するのがキルヒホッフの 2 法則(電流の保存と、1 周の電圧の帳尻)。電池には内部抵抗という個性があり(V = E−rI)、抵抗の直列・並列はコンデンサーと式が入れ替わる。この章は「回路図に電流の矢印と電位の高低を書き込む」作図の章 — 図が正しければ、式は写経で済む。
この章の公式・要点まとめ
電流の定義
• I = Q/t(1 秒あたりに断面を通る電気量。単位 A = C/s)
• 電流の向きは正電荷の流れる向き(自由電子は逆向きに動いている)
• ミクロには I = envS(e:電気素量、n:電子の数密度、v:電子の平均の速さ、S:断面積)
オームの法則と抵抗
• V = RI(R [Ω]:抵抗)
• 抵抗率:R = ρL/S(長いほど大きく、太いほど小さい。ρ [Ω·m] は材質の個性)
• 温度が上がると金属の抵抗は大きくなる(熱運動が電子の邪魔をする)
直列・並列の合成抵抗
• 直列:R = R₁+R₂(I が共通、V は和)— 電圧は抵抗に比例して分配
• 並列:1/R = 1/R₁+1/R₂(V が共通、I は和)— 電流は抵抗に反比例して分配
• ※コンデンサー(第2章)と直列・並列の式が入れ替わる
電力とジュール熱
• P = VI = RI² = V²/R(3 つの顔 — 共通量に合わせて選ぶ)
• 発生する熱(ジュール熱):Q = Pt = RI²t(電力量 W = Pt。1 kWh = 3.6×10⁶ J)
電池(起電力と内部抵抗)
• 起電力 E:電池が 1 C あたりに与えるエネルギー(電圧の"定価")
• 端子電圧 V = E−rI(r:内部抵抗)— 電流を流すほど"値引き"される
• I = 0(電流を流さない)とき V = E:開放電圧の測定で E が分かる
キルヒホッフの法則(回路の憲法)
• 第 1 法則:分岐点で「流れ込む電流の和 = 流れ出す電流の和」(電荷の保存)
• 第 2 法則:任意の 1 周について「起電力の和 = 電圧降下(RI)の和」(電位は 1 周で元に戻る)
• 使い方:電流に向きを仮定して文字を置く → ループごとに第 2 法則 → 負の答えは「向きが逆」と読む
解法チャート(直流回路)
1. 回路図を描き、電流の矢印(向きの仮定)と電池の +− を書き込む
2. 合成できる部分は内側から畳む(直列は和、並列は逆数和)
3. 複雑ならキルヒホッフ:分岐で第 1 法則、ループで第 2 法則
4. 電力・熱は P = VI・RI²・V²/R から共通量を含む顔を選ぶ
5. 検算:電圧の和が 1 周で合うか/負の電流は向きの読み替え/端子電圧 V = E−rI = RI の両立
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
金属の導線を流れる電流の向きと、自由電子が移動する向きは同じである。○か×か。
Q2
同じ材質の導線を 2 倍の長さにすると、抵抗はどうなるか。
(a) 2 倍になる
(b) 1/2 倍になる
(c) 変わらない
Q3
2 つの抵抗を並列につなぐと、合成抵抗はどの抵抗よりも小さくなる。○か×か。
Q4
電池から電流を流しているとき、端子電圧(電池の両端の電圧)は起電力と比べてどうなるか。
(a) 起電力より大きい
(b) 起電力に等しい
(c) 起電力より小さい
Q5
回路の分岐点で成り立つ「流れ込む電流の和 = 流れ出す電流の和」は、何の保存を表すか。
(a) エネルギーの保存
(b) 電気量(電荷)の保存
(c) 運動量の保存
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — 電流の向きは正電荷の流れる向きという約束(歴史的事情)。実際に動く電子は負なので逆向き — 「矢印と電子は逆」を最初に固定する。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(a) — R = ρL/S:L に比例(長い水道管ほど流れにくい)。太さ 2 倍(S 2 倍)なら半分、と対で覚える。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:○ — 並列は「通り道が増える」ので必ず流れやすくなる(合成 < 最小の抵抗)。コンデンサーの直列(必ず小さくなる)と対になる関係。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(c) — V = E−rI:内部抵抗の値引き。電流を流すほど端子電圧は下がる — 古い電池で豆電球が暗い理由。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — 分岐点に電荷はたまらない(たまれば電位が変わってしまう)— 電荷の保存が第 1 法則の正体。第 2 法則の正体は「電位の 1 周の帳尻」= エネルギーの保存。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り、e = 1.6×10⁻¹⁹ C、電池の内部抵抗は無視できるものとする。
A1【電流の定義 I = Q/t】★
A1-1
導線のある断面を、2.0 秒間に 4.0 C の電気量が通過した。電流の大きさを求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
I = Q/t = 4.0/2.0 = 2.0 A
ポイント 電流は「毎秒何クーロン」— 単位 A = C/s の読み下しが定義そのもの。川の流量(毎秒何 m³)のイメージ。
A1-2(類題)
1.6 A の電流が流れる導線の断面を、1.0 秒間に通過する電子の個数を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
通過する電気量:Q = It = 1.6 C
個数 = 1.6/(1.6×10⁻¹⁹) = 1.0×10¹⁹ 個
ポイント 1 A オーダーの電流でも毎秒 10¹⁹ 個 — 電子 1 個の電気量の小ささが、天文学的な個数で補われている。
A1-3(類題)
0.50 A の電流を 10 分間流した。通過した電気量を求めよ。また、電流の向きと電子の移動の向きの関係を述べよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Q = It = 0.50×600 = 3.0×10² C
電子は負電荷なので、電流の向きと逆向きに移動している。
ポイント 時間の単位(分 → 秒)の換算を忘れずに。「矢印(電流)と中身(電子)は逆」— 回路のどの問題でも前提になる約束。
A2【オームの法則 V = RI】★
A2-1
20 Ω の抵抗に 100 V の電圧を加えた。流れる電流を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
I = V/R = 100/20 = 5.0 A
ポイント V = RI — 3 文字の三角形(どの 1 つも他の 2 つで書ける)。R は「流れにくさ」:同じ電圧なら R が大きいほど I は小さい。
A2-2(類題)
ある抵抗に 12 V を加えると 0.30 A 流れた。抵抗値を求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
R = V/I = 12/0.30 = 40 Ω
ポイント 抵抗の測定 = 「電圧 ÷ 電流」— 実験でオームの法則を"使って"未知の R を決める、逆算の基本形。
A2-3(類題)
ある抵抗の電流と電圧の関係を測ると、V = 5.0 V のとき I = 0.20 A の点を通る、原点を通る直線のグラフ(横軸 V、縦軸 I)になった。この抵抗の値を求めよ。また、このグラフの傾きは何を表すか。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
R = V/I = 5.0/0.20 = 25 Ω
グラフの傾きは I/V = 1/R(抵抗の逆数) — 傾きが急なほど流れやすい(低抵抗)。
ポイント I-V グラフが原点を通る直線 = オームの法則に従う証拠。傾きの意味(1/R か R か)は軸の取り方で変わる — 軸の確認が第一手(第2巻のグラフ読みと同じ作法)。
A3【抵抗率 R = ρL/S】★★
A3-1
抵抗率 1.1×10⁻⁶ Ω·m のニクロム線(長さ 2.0 m、断面積 1.0×10⁻⁶ m²)の抵抗を求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
R = ρL/S = 1.1×10⁻⁶×2.0/(1.0×10⁻⁶) = 2.2 Ω
ポイント R = ρL/S — 「材質(ρ)× 形(L/S)」の分業。ニクロム(電熱線)の ρ は銅の約 70 倍:わざと流れにくくして熱を作る材料。
A3-2(類題)
ある導線の長さを 2 倍にし、断面積を半分にした。抵抗は何倍になるか。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
R ∝ L/S:2 倍 ÷ (1/2) = 4 倍
ポイント 比例・反比例の掛け合わせで即答。「引き伸ばす」(体積一定で L を 2 倍 → S は自動で半分)なら 4 倍 — 針金を伸ばすと抵抗が急増する理由。
A3-3(類題)
長さ 10 m、断面積 1.0×10⁻⁶ m² の導線の抵抗が 0.17 Ω であった。この導線の抵抗率を求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
ρ = RS/L = 0.17×1.0×10⁻⁶/10 = 1.7×10⁻⁸ Ω·m
ポイント ρ の逆算 → 材質の推定(1.7×10⁻⁸ Ω·m は銅の値)。第2巻の比熱測定(数値から物質を当てる)と同じ、「測って個性を特定する」型。
A4【直列・並列の合成】★★
A4-1
20 Ω と 30 Ω の抵抗を直列につなぎ、全体に 100 V を加えた。①合成抵抗、②流れる電流、③各抵抗の電圧を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
① R = 20+30 = 50 Ω
② I = 100/50 = 2.0 A
③ V₁ = 20×2.0 = 40 V、V₂ = 30×2.0 = 60 V(和 100 V ○)
ポイント 直列は「I 共通、V は抵抗に比例して分配」— コンデンサーの直列(V は容量に反比例:第2章)と逆なので、章をまたいだ混同に注意。
A4-2(類題)
20 Ω と 30 Ω を並列につなぎ、全体に 60 V を加えた。①合成抵抗、②全体の電流、③各抵抗の電流を求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 1/R = 1/20+1/30 = 5/60 → R = 12 Ω
② I = 60/12 = 5.0 A
③ 20 Ω:I₁ = 60/20 = 3.0 A/30 Ω:I₂ = 60/30 = 2.0 A(和 5.0 A ○)
ポイント 並列は「V 共通、I は抵抗に反比例」— 小さい抵抗に大きい電流(水は広い道へ)。「和分の積」20×30/50 = 12 の時短も常備。
A4-3(類題)
8.0 Ω の抵抗と、「30 Ω と 20 Ω の並列」を直列につなぎ、全体に 100 V を加えた。①全体の合成抵抗、②全体の電流、③並列部分の各抵抗を流れる電流を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 並列部:30×20/50 = 12 Ω。全体:8.0+12 = 20 Ω
② I = 100/20 = 5.0 A
③ 並列部の電圧:V = 12×5.0 = 60 V
30 Ω:2.0 A/20 Ω:3.0 A(和 5.0 A ○)
ポイント 直並列は「内側から畳む → 外から電圧・電流を配り直す」の往復 — 畳んで I を出し、開いて分配する。各段の検算(和が合うか)を挟みながら進む。
A5【電力とジュール熱】★★
A5-1
100 V の電圧で 2.0 A の電流が流れている電熱器の消費電力を求めよ。また、5.0 分間に発生する熱量を求めよ。
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解答
P = VI = 100×2.0 = 2.0×10² W
熱量:Q = Pt = 200×300 = 6.0×10⁴ J
ポイント P = VI(毎秒のエネルギー)× 時間 = 熱量。分 → 秒の換算(5.0 分 = 300 s)を先に — 第2巻・第1章の Q = mcΔT とつなげば「何 ℃ 上がるか」まで届く。
A5-2(類題)
「100 V - 200 W」と表示された電球がある。定格どおり使ったときの抵抗値と電流を求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
P = V²/R より R = V²/P = 10⁴/200 = 50 Ω
I = P/V = 200/100 = 2.0 A
ポイント 定格表示は「この電圧で使えばこの電力」という約束 — V²/R の顔が定格計算の主役。(点灯中の値:実際の抵抗は温度で変わる — A2-3 の直線からのずれ、B6-3 へ)
A5-3(類題)
50 Ω の抵抗 2 本を、①直列、②並列にして、100 V の電源につないだ。全体の消費電力をそれぞれ求めよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 直列:R = 100 Ω → P = V²/R = 10⁴/100 = 1.0×10² W
② 並列:R = 25 Ω → P = 10⁴/25 = 4.0×10² W(直列の 4 倍)
ポイント 同じ電源なら P = V²/R:合成抵抗が小さいほど大電力 — 並列は"食いしん坊"。もし電流源(I 共通)なら P = RI² で逆転する — 「何が共通か」で顔を選ぶ思想はここでも。
A6【電池の起電力と内部抵抗】★★★
A6-1
起電力 1.6 V、内部抵抗 0.50 Ω の電池に、3.5 Ω の抵抗をつないだ。流れる電流と、電池の端子電圧を求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
回路全体:I = E/(R+r) = 1.6/(3.5+0.50) = 0.40 A
端子電圧:V = E−rI = 1.6−0.50×0.40 = 1.4 V(= RI = 3.5×0.40 ○)
ポイント 内部抵抗は「電池の中の直列抵抗」として回路図に描き込む — E と r をセットで箱に入れる図が全て。V = E−rI = RI の両側からの一致が検算。
A6-2(類題)
ある電池は、電流を流さないとき端子電圧が 1.6 V、0.40 A 流したとき 1.4 V であった。起電力と内部抵抗を求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
電流を流さないときの端子電圧 = 起電力:E = 1.6 V
V = E−rI より r = (1.6−1.4)/0.40 = 0.50 Ω
ポイント 開放電圧 = 起電力(rI の値引きがゼロ)— E と r の測定は「流さないで 1 回、流して 1 回」の 2 点で決まる(グラフ版は実戦3-2)。
A6-3(類題)
A6-1 の電池の両端子を、抵抗の無視できる導線で直接つないだ(短絡)。流れる電流を求めよ。また、この操作が危険な理由を一言述べよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
I = E/r = 1.6/0.50 = 3.2 A
理由:大電流のジュール熱(P = rI² = 5.1 W)が電池内部で発生し、発熱・破損の恐れがあるため。
ポイント 短絡電流は内部抵抗だけが抑えている上限値 — r が小さい電池ほど危険。「電池を導線で直結してはいけない」の物理的な根拠。
A7【キルヒホッフの法則】★★★
A7-1
回路の分岐点に、3.0 A の電流が流れ込み、一方の枝へ 1.8 A が流れ出している。もう一方の枝へ流れ出す電流を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
第 1 法則:流入 = 流出
3.0 = 1.8+I → I = 1.2 A
ポイント 分岐点に電荷はたまらない — 収支は常にゼロ(概念チェック Q5)。矢印の向きを図に描いてから足し引きする。
A7-2(類題)
起電力 6.0 V、内部抵抗 0.50 Ω の電池に 2.5 Ω の抵抗をつないだ回路について、第 2 法則(1 周の電圧の式)を書き、電流と端子電圧を求めよ。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
1 周:E = rI+RI → 6.0 = (0.50+2.5)I
I = 2.0 A、端子電圧 V = RI = 5.0 V
ポイント 第 2 法則は「起電力(昇り)= 電圧降下(下り)の合計」— 電位の山を 1 周すると必ず元の高さに戻る、というエネルギーの帳尻。A6 の式はこの法則の最小例。
A7-3(類題)
起電力 6.0 V の電池と 2.0 V の電池を、互いに逆向き(+と+が向き合う向き)に直列にし、合計 2.0 Ω の抵抗(内部抵抗込み)をつないだ。流れる電流の大きさと向きを求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
1 周:6.0−2.0 = 2.0×I
I = 2.0 A、6.0 V の電池が流そうとする向き(2.0 V の電池は逆向きに電流を流される = 充電される向き)
ポイント 逆向きの起電力は引き算 — 強い方が回路を支配し、弱い方は「充電される」側に回る(充電器の原理)。起電力の符号は「電流がその電池を +→− に通るか −→+ か」で決める。
A8【電流計と電圧計】★★
A8-1
①電流計は回路にどうつなぐか。②電圧計はどうつなぐか。それぞれ理由(内部抵抗の大小)とともに答えよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
① 電流計:測りたい部分に直列。内部抵抗が小さく作られており、回路の電流をほとんど乱さない。
② 電圧計:測りたい部分に並列。内部抵抗が大きく、余計な電流をほとんど吸い取らない。
ポイント 「直列の A は低抵抗、並列の V は高抵抗」— つなぎ方と内部抵抗はセットの設計思想:計器は"いないふり"をするのが理想。逆につなぐと計器を壊す(電流計の並列は短絡)。
A8-2(類題)
内部抵抗 9.0 Ω、最大 1.0 A まで測れる電流計を、10 A まで測れるようにしたい。並列につなぐ抵抗(分流器)の値を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
最大時:電流計に 1.0 A、分流器に残り 9.0 A。並列なので電圧が等しい:
9.0×1.0 = R×9.0 → R = 1.0 Ω
ポイント 分流器は「電流のバイパス」— 9/10 を逃がすには電流比 1:9、並列(V 共通)だから抵抗は逆比で r/9。一般式 R = r/(n−1) も「n 倍計」として携帯。
A8-3(類題)
内部抵抗 2.0 kΩ、最大 10 V まで測れる電圧計を、50 V まで測れるようにしたい。直列につなぐ抵抗(倍率器)の値を求めよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
最大時、電圧計に 10 V、倍率器に残り 40 V。直列なので電流が共通 — 電圧は抵抗に比例:
R:2.0 kΩ = 40:10 → R = 8.0 kΩ
ポイント 倍率器は「電圧の肩代わり」— 4/5 を背負わせるには直列(I 共通)で抵抗 4 倍。一般式 R = (n−1)r_V。分流器(並列・逆比)との対で整理。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。電流の矢印の仮定と、電位の高低の書き込みから始めるのが作法。B4(キルヒホッフの連立)とB6(コンデンサー入り回路)が入試の最頻出。
B1【電流のミクロな正体 I = envS】★★★
B1-1 断面積 S の導線の中を、数密度 n [個/m³] の自由電子(電気量 −e)が平均の速さ v で移動している。1 秒間に断面を通過する電子の数を考えて、電流が I = envS と表せることを導け。
B1-2 銅線(n = 8.5×10²⁸ /m³、S = 1.0×10⁻⁶ m²)に 6.8 A の電流が流れている。自由電子の平均の速さを求めよ。
B1-3 B1-2 の結果によると電子は極めて遅い。それなのに、スイッチを入れると部屋の電灯がほぼ瞬時に点くのはなぜかを説明せよ。
B2【合成抵抗の導出と対比】★★★
B2-1 抵抗 R₁、R₂ の直列接続について、電流が共通であることから合成抵抗 R = R₁+R₂ を導け。
B2-2 抵抗 R₁、R₂ の並列接続について、電圧が共通であることから 1/R = 1/R₁+1/R₂ を導け(和分の積の形も書け)。
B2-3 抵抗とコンデンサーでは、直列・並列の合成式が入れ替わる(抵抗の直列 ⇔ コンデンサーの並列が「単純な和」)。それぞれの直列・並列で「何が共通で何が和になるか」を表に整理し、式が入れ替わる理由を述べよ。
B3【電池の出力と最大電力】★★★
B3-1 起電力 E、内部抵抗 r の電池に可変抵抗 R をつないだ。電流 I と端子電圧 V を E、r、R で表し、V-I グラフ(横軸 I)の切片と傾きの意味を述べよ。
B3-2 外部抵抗 R での消費電力 P を E、r、R で表せ。
B3-3 B3-2 の P が最大になる R の条件を求めよ(式変形のヒント:P = E²/{(√R−r/√R)²+4r} と変形できる)。
B4【キルヒホッフの連立】★★★
B4-1 複数のループをもつ回路でキルヒホッフの法則を使う手順(電流の仮定 → 第 1 法則 → 第 2 法則 → 負の解の読み)を、注意点とともに整理せよ。
B4-2 起電力 12 V の電池(抵抗 R₁ = 2.0 Ω を含む枝)と、起電力 6.0 V の電池(抵抗 R₂ = 2.0 Ω を含む枝)が、抵抗 R₃ = 2.0 Ω を共有して 2 つのループを作っている(内部抵抗は無視)。各枝の電流を求めよ。
B4-3 B4-2 で、6.0 V の電池を 3.0 V の電池に取り替えた。各枝の電流を求めよ(負の答えが出た場合は、その意味も述べよ)。
B5【ホイートストンブリッジ】★★★
B5-1 4 つの抵抗 R₁〜R₄ をひし形につなぎ、対角に検流計を入れたブリッジ回路で、検流計に電流が流れない(平衡)条件が R₁/R₂ = R₃/R₄ となることを導け(R₁ と R₂、R₃ と R₄ がそれぞれ直列の枝をなすとする)。
B5-2 R₁ = 2.0 Ω、R₂ = 3.0 Ω、R₃ = 4.0 Ω のとき、平衡させるための R₄ を求めよ。
B5-3 ブリッジ法が未知抵抗の精密な測定に向いている理由を、「検流計は何を検出しているか」に注目して述べよ。
B6【コンデンサーを含む回路・非直線抵抗】★★★
B6-1 直流回路にコンデンサーが含まれるとき、スイッチを入れて十分に時間がたった後の扱い方(コンデンサーの枝の電流、電圧の決め方)を説明せよ。
B6-2 スイッチを入れた直後のコンデンサーの扱い方(電圧、流れる電流)を説明せよ。
B6-3 電球のように、電流と電圧の関係が直線にならない(非直線)抵抗を含む回路では、動作点(実際の電流・電圧)をどうやって求めるか。「特性曲線」と「回路の条件式の直線」という言葉を使って説明せよ。
B問題 解答・解説
B1【電流のミクロな正体 I = envS】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
1 秒間に断面を通過するのは、断面の後方長さ v の円柱(体積 vS)の中にいた電子 — 個数は n×vS。
運ぶ電気量は e×nvS。よって I = envS ∎
ポイント 「1 秒で通る箱(体積 vS)の中身を数える」— この箱の絵が導出のすべて。第2巻・分子運動論(壁に当たる分子の勘定)と同じ数え方の型。
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解答
v = I/(enS) = 6.8/(1.6×10⁻¹⁹×8.5×10²⁸×1.0×10⁻⁶)
= 6.8/(1.36×10⁴) = 5.0×10⁻⁴ m/s
ポイント 電子の行進は毎秒 0.5 mm — 歩くよりはるかに遅い。「電流は速いのに電子は遅い」の数値的な衝撃を、次問で解決する。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
導線の中にはあらかじめ自由電子がぎっしり詰まっている。スイッチを入れると、電場(押せの合図)がほぼ光の速さで導線全体に伝わり、各地の電子が一斉に動き出す — 遠くの電子が届くのを待つ必要はない。
(ホースに水が満ちていれば、蛇口を開けた瞬間に先端から水が出るのと同じ)
ポイント 「信号は速く、担い手は遅い」— 玉突きのイメージ。電流の速さと電子の速さは別物、という区別が B1 三部作の結論。
B2【合成抵抗の導出と対比】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
直列では電流 I が共通。全体の電圧は
V = R₁I+R₂I = (R₁+R₂)I
V = RI と比べて R = R₁+R₂ ∎
ポイント 「I 共通・V は和」の 2 行 — 長い導線をつなぎ足す(L が伸びる:R = ρL/S)ことと同じ、と幾何でも読める。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
並列では電圧 V が共通。全体の電流は
I = V/R₁+V/R₂ = V(1/R₁+1/R₂)
I = V/R と比べて 1/R = 1/R₁+1/R₂、すなわち R = R₁R₂/(R₁+R₂) ∎
ポイント 「V 共通・I は和」— 道が増えれば流れやすい。和分の積は計算の時短だけでなく、「必ず最小の抵抗より小さい」ことの確認にも使える。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
| 接続 | 抵抗 | コンデンサー |
|---|---|---|
| 直列 | I 共通・V は和 → R は和 | Q 共通・V は和 → 1/C の和 |
| 並列 | V 共通・I は和 → 1/R の和 | V 共通・Q は和 → C は和 |
理由:単純な和になるのは「V と並んで和をとる量の係数」— 抵抗は V = RI(V が R に比例)、コンデンサーは Q = CV(Q が C に比例)。V を分け合う直列で足されるのは R、V を共有する並列で足されるのは C — 比例の相手(I か Q か)が逆だから、式が入れ替わる。
ポイント 丸暗記の危険地帯を、「何が共通で何が和か」の表 1 枚で永久解決 — 第2章 B2 との相互参照で二度と迷わない。
B3【電池の出力と最大電力】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
回路式:E = (R+r)I → I = E/(R+r)、V = RI = E−rI
V-I グラフ(横軸 I):切片(I = 0)が起電力 E、傾きが −r(内部抵抗) — 右下がりの直線。
ポイント 電池の"身分証"は V-I 直線 — 測定 2 点で E と r が決まる(実戦3-2)。理想の電池(r = 0)は水平線、という極端も添えて。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
P = RI² = E²R/(R+r)²
ポイント R → 0 でも R → ∞ でも P → 0(短絡は r が全部食い、開放は流れない)— 間のどこかに山がある、と形から予感する。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
変形:P = E²/{(√R−r/√R)²+4r}
分母の (√R−r/√R)² ≧ 0 は、√R = r/√R すなわち R = r のとき 0(分母最小)。
よって R = r(外部抵抗 = 内部抵抗)のとき P は最大、最大値 P = E²/(4r)。
ポイント 「負荷を電源に合わせる」(インピーダンス整合)の直流版 — スピーカーとアンプ、アンテナと受信機まで続く設計原理の原型。平方完成で微分いらず、も収穫。
B4【キルヒホッフの連立】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
手順:①各枝の電流に向きを仮定して文字を置く(I₁、I₂、…)②分岐点で第 1 法則(独立な点だけ)③ループごとに第 2 法則:「起電力の和 = RI の和」— 電池は電流が −極 → +極 に通るとき正、抵抗はループを回る向きと電流が同じとき +RI ④連立を解き、負の解は「仮定と逆向き」と読み替える。
注意:ループの数だけ第 2 法則、符号は回る向きを 1 つ決めて機械的に。
ポイント 符号規約を最初に宣言すれば、あとは写経 — 迷いは向きの仮定を絵に描いていないときに起こる。負の答えは失敗ではなく情報。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
共有抵抗 R₃ を流れる電流を I₃ = I₁+I₂(第 1 法則)として、
ループ 1(12 V 側):12 = 2.0I₁+2.0(I₁+I₂)
ループ 2(6.0 V 側):6.0 = 2.0I₂+2.0(I₁+I₂)
整理:12 = 4I₁+2I₂/6.0 = 2I₁+4I₂
解いて I₂ = 0、I₁ = 3.0 A、I₃ = 3.0 A
ポイント I₂ = 0 の種明かし:R₃ の電圧 = 2.0×3.0 = 6.0 V がちょうど E₂ と等しい — 押し合いが完全につり合い、6.0 V の電池は"傍観者"になる。答えの物理的な読みまでが解答。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
式:12 = 4I₁+2I₂/3.0 = 2I₁+4I₂
解いて I₁ = 3.5 A、I₂ = −1.0 A、I₃ = 2.5 A
I₂ < 0 の意味:仮定と逆向きに 1.0 A — 3.0 V の電池には、起電力の向きと逆に電流が流れ込んでいる(充電されている)。
ポイント 負の解の読み替えの実演 — 中央の電圧(2.0×2.5 = 5.0 V)が E₂ = 3.0 V を上回ったため、弱い電池が押し戻された。B4-2(拮抗)との比較で、回路の"力関係"が見える。
B5【ホイートストンブリッジ】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
検流計に電流が流れない ⇔ 検流計の両端(ブリッジの中点どうし)が同電位。
このとき各枝の電流はそのまま素通り(R₁ → R₂ に I、R₃ → R₄ に I')。
同電位の条件:R₁ の電圧降下 = R₃ の電圧降下、かつ R₂ = R₄ 側も等しい:
条件式:R₁I = R₃I'/R₂I = R₄I'
割り算して R₁/R₂ = R₃/R₄(たすき掛け R₁R₄ = R₂R₃)∎
ポイント 平衡の言い換え「中点が同電位 → 橋に流れない」が導出の心臓。割り算で電流(I、I')が消えるので、電源の電圧によらない条件になる — ブリッジの強みの源泉。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
条件:2.0/3.0 = 4.0/R₄ → R₄ = 6.0 Ω
ポイント 「比の 4 点セット」— どこか 1 つが未知でも比例式 1 本。たすき掛け 2.0×R₄ = 3.0×4.0 でも同じ。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
検流計が検出しているのは電流の値ではなく「電流がゼロかどうか」— ゼロ点の検出は、目盛りの精度や電源の変動に左右されにくい。
平衡条件も電源電圧を含まないため、既知抵抗の精度だけで未知抵抗が決まる — だから精密測定に向く。
ポイント 「測るより消す方が正確」— ゼロ位法という測定思想。第2巻の共鳴実験(差で補正を消す)と並ぶ、実験設計の知恵の系譜。
B6【コンデンサーを含む回路・非直線抵抗】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
十分時間がたつと充電が完了し、コンデンサーの枝には電流が流れない(I = 0)。
→ その枝を切り取った回路として電流を解き、コンデンサーの電圧は「並列にあたる部分の電圧」(枝の両端の電位差)として読む。Q = CV で電気量へ。
ポイント 「満水のダムには流れ込めない」— 定常状態のコンデンサーは電流的には不在、電圧的には健在。切って解き、電位差で戻る、の 2 手。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
直後は電荷がまだ 0 なので コンデンサーの電圧は 0 — その瞬間だけただの導線と同じにふるまう。
→ コンデンサーを導線に置き換えた回路で初期電流を求める。
ポイント 「直後は導線、十分後は断線」— コンデンサーの二つの極限の顔。この 2 状態をおさえれば、途中経過(徐々に充電)も定性的に描ける。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
電球の電流と電圧の関係は、測定された特性曲線(温度上昇で抵抗が増えるため、上に凸に寝ていく曲線)で与えられる。
一方、回路(電池 E・抵抗 R と直列)からは V = E−RI という直線(条件式)が成り立つ。
実際の動作点は、両方を同時に満たす点 = 特性曲線と直線の交点 — グラフ上で交点を読めばよい。
ポイント 「式が使えない相手には、グラフの交点で連立する」— 非直線素子の標準解法。直線 V = E−RI は B3-1 の電池の直線そのもの:部品ごとの"言い分"の交わる点が答え。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦3-1【共テ形式:直並列回路と電力】★★
起電力 120 V の電源(内部抵抗は無視できる)に、20 Ω の抵抗 R₁ を直列にし、その先に 60 Ω の抵抗 R₂ と 30 Ω の抵抗 R₃ を並列にしてつないだ。
① 回路全体の合成抵抗は [アイ] Ω である。
② 電源を流れる電流は [ウ].[エ] A である。
③ R₃ を流れる電流は [オ].[カ] A である。
④ R₁ で消費される電力は [キクケ] W である。
⑤ R₂ と R₃ で消費される電力を比べると:[コ]
(a) R₂(60 Ω)の方が大きい
(b) R₃(30 Ω)の方が大きい
(c) 等しい
実戦3-2【記述形式:電池の起電力と内部抵抗の測定】★★★
ある電池に可変抵抗をつなぎ、電流 I と端子電圧 V を測ったところ、I = 0.20 A のとき V = 1.5 V、I = 0.60 A のとき V = 1.1 V であった。
① V と I の間に成り立つ関係式を、起電力 E と内部抵抗 r を用いて書け。
② 横軸 I・縦軸 V のグラフを描くとどんな形になるか。切片と傾きの意味も述べよ。
③ この電池の E と r を求めよ。
④ 電流を 0.50 A 流したときの端子電圧と、そのときの外部抵抗の値を求めよ。
⑤ この電池を短絡したときに流れる電流を求めよ。
実戦3-3【記述形式:コンデンサーを含む直流回路】★★★
起電力 12 V の電池(内部抵抗は無視)に、R₁ = 2.0 Ω と R₂ = 4.0 Ω をこの順に直列につなぎ、R₂ に並列に電気容量 C = 3.0 μF のコンデンサー(はじめ帯電していない)を接続した。スイッチ S を閉じる。
① S を閉じた直後に電池を流れる電流を求めよ。
② 十分に時間がたった後に電池を流れる電流を求めよ。
③ そのときのコンデンサーの電圧を求めよ。
④ コンデンサーにたくわえられた電気量を求めよ。
⑤ コンデンサーにたくわえられた静電エネルギーを求めよ。
実戦問題 解答・解説
実戦3-1
考え方 直並列の定石(内から畳む → 外から配る:A4-3)に電力の顔選び(A5)を重ねる総合。⑤は「並列 = V 共通 → P = V²/R」の即断を試す。
実戦3-1解答を見る解答を隠す
解答
① 並列部:60×30/90 = 20 Ω。全体:20+20 = 40 Ω(アイ = 40)
② I = 120/40 = 3.0 A(ウ = 3、エ = 0)
③ 並列部の電圧:V = 20×3.0 = 60 V → R₃:I₃ = 60/30 = 2.0 A(オ = 2、カ = 0)
(R₂ は 1.0 A、和 3.0 A ○)
④ P₁ = R₁I² = 20×3.0² = 180 W(キクケ = 180)
⑤ 並列は V 共通(60 V)なので P = V²/R:抵抗の小さい R₃ の方が大きい:(b)(コ = (b))
(P₂ = 60 W、P₃ = 120 W)
ポイント
• 全体の検算:P 合計 = 120×3.0 = 360 W = 180+60+120 ○ — 電力の帳簿が 1 周で閉じることまで確かめる。
• ⑤の判断根拠は「共通なのは V」— もし直列(I 共通)なら P = RI² で大きい抵抗が勝つ:共通量で顔を選ぶ思想の試金石。
実戦3-2
考え方 B3-1(電池の直線)の実験版 — 2 点から直線を決め、切片(E)と傾き(−r)を読む。物理の測定が「1 次関数の決定」という数学に着地する典型。
実戦3-2解答を見る解答を隠す
解答
① V = E−rI
② 右下がりの直線 — 縦軸切片(I = 0)が起電力 E、傾きの大きさが内部抵抗 r。
③ 傾き:r = (1.5−1.1)/(0.60−0.20) = 1.0 Ω
切片:E = 1.5+1.0×0.20 = 1.7 V
④ V = 1.7−1.0×0.50 = 1.2 V、外部抵抗 R = V/I = 2.4 Ω
⑤ 短絡(V = 0):I = E/r = 1.7 A
ポイント
• ③の検算:もう 1 点でも E = 1.1+1.0×0.60 = 1.7 ○ — 両方の測定点に戻すのが直線決定の作法。
• ⑤は直線を V = 0 まで延長した横軸切片 — グラフの両端(切片)に E と短絡電流が住んでいる、という図の読み。
実戦3-3
考え方 B6-1・B6-2 の 2 つの極限(直後 = 導線/十分後 = 断線)を 1 つの回路で往復し、第2章(Q = CV・エネルギー)へ橋を架ける章またぎの総合。
実戦3-3解答を見る解答を隠す
解答
① 直後:コンデンサーの電圧 0 → R₂ は短絡され、回路は R₁ のみ:
I₀ = 12/2.0 = 6.0 A
② 十分後:コンデンサーの枝は電流 0 → R₁ と R₂ の単純な直列:
I = 12/(2.0+4.0) = 2.0 A
③ コンデンサーの電圧 = R₂ の電圧:V_C = 4.0×2.0 = 8.0 V
④ Q = CV_C = 3.0×10⁻⁶×8.0 = 2.4×10⁻⁵ C
⑤ U = (1/2)CV_C² = (1/2)×3.0×10⁻⁶×64 = 9.6×10⁻⁵ J
ポイント
• ①→②で電流が 6.0 → 2.0 A へ減衰していくのが充電の物語 — 2 つの極限を先に押さえれば、途中は「その間を滑らかにつなぐ」だけ。
• ③の「コンデンサーの電圧 = 並列相手の電圧」が章またぎの接続点 — 回路(第3章)で電圧を決め、蓄電(第2章)で Q と U に翻訳する分業。
第4章 電流と磁場
電気と磁気が出会う章。電流は磁場を作り(右ねじの法則:直線 H = I/(2πr)・円の中心 I/(2r)・ソレノイド nI)、磁場は電流に力を返す(F = IBL)— この往復書簡が、平行電流の引力からモーターまでを生む。ミクロの主役はローレンツ力 f = qvB:つねに速度と垂直で仕事をしない力が、荷電粒子を等速円運動(r = mv/(qB)、周期は速さによらない!)へ導く。第1巻・第7章の円運動が、磁場を舞台に再演される。
この章の公式・要点まとめ
磁場と磁力線
• 磁場(磁界)の向き:その点に置いた方位磁針の N 極が指す向き
• 磁力線:N 極から出て S 極へ。密なほど磁場が強い(電気力線と同じ文法)
• 磁場の強さ H [A/m] と磁束密度 B = μH [T](μ:透磁率。真空・空気では μ₀ = 4π×10⁻⁷ N/A²)
電流が作る磁場(右ねじの法則)
• 直線電流:H = I/(2πr) — 電流を右ねじの進む向きにすると、ねじの回る向きに同心円状
• 円形電流の中心:H = I/(2r)(N 回巻きなら N 倍)
• ソレノイド(内部):H = nI(n:1 m あたりの巻数)— 内部はほぼ一様
電流が磁場から受ける力
• F = IBL(電流 ⊥ 磁場のとき。角 θ なら F = IBLsinθ)
• 向き:フレミングの左手(中指 I・人差し指 B・親指 F)— 電流にも磁場にも垂直
• 平行電流:同じ向きは引き合い、逆向きは斥け合う。1 m あたり F = μ₀I₁I₂/(2πd)
ローレンツ力(荷電粒子が受ける力)
• f = qvB(v ⊥ B のとき)。向きは正電荷で左手(負電荷は逆)
• つねに速度と垂直 → 仕事をしない → 速さは変わらない
• 一様磁場に垂直に入射 → 等速円運動:qvB = mv²/r より
半径 r = mv/(qB)、周期 T = 2πm/(qB)(速さ・半径によらない)
解法チャート(電流と磁場)
1. 図に向きを描き込む:電流の矢印・磁場の向き(⊙ 表向き/⊗ 裏向き)・力の矢印
2. 磁場を作る側は右ねじ、力を受ける側は左手 — 「作る」と「受ける」を混同しない
3. 大きさは公式(H の 3 公式、F = IBL、f = qvB)、向きは必ず手と図で
4. 荷電粒子は「f = qvB を向心力に」— 第1巻・第7章の円運動へ接続
5. 検算:力が電流(速度)と磁場の両方に垂直か/平行電流の引き・斥けの向き
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
まっすぐな導線に電流を流すと、そのまわりに同心円状の磁場ができる。○か×か。
Q2
磁場の中の導線に電流を流したとき、導線が受ける力の向きは、電流と磁場に対してどうなっているか。
(a) 電流と同じ向き
(b) 磁場と同じ向き
(c) 電流にも磁場にも垂直な向き
Q3
平行な 2 本の導線に同じ向きの電流を流すと、2 本は引き合う。○か×か。
Q4
磁場中を運動する荷電粒子が受けるローレンツ力は、粒子に仕事をするか。
(a) 正の仕事をする
(b) 負の仕事をする
(c) 仕事をしない
Q5
一様な磁場に垂直に入射した荷電粒子の円運動の周期は、速さが 2 倍になるとどうなるか。
(a) 2 倍になる
(b) 1/2 倍になる
(c) 変わらない
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:○ — エルステッドの発見(1820):電流のまわりに、右ねじの向きの同心円の磁場。電気と磁気が初めて握手した歴史的事実。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(c) — 電磁力は両方に垂直(フレミング左手の親指)。「電流の向きに押される」でも「磁場の向きに押される」でもない、3 次元の直交がこの章の空間感覚。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:○ — 相手の電流が作る磁場の中で力を受ける、の連鎖 — 向きを追うと同向きは引力、逆向きは斥力(恋敵の逆:B3-2)。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(c) — ローレンツ力はつねに速度と垂直(f = qv×B の構造)— 垂直な力は仕事をしない(第1巻・第5章)。だから磁場は粒子の向きだけ変え、速さは変えない。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(c) — T = 2πm/(qB):速さも半径も入っていない。速い粒子は大きい円を同じ時間で回る — サイクロトロン(加速器)が成立する魔法の一行。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り、μ₀ = 4π×10⁻⁷ N/A²、π = 3.14、e = 1.6×10⁻¹⁹ C とする。
A1【磁場の向き(右ねじの法則)】★
A1-1
鉛直上向きに電流の流れる直線導線がある。導線の真東の点における磁場の向きを答えよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
右ねじ:親指を電流(上)に向けると、指の巻く向きは上から見て反時計回り。
真東の点では 北向き。
ポイント 右ねじは「親指 = 電流、巻く指 = 磁場」— 図を上から見た同心円(反時計回り)を描けば、東西南北のどこでも即答できる。
A1-2(類題)
磁力線の性質として正しいものをすべて選べ。
(a) N 極から出て S 極に入る
(b) 途中で交わったり枝分かれしたりしない
(c) 密なところほど磁場が強い
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
(a)(b)(c) すべて正しい
ポイント 電気力線(第1章)と同じ文法 — 「出る極・入る極」「交わらない」「密 = 強い」。ただし磁力線は必ず閉じた輪になる(N だけ・S だけの磁石は存在しない)点が電気との違い。
A1-3(類題)
南北方向に張った導線の真下に方位磁針を置き、導線に南から北へ電流を流した。磁針の N 極は東西どちらへ振れるか。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
右ねじ:電流(北向き)のまわりの磁場は、導線の真下では西向き。
N 極は西へ振れる。
ポイント エルステッドの実験の再現 — 「導線の下」の磁場の向きを右ねじで拾う練習。磁針は地磁気(北向き)との合成磁場を向くので、実際は西寄りに傾く。
A2【直線電流の磁場】★★
A2-1
3.14 A の直線電流から 0.50 m 離れた点の磁場の強さを求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
H = I/(2πr) = 3.14/(2×3.14×0.50) = 1.0 A/m
ポイント 直線電流の磁場は 1/r で減衰(逆2乗ではない! 点電荷の E = kQ/r² と混同しない)。分母の 2πr は「半径 r の円周」— 磁場が円周に沿って広がる形の反映。
A2-2(類題)
6.28 A の直線電流のまわりで、磁場の強さが 2.0 A/m になる点は、導線から何 m の位置か。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
r = I/(2πH) = 6.28/(2×3.14×2.0) = 0.50 m
ポイント 距離の逆算 — H ∝ 1/r なので「電流 2 倍・磁場 2 倍なら同じ距離」という比例の読みでも検算できる(A2-1 との比較)。
A2-3(類題)
A2-1 の点の磁束密度 B を求めよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
B = μ₀H = 4π×10⁻⁷×1.0 = 1.256×10⁻⁶ ≒ 1.3×10⁻⁶ T
ポイント B = μH が H と B の換算式(空気中は μ₀)。地磁気が約 3×10⁻⁵ T — 数 A の電流が 0.5 m 先に作る磁場は地磁気の 1/20 ほど、という量感。
A3【円形電流とソレノイド】★★
A3-1
半径 0.10 m の 1 巻きの円形コイルに 2.0 A の電流を流した。コイルの中心の磁場の強さを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
H = I/(2r) = 2.0/(2×0.10) = 10 A/m
ポイント 円形電流の中心は I/(2r) — 直線(2πr)と違い π がない。「直線は円周で割る、円の中心は直径で割る」と対で記憶。
A3-2(類題)
A3-1 のコイルを 50 回巻きにした。中心の磁場の強さを求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
H = N×I/(2r) = 50×10 = 5.0×10² A/m
ポイント N 巻きは同じ電流が N 本重なったのと同じ — 磁場は単純に N 倍(重ね合わせ)。少ない電流で強い磁場を得る、コイルの存在理由。
A3-3(類題)
1 m あたり 1000 回巻いたソレノイドに 2.0 A の電流を流した。内部の磁場の強さと磁束密度を求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
H = nI = 1000×2.0 = 2.0×10³ A/m
B = μ₀H = 4π×10⁻⁷×2.0×10³ ≒ 2.5×10⁻³ T
ポイント ソレノイドの内部はほぼ一様な磁場(棒磁石の内蔵版)— n は「総巻数」でなく「1 m あたり」である点が最頻出の事故。電磁石・MRI の心臓部。
A4【電流が磁場から受ける力 F = IBL】★★★
A4-1
磁束密度 0.50 T の一様な磁場の中に、磁場と垂直に長さ 0.30 m の導線を置き、2.0 A の電流を流した。導線が受ける力の大きさを求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
F = IBL = 2.0×0.50×0.30 = 0.30 N
ポイント F = IBL(I ⊥ B のとき)— 「電流の川」が磁場から受ける水圧のような力。3 文字の積、単位は A·T·m = N。
A4-2(類題)
鉛直上向きの磁場の中で、水平な導線に北向きの電流を流した。導線が受ける力の向きを答えよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
フレミングの左手:中指(電流)を北、人差し指(磁場)を上に向けると、親指は東。
東向き
ポイント 左手の指の割り当て(中指から I・B・F = 電・磁・力)を固定して体に覚えさせる — 向きの問題は公式でなく手で解く。
A4-3(類題)
0.20 m 離れた 2 本の平行な導線に、同じ向きに 10 A ずつの電流を流した。導線 1 m あたりにはたらく力の大きさと種類を求めよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
1 m あたり:F = μ₀I₁I₂/(2πd) = (4π×10⁻⁷×10×10)/(2π×0.20)
= 2×10⁻⁷×100/0.20 = 1.0×10⁻⁴ N/m の引力
ポイント μ₀/(2π) = 2×10⁻⁷ をひとかたまりで使うと速い。同じ向きは引力 — 「相手の作る磁場の中で左手」の 2 段推論の結果(導出は B3)。
A5【F = IBL の応用】★★★
A5-1
磁束密度 0.40 T の磁場の中に、磁場と 30° の角をなす長さ 0.50 m の導線を置き、5.0 A の電流を流した。導線が受ける力を求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
F = IBLsinθ = 5.0×0.40×0.50×sin30° = 1.0×0.50 = 0.50 N
ポイント 斜めのときは sinθ(垂直な成分だけが効く) — θ = 90° で最大、θ = 0°(平行)で 0。力の分解(第1巻・第3章)の磁気版。
A5-2(類題)
磁場と平行に置いた導線に電流を流すと、導線が受ける力はいくらか。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
θ = 0 なので F = 0(力を受けない)
ポイント 磁場に沿って流れる電流は"素通り" — 電磁力は横切る成分にしか働かない。ソレノイド内の軸方向の導線が力を受けない、などの判定に使う。
A5-3(類題)
長さ 0.20 m、質量 4.0×10⁻³ kg のまっすぐな導線を、水平な磁場(磁束密度 0.98 T)と垂直に置き、電流を流して宙に浮かせたい。必要な電流の大きさを求めよ。g = 9.8 m/s² とする。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
つり合い:IBL = mg
I = mg/(BL) = 4.0×10⁻³×9.8/(0.98×0.20) = 3.92×10⁻²/0.196 = 0.20 A
ポイント 電磁力 vs 重力のつり合い(第1巻・第3章の型に F = IBL が参加)— リニアモーターカーの浮上の最小モデル。図示(上向き IBL、下向き mg)から 1 行。
A6【ローレンツ力 f = qvB】★★★
A6-1
磁束密度 0.50 T の磁場の中を、電気量 1.6×10⁻¹⁹ C の正の粒子が磁場と垂直に速さ 2.0×10⁶ m/s で運動している。受けるローレンツ力の大きさを求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
f = qvB = 1.6×10⁻¹⁹×2.0×10⁶×0.50 = 1.6×10⁻¹³ N
ポイント f = qvB — 電流の力 F = IBL の"1 粒版"(つながりは B6-1)。極小の力だが、粒子の質量も極小なので加速度は巨大。
A6-2(類題)
鉛直上向きの磁場の中を、正の粒子が東向きに運動している。受けるローレンツ力の向きを答えよ。また、同じ運動をする電子ならどうか。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
左手(中指 = 速度の向き:東、人差し指 = 磁場:上)→ 親指:南向き
電子(負電荷)は逆向き:北向き
ポイント ローレンツ力の向きは「正電荷の速度を電流とみなして左手」— 負電荷は答えを裏返す。この 1 手順で全パターンを処理。
A6-3(類題)
ローレンツ力は、運動する荷電粒子に仕事をするか。理由とともに答えよ。また、このことから粒子の速さについて何が言えるか。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
仕事をしない — ローレンツ力はつねに速度と垂直だから(垂直な力の仕事は 0:第1巻・第5章)。
よって運動エネルギーは変わらず、速さは一定に保たれる(向きだけが変わる)。
ポイント 「曲げるが速めない」がローレンツ力の性格 — 等速円運動(A7)の資格そのもの。磁場で粒子を加速することはできない(加速は電場の仕事:第1章)。
A7【磁場中の円運動】★★★
A7-1
質量 1.6×10⁻²⁷ kg、電気量 1.6×10⁻¹⁹ C の正の粒子が、磁束密度 0.10 T の一様な磁場に垂直に、速さ 1.0×10⁶ m/s で入射した。円運動の半径を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
向心力の式:qvB = mv²/r
r = mv/(qB) = 1.6×10⁻²⁷×1.0×10⁶/(1.6×10⁻¹⁹×0.10) = 0.10 m
ポイント r = mv/(qB) — 「重い・速いほど大回り、電気量・磁場が強いほど小回り」。導出はローレンツ力 = 向心力の 1 行(第1巻・第7章)。
A7-2(類題)
A7-1 の粒子の円運動の周期を求めよ。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
T = 2πr/v = 2πm/(qB) = 2×3.14×1.6×10⁻²⁷/(1.6×10⁻¹⁹×0.10)
= 6.3×10⁻⁷ s
ポイント 途中で v が消える(r ∝ v だから)— 周期は粒子の種類(m/q)と磁場だけで決まる。概念チェック Q5 の計算版。
A7-3(類題)
A7-1 の粒子の速さを 2 倍にすると、①半径、②周期はそれぞれどうなるか。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① r ∝ v:2 倍(0.20 m)
② T は v によらない:変わらない(6.3×10⁻⁷ s)
ポイント 「大きい円を同じ時間で」— この性質がサイクロトロン(一定周期の電圧で粒子を加速し続ける装置)を可能にした。周期一定は磁場中円運動の指紋。
A8【電磁力・ローレンツ力の応用】★★
A8-1
モーターの中では、磁場中のコイルの向かい合う 2 辺(電流の向きが互いに逆)が受ける力によって回転が生まれる。2 辺の受ける力の関係と、半回転ごとに電流の向きを切り替える部品(整流子)が必要な理由を述べよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
2 辺は電流が逆向きなので、逆向きで同じ大きさの力を受ける — この対が回転(偶力)を生む。
そのまま半回転すると力の向きが回転を戻す向きになってしまうため、整流子で半回転ごとに電流を反転させ、つねに同じ向きに回し続ける。
ポイント モーター = 「F = IBL × 2 + タイミング係(整流子)」。第5章の発電機(逆の変換)と表裏の関係にある装置。
A8-2(類題)
磁束密度 B の水平磁場中に、長さ 0.10 m の導線を磁場と垂直に置き、3.0 A の電流を流したところ、導線は 6.0×10⁻² N の力を受けた。B を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
B = F/(IL) = 6.0×10⁻²/(3.0×0.10) = 0.20 T
ポイント 力の測定から B を逆算 — 「電流天秤」による磁束密度の測定原理。F = IBL は B の定義式(1 A・1 m あたり 1 N の力なら 1 T)でもある。
A8-3(類題)
オーロラは、太陽から届いた荷電粒子が地磁気に捕らえられて極地方の大気に飛び込む現象である。荷電粒子が「磁力線に巻きつくように」運動する理由を、ローレンツ力の性質から説明せよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
磁場に垂直な速度成分は、ローレンツ力によって円運動になる。
磁場に平行な速度成分は、力を受けず(θ = 0)等速のまま。
2 つの重ね合わせで、粒子は磁力線のまわりを回りながら磁力線に沿って進む(らせん運動) — 磁力線を"レール"にして極域へ導かれる。
ポイント 「垂直は円・平行は素通り」の分解(B5-1)— らせんは円運動と等速直線運動の合成。地磁気は宇宙線から地球を守る"見えないシールド"でもある。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。向きは必ず図と手で、大きさは公式で — 2 系統を分けるのが作法。B3(平行電流)とB4(円運動の理論)が入試の最頻出。
B1【磁場の重ね合わせ】★★★
B1-1 距離 d 離れた平行な 2 本の導線に、同じ向きに等しい電流 I を流した。2 本のちょうど中間の点の磁場を求めよ。
B1-2 B1-1 で電流を互いに逆向きにした場合の、中間の点の磁場の強さを求めよ。
B1-3 直線電流 I(紙面で上向き)と、一様な外部磁場 H₀(紙面内で電流と垂直)が重なっている。合成磁場が 0 になる点は、導線からどちら側・どれだけの距離にあるか。
B2【電流が作る磁場の整理】★★
B2-1 直線電流・円形電流の中心・ソレノイド内部の磁場の公式を並べ、それぞれ「電流を 2 倍にしたとき」「特徴的な長さ(r や 1/n)を 2 倍にしたとき」磁場がどうなるかを整理せよ。
B2-2 磁束密度 B と磁場の強さ H の関係を書け。また、ソレノイドに鉄心を入れると強力な電磁石になる理由を、透磁率の言葉で述べよ。
B2-3 ソレノイドの内部の磁場が(端の近く以外)ほぼ一様である理由を、各巻きの作る磁場の重ね合わせのイメージで説明せよ。
B3【平行電流間の力】★★★
B3-1 距離 d 離れた平行な導線 1、2 に電流 I₁、I₂ を流す。導線 1 が導線 2 の位置に作る磁束密度を求め、導線 2 の 1 m あたりが受ける力が F = μ₀I₁I₂/(2πd) となることを導け。
B3-2 同じ向きの電流どうしが引き合い、逆向きが斥け合うことを、B3-1 の 2 段推論(磁場を作る → 力を受ける)の向きを追って確かめよ。
B3-3 d = 1 m、I₁ = I₂ = 1 A のときの 1 m あたりの力を求めよ。この値が、かつてのアンペア(電流の単位)の定義に使われていたことに触れよ。
B4【円運動の理論と比電荷】★★★
B4-1 磁束密度 B の一様な磁場に、質量 m・電気量 q の粒子が垂直に速さ v で入射した。円運動の半径 r と周期 T を導け。
B4-2 B4-1 の結果から、粒子の比電荷 q/m を、測定できる量(v、r、B)で表せ。
B4-3 同じ速さで入射した水素イオン(質量 m)とヘリウムイオン(質量 4m、電気量は水素と同じ q)の円の半径の比を求めよ。この違いが質量分析にどう使えるかを一言述べよ。
B5【らせん運動と速度選択器】★★★
B5-1 磁場に対して角 θ で入射した荷電粒子の運動を、磁場に平行な成分と垂直な成分に分けて説明せよ。また、らせんのピッチ(1 回転で磁場方向に進む距離)を v、θ、m、q、B で表せ。
B5-2 互いに垂直な電場 E と磁場 B の領域に、両方と垂直に粒子を入射させる。直進する(電気力と磁気力がつり合う)速さ v を求めよ(速度選択器)。
B5-3 B5-2 で選別した粒子を磁場 B' だけの領域に入れ、半径 r の円を描かせた。粒子の質量 m を q、r、B'、E、B で表せ(質量分析器)。
B6【ミクロとマクロの接続】★★★
B6-1 断面積 S、長さ L の導線に電流 I が流れている(電子の数密度 n、速さ v、I = envS)。導線内の全電子が受けるローレンツ力の合計が F = IBL に一致することを示せ。
B6-2 磁場中で電流の流れる導体の内部では、キャリア(電荷の担い手)がローレンツ力で片側に寄り、導体の側面間に電圧が生じる(ホール効果)。この電圧の符号から、キャリアが正か負かを判定できる理由を説明せよ。
B6-3 水平面内の 2 本のレール(間隔 L)の上に導体棒を置き、鉛直な磁場 B の中で電流 I を流すと、棒は F = IBL で走り出す(リニアモーターの原理)。棒(質量 m)が静止から時間 t 後にもつ速さを求めよ(摩擦・誘導起電力の影響は無視する)。
B問題 解答・解説
B1【磁場の重ね合わせ】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
中間点で、2 本の電流が作る磁場は大きさが等しく(距離 d/2)、右ねじで向きを調べると互いに逆向き。
合成磁場は 0
ポイント 同じ向きの平行電流のあいだでは磁場が打ち消し合う — 電場(第1章 A4-3:同符号の中点で 0)と同じ「対称の凪」。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
逆向きの電流では、中間点の磁場が同じ向きにそろう。
各電流の寄与:H₀ = I/(2π×d/2) = I/(πd)
合成:H = 2I/(πd)
ポイント 「同向き電流は間で消え、逆向き電流は間で強め合う」— 電荷(異符号の中点で加算:第1章 A4-2)と対応が逆になるのが面白い。毎回右ねじで確認する価値。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
導線の磁場は、片側では外部磁場 H₀ と逆向きになる(右ねじで判定)。その側の、
条件:I/(2πr) = H₀ → r = I/(2πH₀) の距離の直線上で磁場 0
ポイント 「打ち消せる側はどちらか」の判定(右ねじ)→ 大きさの方程式、の 2 段 — 電場 0 の点(第1章 B2-3)と同じ手筋の磁気版。
B2【電流が作る磁場の整理】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
直線:H = I/(2πr)/円の中心:H = I/(2r)/ソレノイド:H = nI
共通:H は電流 I に比例(2 倍で 2 倍)。
長さの効き方:直線・円は r に反比例(2 倍で半分)、ソレノイドは r を含まず n に比例(巻きを密に = 1/n を半分 → 2 倍)。
ポイント 3 公式は「I に比例」で一枚岩 — 違いは幾何(どの長さで割るか)だけ。表 1 枚に圧縮して携帯する。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
関係:B = μH(空気中は μ₀)。
鉄は透磁率 μ が μ₀ の数百〜数千倍 — 同じ H(同じ電流・巻数)でも B が桁違いに大きくなるため、鉄心入りソレノイドは強力な電磁石になる。
ポイント 「H は電流が決める骨格、B は媒質(μ)が増幅した実力」— 鉄心はコイルの"ブースター"。モーター・変圧器に鉄心が入っている理由。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
ソレノイドの内部では、各巻きの円形電流が作る磁場(軸方向)が全巻きで同じ向きに重なり合う。
中央付近ではどの位置でも「前後の巻きからの寄与」がほぼ同じだけ足されるため、磁場は場所によらずほぼ一定(一様)になる。端では片側の巻きが欠けるぶん弱まる。
ポイント 一様性の理由は「寄与の対称性」— 平行板コンデンサーの一様電場(第1章)の磁気版。だからソレノイド内部は"磁場の実験室"になる。
B3【平行電流間の力】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
導線 1 が距離 d に作る磁束密度:B₁ = μ₀I₁/(2πd)
導線 2 の長さ 1 m が受ける力:F = I₂B₁×1
F = μ₀I₁I₂/(2πd)(1 m あたり) ∎
ポイント 「1 が磁場を作り、2 がその中で力を受ける」の 2 段推論 — 電磁気の相互作用はつねにこの分業(直接の遠隔力ではなく、場を仲介)。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
同じ向き(ともに上向きの電流、左右に並ぶ)の場合:導線 1 の磁場は導線 2 の位置で紙面の裏向き。左手(電流:上、磁場:裏)→ 力は導線 1 へ向かう向き — 引力。
逆向きなら磁場は同じでも電流が逆 → 力が反転して斥力 ∎
ポイント 結論の暗記より「右ねじ → 左手」のリレーを 1 度自分の手で通すこと — 電流の組み合わせが変わっても同じ 2 手で必ず出る。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
F = 2×10⁻⁷×1×1/1 = 2×10⁻⁷ N/m
かつての 1 A の定義:「1 m 離した平行導線に等しい電流を流したとき、1 m あたり 2×10⁻⁷ N の力がはたらく電流」— この式がそのまま単位の土台だった。
ポイント μ₀ = 4π×10⁻⁷ が"きれいな数"なのは、定義の側を合わせた歴史の名残 — 定数の出どころを知ると、公式の景色が変わる。
B4【円運動の理論と比電荷】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
ローレンツ力が向心力:qvB = mv²/r
r = mv/(qB)
周期:T = 2πr/v = 2πm/(qB)(v によらない)∎
ポイント 第1巻・第7章「向心力の式に力を代入する」の磁気版 — 円運動の型は力の正体が変わっても不変。T から v が消える約分は答案でも見せ場。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
r = mv/(qB) を変形して
q/m = v/(rB)
ポイント 比電荷 q/m は「曲がりやすさ」の指標 — J.J. トムソンが電子で測定し(第7章)、電子の発見につながった歴史的な量。v・r・B はどれも実験で測れる。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
r = mv/(qB) ∝ m(v、q、B 共通)
水素:ヘリウム = m:4m = 1:4(ヘリウムが 4 倍の大回り)
同じ条件で入射しても質量ごとに別の円を描く — 到達位置の違いで質量を仕分けられる(質量分析)。
ポイント 「磁場は質量のふるい」— 半径の違いが質量の違いを空間の違いに翻訳する。同位体の分離・分析の原理(B5-3 で完成)。
B5【らせん運動と速度選択器】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
磁場に平行な成分 vcosθ:力を受けず等速直線運動。
磁場に垂直な成分 vsinθ:ローレンツ力で等速円運動(半径 mvsinθ/(qB)、周期 T = 2πm/(qB))。
合成するとらせん運動 — ピッチは 1 周期に平行方向へ進む距離:
ピッチ = vcosθ×T = 2πmvcosθ/(qB)
ポイント 「平行は素通り・垂直は円」の分解(A8-3)を式に — 周期が θ にも v にもよらない(Q5)ので、ピッチは平行成分だけで決まる。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
直進する条件:電気力と磁気力がつり合う
qE = qvB → v = E/B
ポイント q が約分される — どんな電気量・質量の粒子でも、速さ E/B のものだけが直進して選ばれる。E と B のつまみで"速度の関所"を作れる。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
選択後の速さ v = E/B。磁場 B' 中の円運動:r = mv/(qB') より
m = qrB'/v = qrBB'/E
ポイント 速度選択器(B5-2)+ 円運動(B4)の直列 — 未知の m が、すべて測れる量(q、r、B、B'、E)で書けた。質量分析器の完成形:同位体の発見・化学分析の主力装置。
B6【ミクロとマクロの接続】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
導線内の電子数:N = n×SL。1 個の受ける力:f = evB。
合計:F = N×evB = nSL×evB = (envS)×BL
かっこの中は電流 I(第3章 B1-1)なので F = IBL ∎
ポイント 「導線が受ける力」の正体は「中の電子たちが受けるローレンツ力の総和」— F = IBL と f = qvB は別の法則ではなく、マクロとミクロの同じ 1 つの力。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
磁場中を流れるキャリアはローレンツ力で導体の片側に寄せられ、そちら側が帯電して側面間に電圧(ホール電圧)が生じる。
キャリアが正か負かで寄る側の符号が逆になる(同じ電流でも運動の向きが逆だから)— 生じた電圧の正負を測れば、キャリアの符号が判定できる ∎
ポイント 電流だけ見ても正のキャリアが右へ行くのと負が左へ行くのは区別できない — 磁場が"中身"をあぶり出す。半導体(第3巻の外だが)の p 型・n 型の判定にも使われる現役の測定。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
一定の力 F = IBL による等加速度運動(第1巻・第2章):
加速度 a = IBL/m、静止から時間 t 後:
v = at = IBLt/m
ポイント リニアモーターの最小モデル — ただし実際は棒が動くと誘導起電力(第5章!)が生まれて電流が減っていく。「無視する」とした仮定こそが次章の主役、という架け橋。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦4-1【共テ形式:直線電流の磁場と平行電流の力】★★
南北方向に張った長い直線導線 P に、北向きに 6.28 A の電流を流した。μ₀ = 4π×10⁻⁷ N/A²、π = 3.14 とする。
① P から真東に 0.50 m 離れた点 A の磁場の強さは [ア].[イ] A/m である。
② 点 A における磁場の向きは:[ウ]
(a) 北向き
(b) 鉛直上向き
(c) 鉛直下向き
③ 点 A の磁束密度は [エ].[オ]×10⁻⁶ T である。
④ 点 A の位置に、P と平行に第 2 の導線 Q を張り、北向きに 10 A の電流を流した。Q の 1 m あたりが受ける力は [カ].[キ]×10⁻⁵ N である。
⑤ ④の力の向きは:[ク]
(a) 西向き(P に近づく向き)
(b) 東向き(P から遠ざかる向き)
(c) 鉛直上向き
実戦4-2【記述形式:磁場中につるした導体棒】★★★
長さ L = 0.20 m の導体棒を、2 本の軽い導線で水平につるした。棒と垂直な向きに水平な磁場(磁束密度 B = 0.49 T)がかかっている。棒に電流 I を流したところ、つるしている導線が鉛直から角 θ だけ傾いて静止した。棒の質量を m = 2.0×10⁻² kg、g = 9.8 m/s² とする。
① 棒にはたらく力をすべて挙げ、図示の方針を述べよ。
② 水平方向・鉛直方向のつり合いの式を書け(導線の張力の合計を T とする)。
③ tanθ を I、B、L、m、g で表せ。
④ I = 2.0 A のとき、θ を求めよ。
⑤ 電流の向きを逆にすると、棒はどうなるか。
実戦4-3【記述形式:磁場中の荷電粒子の円運動】★★★
紙面の裏から表へ向かう一様な磁場(磁束密度 B)の中に、質量 m、電気量 +q の粒子が、紙面内を右向きに速さ v で入射した。
① 入射の瞬間に粒子が受ける力の大きさと向きを答えよ。
② この粒子が等速円運動をする理由を、力の性質(大きさ・向き)から説明せよ。
③ 円運動の半径 r を導け。
④ 円運動の周期 T を導き、T が速さ v によらないことを指摘せよ。
⑤ q = 1.6×10⁻¹⁹ C、m = 1.6×10⁻²⁷ kg、v = 2.0×10⁵ m/s、B = 0.20 T のとき、r と T の値を求めよ(π = 3.14)。
実戦問題 解答・解説
実戦4-1
考え方 「電流が磁場を作る(①〜③:右ねじ)→ その磁場が別の電流に力を返す(④⑤:左手)」— この章の往復書簡を 1 本の導線ペアで完走する。②⑤の向きが本丸。
実戦4-1解答を見る解答を隠す
解答
① H = I/(2πr) = 6.28/(2×3.14×0.50) = 2.0 A/m(ア = 2、イ = 0)
② 右ねじ(電流:北)— 導線の東側では磁場は鉛直下向き:(c)(ウ = (c))
③ B = μ₀H = 4π×10⁻⁷×2.0 ≒ 2.5×10⁻⁶ T(エ = 2、オ = 5)
④ F = I₂BL = 10×2.51×10⁻⁶×1.0 ≒ 2.5×10⁻⁵ N(カ = 2、キ = 5)
⑤ 同じ向きの平行電流は引き合う:(a) 西向き(ク = (a))
(左手:電流 北・磁場 下 → 力 西 ○)
ポイント
• ②は「上から見て反時計回りの同心円」を描けば、東側 = 下向きが図から読める — 東西南北 × 上下の 3 次元は、上から見た図と横から見た図の 2 枚で処理する。
• ④は公式 μ₀I₁I₂/(2πd) の直接代入(2×10⁻⁷×62.8/0.50)でも一致 ○ — 2 段推論と公式の両輪。
実戦4-2
考え方 第1巻・第3章「角度のつり合い」に F = IBL が参加 — 第1章・実戦1-3(クーロン力の帯電球)とまったく同じ骨格で、力の正体だけが磁気に替わった。型の再利用を体感する問題。
実戦4-2解答を見る解答を隠す
解答
① はたらく力:重力 mg(下)、導線の張力 T(導線の方向)、電磁力 F = IBL(水平、棒と磁場の両方に垂直) — 3 力を棒の断面図に矢印で描く。
② 水平:Tsinθ = IBL/鉛直:Tcosθ = mg
③ 2 式を割って tanθ = IBL/(mg)
④ tanθ = 2.0×0.49×0.20/(2.0×10⁻²×9.8) = 0.196/0.196 = 1.0
θ = 45°
⑤ 電磁力の向きが反転し(左手で確認)、反対側へ同じ 45° 傾いて静止する。
ポイント
• ③の tanθ = F/(mg) は、帯電球(第1章)・電車内の振り子(第1巻)と同じ「水平力 ÷ 重力」— 力の出どころが替わっても幾何は 1 つ。
• ⑤は「電流の向き → 力の向き」の連動を問う仕上げ — 大きさは変えず向きだけ裏返る、という対称性の確認。
実戦4-3
考え方 B4-1 の導出を答案として書き切る、この章の心臓部。①②で「なぜ円になるか」を力の性質から語り、③④で式、⑤で数値 — 「理由 → 式 → 値」の 3 層構成。
実戦4-3解答を見る解答を隠す
解答
① f = qvB。左手(速度:右、磁場:裏から表)→ 大きさ qvB、紙面内で上向き
② ローレンツ力はつねに速度と垂直で、大きさ qvB が一定(速さが変わらないため)— 「一定の大きさで進路に直角」の力は向心力の資格そのもので、粒子は等速円運動をする。
③ 向心力の式:qvB = mv²/r → r = mv/(qB)
④ T = 2πr/v = 2πm/(qB) — r ∝ v により v が約分され、周期は速さによらない。
⑤ r = 1.6×10⁻²⁷×2.0×10⁵/(1.6×10⁻¹⁹×0.20) = 1.0×10⁻² m(1.0 cm)
T = 2×3.14×1.6×10⁻²⁷/(1.6×10⁻¹⁹×0.20) = 3.1×10⁻⁷ s
ポイント
• ②の論述は「垂直(→ 速さ不変)」と「大きさ一定」の2 点セットで初めて円が保証される — どちらか片方では足りない、と言えるのが理解の証明。
• ⑤の r = 1 cm・T = 0.3 μs:実験室スケールの磁場で素粒子が手のひらサイズの円を描く — 霧箱写真・加速器の設計感覚につながる数値。
第5章 電磁誘導
「磁場から電流を作る」— ファラデーの発見が、発電機と現代文明を生んだ。憲法は V = NΔΦ/Δt(磁束の変化の速さが起電力)、向きの裁判官はレンツの法則(変化を妨げる向き — 正体はエネルギー保存)。動く導体棒の V = vBL は、ローレンツ力(第4章)からも磁束からも導ける2重の橋。レール上の棒の物語(電磁ブレーキ・終端速度・仕事率 = 電力)と、コイルの"電流の慣性" = 自己誘導(U = (1/2)LI²)まで — 交流(第6章)の舞台がここで整う。
この章の公式・要点まとめ
磁束
• Φ = BS(磁束密度 B × 面と垂直な断面積 S。単位 Wb = T·m²)
• 面の法線と B が角 θ をなすとき Φ = BScosθ(貫く成分だけを数える)
ファラデーの電磁誘導の法則
• コイルを貫く磁束が変化すると起電力が生じる:V = N×ΔΦ/Δt(N:巻数)
• 磁束の「変化の速さ」が起電力 — 大きい磁束ではなく、速い変化が電圧を生む
レンツの法則(向きの決定)
• 誘導電流は、磁束の変化を妨げる向きに流れる
• 判定手順:①貫く磁束の向きと増減を確認 ②それを打ち消す(または補う)磁場を作る電流の向きを右ねじで決める
• 正体はエネルギー保存(もし助ける向きなら、勝手に加速する永久機関ができてしまう)
動く導体棒の起電力
• 磁場 B 中を、長さ L の棒が垂直に速さ v で動く:V = vBL
• 2 通りの導出:①棒の中の電荷が受けるローレンツ力(evB)②掃く面積の磁束変化(ΔΦ = BLvΔt)
• 高電位側:棒内の正電荷が寄せられる側(ローレンツ力の向き)
レール上の導体棒(この章の主舞台)
• 電流:I = vBL/R → 棒が受ける力:F = IBL = B²L²v/R(必ず運動を妨げる向き)
• 一定速度で引くとき:外力の仕事率 = 発生する電力(Fv = I²R:エネルギー保存)
• 電池なしで滑らせると減速(電磁ブレーキ)、重力下では終端速度へ
自己誘導と相互誘導
• 自己誘導:コイル自身の電流変化が起電力を生む:V = L×ΔI/Δt(向きは変化を妨げる)
• L:自己インダクタンス [H]。コイルは「電流の慣性」をもつ(急に流せず、急に切れない)
• コイルにたくわえられるエネルギー:U = (1/2)LI²
• 相互誘導:一次コイルの電流変化が二次コイルに起電力:V₂ = M×ΔI₁/Δt
解法チャート(電磁誘導)
1. 貫く磁束 Φ の向きと増減を図に書き込む
2. 大きさは V = NΔΦ/Δt(棒なら vBL)、向きはレンツ(妨げる向き)
3. 回路なら I = V/R → 棒の受ける力 F = IBL(必ず運動と逆)
4. エネルギーで検算:外力の仕事率(または位置エネルギーの減少率)= 電力 I²R
5. コイル(自己誘導)は「直後:電流を保とうとする/十分後:ただの導線」
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
コイルの中で磁石を静止させたまま置いておくと、誘導電流が流れ続ける。○か×か。
Q2
誘導起電力の大きさを決めるのはどれか。
(a) コイルを貫く磁束の大きさ
(b) コイルを貫く磁束の変化の速さ
(c) コイルの抵抗の大きさ
Q3
誘導電流の向きは、磁束の変化を妨げる向きである。○か×か。
Q4
コイルに N 極を近づけるとき、コイルは磁石に対してどうなるか。
(a) 磁石を引き寄せる
(b) 磁石を押し返す
(c) 力は及ぼさない
Q5
自己インダクタンス L のコイルに電流 I が流れているとき、コイルにたくわえられているエネルギーはどれか。
(a) LI
(b) (1/2)LI²
(c) LI²
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — 誘導を起こすのは磁束の変化(ΔΦ)。どんなに強い磁石でも、止まっていれば ΔΦ = 0 で電流は 0 — 「変化だけが電圧を生む」がこの章の第一原理。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(b) — V = NΔΦ/Δt:変化の速さが主役。同じ磁石でも、速く動かすほど大きな電圧(A6 系)。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:○ — レンツの法則。自然は変化に"抵抗"する — その正体はエネルギー保存(B3-1)。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(b) — 近づく N 極を押し返す(コイルの手前が N 極になる向きに電流)— 「妨げる」は磁束の言葉でも力の言葉でも同じ結論になる。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(b) — U = (1/2)LI²:コンデンサーの (1/2)CV² と同型(電流を 0 から育てる間の仕事の積算)。コイルは電流の形でエネルギーをたくわえる。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
A1【磁束 Φ = BS】★
A1-1
磁束密度 0.20 T の一様な磁場の中に、面積 0.30 m² のコイル面を磁場と垂直に置いた。コイルを貫く磁束を求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
Φ = BS = 0.20×0.30 = 6.0×10⁻² Wb
ポイント 磁束 = 「面を貫く磁力線の総量」— B(密度)× S(面積)。単位 Wb = T·m² の構造がそのまま定義。
A1-2(類題)
A1-1 のコイルを傾け、面の法線と磁場のなす角を 60° にした。磁束を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Φ = BScos60° = 6.0×10⁻²×0.50 = 3.0×10⁻² Wb
ポイント 数えるのは面を貫く成分だけ(cosθ)— 面を磁場と平行にすれば(θ = 90°)貫く磁束は 0。回転コイル(B6)の伏線。
A1-3(類題)
面積 0.30 m² のコイルを貫く磁場が、0.20 T から 0.50 T に増加した(向きは面に垂直のまま)。磁束の変化 ΔΦ を求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
ΔΦ = (0.50−0.20)×0.30 = 9.0×10⁻² Wb
ポイント 誘導の主役は Φ そのものでなく ΔΦ(変化量) — 「あと・まえ」の差をとる癖を、ここで式の形にしておく。
A2【ファラデーの法則 V = NΔΦ/Δt】★★
A2-1
1 巻きのコイルを貫く磁束が、0.20 秒間に 6.0×10⁻² Wb だけ変化した。生じる誘導起電力の大きさを求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
V = ΔΦ/Δt = 6.0×10⁻²/0.20 = 0.30 V
ポイント 起電力 = 磁束の変化の速さ(毎秒何 Wb 変わるか)。Wb/s = V — 単位がそのまま法則を語る。
A2-2(類題)
A2-1 と同じ磁束変化が、50 回巻きのコイルで起こった。誘導起電力を求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
V = NΔΦ/Δt = 50×0.30 = 15 V
ポイント N 巻きは「同じ起電力の電池を N 個直列」— 1 巻きごとの起電力が足し上がる。発電機・変圧器が多数巻きである理由。
A2-3(類題)
100 回巻きのコイルを貫く磁束を 2.0×10⁻³ Wb だけ変化させて、4.0 V の起電力を得たい。何秒間で変化させればよいか。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
Δt = NΔΦ/V = 100×2.0×10⁻³/4.0 = 5.0×10⁻² s
ポイント 同じ ΔΦ でも短時間ほど高電圧 — 「ゆっくり抜けば小さく、さっと抜けば大きく」。時間の逆算で法則の構造(Δt が分母)を確認。
A3【レンツの法則(向きの判定)】★★★
A3-1
水平に置いたコイルの真上から、棒磁石の N 極を下にして近づけた。上から見て、コイルに流れる誘導電流の向きを答えよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
下向きの磁束が増える → それを妨げる上向きの磁場を作る向き:右ねじより
上から見て反時計回り
ポイント 判定は 3 手:「①貫く磁束の向き・増減 → ②打ち消す磁場の向き → ③右ねじで電流」。「コイルの上面が N 極になって磁石を押し返す」(Q4)と力で読んでも同じ結論。
A3-2(類題)
A3-1 の磁石を、こんどはコイルから遠ざけた。誘導電流の向きを答えよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
下向きの磁束が減る → 減少を補う下向きの磁場を作る向き:
上から見て時計回り(コイルの上面が S 極になり、去る N 極を引き止める)
ポイント 「増えれば押し返し、減れば引き止める」— どちらも現状維持の向き。近づけ・遠ざけで答えが反転する対を、必ずセットで練習。
A3-3(類題)
誘導電流が「磁束の変化を助ける向き」に流れると仮定すると、どんな不合理が起こるか。エネルギーの観点から説明せよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
磁石を少し近づけると、コイルが磁石を引き込む向きに力を及ぼし、磁石は勝手に加速 — 磁束変化はさらに増え、電流も増え…と、外から仕事をしないのに運動エネルギーと電気エネルギーが増え続ける(永久機関)ことになり、エネルギー保存則に反する。
よって誘導電流は変化を妨げる向きでなければならない。
ポイント レンツの法則 = エネルギー保存の門番 — 「妨げる」は自然の意地悪ではなく、帳簿が合うための必然。発電に必ず仕事が要る理由でもある。
A4【動く導体棒の起電力 V = vBL】★★★
A4-1
磁束密度 0.40 T の一様な磁場の中を、長さ 0.50 m の導体棒が、磁場とも棒とも垂直な向きに速さ 5.0 m/s で動いている。棒に生じる誘導起電力を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
V = vBL = 5.0×0.40×0.50 = 1.0 V
ポイント V = vBL — 動く棒は「化学反応の代わりに運動で電荷を押し上げる電池」。3 つが互いに垂直、が適用条件。
A4-2(類題)
紙面の裏向きの磁場の中で、鉛直に立てた導体棒(上端 P・下端 Q)が右向きに動いている。P と Q のどちらが高電位になるか。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
棒内の正電荷の速度は右向き、磁場は裏向き — ローレンツ力(左手)は上向き。
正電荷が上端 P に寄せられ、P が高電位。
ポイント 高電位側の判定は「中の正電荷がローレンツ力でどちらへ運ばれるか」— 棒は内部で + を汲み上げるポンプ。電池の +極にあたる側が P。
A4-3(類題)
A4-1 の状況を「磁束の変化」から説明する。棒が Δt の間に動くと、回路の面積はどれだけ増えるか。そこから V = vBL を導け。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
棒は Δt に vΔt 進み、面積は ΔS = LvΔt 増える。
磁束変化:ΔΦ = BΔS = BLvΔt
起電力:V = ΔΦ/Δt = vBL ∎
ポイント ローレンツ力(A4-2)と磁束変化(本問)の2 ルートが同じ式に着地 — 電磁誘導の 2 つの顔が 1 つの現象であることの、教科書級の確認。
A5【レール上の導体棒】★★★
A5-1
A4-1 の導体棒(V = 1.0 V)を、抵抗 2.0 Ω をつないだレールの上で同じ条件で動かした。回路を流れる電流を求めよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
I = V/R = 1.0/2.0 = 0.50 A
ポイント 動く棒 = 起電力 vBL の電池、レール+抵抗 = 外部回路 — 回路図に描き直すと、第3章のオームの法則がそのまま使える。
A5-2(類題)
A5-1 のとき、電流の流れる棒が磁場から受ける力の大きさと向きを求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
F = IBL = 0.50×0.40×0.50 = 0.10 N
向き:レンツの法則より、棒の運動を妨げる向き(運動と逆向き)
ポイント 誘導電流の流れる棒は必ずブレーキをかけられる — 「妨げる」が力の言葉に翻訳された姿。左手で確認しても同じ向きになる(なるはず、が検算)。
A5-3(類題)
A5-2 の棒を、一定の速さ 5.0 m/s で動かし続けるために必要な外力の仕事率を求めよ。また、回路で消費される電力と比較せよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
外力 = ブレーキ力と同じ 0.10 N(等速)。
仕事率:P = Fv = 0.10×5.0 = 0.50 W
電力:I²R = 0.50²×2.0 = 0.50 W — 一致 ○
ポイント 「手の仕事率 = 回路の発熱」がこの舞台のエネルギー保存 — 発電とは「力学的仕事を電気に転写する」ことだと、数値の一致が語る。
A6【いろいろな磁束変化】★★
A6-1
コイルを、一様な磁場の領域からすばやく引き抜いた。コイルに流れる誘導電流の向きは、貫いていた磁束に対してどうなるか。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
磁束が減るので、もとの磁束と同じ向きの磁場を作る向き(減少を補う向き)に流れる。
ポイント 「引き抜き = 減少 = 引き止め」— A3-2 と同じ判定。増減さえ言えれば、装置がコイルでも棒でも判定手順は 1 つ。
A6-2(類題)
一定の速さで動く長方形コイルが、一様な磁場の領域(コイルより広い)を「入る → 完全に中 → 出る」と通過する。各段階で流れる電流について述べよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
入るとき:磁束が増える — 一定の誘導電流(妨げる向き)。
完全に中:磁束は一定(ΔΦ = 0)— 電流は 0。
出るとき:磁束が減る — 入るときと逆向きの一定電流。
ポイント 「縁を横切るときだけ電流が流れる」— 中では 0、が盲点。電流の時間グラフは「山 → 0 → 谷」の 3 段(共テ頻出のグラフ選択)。
A6-3(類題)
IH 調理器(電磁調理器)が金属の鍋を加熱できる理由と、強い磁石の下で銅板を落とすとゆっくり落ちる理由を、共通のしくみで説明せよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
どちらも、変化する磁場(または磁場中の運動)によって金属内に渦電流が誘導されることが原因。
IH:高速で変化する磁場が鍋底に渦電流を流し、鍋自身の抵抗でジュール熱が発生(鍋が発熱体)。
銅板:落下(磁束変化)を妨げる向きの渦電流が流れ、ブレーキの力を受けてゆっくり落ちる(電磁ブレーキ)。
ポイント 渦電流 = 「かたまりの金属に流れる誘導電流」— 加熱(IH・電磁調理)にもブレーキ(新幹線・ジェットコースター)にも化ける、レンツの法則の実用形。
A7【自己誘導】★★★
A7-1
自己インダクタンス 0.20 H のコイルを流れる電流が、毎秒 50 A の割合で増加している。コイルに生じる誘導起電力の大きさと向きを答えよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
V = LΔI/Δt = 0.20×50 = 10 V
向き:電流の増加を妨げる向き(電流と逆向きに押し返す向き)
ポイント 自己誘導 = コイルが自分の磁束の変化に反応する現象 — コイルは「電流の慣性」をもち、急な変化に逆らう(質量が速度変化に逆らうのと同じ役回り)。
A7-2(類題)
あるコイルの電流を 0.30 秒間で 0 から 0.90 A まで一定の割合で増やしたところ、6.0 V の誘導起電力が生じた。自己インダクタンスを求めよ。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
L = V×Δt/ΔI = 6.0×0.30/0.90 = 2.0 H
ポイント L の測定式 — 「電流を毎秒 1 A 変えたとき何 V 出るか」が L の定義そのもの(V = LΔI/Δt の読み下し)。
A7-3(類題)
自己インダクタンス 2.0 H のコイルに 3.0 A の電流が流れている。コイルにたくわえられているエネルギーを求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
U = (1/2)LI² = (1/2)×2.0×3.0² = 9.0 J
ポイント コイルは電流の形でエネルギーをためる((1/2)LI²)— コンデンサーの (1/2)CV²(電圧の形)と双子の式。スイッチを切ると、この 9.0 J が行き場を求めて火花になる(A8-3)。
A8【相互誘導】★★
A8-1
相互インダクタンス 0.50 H の 2 つのコイルがある。一次コイルの電流を毎秒 20 A の割合で変化させたとき、二次コイルに生じる起電力を求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
V₂ = MΔI₁/Δt = 0.50×20 = 10 V
ポイント 相互誘導 = 一次の磁束変化が鉄心などを介して二次を貫く現象 — 導線がつながっていないのに電圧が渡る、"磁束の橋"。
A8-2(類題)
相互誘導を利用して、電圧を変える装置は何か。その装置で、一次コイルの電流が一定(直流)のとき、二次コイルに電圧は生じるか。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
装置:変圧器(トランス)
直流(一定電流)では ΔI/Δt = 0 なので、二次に電圧は生じない — 変圧器が交流専用である理由。
ポイント 「変化だけが電圧を生む」(Q1)の応用 — 交流(第6章)が送電の主役になった歴史的理由が、この 1 行に含まれている。
A8-3(類題)
コイルを含む回路のスイッチを切る瞬間、接点に火花が飛ぶことがある。この理由を自己誘導の言葉で説明せよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
スイッチを切ると電流がきわめて短時間で 0 へ向かう — ΔI/Δt が非常に大きくなり、V = LΔI/Δt の大きな誘導起電力が生じて、電流を流し続けようと接点の隙間の空気を突き破る(火花放電)。
ポイント 「コイルは急に止まれない」— たまっていた (1/2)LI² の行き先が火花。自動車の点火プラグ・蛍光灯の点灯回路は、この"暴れる電圧"をわざと利用した発明。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。磁束の増減 → レンツ → 力 → エネルギーの 4 段を、どの装置でも同じ順で書くのが作法。B2(レール回路の運動)とB4(自己誘導)が入試の最頻出。
B1【V = vBL の 2 つの導出】★★★
B1-1 磁束密度 B の磁場中を、長さ L の導体棒が垂直に速さ v で動く。棒の中の自由電子(電気量 −e)が受けるローレンツ力と、棒の中にできる電場のつり合いから、両端の電位差が V = vBL となることを導け。
B1-2 同じ結果を、「棒が Δt の間に掃く面積の磁束変化」から導け。
B1-3 2 つの導出(力の見方と磁束の見方)が同じ式に至ることの意味を一言で述べよ。
B2【レール上の棒の運動】★★★
B2-1 水平なレール(間隔 L、抵抗 R、磁束密度 B は鉛直)上の質量 m の棒に、初速 v₀ を与えて放した(外力なし・摩擦なし)。速さ v のときの棒の加速度を求め、棒の運動のようすを述べよ。
B2-2 同じレールに起電力 E の電池をつないで棒を走らせる。速さ v のときの回路の電流を書き、棒の速さが最終的に一定値(終端速度)に近づくことを示して、その値を求めよ。
B2-3 B2-1 で、棒が止まるまでに回路で発生するジュール熱の総量を、エネルギー保存から求めよ。
B3【レンツの法則とエネルギー】★★★
B3-1 「誘導電流は磁束の変化を妨げる向きに流れる」ことが、エネルギー保存則の要請であることを、磁石をコイルに近づける場面で説明せよ。
B3-2 コイルの真上から棒磁石を落とし、コイルの中を通過させた。磁石の落下のようす(自由落下との違い)と、コイルに発生する熱のエネルギーの出どころを述べよ。
B3-3 アルミパイプの中に強い磁石を落とすと、ゆっくり落ちる。パイプに切れ目(縦のスリット)を入れると速く落ちるようになる。それぞれの理由を述べよ。
B4【自己誘導の理論】★★★
B4-1 コイルを貫く磁束が Φ = LI と書けること(L の定義)から、誘導起電力が V = LΔI/Δt となることを導け。
B4-2 コイルのエネルギー U = (1/2)LI² を、「電流を 0 から I まで育てる間に電源がした仕事」の考え方(I-Φ グラフの面積)で導け。
B4-3 抵抗 R とコイル L を直列にして電池につないだ(RL 回路)。スイッチを入れた直後と十分時間後の電流を、コイルの性質から述べよ。また、コンデンサー(第3章 B6)との違いを対比せよ。
B5【相互誘導と変圧器】★★★
B5-1 一次コイルの電流 I₁ が作る磁束が二次コイルを貫くとき、Φ₂ = MI₁(M:相互インダクタンス)と書ける。二次コイルの起電力が V₂ = MΔI₁/Δt となることを示せ。
B5-2 共通の鉄心に一次 N₁ 回・二次 N₂ 回のコイルを巻いた理想的な変圧器では、両コイルを貫く磁束の変化 ΔΦ/Δt が共通である。このことから電圧の関係 V₁:V₂ = N₁:N₂ を導け。
B5-3 理想的な変圧器では電力が保存する(V₁I₁ = V₂I₂)。このことから、電圧を 10 倍に上げると電流はどうなるかを述べ、送電線で高電圧送電が使われる理由(送電線の発熱 rI² の観点)を説明せよ。
B6【回転コイル(交流の入口)】★★★
B6-1 磁束密度 B の一様な磁場の中で、面積 S のコイルを角速度 ω で回転させる。時刻 t(t = 0 で面が磁場と垂直)におけるコイルを貫く磁束を書け。
B6-2 B6-1 の磁束変化から、誘導起電力が V = NBSω sinωt の形(振幅 NBSω)になることを、単振動の変位と速度の関係(第1巻・第8章:振幅 A の振動の速さの最大値は Aω)との類推で説明せよ。
B6-3 この装置(交流発電機)で、起電力の振幅を大きくする方法を 4 つ挙げよ。
B問題 解答・解説
B1【V = vBL の 2 つの導出】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
棒とともに動く自由電子は、ローレンツ力 f = evB を受けて棒の一端に寄る — 棒の中に電荷の偏りができ、電場 E が生じる。
偏りが進むと、電場からの力 eE がローレンツ力とつり合って移動が止まる:
つり合い:eE = evB → E = vB
棒の両端の電位差:V = EL = vBL ∎
ポイント 動く棒は「ローレンツ力が電荷を汲み上げるポンプ」— つり合いに達した偏りが起電力の正体。電池の化学反応の役を、運動+磁場が演じている。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
棒は Δt に vΔt 進み、回路の面積が ΔS = LvΔt 増える。
磁束変化:ΔΦ = B×LvΔt
起電力:V = ΔΦ/Δt = vBL ∎
ポイント ファラデーの法則の直接適用 — 「棒が掃いた長方形」を図に塗ると ΔS が一目になる。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
力の見方(ローレンツ力)と磁束の見方(ファラデー)が同じ式に至る — 電磁誘導は 2 つの法則があるのではなく、1 つの現象の 2 つの記述だということ。
ポイント 問題によって速い方を選んでよい(棒 1 本なら力、コイルなら磁束)— ただし答えは必ず一致する、という安心が 2 刀流の価値。
B2【レール上の棒の運動】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
速さ v のとき:電流 I = vBL/R、棒への力 F = IBL = B²L²v/R(運動と逆向き)。
運動方程式:ma = −B²L²v/R
a = −B²L²v/(mR)
— 速いほど強いブレーキがかかる(a ∝ −v)ため、棒は減速をゆるめながらしだいに遅くなり、やがて止まる(電磁ブレーキ)。
ポイント 「a ∝ −v」は空気抵抗(第1巻)と同じ形 — 指数関数的な減衰。ブレーキの強さ B²L²/R は"電磁ブレーキの利き"を表す定数。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
回路の式(キルヒホッフ):E−vBL = RI → I = (E−vBL)/R
棒は F = IBL で加速するが、v が増えるほど誘導起電力 vBL が E に迫り、I → 0、力 → 0 — 加速が止まる。
終端速度:E−v∞BL = 0 より v∞ = E/(BL)
ポイント 「逆起電力が電池に追いつくまで」がモーターの加速の物語 — 終端では電流 0(理想)で、モーターが無負荷で回るときの回転数の決まり方そのもの。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
止まるまでに失われた運動エネルギーが、すべてジュール熱に変わる(他にエネルギーの行き先がない):
ジュール熱の総量 = (1/2)mv₀²
ポイント 途中の複雑な減衰を一切追わずに、エネルギー保存の一撃で総量が出る — 「過程は複雑、収支は単純」(第1巻・第5章の思想)の電磁気版。
B3【レンツの法則とエネルギー】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
磁石を近づけると、誘導電流は磁石を押し返す向きに流れる(レンツ)— 近づけ続けるには外から仕事が必要で、その仕事が電気エネルギー(→ ジュール熱)に変わる:帳簿が合う。
もし助ける向きなら、磁石は勝手に引き込まれて加速し、電流も増え続ける — 仕事の入力なしにエネルギーが湧き出す永久機関となり、エネルギー保存則に反する。
よって「妨げる向き」はエネルギー保存の必然 ∎
ポイント レンツの法則は独立の新法則ではなく、保存則の門番 — 「発電にはただ飯がない」ことの向きへの翻訳。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
磁石が近づくときは押し返され、遠ざかるときは引き止められる — どちらの局面でも運動を妨げられるため、磁石は自由落下より遅く落ちる。
コイルに発生したジュール熱の出どころは、磁石の重力による位置エネルギー(自由落下なら運動エネルギーになるはずだった分の一部が熱に化けた)。
ポイント 「行き(押し返し)も帰り(引き止め)もブレーキ」— レンツは常に現状維持側。エネルギーの追跡(位置 → 運動+熱)まで書いて完答。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
パイプ:磁石が落ちると、パイプの各部分が連続した円形回路として渦電流を流し、レンツの法則により落下を妨げる — ゆっくり落ちる。
スリット入り:縦の切れ目が電流の輪を断ち切るため、渦電流がほとんど流れられず、ブレーキ力が激減 — 速く落ちる。
ポイント 「電流は閉じた輪でしか流れない」— スリット実験は渦電流の実在を裏から証明する対照実験。変圧器の鉄心が薄板の積層(渦電流対策)である理由にも直結。
B4【自己誘導の理論】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
コイル自身の電流 I が作る磁束は I に比例:Φ = LI(L の定義)。
電流が変化すると Φ も変化し、ファラデーの法則より
V = ΔΦ/Δt = Δ(LI)/Δt = L×ΔI/Δt ∎(向きは変化を妨げる向き)
ポイント 自己誘導はファラデーの法則の自分自身への適用 — 新しい原理ではない。L は「電流 1 A あたり何 Wb 自分を貫くか」という自己結合の強さ。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
横軸 I・縦軸 Φ(= LI)のグラフは原点を通る直線。
電流を少し増やす間に電源がコイルの逆起電力に抗してする仕事は「そのときの Φ の変化 × I」に相当し、積み上げると直線の下の三角形の面積:
U = (1/2)×I×Φ = (1/2)×I×LI = (1/2)LI² ∎
ポイント コンデンサーの Q-V 三角形(第2章)と完全に同型 — 「成長する相手に逆らって積む仕事は 1/2」。C ↔ L、V ↔ I、Q ↔ Φ の対応表が 2 つの素子を橋渡しする。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
直後:コイルは電流の急変を妨げる — I = 0 のまま(コイルは一瞬"断線"のようにふるまう)。
十分後:電流が一定になれば ΔI/Δt = 0 で起電力なし — ただの導線となり、I = E/R。
対比:コンデンサーは「直後:導線/十分後:断線」— コイルと完全に真逆。
ポイント | 素子 | 直後 | 十分後 |
|---|---|---|
| コンデンサー | 導線(V = 0) | 断線(I = 0) |
| コイル | 断線(I = 0) | 導線(V = 0) |
この 2×2 表が過渡現象の全地図 — 「急に変えられない量」(C は電圧、L は電流)を言えれば導ける。
B5【相互誘導と変圧器】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
二次コイルを貫く磁束は一次電流に比例:Φ₂ = MI₁。
ファラデーの法則より
V₂ = ΔΦ₂/Δt = M×ΔI₁/Δt ∎
ポイント 自己誘導(B4-1)と同じ 2 行 — 貫かれる相手が自分(L)か隣人(M)かの違いだけ。M は 2 つのコイルの"磁束の結びつき"の強さ。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
共通の鉄心により、1 巻きあたりの磁束変化 ΔΦ/Δt は両コイルで共通。
一次:V₁ = N₁×ΔΦ/Δt/二次:V₂ = N₂×ΔΦ/Δt
割り算して V₁:V₂ = N₁:N₂ ∎
ポイント 変圧の原理は「1 巻きあたりの電圧が共通」の一言 — 巻数はその電圧を何個直列に積むかの個数。昇圧も降圧も巻数比だけで自在。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
電力保存 V₁I₁ = V₂I₂ より、電圧を 10 倍に上げると電流は 1/10 になる。
送電線(抵抗 r)での発熱は P = rI² — 電流が 1/10 なら発熱は 1/100 に激減する。
同じ電力を送るなら、高電圧・小電流の方が損失が圧倒的に少ない — これが高電圧送電(数十万 V)の理由。
ポイント 「電圧 10 倍 → 損失 1/100」の 2 乗の御利益 — 変圧器(交流)が電力網の主役になった決定的な経済学。家庭の 100 V へは変電所で段階的に降圧。
B6【回転コイル(交流の入口)】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
面の法線と磁場のなす角が ωt になるので
Φ = BScosωt(N 巻きなら NBScosωt)
ポイント 回転が cos に化ける — 等速円運動の射影 = 単振動(第1巻・第8章)の再演。磁束が振動すれば、その"変化の速さ"も振動する(次問)。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
Φ = NBScosωt は「振幅 NBS の単振動」の形。
単振動では、変位 Acosωt の変化の速さ(速度)は最大 Aω の −Aω sinωt — 同じ対応で、磁束の変化の速さは最大 NBSω:
V = NBSω×sinωt(振幅 V₀ = NBSω) ∎
ポイント 「cos の変化の速さは振幅 ω 倍の sin」— 微分を知らなくても、単振動の変位 ⇔ 速度の関係(x_max = A、v_max = Aω)の輸入で導ける。磁束が 0 を横切る瞬間(変化が最速)に電圧が最大、という位相のずれも読める。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
振幅 V₀ = NBSω を大きくする 4 法:
①巻数 N を増やす ②磁場 B を強くする ③コイルの面積 S を広げる ④回転を速くする(ω 増)
ポイント 発電機の設計変数が式に全部並んでいる — 実際の発電所は「強い電磁石(B)+多数巻き(N)+大型(S)+一定回転(ω:周波数 50/60 Hz を守る)」。第6章(交流)への引き継ぎ式。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦5-1【共テ形式:コイルと磁石】★★
水平に置いた円形コイルの真上で、棒磁石を N 極を下にして動かす。以下の各場合について、最も適当なものを選べ。
① 磁石をコイルに近づけるとき、上から見た誘導電流の向きは:[ア]
(a) 反時計回り
(b) 時計回り
(c) 電流は流れない
② 磁石をコイルから遠ざけるとき:[イ]
(a) 反時計回り
(b) 時計回り
(c) 電流は流れない
③ 磁石をコイルの中心で静止させているとき:[ウ]
(a) 反時計回り
(b) 時計回り
(c) 電流は流れない
④ ①の操作を、より速く行うと、流れる電流の大きさは:[エ]
(a) 大きくなる
(b) 小さくなる
(c) 変わらない
⑤ 磁石を手放してコイルの中を通過させて落下させるとき、磁石の落下のようすは:[オ]
(a) 自由落下と同じ
(b) 自由落下より遅い
(c) 自由落下より速い
実戦5-2【記述形式:レール上の導体棒(一定速度)】★★★
水平面上に間隔 L の 2 本のレールを敷き、抵抗 R をつなぎ、鉛直上向きの一様な磁場(磁束密度 B)をかけた。レール上の導体棒を、外力によって一定の速さ v でレールと垂直に動かし続ける(棒とレールの抵抗・摩擦は無視)。
① 棒に生じる誘導起電力の大きさを求めよ。
② 回路を流れる電流の大きさを求めよ。また、その向きはどんな向きか(レンツの法則で述べよ)。
③ 電流の流れる棒が磁場から受ける力の大きさと向きを求めよ。
④ 棒を一定の速さに保つために必要な外力の大きさを求めよ。
⑤ 外力の仕事率と、抵抗で消費される電力をそれぞれ求め、両者が等しいことを示せ。
⑥ B = 0.50 T、L = 0.40 m、v = 3.0 m/s、R = 0.30 Ω のとき、起電力・電流・外力・仕事率の値を求めよ。
実戦5-3【記述形式:鉛直レールを落下する導体棒】★★★
鉛直に立てた間隔 L の 2 本のレールに、レール面と垂直な水平磁場(磁束密度 B)をかけ、上端を抵抗 R でつないだ。質量 m の導体棒がレールに沿って滑り落ちる(摩擦・棒とレールの抵抗は無視、g:重力加速度)。
① 速さ v で落下しているときの誘導起電力を求めよ。
② そのときの電流を求めよ。
③ 棒が磁場から受ける力の大きさと向きを求めよ。
④ 棒の運動方程式を書け。
⑤ 棒の速さが最終的に一定値(終端速度)v_f に近づく。v_f を求めよ。
⑥ 終端速度で落下しているとき、単位時間あたりに失われる重力の位置エネルギーと、抵抗で発生する単位時間あたりのジュール熱が等しいことを示せ。
⑦ m = 0.10 kg、B = 0.70 T、L = 1.0 m、R = 0.49 Ω、g = 9.8 m/s² のとき、v_f を求めよ。
実戦問題 解答・解説
実戦5-1
考え方 レンツの法則の 5 連発 — 判定は毎回「①磁束の向き・増減 → ②妨げる磁場 → ③右ねじ」の 3 手順。③(静止)と⑤(落下)が理解の分水嶺。
実戦5-1解答を見る解答を隠す
解答
① 下向き磁束が増加 → 上向きの磁場で妨げる → (a) 反時計回り(ア = (a))
② 下向き磁束が減少 → 下向きの磁場で補う → (b) 時計回り(イ = (b))
③ 磁束が変化しない(ΔΦ = 0)→ (c) 電流は流れない(ウ = (c))
④ 同じ ΔΦ を短時間で → V = ΔΦ/Δt 大 → (a) 大きくなる(エ = (a))
⑤ 近づくときも遠ざかるときも運動を妨げられる → (b) 自由落下より遅い(オ = (b))
ポイント
• ③が本丸 — 「強い磁石がある」ことと「磁束が変化する」ことは別(概念チェック Q1)。静止 = ΔΦ = 0 = 電流 0。
• ⑤は B3-2 の共テ版 — コイルの発熱の分だけ、磁石の落下は必ず遅れる(エネルギーの帳簿)。
実戦5-2
考え方 レール問題の完全な標準形 — 「起電力 → 電流 → 力 → 外力 → エネルギー」の 5 段を、文字で通してから数値で締める。⑤の一致(Fv = I²R)がこの章のエネルギー保存の証明。
実戦5-2解答を見る解答を隠す
解答
① V = vBL
② I = vBL/R — 向きは、回路を貫く上向きの磁束の増加を妨げる向き(上から見て時計回りになる向き)。
③ F = IBL = B²L²v/R — レンツの法則より、棒の運動と逆向き。
④ 等速なので力のつり合い:外力 = B²L²v/R(運動の向き)
⑤ 外力の仕事率:P = Fv = B²L²v²/R
消費電力:I²R = (vBL/R)²×R = B²L²v²/R — 一致 ○
⑥ V = 3.0×0.50×0.40 = 0.60 V
I = 0.60/0.30 = 2.0 A
外力 F = IBL = 2.0×0.50×0.40 = 0.40 N
仕事率 P = Fv = 0.40×3.0 = 1.2 W(= I²R = 4.0×0.30 = 1.2 W ○)
ポイント
• ⑤の一致が「発電 = 力学的仕事の電気への転写」の証明書 — 手が 1.2 W 押し、抵抗が 1.2 W 温まる。途中に貯金なし(等速・磁束エネルギー一定)。
• ②の向きは「妨げる」の一言に、何(どの磁束の増加)を妨げるかを添える — 対象を明示した答案が満点の型。
実戦5-3
考え方 レール問題の鉛直版 = 電磁誘導 × 終端速度(第1巻・空気抵抗と同じ構図)。④→⑤で「つり合い = 終端」、⑥で「エネルギーの定常収支」— 力とエネルギーの 2 つの読みで同じ状態を見る。
実戦5-3解答を見る解答を隠す
解答
① V = vBL
② I = vBL/R
③ F = IBL = B²L²v/R — 落下(下向きの運動)を妨げる上向き。
④ 下向きを正として:ma = mg−B²L²v/R
⑤ 終端では a = 0:mg = B²L²v_f/R
v_f = mgR/(B²L²)
⑥ 終端速度では、位置エネルギーの減少率 = mgv_f。
一方、ジュール熱の発生率 = I²R = (v_fBL)²/R = v_f×(B²L²v_f/R) = v_f×mg(⑤より)
両者はともに mgv_f で等しい ○ — 落ちた分がそのまま熱になる定常状態。
⑦ v_f = 0.10×9.8×0.49/(0.70²×1.0²) = 0.480/0.49 = 0.98 m/s
(検算:I = v_fBL/R = 1.4 A、力 IBL = 0.98 N = mg ○)
ポイント
• ⑤の終端速度は「ブレーキが重力に追いつく速さ」— 力のつり合い(mg = B²L²v/R)と、⑥のエネルギー収支(mgv_f = I²R)は同じ 1 つの状態の 2 つの読み。
• ⑦の検算 2 連(力 0.98 N = mg、発熱率 0.96 W = mgv_f)まで回せば、答えの信頼度は桁違い — レール問題は検算ルートの宝庫。
第6章 交流と電磁波
回転コイル(第5章 B6)が生む V = V₀sinωt — 向きが周期的に入れ替わる交流が、この章の主役。抵抗・コイル・コンデンサーは交流に対して三者三様の顔を見せる:抵抗は素直(同位相)、コイルは高い音が苦手(X_L = ωL)、コンデンサーは高い音ほど素通し(X_C = 1/ωC)— しかも L と C は電力を消費しない。L と C を結べば電気振動(f = 1/2π√(LC))が生まれ、その振動が空間へ飛び出したものが電磁波 — 光もその仲間である。
この章の公式・要点まとめ
交流の表し方
• V = V₀sinωt(V₀:最大値、ω = 2πf:角周波数、f = 1/T:周波数)
• 東日本 50 Hz・西日本 60 Hz(T = 0.020 s/0.017 s)
実効値(交流の"実力表示")
• V_e = V₀/√2、I_e = I₀/√2
• 抵抗での平均電力が直流と同じ形になる値:P̄ = I_eV_e = I_e²R = V_e²/R
• 家庭の「100 V」は実効値(最大値は約 141 V)
3 素子の交流応答(この章の心臓)
• 抵抗 R:V と I は同位相。平均電力 P̄ = I_eV_e を消費
• コイル L:リアクタンス X_L = ωL(高周波ほど流れにくい)。電流は電圧より位相が π/2 遅れる。平均電力 0
• コンデンサー C:リアクタンス X_C = 1/(ωC)(高周波ほど流れやすい)。電流は電圧より位相が π/2 進む。平均電力 0
• どちらも I_e = V_e/X — オームの法則の顔だが、エネルギーは消費せず出し入れするだけ
電気振動(LC 回路)
• 充電したコンデンサーとコイルをつなぐと、電荷と電流が振動:
周波数 f = 1/(2π√(LC))
• エネルギーが (1/2)CV² ⇔ (1/2)LI² の間を往復(単振動のばね ⇔ 運動エネルギーと同型)
• 最大電流:(1/2)CV₀² = (1/2)LI₀² から
変圧器と送電(第5章 B5 の実戦配備)
• V₁:V₂ = N₁:N₂、理想では V₁I₁ = V₂I₂
• 高電圧送電:電圧 n 倍 → 電流 1/n → 送電線の発熱 rI² は 1/n²
電磁波
• 振動する電場と磁場が互いを生み合いながら空間を伝わる横波
• 真空中の速さ:c = 3.0×10⁸ m/s(光速)、c = fλ
• 波長の長い順:電波 > 赤外線 > 可視光 > 紫外線 > X線 > γ線 — すべて同じ仲間
解法チャート(交流)
1. まず f(または ω)を確認 — リアクタンスは周波数で変わる
2. 大きさは I_e = V_e/X(X は R・ωL・1/ωC)、実効値で統一して計算
3. 位相:「コイルは電流が遅れ、コンデンサーは進む」— 理由(自己誘導/充放電)とセットで
4. 電力:消費するのは抵抗だけ(L・C の平均電力は 0)
5. LC 振動はエネルギー保存((1/2)CV² ⇔ (1/2)LI²)と f = 1/(2π√(LC)) の 2 本柱
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
家庭のコンセントの「100 V」は、交流電圧の最大値である。○か×か。
Q2
コイルのリアクタンス X_L = ωL は、交流の周波数が高いほどどうなるか。
(a) 大きくなる(流れにくくなる)
(b) 小さくなる(流れやすくなる)
(c) 周波数によらない
Q3
コンデンサーは直流を通さないが、交流に対しては電流が流れる。○か×か。
Q4
コイルやコンデンサーだけを交流電源につないだとき、平均の消費電力はどうなるか。
(a) I_eV_e
(b) (1/2)I_eV_e
(c) 0
Q5
電磁波の速さ(真空中)は、波長によってどうなるか。
(a) 波長が長いほど速い
(b) 波長が短いほど速い
(c) 波長によらずすべて光速 c
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — 100 V は実効値。最大値は 100√2 ≒ 141 V — 瞬間的には ±141 V の間を毎秒 50〜60 往復している。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(a) — 高周波ほど ΔI/Δt が大きく、自己誘導の逆起電力が強くなる(第5章)— コイルは「速い変化が苦手」。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:○ — 極板の間を電荷が渡るのではなく、充電と放電の繰り返しが回路に電流を往復させる。向きが変わり続ける交流だからこそ流れ続けられる。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(c) — L も C もエネルギーを蓄えては返すだけ((1/2)LI²・(1/2)CV² の出し入れ)— 熱にするのは抵抗だけ。電力会社が「無効電力」と呼ぶ正体。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(c) — 電波もγ線も真空中では同じ c — 違うのは f と λ の組み合わせ(c = fλ)だけ。「光は電磁波の一種」というマクスウェルの統一の帰結。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り、√2 ≒ 1.41、π = 3.14、c = 3.0×10⁸ m/s とする。
A1【交流の表し方】★
A1-1
周波数 50 Hz の交流について、①周期、②角周波数 ω を求めよ。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
① T = 1/f = 1/50 = 2.0×10⁻² s
② ω = 2πf = 2×3.14×50 = 3.1×10² rad/s
ポイント f・T・ω は単振動(第1巻・第8章)と同じ 3 点セット — 交流は「電圧の単振動」。1 秒に 50 回、向きが往復している。
A1-2(類題)
最大値 141 V の正弦波交流の実効値を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
V_e = V₀/√2 = 141/1.41 = 1.0×10² V
ポイント √2 で割ると実効値 — 家庭の 100 V の"素顔"が 141 V。√2 ≒ 1.41 とのペアで、100 ⇔ 141 の往復を即答できるように。
A1-3(類題)
V = 141×sin(100πt) [V] と表される交流の、①周波数、②実効値を求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① ω = 100π より f = ω/2π = 50 Hz
② V_e = 141/√2 = 1.0×10² V
ポイント 式から読む練習 — sin の中身の係数が ω(第1巻・第8章の型)。「式 → f・T・実効値」の翻訳が交流のグラフ・式問題の入口。
A2【実効値と電力】★★
A2-1
実効値 100 V の交流電源に 50 Ω の抵抗をつないだ。①電流の実効値、②平均の消費電力を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
① I_e = V_e/R = 100/50 = 2.0 A
② P̄ = I_eV_e = 2.0×100 = 2.0×10² W
ポイント 実効値どうしなら直流と同じ計算 — これが実効値の存在理由。「交流の式に見えない」ことこそが設計の勝利。
A2-2(類題)
A2-1 の電流の最大値を求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
I₀ = √2×I_e = 1.41×2.0 = 2.8 A
ポイント 逆向きの換算(実効値 → 最大値は √2 倍)。ヒューズやスイッチの定格は瞬間の最大にも耐える必要がある — 最大値の出番。
A2-3(類題)
交流の電流や電圧を「実効値」で表すのはなぜか。「平均電力」という言葉を使って説明せよ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
交流の瞬間の電力は絶えず変動するが、実効値を使うと平均電力が直流とまったく同じ形(P̄ = I_eV_e = I_e²R)で書けるから。
実効値は「同じ発熱をする直流に換算した値」— 電力の勘定に最も便利な"代表値"である。
ポイント 定義の由来(2 乗平均の平方根:B1)より先に、ご利益(直流の式が使える)で理解する — 実用が先、由来が後、の順で腑に落ちる概念。
A3【コイルのリアクタンス】★★★
A3-1
自己インダクタンス 0.50 H のコイルに、周波数 50 Hz の交流を加えた。コイルのリアクタンスを求めよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
X_L = ωL = 2πfL = 2×3.14×50×0.50 = 1.6×10² Ω
ポイント X_L = ωL — 単位は Ω(電流の妨げとしては抵抗と同格)。ただし正体は自己誘導の逆起電力で、熱は出さない(A5)。
A3-2(類題)
A3-1 のコイルに実効値 100 V を加えたときの、電流の実効値を求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
I_e = V_e/X_L = 100/157 = 0.64 A
ポイント 形はオームの法則(V = XI)— リアクタンスは「交流版の抵抗」として大きさの計算に使える。位相のずれ(π/2 遅れ)は別枠で管理。
A3-3(類題)
A3-1 の交流の周波数を 100 Hz(2 倍)にすると、①リアクタンス、②電流はそれぞれ何倍になるか。また、電流の位相は電圧に対してどうなっているか。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① X_L = ωL ∝ f:2 倍(3.1×10² Ω)
② I_e = V_e/X_L:1/2 倍
位相:電流は電圧より π/2(1/4 周期)遅れる
ポイント 「コイルは高周波の関所」— 周波数に比例して締まる。低音だけ通すスピーカーの回路(ローパスフィルタ)の原理。遅れの理由は B2 で。
A4【コンデンサーのリアクタンス】★★★
A4-1
電気容量 10 μF のコンデンサーに、周波数 50 Hz の交流を加えた。リアクタンスを求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
X_C = 1/(ωC) = 1/(2×3.14×50×10×10⁻⁶) = 1/(3.14×10⁻³) = 3.2×10² Ω
ポイント X_C = 1/(ωC) — ω が分母:コイルと逆の周波数応答。式の形(逆数)ごと対で記憶する。
A4-2(類題)
A4-1 のコンデンサーに実効値 100 V を加えたときの、電流の実効値を求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
I_e = V_e/X_C = 100/318 = 0.31 A
ポイント 「直流は通さない(X_C → ∞)のに、交流なら 0.3 A 流れる」— 充放電の往復(Q3)が電流の正体。極板間を電荷は渡っていない。
A4-3(類題)
A4-1 の周波数を 100 Hz(2 倍)にすると、①リアクタンス、②電流はそれぞれ何倍になるか。また、電流の位相は電圧に対してどうなっているか。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① X_C ∝ 1/f:1/2 倍(1.6×10² Ω)
② I_e:2 倍
位相:電流は電圧より π/2 進む
ポイント 「コンデンサーは高周波の素通し」— コイルと正反対(ハイパスフィルタ)。L と C の逆向きの応答が、周波数で信号を仕分けるすべての回路(ラジオ・オーディオ)の土台。
A5【位相と消費電力】★★★
A5-1
抵抗に交流電圧を加えたとき、電流と電圧の位相の関係と、平均の消費電力を述べよ。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
位相:同位相(電圧が最大の瞬間に電流も最大)
平均電力:P̄ = I_eV_e(= I_e²R)を消費する
ポイント 抵抗は交流でも"素直" — V = RI が瞬間ごとに成り立つ。エネルギーを熱として一方通行で捨てる、唯一の消費役。
A5-2(類題)
コイルやコンデンサーだけを交流電源につないだとき、平均の消費電力が 0 になる理由を、「エネルギーの出し入れ」の言葉で説明せよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
コイルは (1/2)LI²、コンデンサーは (1/2)CV² の形でエネルギーを蓄えては電源に返すことを 1 周期に 2 回繰り返す。
瞬間の電力 P = VI は正(受け取る)と負(返す)を交互にとり、1 周期で平均すると 0 — 熱には変わらない。
ポイント L と C は「エネルギーの貯金箱」、R だけが「消費者」— 交流回路のエネルギーの役割分担。だから理想のコイル・コンデンサーは発熱しない。
A5-3(類題)
抵抗・コイル・コンデンサーについて、「リアクタンス(抵抗)の周波数依存」「電流の位相」「平均電力」を 1 つの表に整理せよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
| 素子 | 妨げの大きさ | 周波数依存 | 電流の位相 | 平均電力 |
|---|---|---|---|---|
| 抵抗 R | R | よらない | 同位相 | I_eV_e(消費) |
| コイル L | X_L = ωL | 高いほど大 | π/2 遅れる | 0 |
| コンデンサー C | X_C = 1/(ωC) | 高いほど小 | π/2 進む | 0 |
ポイント この表 1 枚が交流回路の全地図 — 「遅れ・進み」の語呂は「コイルは慣性で出遅れ、コンデンサーは先回りして充電」。理由ごと(B2・B3)覚えれば忘れない。
A6【電気振動(LC 回路)】★★★
A6-1
自己インダクタンス 0.10 H のコイルと、電気容量 1.0×10⁻⁴ F のコンデンサーで振動回路を作った。電気振動の周波数を求めよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
f = 1/(2π√(LC)) = 1/(2×3.14×√(0.10×1.0×10⁻⁴))
= 1/(6.28×3.16×10⁻³) ≒ 50 Hz
ポイント f = 1/(2π√(LC)) — ばね振り子の T = 2π√(m/k) と同族(対応:L ⇔ m、1/C ⇔ k:B5-2)。√ の中を先に計算、が事故防止。
A6-2(類題)
A6-1 のコンデンサーを 10 V で充電してからコイルにつないだ。回路に流れる電流の最大値を求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
エネルギー保存:(1/2)CV₀² = (1/2)LI₀²
最大電流:I₀ = V₀√(C/L) = 10×√(1.0×10⁻⁴/0.10) = 10×3.16×10⁻² ≒ 0.32 A
ポイント 「電圧が 0 の瞬間に電流が最大」— コンデンサーの貯金が全額コイルへ移った瞬間。単振動の「変位 0 で速さ最大」の完全な相似形。
A6-3(類題)
ラジオの同調(チューニング)では、LC 振動回路の C を可変にして受信する放送局を選ぶ。受信する周波数を高くしたいとき、C をどうすればよいか。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
f = 1/(2π√(LC)) より f を上げるには LC を小さく —
C を小さくする
ポイント 同調 = 「回路の固有振動数を電波の周波数に共振させる」(第2巻・共鳴の電気版)。バリコン(可変コンデンサー)のつまみがラジオの選局ダイヤルの正体。
A7【変圧器と送電】★★
A7-1
一次コイル 200 回巻き・二次コイル 50 回巻きの理想的な変圧器がある。一次に実効値 100 V の交流を加えたとき、二次の電圧を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
V₂ = V₁×N₂/N₁ = 100×50/200 = 25 V
ポイント 電圧は巻数に比例(1 巻きあたりの電圧が共通:第5章 B5-2)。降圧も昇圧も巻数比だけ — ACアダプタの中身はほぼこれ。
A7-2(類題)
A7-1 の変圧器で、一次コイルに 0.50 A が流れているとき、二次コイルの電流を求めよ(理想変圧器とする)。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
電力保存:V₁I₁ = V₂I₂
I₂ = 100×0.50/25 = 2.0 A
ポイント 電圧を 1/4 にすれば電流は 4 倍 — 変圧器は電力を保ったまま「電圧と電流の配合」を変える装置。エネルギーはただでは増えない。
A7-3(類題)
1.0×10⁴ W の電力を、抵抗 1.0 Ω の送電線で送る。送る電圧を①100 V にした場合、②1.0×10⁴ V にした場合のそれぞれについて、送電線での電力損失を求めよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① I = P/V = 100 A → 損失 rI² = 1.0×100² = 1.0×10⁴ W(送る電力と同額!)
② I = 1.0 A → 損失 rI² = 1.0 W(①の 1 万分の 1)
ポイント 「電圧 100 倍 → 損失 1/10000」— 2 乗の御利益の実額。高電圧送電と変圧器(交流)が電力網を支配した理由が、この 2 行の計算に凝縮されている。
A8【電磁波】★★
A8-1
周波数 80 MHz(8.0×10⁷ Hz)の FM ラジオの電波の波長を求めよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
λ = c/f = 3.0×10⁸/(8.0×10⁷) = 3.8 m
ポイント c = fλ は第2巻の v = fλ の電磁波版(v がつねに光速)。FM の波長が数 m — アンテナの長さ(λ/4 ≒ 1 m 弱)の設計根拠。
A8-2(類題)
波長 0.10 m のマイクロ波(電子レンジなどで使われる)の周波数を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
f = c/λ = 3.0×10⁸/0.10 = 3.0×10⁹ Hz
ポイント GHz(10⁹ Hz)帯 — 電子レンジ・無線 LAN・携帯電話が住む周波数の街。波長 ⇔ 周波数の往復を c = fλ 一本で。
A8-3(類題)
次の電磁波を、波長の長い順に並べよ:X線、可視光線、電波、γ線、紫外線、赤外線。また、これらすべてに共通する性質を 2 つ挙げよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
電波 > 赤外線 > 可視光線 > 紫外線 > X線 > γ線
共通の性質:①真空中を光速 c で伝わる ②(電場と磁場が振動する)横波である
ポイント 名前が違っても全部同じ波の親戚(波長が違うだけ)— 「光は電磁波」というマクスウェルの統一。波長順は「電・赤・可・紫・X・γ」で一気に。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。「周波数がどう効くか」と「エネルギーを消費するか」の 2 視点で素子を見るのが作法。B2・B3(L と C の応答の理由)とB5(電気振動)が入試の最頻出。
B1【実効値の由来】★★★
B1-1 抵抗 R に電流 I = I₀sinωt が流れるとき、瞬間の消費電力 P = RI² の 1 周期にわたる平均が (1/2)RI₀² となることを、sin²ωt の平均値が 1/2 であることを使って示せ。
B1-2 B1-1 から、実効値が I_e = I₀/√2 と定義される理由を述べよ。
B1-3 「実効値は 2 乗の平均の平方根(2乗平均平方根)」と言われる。この言い方と B1-2 の定義が同じものであることを説明せよ。
B2【コイルの応答の理由】★★★
B2-1 コイルのリアクタンスが X_L = ωL となる(周波数に比例する)理由を、自己誘導の逆起電力 V = LΔI/Δt と「高周波ほど電流の変化が速い」ことから説明せよ。
B2-2 コイルを流れる電流の位相が電圧より π/2 遅れることを、「電圧が最大の瞬間、電流はどうなっているか」に注目して説明せよ。
B2-3 ω → 0(直流)の極限で X_L がどうなるかを述べ、第5章 B4-3(RL 回路の十分時間後)との整合を確かめよ。
B3【コンデンサーの応答の理由】★★★
B3-1 コンデンサーに交流で電流が流れ続けられる理由を、「充電と放電」の言葉で説明せよ(極板の間を電荷が渡るわけではないことに注意)。
B3-2 リアクタンスが X_C = 1/(ωC)(周波数に反比例)となる理由を、I = ΔQ/Δt = C×ΔV/Δt から説明せよ。
B3-3 ω → 0(直流)の極限で X_C がどうなるかを述べ、「コンデンサーは直流を通さない」(第3章 B6-1)との整合を確かめよ。
B4【L・C の平均電力が 0 であること】★★
B4-1 コイルに流れる交流について、瞬間の電力 P = VI の符号が 1 周期の間にどう変わるかを述べ、平均が 0 になる理由を説明せよ。
B4-2 「電力を消費する抵抗」と「消費しないリアクタンス」の違いを、エネルギーの行き先(熱になるか、蓄えて返すか)で対比せよ。
B4-3 実際のコイル(導線に抵抗がある)では、平均消費電力は厳密には 0 にならない。その理由を一言で述べよ。
B5【電気振動の理論】★★★
B5-1 充電したコンデンサー(C、初期電圧 V₀)をコイル(L)につないだ回路で、エネルギー保存の式を書き、電流の最大値 I₀ を求めよ。
B5-2 LC 振動と、ばね振り子(質量 m、ばね定数 k)の単振動の対応表を作れ(何が何に対応するか:電気量 ⇔ 変位、など)。そこから周期 T = 2π√(LC) の形を説明せよ。
B5-3 実際の振動回路では、振動はしだいに減衰する。エネルギーがどこへ逃げるのか、2 つ挙げよ。
B6【電磁波の性質】★★★
B6-1 電磁波が「電場と磁場が互いを生み合いながら伝わる波」であることを、電磁誘導(変化する磁場 → 電場)と、その逆の過程に触れて説明せよ。
B6-2 電磁波が横波であることは、光のどんな現象から確かめられるか(第2巻の知識と接続して)。
B6-3 波長の異なる電磁波(電波・赤外線・可視光・紫外線・X線・γ線)の代表的な利用例を 1 つずつ挙げよ。
B問題 解答・解説
B1【実効値の由来】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
瞬間の電力:P = RI² = RI₀²sin²ωt
sin²ωt は 0 と 1 の間を対称に振動し、1 周期の平均は 1/2。
よって平均電力 P̄ = (1/2)RI₀² ∎
ポイント sin² の平均 1/2 は「cos² と半分ずつ分け合う(sin²+cos² = 1)」で納得できる — 交流計算の最重要定数。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
P̄ = (1/2)RI₀² を、直流と同じ形 P̄ = RI_e² と書きたい:
条件:RI_e² = (1/2)RI₀² → I_e = I₀/√2 ∎
「同じ発熱をする直流の値」として実効値が定義される。
ポイント √2 は sin² の平均 1/2 の平方根の顔 — 定義の中身(発熱の等価換算)が言えれば、公式は導ける。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
I_e² = (I² の平均) = (1/2)I₀² — すなわち I_e = √(I² の平均)。
「2 乗して → 平均して → 平方根」の手順そのものが I₀/√2 を生む:2 つの言い方は同じ定義の別表現 ∎
ポイント 「2乗平均平方根(rms)」という名前が計算手順の要約 — 符号が交互に変わる量の"実力"は、2 乗してから測るしかない。
B2【コイルの応答の理由】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
コイルは自己誘導の逆起電力 V = LΔI/Δt で電流の変化に逆らう。
周波数が高いほど、同じ振幅でも電流の変化が速く(ΔI/Δt 大)、逆起電力が大きい — 妨げは ω に比例:
X_L = ωL ∎
ポイント X_L の正体は「自己誘導の抵抗」— 熱を出す摩擦ではなく、変化への反発。∝ ω の理由を「速い変化ほど強く逆らう」の一言で言えること。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
電圧が最大の瞬間、V = LΔI/Δt より電流の変化率が最大 — 変化率が最大なのは、電流がちょうど 0 を横切る瞬間(単振動で速さ最大 = 変位 0 と同じ)。
つまり電圧のピークのとき電流はまだ 0 — 電流のピークは 1/4 周期あと:π/2 の遅れ ∎
ポイント 「V は I の変化率に比例」— グラフで V のピークと I のゼロ交差を重ねる図が、遅れ π/2 の一枚証明。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
ω → 0 で X_L → 0(ただの導線)。
直流では電流が変化しないため逆起電力が消える — RL 回路の十分時間後(第5章 B4-3:コイルは導線扱い)と完全に整合 ○
ポイント 極限チェックは章をまたいだ整合の確認装置 — 「直流の世界の答え」と「交流の ω → 0」が一致して初めて、公式が信用できる。
B3【コンデンサーの応答の理由】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
交流では電圧の向きが周期的に反転するため、コンデンサーは充電 → 放電 → 逆向きに充電 → …を繰り返す。
そのたびに導線を電荷が行き来する — 極板の間を渡らなくても、回路には電流が流れ続ける ∎
ポイント 「コンデンサーを流れる電流」の正体は極板への出し入れ — 直流は一度満タンで終わり(第3章)、交流は永遠に積み下ろしが続く。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
電流は I = ΔQ/Δt = C×ΔV/Δt — 電圧の変化の速さに比例。
周波数が高いほど ΔV/Δt が大きく、同じ電圧振幅でも大きな電流が流れる:妨げは ω に反比例:
X_C = 1/(ωC) ∎
ポイント コイル(V ∝ ΔI/Δt)とコンデンサー(I ∝ ΔV/Δt)は役割が鏡写し — どちらが「変化率」を担うかの違いが、ω の位置(分子か分母か)と位相(遅れか進みか)を同時に決めている。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
ω → 0 で X_C → ∞(断線)。
直流では充電が完了すれば電流 0 — 「コンデンサーは直流を通さない」(第3章 B6-1:十分時間後は断線扱い)と整合 ○
ポイント B2-3 と対にして:「直流の極限で、L は導線・C は断線」— 第3章・第5章の過渡現象の結論が、交流の式の極限として再登場する。
B4【L・C の平均電力が 0 であること】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
コイルでは電流が電圧より π/2 遅れるため、V と I の符号の組み合わせが 1/4 周期ごとに入れ替わる — P = VI は正(エネルギーを受け取る)と負(返す)を交互にとる。
正の期間と負の期間が対称なので、1 周期の平均は 0 ∎
ポイント 位相差 π/2 ⇔ 平均電力 0 — 「ためては返す」のリズムが、P = VI の符号交代として式に現れる。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
抵抗:電気エネルギーを熱に変えて回路の外へ捨てる(一方通行・不可逆)。
リアクタンス(L・C):エネルギーを磁場((1/2)LI²)や電場((1/2)CV²)の形で一時的に蓄え、そのまま電源へ返す(往復・可逆)。
ポイント 「消費」と「貸し借り」の区別 — 電力会社の言う有効電力(R が食う)と無効電力(L・C が往復させる)の物理的な中身。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
実際のコイルの導線には抵抗成分があり、電流が流れる以上そこでジュール熱が発生するため、平均消費電力は 0 にならない。
ポイント 「理想」と「実物」の差はいつも抵抗 — 理想 L・C の"無消費"は、抵抗ゼロという仮定の上に立っている。
B5【電気振動の理論】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
エネルギー保存(抵抗なし):
(1/2)CV₀² = (1/2)LI₀²
I₀ = V₀×√(C/L) ∎
ポイント 「電圧最大(電流 0)⇔ 電流最大(電圧 0)」の 2 状態を等号で結ぶだけ — 単振動の「端 ⇔ 中央」のエネルギー保存と同じ 1 行。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
対応表:
| 単振動 | LC 振動 |
|---|---|
| 変位 x | 電気量 Q |
| 速度 v | 電流 I |
| 質量 m(慣性) | L(電流の慣性) |
| ばね定数 k(復元) | 1/C(電圧の復元) |
| (1/2)mv² | (1/2)LI² |
| (1/2)kx² | Q²/(2C) |
ばねの T = 2π√(m/k) に対応を代入すると T = 2π√(L/(1/C)) = 2π√(LC) — 周期の形が説明できる ∎
ポイント L = 慣性、1/C = ばね — この 1 対 1 対応で、第1巻・第8章の単振動の直感(重いほどゆっくり・硬いほど速い)が丸ごと電気に輸入できる。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
①回路の抵抗によるジュール熱(電流が流れるたびに削られる)
②電磁波としての放射(振動する電流はアンテナとなり、エネルギーを空間へ放つ)
ポイント ②が次の主役 — 振動回路の"漏れ"こそが電波の発生原理(ヘルツの実験)。減衰は欠点ではなく、無線通信の出発点だった。
B6【電磁波の性質】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
電磁誘導:変化する磁場はまわりに電場を作る(第5章)。
マクスウェルはその逆 — 変化する電場もまわりに磁場を作る — を理論的に見抜いた。
すると、振動する電場が磁場を生み、その磁場の変化がまた電場を生み…という連鎖が空間を自走する — これが電磁波。媒質は不要で、速さは理論から c = 3.0×10⁸ m/s と予言され、光速と一致した(→ 光は電磁波)。
ポイント 「誘導の相互おんぶ」が波になる — 第5章の法則+その鏡像だけで、光の正体まで届いたのが 19 世紀物理の最高到達点。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
偏光(第2巻・光の性質)— 光が特定の振動方向だけをもつ状態を作れる(偏光板)ことは、振動が進行方向と垂直である証拠。
縦波(音)には偏りが存在しない — 偏光の存在そのものが「光 = 横波 = 電磁波」を支持する。
ポイント 「偏れる = 横波」— 現象 1 つで波の型が判定できる、波動論のきれいな論法。電場の振動方向が偏光の方向にあたる。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
電波:放送・通信(ラジオ・携帯電話)/赤外線:暖房・リモコン・サーモグラフィー/可視光:照明・視覚/紫外線:殺菌・日焼け/X線:レントゲン撮影・手荷物検査/γ線:がんの放射線治療・非破壊検査
ポイント 波長が短いほど光子のエネルギーが大きく(第7章 E = hν!)、透過力・作用が強くなる — 利用例の並びが、そのまま次章「光の粒子性」への滑走路になっている。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦6-1【共テ形式:家庭の交流】★★
家庭用コンセントの電源は、実効値 100 V・周波数 50 Hz の交流である。√2 ≒ 1.41 とする。
① この交流電圧の最大値は [アイウ] V である。
② 周期は [エ].[オカキ] s である。
③ この電源に 50 Ω の電熱器をつなぐと、電流の実効値は [ク].[ケ] A である。
④ 電熱器の平均消費電力は [コサシ] W である。
⑤ 同じ電源に、抵抗の無視できるコイルだけをつないだ場合、コイルの平均消費電力は:[ス]
(a) ④と同じ
(b) ④の半分
(c) 0
実戦6-2【記述形式:コイルとコンデンサーの応答】★★★
実効値 100 V・周波数 50 Hz の交流電源がある。π = 3.14 とする。
① 自己インダクタンス 0.50 H のコイルのリアクタンスを求めよ。
② ①のコイルをこの電源につないだときの、電流の実効値を求めよ。
③ 電気容量 20 μF のコンデンサーのリアクタンスを求めよ。
④ ③のコンデンサーをつないだときの、電流の実効値を求めよ。
⑤ 電源の周波数を 100 Hz に変えると、①と③のリアクタンスはそれぞれ何倍になるか。
⑥ ⑤のような周波数依存の違いが生じる理由を、コイル・コンデンサーそれぞれについて一言ずつ述べよ。
実戦6-3【記述形式:LC 振動回路】★★★
電気容量 C = 4.0 μF のコンデンサーを V₀ = 10 V で充電し、電池から切り離して、自己インダクタンス L = 0.10 H のコイルにつないだところ、電気振動が始まった(回路の抵抗は無視できる)。π = 3.14 とする。
① 振動が始まる直前にコンデンサーにたくわえられていたエネルギーを求めよ。
② 回路の電流が最大になる瞬間、コンデンサーの電圧はいくらか。理由とともに答えよ。
③ 電流の最大値を求めよ。
④ この電気振動の周波数を求めよ。
⑤ 実際の回路では、振動はしだいに小さくなっていく。その理由を 2 つ挙げよ。
実戦問題 解答・解説
実戦6-1
考え方 実効値の 4 点セット(最大値・周期・電流・電力)+ L の無消費(⑤)。家庭の電気という最も身近な題材で、この章の語彙を総点検する。
実戦6-1解答を見る解答を隠す
解答
① V₀ = √2×100 = 141 V(アイウ = 141)
② T = 1/50 = 0.020 s(エ〜キ = 0.020)
③ I_e = 100/50 = 2.0 A(ク = 2、ケ = 0)
④ P̄ = I_eV_e = 200 W(コサシ = 200)
⑤ 理想のコイルはエネルギーを蓄えて返すだけ:(c) 0(ス = (c))
ポイント
• ①〜④は「実効値で計算すれば直流と同じ」の実演 — 交流らしさ(√2、1/f)は①②に、直流の顔(オームの法則・P = VI)は③④に住み分けている。
• ⑤は A5-2・B4 の結論の一択化 — 「電流は流れるのに電力は 0」という違和感こそ、位相 π/2 の物理。
実戦6-2
考え方 L と C を同じ電源で並べて比較する構成 — 数値(①〜④)で「たまたま同程度の妨げ」を体験し、⑤⑥で周波数を振って逆向きの応答をあぶり出す。B2・B3 の理由の言語化が締め。
実戦6-2解答を見る解答を隠す
解答
① X_L = 2πfL = 2×3.14×50×0.50 = 1.6×10² Ω
② I_e = 100/157 ≒ 0.64 A
③ X_C = 1/(2πfC) = 1/(2×3.14×50×20×10⁻⁶) = 1/(6.28×10⁻³) ≒ 1.6×10² Ω
④ I_e = 100/159 ≒ 0.63 A
⑤ コイル:X_L ∝ f → 2 倍(約 3.1×10² Ω)/コンデンサー:X_C ∝ 1/f → 1/2 倍(約 80 Ω)
⑥ コイル:高周波ほど電流の変化が速く、自己誘導の逆起電力が強くなるから。
コンデンサー:高周波ほど電圧の変化が速く、充放電の出し入れ(I = CΔV/Δt)が激しくなるから。
ポイント
• ①③がほぼ同じ 160 Ω 前後 — この L と C の組は 50 Hz 付近に「固有の周波数」をもつ(f = 1/2π√(LC) ≒ 50 Hz:A6-1 と同じ設計)。偶然ではなく共振の入口。
• ⑤の「2 倍 と 1/2 倍」の逆走が L・C の個性 — 理由(⑥)まで書けて初めて、表(A5-3)が生きた知識になる。
実戦6-3
考え方 第2章(コンデンサーのエネルギー)× 第5章(コイルのエネルギー)× 単振動(第1巻)の合流点。「①貯金 → ②③引っ越し → ④リズム → ⑤漏れ」の物語で電気振動を一周する。
実戦6-3解答を見る解答を隠す
解答
① U = (1/2)CV₀² = (1/2)×4.0×10⁻⁶×100 = 2.0×10⁻⁴ J
② 0 V — 電流最大の瞬間は、エネルギーがすべてコイル((1/2)LI²)に移っており、コンデンサーの電荷(電圧)は 0 になっているから。
③ (1/2)LI₀² = 2.0×10⁻⁴ より
I₀ = √(2×2.0×10⁻⁴/0.10) = √(4.0×10⁻³) ≒ 6.3×10⁻² A
④ f = 1/(2π√(LC)) = 1/(2×3.14×√(4.0×10⁻⁷))
= 1/(6.28×6.3×10⁻⁴) ≒ 2.5×10² Hz
⑤ ①回路の抵抗でジュール熱が発生する ②振動する電流が電磁波を放射する — どちらも振動のエネルギーを外へ運び出す。
ポイント
• ②〜③は「変位 0 で速さ最大」(単振動)の完全な写し — B5-2 の対応表を1問の中で使い切る。
• ④の √(4.0×10⁻⁷) = √4×√10⁻⁷ = 2×10⁻³·⁵… とせず、√(40×10⁻⁸) = 6.3×10⁻⁴ と偶数乗をくくる(第2巻からの平方根技)— 計算の型は巻をまたいで同じ。
第7章 電子と光(粒子性と波動性)
19 世紀の終わり、物理は 2 つの"顔"の発見でひっくり返る。電子の発見(トムソンの比電荷・ミリカンの電気素量)が原子の内部への扉を開き、光電効果が「波のはずの光が粒(光子:E = hν)としてふるまう」ことを突きつけた。逆に電子は波(ド・ブロイ波:λ = h/p)として干渉する — 「波か粒か」ではなく「波でも粒でもある」。仲介人はプランク定数 h = 6.6×10⁻³⁴ J·s。この章は量子の世界の入国審査である。
この章の公式・要点まとめ
電子の発見
• 陰極線の正体 = 電子(負電荷の粒子の流れ)— 電場・磁場で曲がる向きから判定
• トムソン:比電荷 e/m ≒ 1.8×10¹¹ C/kg を測定(電場・磁場で曲げる:第1・4章の技術)
• ミリカン:油滴実験で電気素量 e = 1.6×10⁻¹⁹ C を測定(電荷はとびとび = e の整数倍)
• 電子の加速(第1章の再演):eV = (1/2)mv²
光の粒子性(光子)
• 光は振動数 ν に比例するエネルギーの粒(光子)の集まり:
E = hν = hc/λ(h = 6.6×10⁻³⁴ J·s:プランク定数)
• 光子の運動量:p = E/c = h/λ
• エネルギーの単位:1 eV = 1.6×10⁻¹⁹ J(電子 1 個を 1 V で加速したエネルギー)
光電効果(粒子性の証拠)
• 金属に光を当てると電子(光電子)が飛び出す — ただし限界振動数 ν₀ 未満の光では、どんなに強くても出ない
• エネルギー収支:hν = W + K_max(W:仕事関数 = 脱出の"入場料"、K_max:光電子の最大運動エネルギー)
• 限界振動数:ν₀ = W/h/阻止電圧:K_max = eV₀
• 光を強くする → 光電子の数が増える(K_max は不変)— 波動説では説明不能
X線(逆・光電効果)
• 高電圧で加速した電子を金属に当てると X線が発生
• 最短波長:eV = hc/λ_min → λ_min = hc/(eV)(電子の全エネルギーが 1 個の光子へ)
粒子の波動性(ド・ブロイ波)
• 運動量 p の粒子は波長 λ = h/p = h/(mv) の波としてふるまう
• 電圧 V で加速した電子:λ = h/√(2meV)(V = 150 V で λ ≒ 1.0×10⁻¹⁰ m = 原子サイズ!)
• 証拠:電子線回折(結晶に当てると干渉模様 — デビソン・ガーマーの実験)
二重性のまとめ
• 光:干渉・回折(波)+ 光電効果・コンプトン効果(粒)
• 電子:荷電粒子として運動(粒)+ 電子線回折(波)
• 橋渡しの式:E = hν、p = h/λ — h が波の言葉(ν、λ)と粒の言葉(E、p)の翻訳係数
解法チャート(電子と光)
1. 光の問題:まず E = hν(= hc/λ)で光子 1 個のエネルギーを出す
2. 光電効果は収支の 1 行:hν = W + K_max — 3 つの量のどれを問われても同じ式
3. eV ⇔ J の換算(×1.6×10⁻¹⁹)を丁寧に
4. 電子の速さ・波長は「加速:eV = (1/2)mv²」→「波:λ = h/mv」の直列
5. 検算:限界振動数(K = 0)、グラフの傾き = h(金属によらず普遍)
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
陰極線の正体は、負の電気をもつ粒子(電子)の流れである。○か×か。
Q2
光子 1 個のエネルギーを決めるのはどれか。
(a) 光の明るさ(強さ)
(b) 光の振動数
(c) 光を出す光源の大きさ
Q3
光電効果で、当てる光の振動数が限界振動数より小さいとき、光を強くすれば光電子は飛び出す。○か×か。
Q4
光電効果で、光を(振動数を変えずに)強くすると、どうなるか。
(a) 飛び出す光電子の数が増える
(b) 光電子 1 個の最大運動エネルギーが増える
(c) 何も変わらない
Q5
電子などの粒子も、波としての性質(ド・ブロイ波)をもつ。○か×か。
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:○ — 電場でも磁場でも「負電荷」として曲がる(第1・4章の向きの判定)— 正体は電子。原子に"部品"があることの最初の証拠。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(b) — E = hν:光子の単価は振動数だけが決める。明るさは光子の個数(毎秒何個届くか)の話 — 単価と数量の分離が量子論の第一歩。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:× — ν < ν₀ の光子は 1 個あたりのエネルギーが入場料 W に足りない — 何個来ても(どんなに強くても)1 個ずつでは越えられない。ここが波動説の墓標。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(a) — 強い光 = 光子が多い → 飛び出す数が増える。1 個の取り分 K_max = hν−W は変わらない(阻止電圧も不変)。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:○ — λ = h/p のド・ブロイ波。電子線が結晶で干渉模様を作る(電子線回折)ことで実証済み — 「粒だと思っていたものも波」。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り、h = 6.6×10⁻³⁴ J·s、c = 3.0×10⁸ m/s、e = 1.6×10⁻¹⁹ C、電子の質量 m = 9.1×10⁻³¹ kg とする。
A1【電子の発見】★★
A1-1
真空放電で観察される陰極線に、①電場、②磁場をかけると進路が曲がる。このことから陰極線について何が分かるか。
A1-1解答を見る解答を隠す
解答
電場・磁場で力を受けて曲がる → 電気を帯びた粒子の流れであること。
曲がる向き(電場では +極側へ、など)から、その電荷が負であることが分かる。
ポイント 「曲がる = 荷電粒子/向き = 符号」— 第1章(F = qE)と第4章(左手)の向きの判定が、そのまま電子発見の論理だった。
A1-2(類題)
電子の電気量 e = 1.6×10⁻¹⁹ C、質量 m = 9.1×10⁻³¹ kg から、比電荷 e/m を求めよ。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
e/m = 1.6×10⁻¹⁹/(9.1×10⁻³¹) ≒ 1.8×10¹¹ C/kg
ポイント 比電荷は「曲がりやすさ」(第4章 B4-2:e/m = v/rB)— トムソンが最初に測れたのはこの比だけ。e と m を別々に切り分けたのがミリカン(B2)。
A1-3(類題)
静止していた電子を 500 V で加速した。電子の速さを求めよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
eV = (1/2)mv² より
v = √(2eV/m) = √(2×1.6×10⁻¹⁹×500/(9.1×10⁻³¹)) = √(1.76×10¹⁴)
≒ 1.3×10⁷ m/s
ポイント 第1章 B4-2 の再演 — たった 500 V で光速の 4 % に達する軽さ。この「加速 → 速さ」がブラウン管・電子顕微鏡・X線管すべての第 1 工程。
A2【光子のエネルギー E = hν】★★
A2-1
振動数 5.0×10¹⁴ Hz(緑色)の光の、光子 1 個のエネルギーを求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
E = hν = 6.6×10⁻³⁴×5.0×10¹⁴ = 3.3×10⁻¹⁹ J
ポイント E = hν — 光は hν 円玉の集まりで、振動数が"単価"。10⁻¹⁹ J という小ささが、日常で粒々に気づかない理由。
A2-2(類題)
波長 6.6×10⁻⁷ m(赤色)の光の、光子 1 個のエネルギーを求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
E = hc/λ = 6.6×10⁻³⁴×3.0×10⁸/(6.6×10⁻⁷) = 3.0×10⁻¹⁹ J
ポイント 波長で与えられたら E = hc/λ(ν = c/λ を代入した顔)。赤(3.0)< 緑(3.3)— 波長が短いほど高単価、が色とエネルギーの対応。
A2-3(類題)
エネルギー 3.2×10⁻¹⁹ J を、電子ボルト(eV)で表せ。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
3.2×10⁻¹⁹/(1.6×10⁻¹⁹) = 2.0 eV
ポイント 1 eV = 1.6×10⁻¹⁹ J — 原子・電子の世界の"円とドル"。可視光の光子は 1.6〜3.1 eV:この換算感覚が第8章(エネルギー準位)で必需品になる。
A3【光電効果の収支式】★★★
A3-1
光電効果とはどんな現象か。また「限界振動数」とは何かを述べよ。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
光電効果:金属の表面に光を当てると、電子(光電子)が飛び出す現象。
限界振動数:光電子が飛び出すために必要な最小の振動数 ν₀ — これ未満の光では、どんなに強い光でも電子は飛び出さない。
ポイント 「明るさでなく振動数が門番」— この一点が波動説を倒した(B3-1)。強い赤色より弱い紫外線が勝つ、という直感破りの実験事実。
A3-2(類題)
仕事関数 3.3×10⁻¹⁹ J の金属に、振動数 1.0×10¹⁵ Hz の光を当てた。飛び出す光電子の最大運動エネルギーを求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
K_max = hν−W = 6.6×10⁻³⁴×1.0×10¹⁵−3.3×10⁻¹⁹
= 6.6×10⁻¹⁹−3.3×10⁻¹⁹ = 3.3×10⁻¹⁹ J
ポイント hν = W + K_max — 「光子の持参金 = 入場料 W + 持ち出し K」。1 個の光子が 1 個の電子に全額渡す、が式の背後の物語。
A3-3(類題)
A3-2 の金属の限界振動数を求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
K_max = 0 となる振動数:hν₀ = W
ν₀ = W/h = 3.3×10⁻¹⁹/(6.6×10⁻³⁴) = 5.0×10¹⁴ Hz
ポイント 限界振動数は「ちょうど入場料ぶん」の光(ν₀ = W/h)— 収支式に K = 0 を入れるだけで出る。金属ごとの W が ν₀ を決める(A5-3)。
A4【阻止電圧】★★★
A4-1
光電子の最大運動エネルギーが 3.2×10⁻¹⁹ J のとき、光電流をちょうど 0 にする逆電圧(阻止電圧)を求めよ。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
eV₀ = K_max より
V₀ = K_max/e = 3.2×10⁻¹⁹/(1.6×10⁻¹⁹) = 2.0 V
ポイント 阻止電圧は「一番元気な電子さえ登れない坂」— eV₀ = K_max(第1章:電位差の坂 × 電気量)。K_max を電圧で測る実験の要。
A4-2(類題)
ある光電効果の実験で、阻止電圧が 1.5 V であった。光電子の最大運動エネルギーを求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
K_max = eV₀ = 1.6×10⁻¹⁹×1.5 = 2.4×10⁻¹⁹ J
ポイント 逆向きの換算 — 「V₀ ボルトの阻止 = eV₀ ジュールの運動エネルギー」。eV 単位なら K_max = 1.5 eV と読むだけ、の便利さも体感。
A4-3(類題)
光の振動数を変えずに、光を 2 倍の強さにした。①飛び出す光電子の数、②阻止電圧は、それぞれどうなるか。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 光子の数が 2 倍 → 光電子の数も(ほぼ)2 倍(光電流が増える)
② 1 個あたりの取り分 K_max = hν−W は不変 → 阻止電圧は変わらない
ポイント 「数は強さ、単価は振動数」— 光電効果の 2 大独立つまみ。②が波動説には絶対に説明できない急所(強くすればエネルギーも増えるはず、が外れる)。
A5【光電効果のグラフ】★★★
A5-1
横軸に光の振動数 ν、縦軸に光電子の最大運動エネルギー K_max をとったグラフは、直線になる。この直線の「傾き」「縦軸の切片」「横軸の切片」は、それぞれ何を表すか。
A5-1解答を見る解答を隠す
解答
式:K_max = hν−W(ν の 1 次関数)
傾き = h(プランク定数)/縦軸切片 = −W(仕事関数の符号違い)/横軸切片 = ν₀(限界振動数)
ポイント 収支式 1 本がそのまま直線のグラフ — 3 つの読み所(傾き・2 つの切片)がそれぞれ h・W・ν₀ に対応する「1 枚で 3 度おいしい」図。
A5-2(類題)
ある金属の光電効果で、ν = 5.0×10¹⁴ Hz のとき K_max = 0、ν = 1.0×10¹⁵ Hz のとき K_max = 3.3×10⁻¹⁹ J であった。この 2 点からプランク定数を求めよ。
A5-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
傾き:h = (3.3×10⁻¹⁹−0)/(1.0×10¹⁵−5.0×10¹⁴) = 3.3×10⁻¹⁹/(5.0×10¹⁴)
= 6.6×10⁻³⁴ J·s
ポイント グラフの傾きから h を測る — ミリカン(皮肉にも光量子説に懐疑的だった)がこの方法で h を精密測定し、アインシュタインの式を裏づけた歴史の再現。
A5-3(類題)
金属をナトリウムから亜鉛(仕事関数が大きい)に取り替えて同じ実験をすると、K_max-ν グラフはどう変わるか。「傾き」と「横軸切片」について述べよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
傾きは変わらない(h は物質によらない普遍定数)。
W が大きいぶん直線は下(右)へ平行移動し、横軸切片(限界振動数 ν₀ = W/h)は大きくなる。
ポイント 「傾きは宇宙共通、切片は金属の個性」— 平行な直線の族、という絵で記憶。h の普遍性こそ、光量子仮説が"仮説"を卒業した決め手。
A6【X線の発生】★★★
A6-1
X線はどのようにして発生させるか。また、発生する X線のスペクトルに含まれる 2 つの成分の名前を挙げよ。
A6-1解答を見る解答を隠す
解答
高電圧で加速した電子を金属(陽極)に衝突させて発生させる。
スペクトル:連続X線(電子の減速で出る、波長が連続的な成分)と固有X線(金属の種類で決まる、特定波長の鋭い成分)。
ポイント X線 = 「電子の運動エネルギーの光子への両替」。連続(急ブレーキの光)+固有(原子の指紋)の 2 階建て、が X線スペクトルの標準の顔。
A6-2(類題)
2.0×10⁴ V で加速した電子を金属に当てて X線を発生させた。発生する X線の最短波長を求めよ。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
電子の全エネルギーが 1 個の光子になるとき、波長が最短:
条件:eV = hc/λ_min
λ_min = hc/(eV) = 6.6×10⁻³⁴×3.0×10⁸/(1.6×10⁻¹⁹×2.0×10⁴)
= 1.98×10⁻²⁵/(3.2×10⁻¹⁵) ≒ 6.2×10⁻¹¹ m
ポイント λ_min = hc/(eV) — 「持ちエネルギー以上の光子は作れない」という上限(短波長側の崖)。加速電圧を上げるほど λ_min は短くなる。
A6-3(類題)
X線に「最短波長」が存在する理由を、光子の考え方で説明せよ。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
電子 1 個がもつエネルギーは eV が上限 — 発生する光子 1 個のエネルギー hc/λ は eV を超えられない。
よって hc/λ ≦ eV、すなわち λ ≧ hc/(eV):これより短い波長の X線は原理的に出ない ∎
ポイント 最短波長の存在自体が「光がエネルギー hν の粒で出てくる」証拠 — 光電効果(光の吸収)の逆過程(光の放出)として、粒子性をもう一方の側から支える。
A7【ド・ブロイ波(物質波)】★★★
A7-1
速さ 7.3×10⁶ m/s で運動する電子のド・ブロイ波長を求めよ。
A7-1解答を見る解答を隠す
解答
λ = h/(mv) = 6.6×10⁻³⁴/(9.1×10⁻³¹×7.3×10⁶)
= 6.6×10⁻³⁴/(6.6×10⁻²⁴) = 1.0×10⁻¹⁰ m
ポイント λ = h/(mv) = h/p — 出てきた 10⁻¹⁰ m は原子の大きさ・結晶の原子間隔と同じスケール:だから結晶が電子波の"回折格子"になれる(A8-1)。
A7-2(類題)
静止していた電子を 150 V で加速した。この電子のド・ブロイ波長を求めよ(λ = h/√(2meV) を用いてよい)。
A7-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
分母:√(2meV) = √(2×9.1×10⁻³¹×1.6×10⁻¹⁹×150) = √(4.37×10⁻⁴⁷) ≒ 6.6×10⁻²⁴
λ = 6.6×10⁻³⁴/(6.6×10⁻²⁴) = 1.0×10⁻¹⁰ m
ポイント 「150 V で約 1 Å(10⁻¹⁰ m)」は歴史的な基準値(デビソン・ガーマーの実験条件)— 手ごろな電圧で原子スケールの波が作れる、電子の軽さの恩恵。
A7-3(類題)
質量 0.15 kg のボールが速さ 40 m/s で飛んでいる。このボールのド・ブロイ波長を求め、日常でボールの波動性が観測されない理由を述べよ。
A7-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
λ = h/(mv) = 6.6×10⁻³⁴/(0.15×40) = 6.6×10⁻³⁴/6.0 = 1.1×10⁻³⁴ m
原子核(10⁻¹⁵ m)よりさらに 20 桁も短く、干渉や回折を起こせるすき間や格子が存在しない — 波動性はあっても観測不可能なため、日常の物体は純粋な"粒"に見える。
ポイント h の小ささ(10⁻³⁴)が「量子の世界と日常の境界線」— 式は万物に成り立つが、効果が見えるのは p が小さい(軽くて遅い)ミクロの住人だけ。
A8【二重性のまとめ】★★
A8-1
①光の粒子性、②電子の波動性は、それぞれどんな実験・現象で確かめられたか。代表例を 1 つずつ挙げよ。
A8-1解答を見る解答を隠す
解答
① 光の粒子性:光電効果(限界振動数の存在・K_max = hν−W)
② 電子の波動性:電子線回折(電子線を結晶に当てると干渉模様ができる:デビソン・ガーマーの実験)
ポイント 「波と思われていた光に粒の証拠、粒と思われていた電子に波の証拠」— 対称な 2 つの発見が二重性の両輪。証拠とセットで言えることが記述の要件。
A8-2(類題)
波長 6.6×10⁻⁷ m の光の、光子 1 個の運動量を求めよ。
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
p = h/λ = 6.6×10⁻³⁴/(6.6×10⁻⁷) = 1.0×10⁻²⁷ kg·m/s
ポイント p = h/λ — 質量のない光子も運動量をもつ(コンプトン効果・光圧の源:B4)。ド・ブロイの λ = h/p は、この式を逆向きに読んだ発想だった。
A8-3(類題)
電子顕微鏡は、光学顕微鏡よりはるかに細かい構造を観察できる。その理由を、波長に注目して説明せよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
顕微鏡で見分けられる細かさは、使う波の波長程度が限界(それより小さいものは回折でぼやける:第2巻)。
電子波の波長(10⁻¹⁰ m 程度、加速電圧でさらに短くできる)は可視光(約 5×10⁻⁷ m)の数千分の 1 以下 — だから原子スケールまで見える。
ポイント 「分解能は波長で決まる」(第2巻・回折)に、ド・ブロイ波を差し込んだ応用 — 電子の波動性は"困った性質"ではなく、ウイルスや原子を見る道具になった。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。「1 個の光子 ⇔ 1 個の電子」の収支で考えるのが作法。B3(光電効果の理論)とB5(ド・ブロイ波)が入試の最頻出。
B1【トムソンの実験(比電荷の測定)】★★★
B1-1 速さ v の電子線を、長さ L の平行板(電場 E)の間に電場と垂直に通した。通過後の電場方向のずれ y を、e、m、E、L、v で表せ(第1章 B4-3 の型)。
B1-2 同じ電子線を磁束密度 B の磁場に垂直に入れたところ、半径 r の円軌道を描いた。比電荷 e/m を v、r、B で表せ。
B1-3 v が未知でも、電場 E と磁場 B を同時にかけて直進させる(速度選択:第4章 B5-2)ことで v = E/B と決まる。B1-2 と組み合わせ、e/m を測定量(E、B、r)だけで表せ。
B2【ミリカンの油滴実験】★★★
B2-1 質量 m、電気量 q(> 0)の油滴が、極板間の電場 E(上向きの力を受ける向き)の中で空中に静止した。q を m、g、E で表せ。
B2-2 多数の油滴で q を測ると、値は連続的ではなく、ある値 e の整数倍に限られていた。このことから何が結論できるか。
B2-3 測定された電気量が 3.2×10⁻¹⁹ C、4.8×10⁻¹⁹ C、6.4×10⁻¹⁹ C であったとする。電気素量 e の値を推定せよ。
B3【光電効果:波動説の困難と光量子仮説】★★★
B3-1 光を波と考えると説明できない光電効果の実験事実を 2 つ挙げよ(「限界振動数」「時間遅れ」に触れること)。
B3-2 光量子仮説(E = hν の粒)に立つと、B3-1 の事実がどう説明されるかを述べよ。
B3-3 式 hν = W + K_max の各項の意味を、「1 個の光子と 1 個の電子の取引」として説明せよ。
B4【光子の運動量とコンプトン効果】★★★
B4-1 光子のエネルギー E = hν と E = pc の関係から、光子の運動量が p = h/λ となることを示せ。
B4-2 X線を電子に当てると、散乱された X線の波長がもとより長くなる(コンプトン効果)。この現象を「光子と電子の衝突」として定性的に説明せよ。
B4-3 コンプトン効果が光の粒子性の証拠とされる理由を、波動説ではどう不都合かに触れて述べよ。
B5【ド・ブロイ波の理論】★★★
B5-1 光の p = h/λ を裏返して、ド・ブロイは「運動量 p の粒子は波長 λ = h/p の波を伴う」と提唱した。電圧 V で加速した電子(初速 0)のド・ブロイ波長が λ = h/√(2meV) となることを導け。
B5-2 電子線を結晶に当てると、特定の方向にだけ強く反射される(電子線回折)。この現象が「電子の波動性」の証拠になる理由を、結晶の役割(第2巻・回折格子との対応)とともに述べよ。
B5-3 加速電圧を 4 倍にすると、電子のド・ブロイ波長は何倍になるか。
B6【X線と光電効果の対比】★★★
B6-1 X線の最短波長の式 λ_min = hc/(eV) を、エネルギーの収支から導け。
B6-2 光電効果(光 → 電子)と X線の発生(電子 → 光)が、互いに逆向きの過程であることを、エネルギーの流れで対比せよ。
B6-3 X線管の加速電圧を 2 倍にすると、最短波長はどうなるか。また、固有X線の波長はどうなるか(理由も)。
B問題 解答・解説
B1【トムソンの実験(比電荷の測定)】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
電場方向:力 eE、加速度 eE/m。通過時間 t = L/v(垂直方向は等速)。
ずれ:y = (1/2)(eE/m)(L/v)²
y = eEL²/(2mv²)
ポイント 第1章 B4-3(水平投射の型)の再演 — 陰極線の実験装置は「電子で行う放物運動の実験室」。y の測定が e/m への入口。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
ローレンツ力が向心力:evB = mv²/r
e/m = v/(rB)(第4章 B4-2)
ポイント 「曲がり具合(r)から比電荷」— 電場は放物線、磁場は円、と曲げ方の違いで別々の式が立つ。両方使うのが次問。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
速度選択(qE = qvB)より v = E/B。B1-2 に代入:
e/m = v/(rB) = E/(rB²)
— E、B、r はすべて実験で設定・測定できる量:比電荷が決定する ∎
ポイント 「未知の v を装置(E/B)で確定してから曲げる」— 第4章 B5 の速度選択器がここで歴史の主役に。トムソンはこの論法で e/m ≒ 1.8×10¹¹ C/kg を得て、電子の存在を確立した。
B2【ミリカンの油滴実験】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
静止(つり合い):qE = mg
q = mg/E
ポイント 第1章の「電気力 vs 重力」のつり合いそのもの — 極小の電荷を、重力という測れる相手と綱引きさせて量る発想。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
電気量が e = 1.6×10⁻¹⁹ C を最小単位とする、とびとびの値しか取らない —
電荷には分割できない最小の粒(電気素量)が存在し、あらゆる電気量はその整数倍である、と結論できる。
ポイント 「連続だと思っていた量が、実は粒」— 電気の量子化の発見。第1章 A1(帯電は e の整数倍)の実験的な根拠がこの実験。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
3 つの値は 3.2 = 2e'、4.8 = 3e'、6.4 = 4e' の形(公約数):
e ≒ 1.6×10⁻¹⁹ C
ポイント データの最大公約数を探す — 「差」(4.8−3.2 = 1.6)を見るのが実戦的な近道。測定値の列から最小単位を割り出す、量子化の検出法。
B3【光電効果:波動説の困難と光量子仮説】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
①限界振動数の存在:波動説ではエネルギーは振幅(強さ)で決まるはずなのに、ν < ν₀ の光はどんなに強くても電子を出せない。
②時間遅れがない:弱い光ではエネルギーが電子にたまるまで時間がかかるはずなのに、光を当てた瞬間から光電子が出る。
ポイント 「強さが効かない・待ち時間がない」の 2 点セット — 波動説の"エネルギーは薄く広く連続的に届く"という描像が両方で破綻する。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
光がエネルギー E = hν の粒(光子)として 1 個ずつ届くと考えれば:
① 1 個の単価 hν が入場料 W に足りなければ、何個来ても(強くても)電子は出られない — 限界振動数 ν₀ = W/h の存在。
② 光子 1 個が当たればその場で全額を電子に渡す — 待ち時間なし。
ポイント 「分割払い不可・一括payのみ」が光子のルール — 2 つの困難が同じ 1 つの仮説で同時に解ける、理論の美しさの見本。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
hν:光子 1 個が持参するエネルギー(全額)
仕事関数 W:電子が金属表面から脱出するのに払う"入場料"(最低額)
K_max:表面の最も出やすい電子が手元に残す持ち出し(内部の電子は余分に払うので K は最大値)
— 収支:持参金 = 入場料 + 持ち出し ∎
ポイント K_"max" の意味(表面の電子だけが満額残せる)まで言えると一段上 — 実測の光電子には K_max 以下の分布があることの説明にもなる。
B4【光子の運動量とコンプトン効果】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
光子:E = hν かつ E = pc(光のエネルギーと運動量の関係)。
等置して pc = hν → p = hν/c = h/(c/ν)
p = h/λ ∎
ポイント 質量ゼロでも運動量をもつ — 「p = mv」ではなく p = E/c が光子の運動量の顔。λ が短い(高エネルギー)ほど"押す力"も強い。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
X線の光子が電子に衝突すると、エネルギーと運動量の一部を電子に渡す(ビリヤードの球のように)。
散乱後の光子はエネルギーが減っており、E = hc/λ より 波長が長くなる — これがコンプトン効果 ∎
ポイント 「光子と電子の玉突き」— エネルギー保存と運動量保存(第1巻・第6章)を光子が守っている、という描像。波長の伸びは"支払った額"の記録。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
波動説では、散乱は「電子を揺らして同じ振動数の波を再放出させる」過程 — 波長(振動数)は変わらないはず。
実際には散乱角に応じて波長が伸びる:これは光が粒として衝突し、エネルギー・運動量をやり取りしたと考えて初めて説明できる ∎
ポイント 光電効果(吸収)・X線発生(放出)・コンプトン(衝突)— 粒子性の証拠の三本柱。「波なら波長不変のはず」という対立仮説の予言を先に言うのが論述の型。
B5【ド・ブロイ波の理論】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
加速:eV = (1/2)mv² → mv = √(2meV)(運動量 p)
波長:λ = h/p
λ = h/√(2meV) ∎
ポイント 「加速(エネルギー)→ 運動量 → 波長」の 3 段直列 — (1/2)mv² = p²/(2m) の書き換え(p = √(2mK))は原子物理の頻出技。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
結晶では原子が規則正しく等間隔(約 10⁻¹⁰ m)に並んでおり、電子波にとって回折格子(第2巻・第8章)の役を果たす。
電子線が特定の方向にだけ強く反射されるのは、各原子からの波が干渉して強め合う方向だから — 干渉は波にしか起こせない現象であり、電子の波動性の直接の証拠となる ∎
ポイント 「格子間隔 ≒ 波長」のとき干渉が見える(第2巻)— A7 の λ ≒ 10⁻¹⁰ m がまさに原子間隔と一致していたことが、実験成功の鍵だった。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
λ = h/√(2meV) ∝ 1/√V:電圧 4 倍で
λ は 1/2 倍(半分)
ポイント √ のスケーリング即答(第1巻から続く型)— 電子顕微鏡で「高電圧ほど細かく見える」(A8-3)の定量的な根拠。
B6【X線と光電効果の対比】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
加速電圧 V で電子が得るエネルギー:eV。
衝突でこの全額が 1 個の光子に変わるとき、光子のエネルギーが最大 = 波長が最短:
収支:eV = hc/λ_min → λ_min = hc/(eV) ∎
ポイント 「全額両替」が最短波長の条件 — 一部だけ光子になる(残りは熱)場合が連続X線の長波長側を埋める。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
光電効果:光子のエネルギー hν → 電子の運動エネルギー(hν = W+K)
X線の発生:電子の運動エネルギー eV → 光子のエネルギー(eV = hc/λ_min)
— エネルギーの流れがちょうど逆向きの、対をなす過程(逆・光電効果)∎
ポイント 2 つの式を並べて矢印の向きを見る — 「光 ⇄ 電子」の双方向の両替所、という 1 枚の絵に統合できる。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
最短波長:λ_min = hc/(eV) ∝ 1/V → 半分になる。
固有X線:陽極の原子の構造(エネルギー準位:第8章)で決まる波長なので、変わらない(強度は変わりうる)。
ポイント 「連続X線の崖(λ_min)は電圧が動かし、固有X線の位置は原子が決める」— スペクトルのどこが装置の性質でどこが物質の指紋か、の仕分け。第8章(エネルギー準位)への布石。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦7-1【共テ形式:光電効果】★★
仕事関数 3.2×10⁻¹⁹ J の金属に光を当てる。h = 6.6×10⁻³⁴ J·s、e = 1.6×10⁻¹⁹ C とする。
① この金属の限界振動数は [ア].[イ]×10¹⁴ Hz である。
② 振動数 8.0×10¹⁴ Hz の光を当てたとき、光電子の最大運動エネルギーは [ウ].[エ]×10⁻¹⁹ J である。
③ ②のときの阻止電圧は [オ].[カ] V である。
④ 光の振動数を変えずに強さを 2 倍にすると、阻止電圧は:[キ]
(a) 2 倍になる
(b) √2 倍になる
(c) 変わらない
⑤ 光の振動数を大きくすると、光電子の最大運動エネルギーは:[ク]
(a) 大きくなる
(b) 小さくなる
(c) 変わらない
実戦7-2【記述形式:光電効果のグラフ解析】★★★
ある金属に振動数 ν の光を当て、光電子の最大運動エネルギー K_max を測定したところ、ν = 6.0×10¹⁴ Hz のとき K_max = 6.6×10⁻²⁰ J、ν = 8.0×10¹⁴ Hz のとき K_max = 1.98×10⁻¹⁹ J であった。
① K_max と ν の間に成り立つ関係式を書け(h:プランク定数、W:仕事関数)。
② 横軸 ν・縦軸 K_max のグラフはどんな形か。傾きと切片の意味も述べよ。
③ 測定値からプランク定数 h を求めよ。
④ この金属の仕事関数 W と限界振動数 ν₀ を求めよ。
⑤ 金属を仕事関数のより大きい金属に替えると、グラフはどう変わるか。
実戦7-3【記述形式:電子波と電子線回折】★★★
静止していた電子(質量 m、電気量 e)を電圧 V で加速する。プランク定数を h とする。
① 加速後の電子の速さ v を求めよ。
② 加速後の電子の運動量 p を、m、e、V で表せ。
③ この電子のド・ブロイ波長 λ を求めよ。
④ V = 150 V、h = 6.6×10⁻³⁴ J·s、m = 9.1×10⁻³¹ kg、e = 1.6×10⁻¹⁹ C のとき、λ の値を求めよ。
⑤ ④の電子線を結晶に当てると、特定の方向に強い反射が観測される。この現象の名前と、それが示す電子の性質を述べよ。また、なぜ「結晶」でなければならないのかを、④の波長の値と関連づけて説明せよ。
実戦問題 解答・解説
実戦7-1
考え方 収支式 hν = W+K_max の 1 本を、限界(①)→ 取り分(②)→ 電圧翻訳(③)→ 独立性(④⑤)へ展開。④が波動説との決別点。
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解答
① ν₀ = W/h = 3.2×10⁻¹⁹/(6.6×10⁻³⁴) ≒ 4.8×10¹⁴ Hz(ア = 4、イ = 8)
② K_max = hν−W = 6.6×10⁻³⁴×8.0×10¹⁴−3.2×10⁻¹⁹ = 5.28×10⁻¹⁹−3.2×10⁻¹⁹ ≒ 2.1×10⁻¹⁹ J(ウ = 2、エ = 1)
③ V₀ = K_max/e = 2.08×10⁻¹⁹/(1.6×10⁻¹⁹) = 1.3 V(オ = 1、カ = 3)
④ 強さは光子の数だけを変える:(c) 変わらない(キ = (c))
⑤ K_max = hν−W は ν の増加関数:(a) 大きくなる(ク = (a))
ポイント
• ③は eV 単位の暗算(2.08×10⁻¹⁹ J = 1.3 eV → 阻止電圧 1.3 V)でも一致 — eV と V の直通が阻止電圧の便利さ。
• ④⑤の対比が「数は強さ・単価は振動数」の総まとめ — 共テはこの独立性を毎年のように突いてくる。
実戦7-2
考え方 2 点から直線(K = hν−W)を決める — 第3章・実戦3-2(V = E−rI)と同じ数学が、電池から量子へ舞台を替えて再演される。傾き = h の普遍性が主題。
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解答
① K_max = hν−W
② 右上がりの直線 — 傾きがプランク定数 h、縦軸切片が −W(横軸切片は限界振動数 ν₀)。
③ h = (1.98×10⁻¹⁹−6.6×10⁻²⁰)/(8.0×10¹⁴−6.0×10¹⁴) = 1.32×10⁻¹⁹/(2.0×10¹⁴)
h = 6.6×10⁻³⁴ J·s
④ W = hν−K_max = 6.6×10⁻³⁴×6.0×10¹⁴−6.6×10⁻²⁰ = 3.96×10⁻¹⁹−0.66×10⁻¹⁹ = 3.3×10⁻¹⁹ J
限界振動数:ν₀ = W/h = 5.0×10¹⁴ Hz
⑤ 傾き(h)は変わらず、直線は下(右)へ平行移動 — 縦軸切片 −W が下がり、横軸切片 ν₀ が大きくなる。
ポイント
• ④の検算:もう 1 点でも W = 5.28×10⁻¹⁹−1.98×10⁻¹⁹ = 3.3×10⁻¹⁹ ○ — 直線決定は両点への差し戻しで締める(第3章と同じ作法)。
• ⑤「h は宇宙共通・W は金属の個性」— 測るたびに同じ傾きが出ることが、光量子仮説の普遍性の実験的な意味。
実戦7-3
考え方 「加速(第1章)→ 運動量 → 波長(本章)→ 回折(第2巻)」— 3 巻ぶんの知識を 1 本の電子線に通す、シリーズ横断の総合問題。⑤の"なぜ結晶か"が理解の核心。
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解答
① eV = (1/2)mv² より v = √(2eV/m)
② p = mv = √(2meV)
③ λ = h/p = h/√(2meV)
④ 分母:√(2×9.1×10⁻³¹×1.6×10⁻¹⁹×150) ≒ 6.6×10⁻²⁴
λ = 6.6×10⁻³⁴/(6.6×10⁻²⁴) = 1.0×10⁻¹⁰ m
⑤ 現象:電子線回折 — 電子が波動性をもつことを示す。
干渉・回折が起こるには、波長と同程度の間隔の"格子"が必要(第2巻・回折格子)。④の波長は 10⁻¹⁰ m — 人工の格子では細かすぎて作れず、原子が約 10⁻¹⁰ m 間隔で規則正しく並ぶ結晶だけが、この波長に見合う回折格子になれるから。
ポイント
• ②の p = √(2meV)(= √(2mK))は「エネルギーと運動量の両替式」— 原子物理で何度も使う変換。
• ⑤は「波長 ≒ 格子間隔のとき回折が見える」という第2巻の原理が、装置選び(なぜ結晶か)の理由として復活 — 波の一般論が量子の実験設計を支配している。
第8章 原子と原子核
最終章は物質の最深部へ。α粒子の大角散乱が原子の中心に小さく重い原子核を見つけ(ラザフォード)、ボーアは「電子波が円周にちょうど収まる軌道(2πr = nλ)だけが許される」として、水素のとびとびのエネルギー準位 E_n = −13.6/n² eV とスペクトルを説明した。原子核の世界では、質量そのものがエネルギー(E = mc²):質量欠損が結合エネルギーとなり、核分裂・核融合の莫大なエネルギーの源になる。半減期の統計法則、放射線の性質までで、3 巻シリーズが完結する。
この章の公式・要点まとめ
原子の構造(ラザフォードの原子模型)
• α粒子散乱:大部分は素通り、ごく一部が大きく跳ね返る → 正電荷と質量が中心の一点(原子核)に集中
• 大きさ:原子 約 10⁻¹⁰ m/原子核 約 10⁻¹⁵〜10⁻¹⁴ m(約 10 万分の 1)
ボーアの水素原子模型
• 量子条件:2πr = nλ(円周が電子波(ド・ブロイ波)の整数倍 — 定常波として閉じる軌道だけが許される。n:量子数)
• 定常状態では電磁波を出さない。エネルギーはとびとび(準位):
E_n = −13.6/n² [eV](n = 1、2、3、…。n = 1 が基底状態、負号は「束縛されている」印)
• 振動数条件:hν = E_n−E_m(準位間を飛び移るとき、差額を 1 個の光子として放出・吸収)
水素のスペクトル
• 1/λ = R(1/m²−1/n²)(R = 1.1×10⁷ /m:リュードベリ定数、n > m)
• 系列:m = 1 ライマン(紫外)/m = 2 バルマー(可視)/m = 3 パッシェン(赤外)
原子核の構成
• 陽子(電荷 +e)と中性子(電荷 0)= 核子。質量数 A = 陽子数 Z + 中性子数 N
• 同位体:Z が同じで N が違う(化学的性質は同じ、核の性質が違う)
放射線と崩壊
• α線 = He 原子核(⁴₂He):電離作用 大・透過力 小(紙で止まる)
• β線 = 電子:中間(アルミ板で止まる)
• γ線 = 波長の短い電磁波:電離 小・透過力 大(鉛でようやく弱まる)
• α崩壊:Z が 2、A が 4 減る/β崩壊:Z が 1 増え、A は不変(中性子 → 陽子 + 電子)/γ:余分なエネルギーの放出(Z・A 不変)
• 半減期 T:N = N₀×(1/2)^(t/T) — 半分になるまでの時間(統計法則)
核反応と E = mc²
• 核反応では質量数の和と電気量(原子番号)の和が保存
• 質量欠損 Δm → エネルギー E = Δmc²(結合エネルギー:バラバラの核子より、まとまった核の方が軽い)
• 1 u = 1.66×10⁻²⁷ kg は約 931 MeV に相当
• 核分裂(重い核が割れる:原子炉)・核融合(軽い核が合体:太陽)— どちらも 1 核子あたりの結合エネルギーが鉄に向かって増えるため、エネルギーが放出される
解法チャート(原子・原子核)
1. 準位の問題:エネルギーの差 hν = E_n−E_m が全ての出発点(eV ⇔ J 換算に注意)
2. 崩壊・核反応:A(質量数)と Z(電気量)の 2 つの保存で式を完成させる
3. 半減期:「何回半分になったか」(t/T)を数えて (1/2) のべき乗
4. 核エネルギー:Δm を出して E = Δmc²(u なら ×931 MeV)
5. 検算:E_n は n が大きいほど 0 に近づくか/反応式の A・Z の帳尻/答えの桁(MeV の世界)
概念チェック(○×・択一)— 解答は全問のあとにまとめて
Q1
原子の質量と正電荷は、原子全体に一様に広がっている。○か×か。
Q2
水素原子の電子のエネルギーはどんな値をとるか。
(a) 連続的に任意の値
(b) とびとびの決まった値
(c) つねに一定の 1 つの値
Q3
α線・β線・γ線のうち、透過力が最も大きいのはどれか。
(a) α線
(b) β線
(c) γ線
Q4
β崩壊が起こると、原子番号 Z はどうなるか。
(a) 1 増える
(b) 1 減る
(c) 変わらない
Q5
半減期 T の放射性原子核が、時間 2T の後に残っている割合はどれか。
(a) 0(すべて崩壊する)
(b) 1/2
(c) 1/4
概念チェック 解答
Q1解答を見る解答を隠す
Q1:× — α粒子の大角散乱(ラザフォード)が否定した描像。正電荷と質量は中心の極小の核に集中 — 原子はほとんど"すきま"でできている。
Q2解答を見る解答を隠す
Q2:(b) — とびとび(量子化)。電子波が円周に定常波として収まる軌道(2πr = nλ)だけが許されるから — 弦の固有振動(第2巻)の原子版。
Q3解答を見る解答を隠す
Q3:(c) — γ線(電磁波)が最強の透過力。電離作用と透過力は逆順(α:電離 大・透過 小)— 「重くて遅いほどよくぶつかり、すぐ止まる」。
Q4解答を見る解答を隠す
Q4:(a) — β崩壊は核内の中性子 → 陽子 + 電子:陽子が 1 個増えて Z は +1、質量数 A は不変。
Q5解答を見る解答を隠す
Q5:(c) — 2T = 半分が 2 回:(1/2)² = 1/4。「T ごとに半分」を回数で数えるのが半減期のすべて。
A問題(基礎完成)— 解答は各問のすぐ下
※特に断らない限り、h = 6.6×10⁻³⁴ J·s、c = 3.0×10⁸ m/s、e = 1.6×10⁻¹⁹ C、1 eV = 1.6×10⁻¹⁹ J とする。
A1【原子の構造】★
A1-1
金箔に α粒子を当てると、大部分は素通りしたが、ごく一部が 90° を超える大きな角度で跳ね返された。この結果から、原子の構造について何が分かるか。
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解答
大部分が素通り → 原子の内部はほとんど何もない(すかすか)。
ごく一部が大きく跳ね返る → 正電荷と質量が、中心のきわめて小さな部分(原子核)に集中している。
ポイント 「紙に大砲を撃ったら、たまに跳ね返ってきた」(ラザフォードの驚き)— 大角散乱 1 つで"ブドウパン模型"(一様に広がる正電荷)が倒れた、証拠と結論の対応を言えること。
A1-2(類題)
原子の大きさは約 10⁻¹⁰ m、原子核の大きさは約 10⁻¹⁵ m である。原子を直径 100 m のドームにたとえると、原子核はどれくらいの大きさになるか。
A1-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
比は 10⁻¹⁵/10⁻¹⁰ = 10⁻⁵(10 万分の 1)
100 m×10⁻⁵ = 10⁻³ m = 約 1 mm(米粒より小さい玉)
ポイント 「ドームの中央にゴマ粒 1 つ、あとは空」— 物質の"すかすか"ぶりの体感。それでも質量のほぼ全部はそのゴマ粒(核)にある。
A1-3(類題)
ナトリウム原子 ²³₁₁Na について、①陽子の数、②中性子の数、③(中性原子の)電子の数を答えよ。
A1-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 陽子:Z = 11
② 中性子:N = A−Z = 23−11 = 12
③ 電子:11(中性なので陽子と同数)
ポイント 記号の読み方「左下 Z(原子番号 = 陽子数)、左上 A(質量数 = 核子数)」— 中性子は引き算 A−Z。この読みが崩壊・核反応(A6、B6)の土台。
A2【水素原子のエネルギー準位】★★★
A2-1
水素原子のエネルギー準位は E_n = −13.6/n² [eV] と表される。n = 2 と n = 3 の準位の値を求めよ。
A2-1解答を見る解答を隠す
解答
E₂ = −13.6/4 = −3.4 eV
E₃ = −13.6/9 ≒ −1.5 eV
ポイント 負の値は「核に束縛されている」印(無限遠 = 自由な状態が 0 の基準:第1章の電位と同じ約束)。n が大きいほど 0 に近づく(浅く束縛)。
A2-2(類題)
水素原子の電子が n = 2 から n = 1 の準位へ移った。放出される光子のエネルギーを、eV と J の両方で求めよ。
A2-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
差:ΔE = E₂−E₁ = (−3.4)−(−13.6) = 10.2 eV
J 換算:10.2×1.6×10⁻¹⁹ ≒ 1.6×10⁻¹⁸ J
ポイント 光子のエネルギー = 準位の差額(振動数条件 hν = E_n−E_m)。負どうしの引き算の符号処理(−3.4+13.6)を落ち着いて。
A2-3(類題)
A2-2 の光子の振動数を求めよ。また、この光は可視光(振動数 約 4〜8×10¹⁴ Hz)か。
A2-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
ν = ΔE/h = 1.63×10⁻¹⁸/(6.6×10⁻³⁴) ≒ 2.5×10¹⁵ Hz
可視光の上限(8×10¹⁴ Hz)を超える — 紫外線(可視光ではない)。
ポイント n = 1 へ落ちる系列(ライマン系列)はすべて紫外 — 基底状態への落差が大きすぎて目に見えない。可視光を出すのは n = 2 へ落ちる組(A3)。
A3【水素のスペクトル】★★★
A3-1
水素原子のスペクトルのうち、可視光の系列(バルマー系列)は、電子がどの準位へ飛び移るときに出る光か。
A3-1解答を見る解答を隠す
解答
n = 3、4、5、… から n = 2 へ移るときに出る光の系列。
ポイント 「行き先の準位が系列の名前を決める」— m = 1 ライマン(紫外)、m = 2 バルマー(可視)、m = 3 パッシェン(赤外)。落差の大きさがそのまま光の"色域"。
A3-2(類題)
リュードベリの式 1/λ = R(1/m²−1/n²)(R = 1.1×10⁷ /m)を用いて、n = 3 から m = 2 へ移るときに出る光の波長を求めよ。
A3-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
1/λ = 1.1×10⁷×(1/4−1/9) = 1.1×10⁷×(5/36) ≒ 1.53×10⁶ /m
λ ≒ 6.5×10⁻⁷ m(赤色:Hα線)
ポイント 分数の差(1/4−1/9 = 5/36)を先に通分してから掛ける。出てきた 6.5×10⁻⁷ m は水素ガスの放電で実際に見える赤い輝線 — 式と実物の色が結びつく瞬間。
A3-3(類題)
バルマー系列(m = 2)で、最も波長の短い光(n → ∞ の極限)の波長を求めよ。
A3-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
1/λ = R×(1/4−0) = R/4
λ = 4/R = 4/(1.1×10⁷) ≒ 3.6×10⁻⁷ m
ポイント n → ∞ は「自由の身(E = 0)から n = 2 へ」の最大落差 — 系列の短波長側の端(限界)。各系列は λ の上限と下限にはさまれた"帯"になっている。
A4【ボーアの量子条件】★★★
A4-1
ボーアの量子条件 2πr = nλ(λ:電子のド・ブロイ波長)は、どんな軌道だけが許されることを意味しているか。
A4-1解答を見る解答を隠す
解答
円周の長さが電子波の波長のちょうど整数倍になる軌道 — 電子波が 1 周してきたとき自分自身と山・谷がそろい、定常波として安定に閉じる軌道だけが許される。
ポイント 第2巻・弦の固有振動(L = nλ/2)の円形版 — 「端の条件」が「1 周して戻る条件」に置き換わった。波が原子に"とびとび"を持ち込んだ張本人。
A4-2(類題)
水素原子の n = 1 の軌道半径は約 5.3×10⁻¹¹ m である。軌道半径が n² に比例することを用いて、n = 2 の軌道半径を求めよ。
A4-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
r₂ = 2²×5.3×10⁻¹¹ = 2.1×10⁻¹⁰ m
ポイント r ∝ n² — 外の軌道ほど急に大きくなる(1、4、9、…倍)。n = 1 の 5.3×10⁻¹¹ m(ボーア半径)は「原子の大きさ 10⁻¹⁰ m」の正体でもある。
A4-3(類題)
原子の中の電子のエネルギーが「とびとび」の値しかとれない理由を、ド・ブロイ波と定常波の言葉で説明せよ。
A4-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
電子は波(ド・ブロイ波)としてふるまい、円軌道上で定常波として閉じる(2πr = nλ)軌道しか安定に存在できない。
n は整数しかとれないため、許される軌道(半径)がとびとびになり、それに対応してエネルギーもとびとびの準位に限られる ∎
ポイント 「波 + 閉じ込め = とびとび」— 弦・気柱(第2巻)で学んだ固有振動の論理が、原子のエネルギー準位の理由そのもの。量子化は波の性質の帰結。
A5【原子核と同位体】★★
A5-1
ウラン ²³⁵₉₂U の原子核について、陽子の数と中性子の数を答えよ。
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解答
陽子:92/中性子:235−92 = 143
ポイント 大きな数でも読み方は A1-3 と同じ(A と Z、引き算で N)— 235 という質量数は、このあと核分裂(A8-3)の主役として再登場する。
A5-2(類題)
「同位体」とは何か。水素の同位体 ¹₁H、²₁H、³₁H を例に説明せよ。
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解答
原子番号 Z(陽子数)が同じで、中性子数(質量数 A)が異なる原子どうし。
水素の例:¹H(陽子 1・中性子 0)、²H(重水素:中性子 1)、³H(三重水素:中性子 2)— 化学的性質はほぼ同じだが、核の性質(質量・安定性)が異なる。
ポイント 「化学の顔(電子の数 = Z)は同じ、核の中身が違う」— 同位体は周期表の同じマスの住人。³H は放射性、²H・³H は核融合(実戦8-3)の燃料。
A5-3(類題)
原子核の質量を表すのに使う統一原子質量単位 u(1 u = 1.66×10⁻²⁷ kg)について、質量数 A の核の質量が「約 A [u]」となる理由を述べよ。
A5-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
1 u は炭素 12 原子の質量の 1/12 として定められ、核子(陽子・中性子)1 個の質量にほぼ等しい。
質量数 A の核は核子を A 個含むので、質量は約 A×1 u = A [u] となる(結合エネルギーの分だけわずかに軽い:B5)。
ポイント 「u は核子 1 個ぶんの物差し」— 質量数がそのまま概算質量になる便利さ。「わずかに軽い」のわずかこそが核エネルギーの源(A8)。
A6【放射線と崩壊】★★★
A6-1
α線・β線・γ線の正体をそれぞれ答えよ。また、透過力の小さい順に並べよ。
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解答
α線:ヘリウム原子核(⁴₂He)/β線:電子/γ線:波長の非常に短い電磁波
透過力(小 → 大):α < β < γ(α は紙 1 枚、β はアルミ板、γ は鉛でようやく弱まる)
ポイント 「正体・透過力・電離作用」の 3 点セット — 電離作用は透過力と逆順(α が最大)。重くて電荷の大きい α は"よくぶつかる"ぶん、すぐ止まる。
A6-2(類題)
ウラン ²³⁸₉₂U が α崩壊した。生じる原子核の質量数と原子番号を求めよ(生じる核はトリウム Th である)。
A6-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
α粒子(⁴₂He)が飛び出す:A は 4 減、Z は 2 減。
²³⁸₉₂U → ²³⁴₉₀Th + ⁴₂He
ポイント α崩壊の暗号「A−4、Z−2」。両辺で質量数の和(238 = 234+4)と原子番号の和(92 = 90+2)がそろう — 保存則が答案の検算装置。
A6-3(類題)
炭素 ¹⁴₆C は β崩壊して窒素 N になる。反応式を書け。また、核の中で何が起こっているか。
A6-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
式:¹⁴₆C → ¹⁴₇N + e⁻
核の中では 中性子 1 個が陽子 1 個と電子 1 個に変わり、電子が β線として飛び出す(A 不変、Z は +1)。
ポイント β崩壊の暗号「A そのまま、Z+1」— 中性子の変身が正体。この ¹⁴C が年代測定(A7-3)の時計になる。
A7【半減期】★★★
A7-1
半減期 8.0 日のヨウ素 131 がある。24 日後に残っている原子核の数は、はじめの何倍か。
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解答
24 日 = 半減期 3 回分:(1/2)³ = 1/8 倍
ポイント 「t/T 回、半分にする」— 指数の式 N = N₀(1/2)^(t/T) は"半分の回数勘定"の清書にすぎない。まず回数、が実戦の型。
A7-2(類題)
ある放射性核種の量が、はじめの 1/16 になるのに 32 日かかった。半減期を求めよ。
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解答
1/16 = (1/2)⁴ — 半減期 4 回分が 32 日:
T = 32/4 = 8.0 日
ポイント 逆算も「回数」から — 1/16 を見たら反射的に「4 回」。2 のべき(1/2、1/4、1/8、1/16、1/32)の即答リストを持っておく。
A7-3(類題)
生物の遺体に含まれる ¹⁴C(半減期 約 5.7×10³ 年)の割合が、生きている生物の 1/4 であった。この生物が死んでから約何年たっているか。また、この年代測定の原理を一言で述べよ。
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解答
1/4 = 半減期 2 回分:5.7×10³×2 = 約 1.1×10⁴ 年
原理:生きている間は大気との交換で ¹⁴C の割合が一定に保たれるが、死ぬと補給が止まり、半減期にしたがって減り続ける — 残量が"死後の時計"になる。
ポイント 放射性崩壊は振り子より正確な時計(温度・圧力に影響されない)。「補給が止まった時点でストップウォッチが押される」という原理の一文まで書けて完答。
A8【核反応と E = mc²】★★★
A8-1
ある核反応で、反応の前後の質量の合計が 3.0×10⁻²⁹ kg 減少した。放出されるエネルギーを求めよ。
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解答
E = Δmc² = 3.0×10⁻²⁹×(3.0×10⁸)² = 3.0×10⁻²⁹×9.0×10¹⁶
= 2.7×10⁻¹² J
ポイント E = mc² — c² = 9.0×10¹⁶ という巨大な換算率が、極小の質量差を莫大なエネルギーに変える。「質量はエネルギーの超高密度な貯蔵形態」。
A8-2(類題)
ラザフォードが行った史上初の人工的な原子核の変換は、窒素に α粒子を当てるものだった。次の反応式の空欄 X を埋めよ。
¹⁴₇N + ⁴₂He → ¹⁷₈O + X
A8-2(類題)解答を見る解答を隠す
解答
質量数:14+4 = 17+A → A = 1/原子番号:7+2 = 8+Z → Z = 1
X = ¹₁H(陽子)
ポイント A の和と Z の和、2 本の保存で未知の粒子が確定する — 核反応式の穴埋めは連立方程式。この反応(1919 年)が「原子核は壊して作り変えられる」時代の幕開け。
A8-3(類題)
①核分裂と②核融合とは、それぞれどんな反応か。エネルギーが放出される点は共通だが、代表的な例(利用・天体)を 1 つずつ挙げよ。
A8-3(類題)解答を見る解答を隠す
解答
① 核分裂:重い原子核が 2 つ(以上)に割れる反応 — 例:ウラン 235 の分裂(原子力発電)。
② 核融合:軽い原子核どうしが合体してより重い核になる反応 — 例:水素からヘリウムへ(太陽のエネルギー源)。
ポイント 割れても・くっついても出る理由は「1 核子あたりの結合エネルギーが鉄でピーク」(B5-3)— 両側から鉄へ向かう坂を下るぶんがエネルギーになる。
B問題(応用力養成)
※解答・解説・ポイントは本章末尾にまとめて掲載。準位は「差」、核反応は「A と Z の保存」、核エネルギーは「Δm → E = mc²」の 3 型で全問が処理できる。B2(ボーア模型)とB5(質量欠損)が入試の最頻出。
B1【ラザフォード散乱と古典論の困難】★★★
B1-1 α粒子の大角散乱の結果が、「正電荷が原子全体に一様に広がる」模型(ブドウパン模型)では説明できない理由を述べよ。
B1-2 ラザフォード模型では、電子は核のまわりを円運動する。しかし古典電磁気学によれば、この模型の原子は安定に存在できないはずだった。その理由を述べよ(加速度運動する電荷の性質に触れること)。
B1-3 B1-2 の困難を、ボーアはどんな仮定(2 つの条件)で乗り越えたか。
B2【ボーア模型の理論】★★★
B2-1 量子条件 2πr = nλ を、電子の運動量 p = mv とプランク定数 h を使った式(2πr = nh/(mv))に書き直せ。
B2-2 振動数条件 hν = E_n−E_m の意味を、「光子」「準位」の言葉で説明せよ。また、吸収の場合はどうなるか。
B2-3 水素原子が n = 1(基底状態)にあるとき、10.2 eV ちょうどの光子は吸収できるが、11.0 eV の光子は吸収できない。理由を述べよ(E₁ = −13.6 eV、E₂ = −3.4 eV、E₃ ≒ −1.5 eV)。
B3【スペクトルと準位の対応】★★★
B3-1 リュードベリの式 1/λ = R(1/m²−1/n²) と、振動数条件 hc/λ = E_n−E_m が同じ内容であることを、E_n = −hcR/n² とおいて確かめよ。
B3-2 放電管の水素が出す「輝線スペクトル」と、恒星の光に見られる「吸収スペクトル(暗線)」の関係を、準位間の遷移で説明せよ。
B3-3 スペクトルが元素ごとに固有である(元素の指紋になる)理由を述べよ。
B4【半減期の理論】★★★
B4-1 半減期 T の核種について、時刻 t に残る数が N = N₀(1/2)^(t/T) と表されることを、「T ごとに半分」の繰り返しから説明せよ。
B4-2 半減期は「個々の原子核がいつ崩壊するか」を予言しない。半減期が表しているのはどんな性質かを述べよ。
B4-3 放射性核種 A(半減期 T)の数が、はじめの 1/8 になったとき、崩壊してできた核種 B の数は A の何倍あるか(B は安定で、はじめ 0 個とする)。
B5【質量欠損と結合エネルギー】★★★
B5-1 「質量欠損」と「結合エネルギー」を定義し、両者の関係を式で書け。
B5-2 ヘリウム 4 の原子核(質量 4.0015 u)について、質量欠損と結合エネルギーを求めよ。陽子の質量を 1.0073 u、中性子の質量を 1.0087 u、1 u = 931 MeV とする。
B5-3 1 核子あたりの結合エネルギーは、質量数 60(鉄)付近で最大になる。このことから、核分裂(重い核)と核融合(軽い核)の両方でエネルギーが放出される理由を説明せよ。
B6【核反応の保存則と防護】★★
B6-1 核反応式で保存される量を 2 つ挙げ、次の反応の X を求めよ:²³⁵₉₂U + ¹₀n → ¹⁴⁴₅₆Ba + X + 3¹₀n
B6-2 核反応で解放されるエネルギーが、化学反応(燃焼など)より桁違いに大きい理由を、「反応にかかわる力とエネルギーのスケール」の観点で述べよ。
B6-3 放射線から身を守る 3 原則(距離・時間・遮蔽)を、放射線の性質と関連づけて説明せよ。
B問題 解答・解説
B1【ラザフォード散乱と古典論の困難】
B1-1解答を見る解答を隠す
解答
正電荷が原子全体に薄く一様に広がっていると、α粒子がどこを通っても強い反発力を受ける場所がない(電荷が分散していて、近づいても力が集中しない)— 大きな角度で跳ね返ることは説明できない。
実際には大角散乱が起こる → 正電荷(と質量)は一点(原子核)に集中していて、ごく近くを通った α粒子だけが猛烈な反発を受ける、と考えるしかない ∎
ポイント 「まれに・大きく曲がる」のまれに(標的が小さい)と大きく(電荷が集中)の 2 つが、そのまま核の 2 つの性質に対応 — 散乱データの読み方の見本。
B1-2解答を見る解答を隠す
解答
円運動は加速度運動(向きが変わり続ける:第1巻・第7章)。
古典電磁気学では、加速度運動する電荷は電磁波を放射してエネルギーを失う — 電子は軌道エネルギーを失いながららせんを描いて核に落ち込み、原子は一瞬(10⁻¹¹ s 程度)でつぶれるはず。また放射の振動数は連続的に変わるため、スペクトルも連続になるはず — どちらも事実(安定な原子・線スペクトル)に反する ∎
ポイント 「回る電荷はアンテナ」(第6章 B5-3 の放射)を原子に適用すると自滅する — 古典物理の"正直な破綻"が、量子論を呼び込んだ。
B1-3解答を見る解答を隠す
解答
①量子条件:電子波が定常波として閉じる軌道(2πr = nλ)だけを許し、その定常状態では電磁波を放射しないと仮定する(落ち込みの禁止)。
②振動数条件:準位間を移るときだけ、差額のエネルギーを 1 個の光子(hν = E_n−E_m)として放出・吸収すると仮定する(線スペクトルの説明)。
ポイント ボーアの 2 条件は「古典論の禁止事項+光子との取引ルール」— 困難(B1-2)の 2 つに 1 対 1 で応答している構図まで見えると完璧。
B2【ボーア模型の理論】
B2-1解答を見る解答を隠す
解答
ド・ブロイ波長 λ = h/(mv) を量子条件に代入:
2πr = n×h/(mv)(mvr = nh/2π の形にも書ける)∎
ポイント 「波の条件」が「運動量の条件」に翻訳される瞬間 — 左辺は幾何(円周)、右辺は力学(運動量)。h がここでも 2 つの世界の通訳。
B2-2解答を見る解答を隠す
解答
原子のエネルギーは準位 E_n しかとれない。高い準位から低い準位へ移るとき、その差 E_n−E_m をちょうど 1 個の光子として放出する(hν = E_n−E_m)。
吸収は逆:差額ちょうどのエネルギーをもつ光子だけを吸収して、低い準位から高い準位へ上がる。
ポイント 光子は「準位間の両替券」— 差額ぴったりの取引しか成立しない。スペクトルが線(とびとび)になる理由がこの 1 行。
B2-3解答を見る解答を隠す
解答
基底状態(E₁ = −13.6 eV)から上がれる先は、E₂(差 10.2 eV)、E₃(差 12.1 eV)、… ととびとび。
10.2 eV の光子:E₂−E₁ にちょうど一致 → 吸収して n = 2 へ上がれる。
11.0 eV の光子:どの準位差とも一致しない(10.2 と 12.1 の間)→ 一部だけ受け取ることはできず、吸収されない ∎
ポイント 「おつりも分割払いもない」— 光子の一括取引(第7章 B3)と準位のとびとびが合わさった帰結。原子が"選り好み"する理由。
B3【スペクトルと準位の対応】
B3-1解答を見る解答を隠す
解答
仮定:E_n = −hcR/n² とおく。
振動数条件:hc/λ = E_n−E_m = hcR×(1/m²−1/n²)
両辺を hc で割って 1/λ = R(1/m²−1/n²) — リュードベリの式と一致 ∎
(対応:hcR = 13.6 eV)
ポイント 実験式(リュードベリ、1890 年)が理論(ボーア、1913 年)からそのまま導かれた — 「−13.6/n²」と「R」は同じ事実の 2 つの表記だったという歴史的な合流点。
B3-2解答を見る解答を隠す
解答
輝線スペクトル:放電で高い準位に上げられた原子が低い準位へ落ちるとき、差額の光子を放出 — 特定の波長だけが明るく光る。
吸収スペクトル(暗線):恒星の内部からの連続光が大気を通るとき、大気中の原子が同じ準位差に相当する波長だけを吸収(低 → 高)— その波長だけ暗くなる。
同じ準位差の「放出」と「吸収」— 表裏の関係で、輝線と暗線は同じ波長に現れる ∎
ポイント フラウンホーファー線(太陽の暗線)の正体 — 「星の光の欠けた場所」が、その星の大気の成分表になっている。
B3-3解答を見る解答を隠す
解答
エネルギー準位の配置は、核の電荷と電子の数で決まる元素固有のもの — 準位の差(= 出せる・吸える光子のエネルギー)の組も元素ごとに異なる。
よってスペクトル線の波長のセットは元素の指紋となり、線を照合すれば元素が特定できる ∎
ポイント 炎色反応(第2巻の光)からヘリウムの発見(太陽のスペクトルで先に見つかった!)まで — 「光で遠くの物質を言い当てる」分光学の原理宣言。
B4【半減期の理論】
B4-1解答を見る解答を隠す
解答
時間 T がたつごとに、残る数は ×(1/2) される。
時間 t の間にこれが t/T 回繰り返されるので
N = N₀×(1/2)^(t/T) ∎
ポイント 指数の式は「半分の回数勘定」の清書 — t/T が整数でなくても式はそのまま使える(グラフはなめらかな減衰曲線)。
B4-2解答を見る解答を隠す
解答
個々の原子核がいつ崩壊するかは原理的に予言できない(確率的な現象)。
半減期が表すのは、多数の原子核の集団としての統計的な性質 — 「集団の半分が崩壊するのにかかる時間」であり、大量にあるからこそ正確な時計として使える。
ポイント 「1 個は気まぐれ、10²³ 個は正確」— サイコロ 1 回と 1 兆回の違い。ミクロの確率とマクロの法則性の関係は、熱力学(第2巻・分子運動論)と同じ構図。
B4-3解答を見る解答を隠す
解答
残った A:N₀/8 — 崩壊した分(= 生まれた B):N₀−N₀/8 = 7N₀/8
B は A の 7 倍
ポイント 「減った分がそのまま相手になる」保存の勘定 — 親娘の比(1:7、1:3、…)から経過時間を逆算する年代測定(岩石のウラン-鉛法など)の原理。
B5【質量欠損と結合エネルギー】
B5-1解答を見る解答を隠す
解答
質量欠損:Δm =(バラバラの核子の質量の和)−(原子核の質量)(まとまった核の方が軽い)。
結合エネルギー:核をバラバラの核子に分解するのに必要なエネルギー — 関係は
E = Δmc² ∎
ポイント 「結びつくと軽くなる」— 軽くなった分 Δmc² を放出して安定化したのが核。逆にバラすには同額を払う(結合エネルギー)。符号の物語で覚える。
B5-2解答を見る解答を隠す
解答
ヘリウム 4 = 陽子 2 + 中性子 2:
バラバラの和:2×1.0073+2×1.0087 = 4.0320 u
質量欠損:Δm = 4.0320−4.0015 = 0.0305 u
結合エネルギー:E = 0.0305×931 ≒ 28 MeV
ポイント 質量の約 0.8 % が消えてエネルギーに — 化学結合(eV 級)の 100 万倍のスケールが、u × 931 MeV の一発換算で出る。「和 → 引く → 931 倍」の 3 手。
B5-3解答を見る解答を隠す
解答
1 核子あたりの結合エネルギーは質量数 60(鉄)付近が最大 — 鉄が最も"固く結ばれて安定"。
重い核(ウランなど):割れて鉄に近づくと 1 核子あたりの結合が深くなり、差額を放出(核分裂)。
軽い核(水素など):合体して鉄に近づく同じ理由で放出(核融合)。
— どちらも「鉄へ向かう坂を下る」ぶんのエネルギーが出る ∎
ポイント 1 枚のグラフ(横軸 A・縦軸 1 核子あたり結合エネルギー、鉄が山頂)で分裂と融合が同時に説明できる — 宇宙で鉄より重い元素が"燃料"にならない理由でもある。
B6【核反応の保存則と防護】
B6-1解答を見る解答を隠す
解答
保存される量:質量数 A の和と電気量(原子番号 Z)の和。
質量数:235+1 = 144+A+3×1 → A = 89
原子番号:92+0 = 56+Z+0 → Z = 36
X = ⁸⁹₃₆Kr(クリプトン)
ポイント ウラン核分裂の代表反応 — 中性子 3 個の放出が連鎖反応(次の分裂の引き金)の種。A・Z の 2 本連立は A8-2 と同じ型で、相手が大物になっただけ。
B6-2解答を見る解答を隠す
解答
化学反応:原子の外側の電子の組み替え — 1 反応あたり eV 級のエネルギー。
核反応:核子を結びつける核力の組み替え — 1 反応あたり MeV 級。
スケール差は約 100 万倍(10⁶) — 同じ質量の燃料でも、核は桁違いのエネルギーを生む(ウラン 1 g ≒ 石炭数トン)∎
ポイント 「どの力の、どの深さの結合をいじるか」でエネルギーの桁が決まる — 電磁気力(電子)と核力(核子)の強さの差が、そのまま eV と MeV の差。
B6-3解答を見る解答を隠す
解答
距離:放射線の強さは線源から離れるほど弱まる(点状の線源ではほぼ逆2乗で減衰)— できるだけ離れる。
時間:被曝量は浴びた時間に比例 — 近くにいる時間を短くする。
遮蔽:放射線の透過力(α:紙/β:アルミ/γ:鉛や厚いコンクリート)に応じた適切な材料でさえぎる。
ポイント 3 原則はすべて既習の物理(逆2乗・比例・透過力の序列)の応用 — 「怖がる」ではなく「性質を知って合理的に減らす」が防護の思想。
実戦問題(共通テスト形式+記述入試形式)
実戦8-1【共テ形式:放射線と半減期】★★
放射線と放射性崩壊について答えよ。
① α線の正体は:[ア]
(a) 電子
(b) ヘリウム原子核
(c) 波長の短い電磁波
② β崩壊が起こると、原子核の原子番号 Z は:[イ]
(a) 1 増える
(b) 1 減る
(c) 変わらない
③ α線・β線・γ線のうち、透過力が最も大きいのは:[ウ]
(a) α線
(b) β線
(c) γ線
④ セシウム 137 の半減期は約 30 年である。90 年後に残っている量は、はじめの [エ]/[オ] である。
⑤ はじめの量の 1/32 になるのは、約 [カキク] 年後である。
実戦8-2【記述形式:水素原子のスペクトル】★★★
水素原子のエネルギー準位は E_n = −13.6/n² eVと表される。h = 6.6×10⁻³⁴ J·s、c = 3.0×10⁸ m/s、1 eV = 1.6×10⁻¹⁹ J とする。
① n = 1、2、3 の準位のエネルギーをそれぞれ求めよ。
② 電子が n = 3 から n = 2 へ移るときに放出される光子のエネルギーを、eV と J の両方で求めよ。
③ ②の光の波長を求めよ。
④ ②の光は何という系列に属するか。また、およそ何色の光か(可視光の波長:約 4×10⁻⁷〜8×10⁻⁷ m)。
⑤ 原子のエネルギーがとびとびの値に限られる理由を、電子の波(ド・ブロイ波)に触れて簡潔に述べよ。
実戦8-3【記述形式:核融合とエネルギー】★★★
重水素と三重水素の核融合反応 ²₁H + ³₁H → ⁴₂He + X を考える。各粒子の質量は、²₁H:2.0141 u、³₁H:3.0161 u、⁴₂He:4.0026 u、中性子:1.0087 u とし、1 u = 931 MeV、1 eV = 1.6×10⁻¹⁹ J とする。
① X が中性子 ¹₀n であることを、保存則を用いて確かめよ。
② この反応の質量欠損 Δm を求めよ。
③ 1 回の反応で放出されるエネルギーを MeV 単位で求めよ。
④ ③のエネルギーをジュール単位に換算せよ。
⑤ この型の反応が自然界・技術のどこで重要か、例を 2 つ挙げよ。
実戦問題 解答・解説
実戦8-1
考え方 放射線の 3 点セット(正体・崩壊の暗号・透過力)+ 半減期の回数勘定。①〜③は A6 の一択化、④⑤は「90/30 = 3 回」「1/32 = 5 回」の即答を試す。
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解答
① α線 = (b) ヘリウム原子核(ア = (b))
② β崩壊は中性子 → 陽子:(a) 1 増える(イ = (a))
③ 透過力は α < β < γ:(c) γ線(ウ = (c))
④ 90 年 = 半減期 3 回:(1/2)³ = 1/8(エ = 1、オ = 8)
⑤ 1/32 = (1/2)⁵ — 半減期 5 回分:30×5 = 150 年後(カキク = 150)
ポイント
• ①〜③は「電離作用と透過力は逆順」まで添えて 1 セット(α は電離最強・透過最弱)。
• ④⑤は式より先に回数 — 「何回半分か」を数えれば、(1/2) のべきは自動で決まる。
実戦8-2
考え方 準位表(①)→ 差額の光子(②)→ 波長(③)→ 系列の同定(④)→ とびとびの理由(⑤)— ボーア模型の全行程を 1 つの遷移(3 → 2)で踏破する。③で A3-2(リュードベリ)との2 ルート一致が見せ場。
実戦8-2解答を見る解答を隠す
解答
① E₁ = −13.6 eV、E₂ = −13.6/4 = −3.4 eV、E₃ = −13.6/9 ≒ −1.5 eV
② ΔE = E₃−E₂ = (−1.51)−(−3.4) ≒ 1.9 eV
J 換算:1.89×1.6×10⁻¹⁹ ≒ 3.0×10⁻¹⁹ J
③ hc/λ = ΔE より
λ = hc/ΔE = 6.6×10⁻³⁴×3.0×10⁸/(3.0×10⁻¹⁹) = 6.6×10⁻⁷ m
④ n = 2 へ落ちる遷移 — バルマー系列。波長 6.6×10⁻⁷ m は可視域の長波長側:赤色(Hα線)。
⑤ 電子はド・ブロイ波としてふるまい、円周が波長の整数倍(2πr = nλ)となる定常波の軌道しか安定に存在できない。n が整数に限られるため、軌道とエネルギーはとびとびの値になる(弦の固有振動と同じ「波+閉じ込め」の帰結)。
ポイント
• ③の 6.6×10⁻⁷ m は、A3-2 でリュードベリの式から出した 6.5×10⁻⁷ m と(丸めの範囲で)一致 — 「準位の差」と「実験式」の 2 ルートが同じ赤い線を指す、B3-1 の数値版。
• ②の負どうしの引き算(−1.5+3.4)は符号事故の名所 — 「上の準位 − 下の準位」と順序を固定してから代入する。
実戦8-3
考え方 核反応の 3 型「保存則 → Δm → E = Δmc²(×931)」を、太陽と核融合炉の本物の反応(D-T 反応)で完走する。④の J 換算で"1 個の反応"の実額まで下ろす。
実戦8-3解答を見る解答を隠す
解答
① 質量数:2+3 = 4+A → A = 1/原子番号:1+1 = 2+Z → Z = 0
X = ¹₀n(中性子)○ — 両保存則を満たす。
② 反応前:2.0141+3.0161 = 5.0302 u/反応後:4.0026+1.0087 = 5.0113 u
Δm = 5.0302−5.0113 = 0.0189 u
③ E = 0.0189×931 ≒ 17.6 ≒ 18 MeV
④ 17.6×10⁶×1.6×10⁻¹⁹ ≒ 2.8×10⁻¹² J
⑤ ①太陽(恒星)のエネルギー源(中心部での水素の核融合)/②核融合発電の研究(D-T 反応は最も実現に近い反応として、実験炉で研究が進む)
ポイント
• ②は「前の和 → 後の和 → 引く」の 3 手を縦に並べて書く — 5 桁の足し引きこそ丁寧に(0.0189 の 3 桁目まで効く)。
• ③の約 18 MeV は、化学反応(eV 級)の約 100 万倍(B6-2)— 1 g の燃料で桁違いのエネルギー、という核の世界の実感。シリーズ最後の計算が「質量 → エネルギー」の両替で締まる。
おわりに
「物理[電磁気・原子]例題マスター」全8章、お疲れさまでした。
静電気と電場/コンデンサー/直流回路/電流と磁場/電磁誘導/交流と電磁波/電子と光(粒子性と波動性)/原子と原子核 — 概念チェック・A問題(数値)・B問題(文字式)・実戦問題(共テ+記述)の4層構成、1章あたり約47問です。
これで「例題マスター」物理シリーズ全3巻(第1巻:力学/第2巻:熱・波動/第3巻:電磁気・原子)が完結しました。